情勢の特徴 - 2011年8月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日本政策投資銀行がまとめた『2011年度の大企業(資本金10億円以上)国内設備投資計画調査』で、全産業で7.3%増と4年ぶりに増加する。建設業の民間受注動向は、顧客である企業の設備動向と連動している。建設業界にとって、民間企業の設備投資額が全体として増加に転じたことは、追い風になりそうだ。ただ、全国ゼネコンの民間業種別受注割合で最大の『不動産』の設備投資は前年度12.5%増から11年度は前年度比2.5%減と減少に転じる見通しだ。」(『建設通信新聞』2011.08.18)
●「日本企業によるパッケージ型インフラPPP(官民パートナーシップ)事業の海外展開を後押しする政府などの取り組みが進展してきた。外務省などは、円借款を従来よりも柔軟に運用し、ブラジルのように所得水準が向上した国にも活用していく方針を決定。廃止されていた国際協力機構(JICA)の海外投融資の再開に向け、具体的な案件の実施を通じて実施体制の検証などを行う『パイロットアプローチ』の審査をスタートさせた。パイロットアプローチの対象候補にはインフラPPP事業も浮上。今後、こうした動きが加速しそうだ。」(『建設工業新聞』2011.08.31)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は大規模な津波でも壊れにくい海岸用の新堤防を開発する。堤防の側面を階段状にするなどして津波の衝撃をやわらげる。通常の堤防より津波の衝撃に強く、スーパー堤防に比べてコストを低く抑えた。東日本大震災による大津波で東北・関東地方の沿岸部で大きな被害が出たことに対処する。9月にも有識者による検討会を開き、早ければ被災地で年内に着工、数年内に50キロメートル前後の新堤防設置を目指す。」(『日本経済新聞』2011.08.18)
●「政府が中期財政フレームと2012年度予算概算要求の大枠を固めたことで、公共事業における今後の厳しさが明確になってきた。現在の政策が今後も継続すれば、社会保障費の自然増によって当初予算の公共事業費が毎年度、5−10%減少し続ける可能性がある。5%ずつ減るシナリオでも13年度予算では政府全体の公共事業関係費が5兆円を割り込む。被災地の復旧・復興が予想されるものの、5年間計19兆円のうち純粋な公共事業費は8−9兆円程度と見られ、年度ごとの配分額によっては復旧・復興の公共事業費分を足しても11年度当初の公共事業費に届かない可能性がある。」(『建設通信新聞』2011.08.24)
●「公立小中学校の校舎や体育館などで、耐震性がない建物(耐震診断の未実施分を含む)が今年4月1日時点で2万2911棟あることが24日、文部科学省の調査で分かった。うち4614棟は震度6強の地震で倒壊する恐れがある。東日本大震災では耐震化されていない校舎などが大きな被害を受けており、同省は5年以内の全校完了を目指す。」(『日本経済新聞』2011.08.25)
●福島第1原発事故で広がった高濃度の放射性物質(「死の灰」)に汚染された下水道処理汚泥が、首都圏各地の処理場内に大量に保管されている。国土交通省のまとめでは1都7県で保管されている汚泥や汚泥焼却灰などは約1万8820トン(7月29日現在)。多くの自治体では、保管が限界に達しており、国に対策を求める声が上がっている。(『しんぶん赤旗』2011.08.25より抜粋。)
●「国土交通省と総務省は25日、閣議決定した入札契約適正化法に基づく改正『公共工事の入札および契約の適正化を図るための措置に関する指針(入札契約適正化指針)』に沿った取り組みを各地方自治体に求める要請書を送付した。地域維持型契約方式の導入に向けた『地域維持事業』の担い手についての実情調査、ダンピング(過度な安値受注)対策のための失格基準の導入・活用、予定価格などの事前公表見直しなどを求めた。あわせて、国交省と財務省が各省庁と独立行政法人・特殊法人にも指針内容の取り組み徹底を要請した。」(『建設通信新聞』2011.08.26)
●「国土の安全・安心を支える社会資本ストックの維持・更新について、国民の不安感が増している。国土交通省が今年2月に実施した国民意識調査によると、老朽化が進むインフラの維持・更新について、回答者(約4000人)の半数近くが現時点で不安を感じており、将来について不安を感じるとした人は6割超に上った。地域の災害リスクで、建物の老朽化・耐震性能不足などを懸念する声が目立った。3月の東日本大震災を機に、インフラの安全性に対する国民の意識は一段と高まって怒り、被災地の復興と併せ、国土全体の防災力向上が求められそうだ。」(『建設通信新聞』2011.08.26)
