情勢の特徴 - 2011年9月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日本企業による海外直接投資の新興国シフトが加速している。成長市場の需要を取り込むためで、直接投資に占める新興国向けの割合は初めて6割に達し、アジアを中心に外周企業のM&A(合併・買収)も相次いでいる。歴史的な円高もあって新興国への直接投資で収益性を高める構図が鮮明になっている。国際収支統計によると、2010年度の海外直接投資は前年度比20%減の4兆8639億円。米欧向けが53%減と落ち込んだ半面、経済協力開発機構に加盟していない新興国向けは7%増の2兆9185億円と、全体に占める割合が最高の60%に達した。」(『日本経済新聞』2011.09.01)
●「国土交通省が8月31日に公表した7月の建築着工統計調査報告によると、新設住宅着工戸数は前年同月比21.2%増の8万3398戸となり、2008年12月以降約2年半ぶりに8万戸台に回復した。」(『建設通信新聞』2011.09.01)
●「東日本大震災の被災企業を支援する二重ローン対策で、債権を買い取る公的機関の設立がずれ込んでいる。政府は8月中にまず岩手県に公的機関を設立する方針だったが、買い取り価格を巡って地元金融機関からの反発が相次ぎ、設立協議が難航している。再生が可能な企業かどうかを見極めるのも難しく、新政権が二重ローン対策の枠組みの見直しを迫られる可能性もある。」(『日本経済新聞』2011.09.02)
●「東京商工リサーチは、東日本大震災の関連倒産が8月31日までに304件、負債総額が6024億0500万円に達したとの集計結果を発表した。95年の阪神大震災の関連倒産は、震災発生からの3年間の累計で314件となっており、東日本大震災では震災発生から半年という短期間で同水準の倒産件数に到達した形。これ以外に実質破綻が36件発生しており、現状では年末には600件を超えるハイペースになると予測している。」(『建設工業新聞』2011.09.05)
●「財務省が2日発表した2011年4〜6月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資額は前年同期比7.8%減の7兆7145億円と、4四半期ぶりにマイナスに転じた。東日本大震災で需要の先行き不透明感が広がり、全体的に投資を手控える動きが見られたため。売上高は11.6%減の316兆4903億円と6期ぶりのマイナス、経常利益は14.6%減の11兆3421億円と7期ぶりマイナス。震災に伴う自動車の減産などが響き、いずれも大幅に落ち込んだ。」(『建設工業新聞』2011.09.05)
●「造船・プラント大手が新興国での社会インフラ案件の開拓を急ぐ。三井造船は、2012年度、べトナムの合弁会社で橋梁部材の生産能力を1.5倍に増やす。日揮はインドで水処理や発電事業の運営に向けた調査を開始。千代田化工建設はサウジアラビアで工業団地用の排水浄化事業への出資の検討に入った。円高の影響もあり石油化学など従来型プラントは韓国勢などとの競争が厳しい。市場が拡大するインフラ分野を強化して収益源を多角化する。」(『日本経済新聞』2011.09.06)
●「農林水産省は東日本大震災で壊滅的な被害を受けた漁業を再生するため、被災した漁業者に事業資金を全額助成する方針だ。期間は3年、助成規模は数百億円とし、収入は返納させる。漁業者のグループ化を支援の条件とすることで再編を後押しし、漁業の生産性と競争力を高めることを狙う。」(『日本経済新聞』2011.09.08)
●「国土交通省は2011年度第3次補正予算案で、東日本大震災で損壊した地域の高台や内陸への集団移転のための費用として約4000億円を要求する方針だ。被災者の住宅団地の用地取得や造成などに利用する。津波で被災し、財政事情が悪化した東北地方の沿岸部などの自治体を支援し、集団移転を円滑に進めるのが狙いだ。仙台市や宮城県気仙沼市の一部など数十地域が、今後の津波被害を避けるために高台や内陸への集団移転を希望している。国交省は中期的には、集団移転のために少なくとも7000億円程度が必要とみており、来年度予算以降も段階的に必要な費用を計上する。第3次補正予算で計上した資金は、住宅団地の用地取得や造成、住宅団地周辺の道路の整備のほか、もともと居住していた区域内の農地の買い取りの費用などに使う方針。ただ、個人の住宅の建設費は補助しない。 通常の国の市町村への補助率は4分の3だが、地方交付税による補填分があるため実質的な国の負担は94%に達する。ただ、財政規模の小さい自治体では負担が難しいケースもあり、政府は実質的に地方負担をゼロにすることも検討している。」(『日本経済新聞』2011.09.08)