●「国土交通、総務両省は25日、8月9日に閣議決定した公共工事入札契約適正化法に基づく入札契約適正化指針の改正内容を地方発注機関に徹底するため、改正指針に沿って入札契約制度を適切に見直すよう求める文書を都道府県と政令指定都市に出した。地域維持事業に『包括発注』や『地域維持型JV』と呼ぶ新たな契約方式を活用するよう要請。予定価格の事後公表の徹底などの措置を速やかに講じることも求めた。」(『建設工業新聞』2011.08.26)
●「福島県相馬市の立谷秀清市長は25日、今後の復興計画で象徴的な事業の一つである、大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の設置が、最大で50ヘクタールになるとの考えを明らかにした。同日開いた、復興顧問会議で示した。台湾企業が親会社のメーカーと第三セクターで設置を進める。東日本大震災の被災地では、企業などからメガソーラーや風力発電など再生可能エネルギー導入提案を受けているが、被災地自治体の首長が設置面積まで含めて踏み込んだ発言は異例。」(『建設通信新聞』2011.08.26)
●「政府の東日本大震災復興対策本部は26日、海岸や河川、道路など公共インフラの復旧と整備についての事業計画と工程表をまとめた。計画・工程に沿って、予算措置する見通し。災害対策法の見直しなど今後の防災対策の視点・方向性も固めた。事業計画と工程表は、海岸や河川、下水道、交通網、農地・農業用施設、漁港・漁場・養殖施設・大型定置網、土砂災害対策、地盤沈下・液状化対策、災害廃棄物の処理について、復旧に着手する考え方や時期、完成目標など示した。主に、早急に予算措置の検討が必要な2013年度までの3年間の工程となっている。今後、医療・学校施設の建設など対象範囲を拡大する。 まちづくりについては、現在、国交省が各市町村による復興計画策定を支援しており、43市町村で復興パターン検討調査を進めている。これら43市町村の8割の市町村は年内に復興計画を策定する予定だ。防災対策の視点・方向性では、今後、『南海トラフ巨大地震モデル検討会』や、『首都直下地震対策見直しに関する検討会』『災害対策法制のあり方に関する検討会』を立ち上げ、検討する。首都直下地震対策では首都機能の確保や帰宅困難者対策、関東大震災クラスの想定見直しなど、災害対策法制については広域大規模災害への対応や地方自治体の行政機能喪失への対応、包括的被災者支援のあり方をまとめる。」(『建設通信新聞』2011.08.29)
●「国土交通省は、『発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン』を策定した。受発注者間の対等な取引を促すため、発注者の建設業法違反となる行為や違反の恐れがある行為を具体的に提示。追加工事や工期変更に伴う契約変更のルールだけでなく、発注者の行為によっては独占禁止法の優越的地位の濫用に該当する恐れがあることや、社会保険料の取り扱いに関する事項にまで踏み込んでいる。29日、公共、公的発注者だけでなく、主要民間団体31団体などに対してもガイドラインを周知した。建設業法では契約当事者が順守すべき最低限の義務を定めているが、認識不足などを理由に法令順守が徹底されていない場合も多い。ガイドラインでは、発注者の業法違反となる行為と違反の恐れがある行為、受発注者の望ましい対応それぞれで事例を示している。発注者のCSR(企業の社会的責任)活動などに訴え掛け、自主的な取り組みを促すことが目的だ。国交首として踏み込んだ事項も複数ある。不当に低い発注金額や不当な使用資材の購入強制などの行為は業法で禁止されているため、この規定に違反すれば独禁法で禁止している不公正な取引方法の優越的な地位の濫用にも該当する恐れがあると指摘。支払いに関しても、業法では元請けと下請け間を規定しているものの、発注者の支払いが元下の支払いに大きな影響を及ぼすため、引き渡し後の速やかな支払いや長期手形を交付しないことが望ましいとしている。 社会保険と労働保険も同様に、受注者が労災保険料とともに義務的に負担しなければならない法定福利費であり、通常必要と認められる原価に含まれるべきと解釈。このため、法定福利費相当額を含まない金額での請負契約の締結は、結果的に発注者が保険への加入義務を定めた法令違反を誘発する恐れがあるとするなど、踏み込んだ内容となっている。」(『建設通信新聞』2011.08.30)