●「IHIのグループ会社、IHIインフラシステム(IIS、堺市堺区、麻野純生社長)と伊藤忠商事のコンソーシアムは、トルコの『イズミット湾横断橋建設工事』を受注し、8日に現地で契約書に調印した。契約額は11億ドル。関係各省や政府系金融機関が受注活動を側面支援。…同横断橋は、トルコ運輸省道路庁(KGM)がイスタンブール市〜イズミル市間に計画している全長363キロの高速道路『ゲブゼ〜イズミル自動車道』の一部を構成する長大橋。…高速道路はBOT(建設・運営・譲渡)方式で整備する計画で、トルコとイタリアの企業6社で構成するコンセッションカンパニー『NOMAYG JV』がプロジェクト全体を担当している。IIS・伊藤忠連合は、NOMAYGから上部工の設計・製作・架設一式と橋梁基礎・下部工・アンカレイジの設計・建設一式をフルターンキー契約で受注した。工期は42カ月で、15年中の完成を目指す。」(『建設工業新聞』2011.09.09)
●「経団連が近くまとめる政策提言『成長戦略2011』の概要がわかった。東日本大震災で『国内の事業環境が一層悪化、かつてない空洞化の危機に直面している』と指摘。政府は日本の『国際的な立地競争力の強化』を図るべきだとした。具体的には中期的な電力確保策を含むエネルギー・環境政策の抜本的な見直しや、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への早期参加などを求めた。…提言では『震災復興に向けた取り組みを経済成長の起爆剤と位置付けるべきだ』と強調。復興特区・総合特区制度などの活用で被災地に新たに産業を集積させ、雇用を創出するとともに農林水産業の強化も進めるよう求めた。経団連としては会員企業・自治体と連携し、日本企業の持つ先端技術の実証試験を進める『未来都市モデルプロジェクト』の推進などを通じ、経済成長をけん引する方針を示した。」(『日本経済新聞』2011.09.11)

行政・公共事業・民営化

●「仙台市と日本IBMやシャープ、カゴメなど約20社は、東日本大震災の被災農地に大規模太陽光発電所(メガソーラー)を建設、その電力で2012年秋に国内最大級の水耕栽培・食品加工の事業を始める検討に入った。年内にも運営会社を設立する。仙台市は31日に震災復興計画の素案を発表、自然エネルギーを活用する『エコタウン』をつくる考えを示した。新事業はこの計画の一つの核になる見通し。民間企業主導による農業再生、地域復興が動き出す。」(『日本経済新聞』2011.09.01)
●「野田佳彦首相は3日、新内閣の経済財政運営の目玉として首相直轄の『国家戦略会議(仮称)』を新設する方針を固めた。野田首相を議長に、関係閣僚、日銀、経済界、労働界などの首脳らがそろって参加。経済財政運営の司令塔となり、予算編成や税制改正、社会保障改革など日本が抱える重要課題で基本方針を示す。小泉内閣時代の経済財政諮問会議をモデルに政官民が知恵を集めて日本経済を再生する体制をめざす。」(『日本経済新聞』2011.09.04)
●「横浜建設業協会など横浜市内の建設関連5団体は1日、横浜市に対し公共事業へのPFI導入の廃止を要望した。横浜市は04年度から公共施設の整備などにPFI方式の導入を開始した。導入後、複数の案件に地元建設企業で構成するJVが応募したが、受注はできなかった。参加準備にかかる時間や費用の負担など、地元の中小建設業には不利であることなどが要因と指摘する。地元企業育成の観点からも、建設関連の公共事業には大企業に有利なPFI手法を導入しないよう求めた。」(『建設工業新聞』2011.09.05)
●「東京都国分寺市は、公契約条例の条例案を2011年度中に市議会に上程する。2日に開かれた第3回定例会の一般質問で、同市の内藤達也総務部長が明らかにした。建設工事の適用対象は予定価格9000万円以上とする方針で、作業報酬下限額(最低賃金)は、公共工事設計労務単価に係数を掛けて運用している千葉県野田市などの先行自治体とは異なり、同単価の100%に設定する。次回12月の第4回定例会での上程が見込まれている。」(『建設通信新聞』2011.09.05)
●「国土交通省は、2005年の公共工事品質確保法(品確法)施行から5年が経過したことから、総合評価方式の見直しを検討する。技術提案での競争度合いを高める方式と、技術力を簡易に評価するタイプへの二極化を志向すると見られる。6日に開いた『直轄事業における公共事業の品質確保の促進に関する懇談会』(座長・小澤一雅東大大学院教授)で検討の方向性を提示した。今月下旬にも開く『総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会』で具体的な検討課題などを示す見通しだ。」(『建設通信新聞』2011.09.07)
●「国土交通省は、10年度同省直轄工事の入札への総合評価方式の導入状況(速報値)をまとめた。全体に占める導入割合は、件数ベースで前年度と同じ99.2%。金額ベースでは99.9%となり、07年度から4年連続で99%台を維持した。総合評価の普及拡大に伴い、工事成績評定点の上昇や、技術評価の最高得点者が落札者に占める割合の増加などの導入効果が見られる一方、タイプごとの課題も顕在化してきているという。全国8地方整備局が発注した総合評価方式の導入状況を集計した。件数ベースで見ると、10年度は合計8916件。発注量全体が大きく落ち込んだことから、前年度よりも2000件以上の減少となっている。タイプ別では簡易型が5954件で、全体でのシェアが66.8%と前年度から6.3ポイント高まった。標準型(TとU)が2953件、高度技術提案型が9件だった。金額ベースでは合計1兆0762億円に適用。内訳は簡易型4419億円、標準型6017億円、高度技術提案型326億円。金額ベースでは標準型が全体の55.9%と過半を占めている。」(『建設工業新聞』2011.09.07)
●「全国各地の自治体で、津波に襲われた際に避難場所としてビルを利用できるよう、民間事業者と協定を結ぶ動きが広がっている。東日本大震災では沿岸部のビルに避難した人も多かったが、全国では『津波避難ビル』をまだ指定していない沿岸自治体が約8割にのぼる。自治体財政が厳しさを増す中、民間ビルを避難施設に活用することで地域の防災力を高める。」(『日本経済新聞』2011.09.08)
●「東京都多摩市は、公契約条例制定の基本的な考え方をまとめた。2010年10月に設置した庁内組織の調査検討委員会が事業者に対するアンケートの結果などを踏まえて作成した。建設工事は予定価格5000万円以上を条例の適用範囲とし、労働者の最低賃金を公共工事設計労務単価の90%に設定した。今後はこれをたたき台に学識経験者や労働者団体の外部委員で構成する公契約制度審査委員会で罰則規定などを含め、具体的な運用方法などを審議する。条例案は10月中旬にまとめる予定で、12月の第4回市議会定例会に提出する。12年4月からの施行を目指している。」(『建設通信新聞』2011.09.08)
●「国土交通省は、地方自治体が保有する公共施設やインフラの維持更新を支援する一環で、更新投資を平準化・効率化する方策の検討に着手する。将来の更新費用の実態を把握するため、総務省と共同で全市区町村を対象にしたアンケートを進めており、調査結果を基に自治体の規模や特性などを考慮してモデル自治体を選定。更新需要や財政への影響などを詳細に分析した上で、年末をめどに対応策の方向性を固めたい考えだ。」(『建設工業新聞』2011.09.08)
●「宮城県は、災害廃棄物処理業務(石巻ブロック)の委託契約締結案件を2011年度9月県議会に提出する。契約予定者は鹿島・清水建設・西松建設・佐藤工業・飛島建設・竹中土木・若築建設・橋本店・遠藤興業JVで、委託予定金額は1923億6000万円。工期は2014年3月25日まで。 参考業務規模は2289億6010万9000円に設定していた。」(『建設通信新聞』2011.09.08)