●「国土交通省は29日、社会資本整備審議会(国交相の諮問機関、社整審)に、同省の有識者会議、建設産業戦略会議が6月末にまとめた『建設産業の再生と発展のための方策2011』に盛り込まれた施策の具体策を検討するよう諮問した。社整審の産業分科会が所管となる。今後、会合の開催日や審議体制などを詰める。国交省は、方策2011に盛り込まれた内容の具体策を審議するため、7月末に開いた中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)でワーキンググループ(WG)を設置。WGでは今後、改正入札契約適正化指針に盛り込まれた地域維持型JVの創設に向けたJV準則の見直し、保険未加入企業の排除方策、建設業許可業種区分の点検、法令改正事項などを順次審議する予定となっている。」(『建設工業新聞』2011.08.30)

労働・福祉

●宮城労働局は16日、東日本大震災で仕事中などに死亡した人の遺族に支払われる労災保険の請求件数が、宮城、岩手、福島の被災3県で15日時点で計1535件に達したと発表した。同労働局によると、内訳は宮城1005件、岩手399件、福島131件。支給決定は3県で1305件。宮城県では12日の時点で1000件を突破。同県で年間請求件数が1000件を超えたのは、労災保険制度が始まった1947年以来初。…同県の請求の99.6%は津波犠牲者。行方不明者の遺族からも79件の請求があった。(『しんぶん赤旗』2011.08.17より抜粋。)
●「大阪府南部の泉南地域にあったアスベスト(石綿)関連工場の元従業員や周辺住民ら32人が石綿による健康被害を訴え、国に総額約9億4600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。三浦潤裁判長(退官のため田中澄夫裁判長が代読)は『国の規制措置には一応の合理性があった』として、賠償を命じた一審判決を取り消し、請求をすべて棄却する原告側逆転敗訴を言い渡した。原告側は判決を不服として上告する方針。昨年5月の一審・大阪地裁判決は『必要な規制を怠った』として、石綿被害で初めて国の不作為責任を認定。今回の高裁判決は、東京などで係争中の同種訴訟に影響する可能性もある。判決理由で三浦裁判長は『戦後の復興期から高度経済成長期だったとはいえ、石綿による健康被害の長期的、将来的な危機管理は十分でなかった』と国の対応の問題点に言及。しかし国は、旧労働安全衛生規則を制定した1947年以降、医学的知見や工学的知見の進展などに合わせて粉じんマスクなどの普及を進めたとして『国家賠償法上、違法となる規制権限の不行使には該当しない』とした。」(『日本経済新聞』2011.08.26)
●「総務省が30日発表した7月の完全失業率(季節調整値、被災3県除く)は4.7%となり、前月に比べて0.1ポイント上昇した。企業から解雇され、失業した人が増えた。一方、厚生労働省がまとめた同月の有効求人倍率は0.64倍となり、前月に比べ0.01ポイント改善した。雇用情勢は東日本大震災の影響が一巡して持ち直しているが、改善に向けた動きは一進一退を続けている。」(『日本経済新聞』2011.08.30)
●「北海道建設部は、10年度の建設工事下請状況調査結果をまとめた。労務単価が公共工事設計単価を10%以上下回るケースが建設管理部(建管)、建築局合わせて21件と、昨年の2件から大きく増加。下請業者が法定保険に未加入だったために指導したケースも21件あり、元請業者に改善指導を行った。」(『建設工業新聞』2011.08.31)

建設産業・経営

●「大手住宅メーカーが戸建て住宅のリフォーム(改築)事業を強化する。積水ハウスが独自の料金値引き制度を新設。ミサワホームや住友林業は営業の拠点や担当者を拡充する。国内の新設住宅着工戸数は直近のピークだった1996年度と比べほぼ半減したが、耐震補強や省エネ性向上を狙った改築は今後需要の伸びが見込める。リフォーム事業に力を入れ、戸建て住宅市場の縮小を補う。」(『日本経済新聞』2011.08.19)
●「国土交通省の下請債権保全事業の活用実績が徐々に伸びている。19日に公表した7月末までの実績を見ると、今年度に入り各月の保証債権数は、前年同月の倍程度となっている。東日本大震災の被災地を対象に6月から開始した買取債権のニーズも高まっており、7月に入って初めてがれき処理での実績を得た。こうした動向を踏まえ、事業を運用する建設業振興基金もさらに普及拡大を目指すため、今月から利用者の声をホームページにアップするといった取り組みを開始した。7月の実績を見ると、保証債権数は702件、保証総額は約37億円、利用した下請建設企業数は延べ323件となった。前年同月の保証債権数と比べるとほぼ2倍の伸びで、今年度に入って、4月以降の各月も同様の傾向を示している。」(『建設通信新聞』2011.08.22)