●「東日本大震災の被災市町村で復興計画の策定が遅れている。震災から半年たつが、岩手、宮城、福島3県で被害の大きかった沿岸部の31市町村のうち策定済みは4市町とわずか1割強。国の財政支援の詳細が定まらないことや、住宅の集団移転を巡る住民との合意形成などに時間がかかっていることが要因だ。」(『日本経済新聞』2011.09.09)
●「野田新内閣で初入閣した前田武志国土交通相は11年度第3次補正予算について、東日本大震災からの本格的な復旧・復興対策に加え、全国の防災機能を高めるのに必要な経費を盛り込む考えを表明した。今後の建設産業政策については、地域建設業の役割と重要性を強調した上で、『トータルで(公共事業)予算が多くなければ産業が成り立たないという考え方は間違っている』と指摘。地域の建設業は地域に即した事業に参加し、『知恵と技術でフィーを取ってほしい』との認識を示した。」(『建設工業新聞』2011.09.09)
●「東日本大震災からの本格復興を目指す2011年度第3次補正予算案が10兆円規模となる見通しとなった。このうち自治体に回す復興交付金など復旧・復興費や、円高対策が7兆〜8兆円を占め、基礎年金の国庫負担の穴埋め分が2.5兆円になるもようだ。財務省は9日、各省の要求を締め切り、与党の要望を取り入れ、財源をにらみながら最終的な金額を詰める。予算規模は増税や政府保有株の売却論議にも左右されそうだ。」(『日本経済新聞』2011.09.10)
●「東日本大震災で甚大な被害を受けた各港湾施設が、本格的な復旧・復興に向けて動きだした。被災した各港湾ごとに設置された復旧・復興協議会は、それぞれの港湾の復旧・復興方針などを盛り込んだ『産業・物流復興プラン』を8月中に作成。各地域の産業復興に合わせながら、おおむね2年以内をめどに港湾施設の復旧を順次進めていく方針だ。災害査定も徐々に進んできており、地域の物流拠点となる被災港湾の復旧・復興が今後活発化しそうだ。」(『建設工業新聞』2011.09.13)
●「今月初めの台風12号による記録的豪雨で紀伊半島を中心に甚大な土砂災害が発生したのを受け、土砂災害危険個所を抱える全国の自治体で今後、土砂災害対策の取り組みが強まりそうだ。ただ、国の予算のうち災害予防や国土保全などに関連する予算を合わせた総額は01年度の約3兆円から11年度には約1.1兆円とこの10年でほぼ3分の1に激減しているのが現状。地方は土砂災害などの災害対策予算の多くを国からの交付金に依存しており、対策を講じようにも予算がないといった事態も想定される。」(『建設工業新聞』2011.09.14)

労働・福祉

●大震災とアスベスト(石綿)対策を考えるシンポジウムが3日、東京都内で開かれ、約100人が参加した。主催は働くもののいのちと健康を守る全国センター。記念講演した森裕之・立命館大学教授は、阪神・淡路大震災で2人の解体作業者が中皮腫で死亡していると指摘。森氏は▽アスベスト対策を吹き付けアスベストに限定したこと▽「にわか解体業者」が横行し、飛散させない技術などが未熟だった▽住民やボランティアによる解体撤去の把握、対策の周知がされず、防じんマスクの着用が不十分だった―などの当時の対策の問題点を列挙し、今回の東日本大震災の被災地も同様に、非飛散性のアスベスト含有廃棄物対策や、建物の設計図に基づいた調査やアスベストの除去・封じ込めはなされていないと話した。森氏は、災害廃棄物の処理指針をアスベストにも適用すれば、処理コストを国が負担することで、被害が防止できると話した。また、「国や県は通知を出すだけで業務の完了との認識だ。最大の問題はアスベスト含有建材の有無の判断など、被災地の市町村がアスベスト問題を理解していないことだ」と述べた。(『しんぶん赤旗』2011.09.04より抜粋。)
●「東日本大震災後の本格復旧・復興工事へ向けた、労働災害防止対策に対する意識が、行政、建設業界で改めて高まっている。震災直後から大きな課題だった、震災がれきの仮置き場への撤去がほぼ完了し、今後はがれきの本格的処理と住宅・ビルの解体・撤去が地域によっては同時進行で集中的に行われることで、労災発生の可能性がこれまで以上に増えることが理由。さらに被災地支援として進める現地雇用によって、建設工事未経験就労者が拡大することも背景にある。厚生労働省は8月末、9月以降に住宅やビルの解体・撤去作業が集中的に行われることを踏まえ、建築物などの解体作業に伴う具体的な労災防止対策を、都道府県労働局や関係団体あてに通知した。解体する建築物に倒壊の恐れがあるほか、緩んだ地盤での作業で重機倒壊の可能性があることや、近接作業や建物所有者立ち会いによる作業で工事関係者以外の被災者が災害に巻き込まれる可能性があるなど、通常の解体工事と違って震災特有の問題を抱えた作業を強いられることがあるためだ。被災地で集中した、がれきの仮置き場搬入作業から、解体工事や、がれきの本格処理など同一地区で複数の工事が集中することへの懸念は、建設業界でも広がっている。労災事故は、事業者責任が厳しく問われペナルティーの内容次第では、希望する案件の応札断念に追い込まれる可能性が、建設業界の対応をより慎重にさせる。」(『建設通信新聞』2011.09.07)
●「厚生労働省は東日本大震災の被災地での労働災害発生状況をまとめた。7月31日までに発生した死亡・休業4日以上の災害は274件あり、死亡者は13人だった。業種別では建設業が202件と74%を占め、死亡者は10人だった。建設業の災害のうち95件は『墜落・転落』事故だった。建設業の労災の工種別内訳は土木42件、建築127件、その他33件。死亡者数は土木2人、建築7人、その他1人。事故類型別の件数は墜落・転落95、転倒13、激突9、飛来・落下16、激突されほ、挟まれ・巻き込まれ16、切れ・こすれ14、その他24。死亡者数は墜落・転落が6人、飛来・落下、挟まれ・巻き込まれ、切れ・こすれ、その他が各l人だった。事故に遭った人のうち経験期間6カ月以下の人は20人で、中でも3カ月未満の人が16人いたという。」(『建設工業新聞』2011.09.07)
●失業保険の受給を7月に延長した人が岩手、宮城、福島の3県で計6129人となり、昨年同月の2.7倍に増えたことがわかった。増加分の大半が東日本大震災で職を失った被災者とみられる。求職者の数も高止まりしており、被災地の雇用環境は、秋以降も厳しい見通しだ。岩手、宮城、福島の各労働局によると、失業保険を延長した人は1年以上減少傾向が続いたが、6月から大幅に増加。7月は岩手1269人(昨年同月の2.2倍)、宮城1910人(同3.4倍)、福島2950人(同2.5倍)だった。失業保険の受給者が4月に激増した上、給付日数は最も短い人で90日のため、各労働局は「6月以降の増加は震災で失業か休業した人」と分析。受給開始日や日数は人により異なる上、再延長の特例もあり、大幅な増加が続くと見込んでいる。(『しんぶん赤旗』2011.09.07より抜粋。)
●ことしの最低賃金改定額を審議していた都道府県最低賃金審議会の答申が、12日までに出そろった。改定額の平均は、737円。昨年度を7円上回った。最も少ない金額は645円(岩手、高知、沖縄の3県)、高いのが837円(東京都)。アップ額では、1円が東日本大震災の被災地の岩手、宮城など10県。10円以上は、神奈川県18円、東京都16円、北海道14円の3都道県にとどまった。(『しんぶん赤旗』2011.09.15より抜粋。)

建設産業・経営

●「大林組は、地表面に対する放射性物質のモニタリング事業を始める。米国のAMEC Environment and Infrastructure社が開発した放射線モニタリング技術『オリオン・スキャンプロット』を日本国内で適用するために、共同で検討する契約を結んだ。10月から福島県内で実証実験する準備を進めている。民間企業や病院などで放射性物質を含む土壌の除染作業の前後などで活用する。」(『建設通信新聞』2011.09.01)
●「清水建設は、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に役立つ技術を駆使した海外事業の展開を加速する。このほど地球環境センター(GEC)から、モンゴルのビルへの地中熱利用型ヒートポンプの導入と、インドネシアでの地下水制御による農業生産性の向上事業についての実現可能性調査(FS)を受託。インドネシアでは、パームオイル工場を対象とした新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるFS調査の委託先に採択された。CO2削減は、排出権確保や工事受注につながるとみており、事業展開に向けたノウハウの収集に力を入れる。」(『建設工業新聞』2011.09.01)