●「主要ゼネコン24社の11年4〜6月期連結決算は、増収を達成したのが7社、営業損益で黒字を確保したのは9社となった。売上高については、手持ち工事が目減りしている中で、東日本大震災によって工事の進ちょくが一部滞る社もあり、減収となる社が目立った。営業損益は、工事採算の改善を推し進めたものの、売上高に対し、販売費や一般管理費の負担が大きい季節要因があるのに加え、過去に受注した採算の低い工事の影響を受けたことなどにより、15社が赤字となった。業績の先行指標となる受注高は、受注活動に苦戦した前年同期の反動があったほか、大型物件の受注に成功した社もあり、17社が増やした。完成工事総利益率が改善したのは5社となっている。」(『建設工業新聞』2011.08.23)
●「宮城県は、災害廃棄物処理業務(石巻ブロック)の公募型プロポーザルを実施した結果、鹿島・清水建設・西松建設・佐藤工業・飛島建設・竹中土木・若築建設・橋本店・遠藤興業JVを業務受託候補者に決めた。9月上旬に仮契約を締結する予定だ。設計・施工は2012年3月25日まで。運営・管理期間は14年3月25日まで。参考業務規模は2289億6010万9000円に設定している。今回のプロポーザルには3JVが参加。このうち、1JVは参加資格要件を満たさなかったため、失格となった。鹿島JVの提案は、技術評価15項目のうち、実施工程や運搬・移動計画、処理計画などについて高得点を得た。」(『建設通信新聞』2011.08.24)
●「鹿児島県を除く九州6県の鉄筋工事業の協同組合で組織する九州鉄筋工事業団体連合会(九鉄連、平本貢会長)は25日、佐賀県武雄市内のホテルで定例会を開き、会員各社が適正価格で元請 企業から仕事を受注できるようにするため、連合会で見積書を統一する活動方針を決議した。見積書の書式を統一するとともに、連合会の名前を明記する。また、応援要請があった場合の単価を、諸経費を除き1日1人当たり2万円以上とする方針も決めた。」(『建設工業新聞』2011.08.29)
●「国内最大規模の土壌汚染対策工事が本格始動する。東京都は29日、豊洲新中央卸売市場の建設予定地(江東区豊洲5〜7街区、約40.7ヘクタール)で土壌汚染対策工事に着手するため、街区別に実施した一般競争入札(WTO対象)を開札し、落札者を決めた。 落札したのは、南東側に位置する5街区(土壌汚染対策面積12万4597平方メートル)が鹿島・大成建設・東亜建設工業・西松建設・東急建設・新日本工業JV、北西側の6街区(同12万6147平方メートル)が清水建設・大林組・大成建設・鹿島・戸田建設・熊谷組・東洋建設・鴻池組・東急建設・銭高組JV、南西側の7街区(同12万9232平方メートル)が大成建設・鹿島・熊谷組・飛島建設・西武建設JV。工期は13年3月15日までと設定している。落札価格は、5街区が119億1750万円(予定価格126億9716万1750円)、6街区が333億4275万円(同343億7453万5650円)、7街区が89億1450万円(同94億1478万5100円)だった。」(『建設工業新聞』2011.08.30)
●「ゼネコン(総合建設会社)大手4社の2012年3月期は、不動産開発事業の復調が業績を下支えしそうだ。不動産市況の回復を背景に、同部門の粗利益に当たる不動産事業等総利益(連結ベース)の4社合計額は前期比31%増の615億円と、2期連続で増加する見通し。リーマン・ショック前の08年3月期と比べるとなお4割弱の水準だが、回復傾向が鮮明だ。ゼネコンの開発事業は事業主として自ら土地を先行取得し、不動産会社に案件を持ち込んで建物の建設などを請け負う。今期の同事業の粗利益は大成建設を除く3社で増加する見込みだ。」(『日本経済新聞』2011.08.31)
●「野田佳彦民主党代表が30日、衆参両院の本会議で行われた首相指名選挙を経て第95代、62人目の首相に選出された。野田首相は今週末に新内閣を発足させる見通し。新政権が当面する最大の課題が東日本大震災の復旧・復興対応。国土交通省内には本格政権の立ち上げや臨時国会の召集までに時間がかかると政策決定がそれだけ遅れると懸念する声も出ている。野田首相は現時点で今後の公共事業政策などについてほとんど発言しておらず、組閣を前にして国交省や建設業界などから公共事業政策や建設業行政などについて要望や注文も相次いだ。」(『建設工業新聞』2011.08.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「政府は東日本大震災の地震や津波で被害を受けた地域の集団移転について、国の補助率を引き上げる方針を決めた。現状の実質的な国の負担は94%で、市町村は6%だが、地方負担を最大でゼロにする。財政規模の小さい市町村は移転費用を賄えず、計画が進まない可能性があると判断した。必要な費用は今年度第3次補正予算案に計上する考えだ。」(『日本経済新聞』2011.08.22)

その他