●「東日本大震災の地震や津波によって発生した大量の災害廃棄物の処理に向け、ゼネコン各社による作業の準備や、関連技術の提案活動が活発化している。オンサイト型プラントの稼働計画の立案に入った社があるほか、土壌洗浄や、津波が到達して海水をかぶった農地の塩害対策技術、最終処分場などの提案に力を入れる社が目立つ。洗浄した土壌を沿岸部や市街地の整備に有効利用する提案をはじめ、独白の復興案を提唱する動きも強まっており、被災地の早期復旧・復興に役立つ得意技術、サービスの提供が加速している」(『建設工業新聞』2011.09.01)
●「工務店サポートセンターと全国建設労働組合総連合は1日、災害時の復旧・復興や応急仮設木造住宅建設などを目的に『一般社団法人全国木造建設事業協会(全木協)』を設立した。理事長に就任した青木工務店サポートセンター理事長(全建総連会長)は『各都道府県との災害協定締結を通じて、われわれを認知してもらえるよう活動していく』とあいさつした。各都道府県と災害協定を結び、大規模災害後、地域の大工、工務店による速やかな応急仮設木造住宅の供給を目指すとともに、この事業を通じた森林・林業の活性化も図り、大工や工務店の業務・技術の支援、後継者・人材の育成と業務に関する研修・講習、大工技能に向上に関する事業も展開する。」(『建設通信新聞』2011.09.02)
●「東日本、中日本、西日本、首都、阪神の高速道路5社は1日付で、海外事業をオールジャパンで推進する新会社『日本高速道路インターナショナル』(略称・JEXWAY=ジェックスウェイ)を設立した。社長には、中日本高速道路会社の関連事業本部副本部長兼海外事業部長を務めていた黒田孝次氏が就任。新会社設立は各社が持つ知識・ノウハウの共有、日本側窓口の一本化、スケールメリットを生かした事業展開が大きな狙い。調査・計画から設計、建設、管理・運営までのトータルソリューションを相手国に提供する。ビジネス領域としてはPPPなどの道路投資事業のほか、コンサルティングやアドバイザリー業務も手掛ける方針だ。当面のターゲット国には、『熟度が高いべトナムとフィリピン』を挙げる。インドネシアやインドなども含め、『7、8年後ごろには、海外道路事業への投資額は100億円規模になるのではないか』と見据える。また、ベトナムで存在感を増す韓国などの先進他国については、『必ずしもライバルとしてではなく、一緒になってできることがあるかもしれない』と柔軟な姿勢を示す。」(『建設通信新聞』2011.09.05)
●「三井不動産や高島屋、住友不動産などは東京・日本橋地区で大規模再開発に乗り出す。国の重要文化財に指定されている高島屋東京店を囲む形で29〜36階建ての超高層ビルを3棟建て、オフィスや商業施設として2014〜18年度の完成を目指す。総事業費は1500億円規模で、日本橋地区では最大級の再開発になる。」(『日本経済新聞』2011.09.07)
●「積水ハウスが8日発表した2011年2〜7月期連絡決算は、純利益が前年同期比24%増の168億円だった。太陽光発電パネルや制震システムを取り入れた付加価値の高い戸建て住宅の販売が好調。1戸当たりの販売単価が上昇し採算が高まった。東日本大震災の影響で特別損失12億円が発生したものの、吸収した。売上高は1%増の7463億円だった。金利優遇策『フラット35』や住宅版エコポイント制度など政府の住宅購入支援策が追い風になり、主力の戸建て住宅の売上高は2278億円と1%増加。戸建て住宅の1戸あたりの平均販売価格は『3250万円程度と、前年同期から約80万円増えた』(阿部俊則社長)という。一方、低調だった分譲住宅やマンション事業は、リーマン・ショック前に仕入れた割高な開発用地の在庫圧縮に注力したため、売り出し物件数が減少。両事業とも2ケタの減収だったが、商業施設『台場ガーデンシティ』の売却などで補った。」(『日本経済新聞』2011.09.09)
●「東京商工リサーチがまとめた2011年6月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比7.2%増の340件となり、2カ月連続で前年同月を上回り、最近1年間で最も多かった。都道府県別では14都道府県で前年同月を上回った。地区別では北海道が前年同月の9件から13件、関東が98件から104件、北陸が7件から11件、近畿が88件から103件、四国が14件から16件と増加した。負債総額は13.7%減の410億8500万円となった。負債1億円未満の小規模倒産が17.2%増の231件と全体の76.9%を占めた。平均負債額は20.0%減の1億2000万円にとどまった。」(『建設通信新聞』2011.09.09)
●「国士交通省の建設工事受注動態統計調査報告(速報)によると、7日の元請受注高は前年同月比3.4%増の2兆5000億円と5カ月ぶりに上向いた。日本建設業連合会が旧日本建設業団体連合会の会員企業48社を対象に調査した受注総額も10.6%増の6380億円と4カ月連続で前年同月を上回ったが、主要前払保証3社がまとめた公共工事前払金保証統計の請負金額は15.9%減の9597億円と5カ月連続で落ち込んだ。」(『建設通信新聞』2011.09.09)
●「建設産業専門団体連合会(建専連、才賀清二郎会長)は、下請建設業者の資金繰りを支援する国土交通省の『下請債権保全支援事業』が来年3月末で期限切れになることから、前田武志国交相に対し、12年度以降も同事業を継続するよう求める要望書を9日付で提出した。要望書では、中小・中堅下請建設会社の経営環境は依然厳しいとして同事業の積極的な継続を求めている。」(『建設工業新聞』2011.09.13)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、各地域の工務店が地場産材を使って建設する『地域型住宅』(仮称)の生産体制を、全国で整備・強化していく方針を固めた。林野庁と連携し、原木供給から施工までの地域での木造住宅生産システムを構築。信頼性の高い生産体制によって、適正価格での住宅供給、地域経済活性化、国産木材自給率向上などを目指す。同時に、災害発生後の応急仮設住宅等の準備システムとしての役割も狙う。」(『日本住宅新聞』2011.09.05)
●福島県南相馬市で東日本大震災による津波被害をうけた地域の農地保有者の55%が、離農を考えている―。市の復興計画を策定するために同市が6月に行った「市民意向調査」の結果がこのほどまとまった。5000世帯にアンケート用紙を郵送し、3017世帯から回答 があった。「今後の農地の使用希望」の質問に「農地として使用しないため、手放したい」が44%、「農地でなく他の利用を考えたい」が11%と計55%の農家が離農を考えていた。このほか、「安全を確認して再開したい」10%、「代わりの農地を別な地域に求めたい」7%、「農地の集約化などにより経営努力をして再開したい」4%、「放射性物質の除染や塩分の除去を行って復旧したい」16%―などとなっている。また、649世帯の津波被害がなかった世帯でも、13%が「手放したい」、7%が「他の利用を考えている」と回答。原発事故の放射能被害で立ち入り制限されている20キロ圏内の小高区では、26%が「農地として使わない」と答えている。(『しんぶん赤旗』2011.09.14より抜粋。)
●日本自然保護協会は14日、都内で記者会見し、沖縄県沖縄市沿岸で埋め立てが計画されている泡瀬干潟の生物や環境についての調査結果をもとに、計画の中止を求めた。泡瀬干潟は、新種の海草や貝が見つかるなど貴重な生物の生息地だ。国、沖縄県は、ここにリゾートホテルなどを造るとして、埋め立てを計画。2000年の環境アセスメントでは、埋め立てによる干潟の生物などへの影響は十分小さいとして、埋め立てに先立って2006年から護岸工事を開始した。ところが、同協会が2003年から継続している調査で、工事開始後、埋め立て予定地やその周辺にあたる海域で、海草藻場が激減し、砂州の形が変わる、サンゴの死滅などの変化が明らかになった。沖縄県の住民は埋め立てへの公金支出差し止めを求める訴訟を起こし、09年には福岡高裁那覇支部が「経済的な合理性がない」と、訴えを認めたため、工事は中断。しかし、国と県は今年、埋め立て面積を185ヘクタールから95ヘクタールに縮小し、スポーツ施設などを造るとして、埋め立て計画の変更許可を県に申請し、7月に認められた。(『しんぶん赤旗』2011.09.15より抜粋。)

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