情勢の特徴 - 2011年9月後半
●「米国など9カ国が拡大交渉を進める環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を巡り、政府が再び動き出した。21日の日米首脳会談をにらみ、枝野幸男経済産業相はルース駐日米大使と会談し、早期判断を約束。農林水産省も農業の大規模化などTPP交渉に向けた環境整備を急ぐ。」(『日本経済新聞』2011.09.17)
●「政府は20日、2012年度当初予算の概算要求基準を閣議決定した。各府省庁は、11年度当初予算から裁量的経費や公共事業関係費などを10%削減した額を要求枠とする。削減した10%分の1.5倍を特別枠として要望できる。このため、各省は11年度比5%増までの額を要求可能だ。特別枠の要望の中から『日本再生重点化措置』約7000億円に充てる予算を政府・与党会議などで検討する。重点化する対象は、インフラ整備などを含む『新しいフロンティア、新成長戦略』など4分野とした。9月末に各省庁が概算要求を提出する。震災からの復旧・復興関係経費は、概算要求とは別枠での要求となる。」(『建設通信新聞』2011.09.21)
●「政府・民主党は27日夜、東日本大震災からの復興財源に充てる臨時増税の規模について、当初案の11.2兆円から9.2兆円へ圧縮を目指す方針を決めた。政府保有株の売却益などで追加の税外収入2兆円を見込む。増税するのは所得税、法人税、個人住民税、たばこ税。野党との事前協議を経たうえで、10月下旬の次期臨時国会に、復興策を盛る2011年度3次補正予算案や関連法案を提出したい考えだ。」(『日本経済新聞』2011.09.28)
●「三菱商事は官民ファンドの産業革新機構や日揮などと組み、オーストラリア西部で上水道運営に乗り出す。州政府から施設建設や維持管理を一括受注した。総事業費は約1000億円で、日本勢による海外水事業の受注額では過去最大級となる。3社が昨年買収した豪州の水道事業会社のノウハウと日本の技術・信用力を生かし、水事業を世界展開する欧州企業に競り勝った。今後日本企業のインフラ輸出に弾みがつく可能性もある。」(『日本経済新聞』2011.09.30)
●「国土交通省は、2011年度第3次補正予算で総額1兆2030億円(事業費ベース)を要求する予定だ。内閣府が要求する東日本大震災復興交付金(仮称)の同省分は1兆3380億円で、合わせて2兆5410億円の要求となる。同省要求額のうち、被災地の復旧には4010億円、復興に4530億円、全国防災に3490億円を充てる。28日の民主党国土交通部門会議に調整中の額として提示した。復旧では、道路、河川、海岸、港湾、有料道路、空港、航路標識、鉄道の災害復旧事業に3910億円を充て、官庁施設の復旧などには20億円を計上する。復興では、被災者の住宅確保などのため2500億円を充てる。このうち、高齢者の居住安定確保は100億円となった。道路の復興として、三陸縦貫道などの復興道路・復興支援道路の整備と東北地方の高速道路無料開放を合わせて1180億円を充てる。道路の防災・震災対策などは120億円、河川・港湾の津波対策と土砂災害対策は280億円、公共施設の耐震化対策などは20億円、社会資本整備総合交付金による地方自治体の防災対策事業は280億円をそれぞれ予定している。地域公共交通支援は20億円、津波・地震などの観測・監視体制の整備は60億円などとした。」(『建設通信新聞』2011.09.30)
●「仙台市が策定する震災復興計画の中間案の全容が15日、明らかになった。津波被害を受けた沿岸部に復興特区を創設し防災・環境関連の企業や研究機関の集積地をつくるなど10の重点事業を盛り込んだ。16日に開く仙台市復興検討会議で発表する。有識者や市民から意見を募り、10月末の復興計画策定を目指す。」(『日本経済新聞』2011.09.16)
●「国土交通省は15日、全国14カ所の直轄駐車場の管理運営の民営化に向け、PFI事業の実施方針を公表した。民間が設立する特別目的会社(SPC)が12年10月から25年9月末まで維持管理・運営業務を担う。実施方針に関する民間事業者からの質問・意見を30日まで受け付ける。事業者の募集要項を来月にも公表し、12年3月ごろに優先交渉権者を選定。同年4月に基本協定、6月以降に事業協定を結ぶ。」(『建設工業新聞』2011.09.16)
●「国土交通省など東日本大震災で発生した災害廃棄物の関係各省と被災自治体は、コンクリートがらなどのがれきをほかの工事で再利用するための体制を10月までに構築する。すでに宮城県と岩手県で自治体と関係省による連絡会を開催し、発生量と必要量の情報を交換することで合意している。」(『建設通信新聞』2011.09.16)
●「大規模公共施設の設置を住民投票で決める制度の導入など地方自治法改正に向け、政府の第30次地方制度調査会専門小委員会で具体的な議論が始まっている。総務省は、制度の対象を限定し、自治体が制度の導入を選択できる仕組みを示し、導入すれば『地方自治体の意志決定を拘束するもの』とした。これに対して地方自治体の首長からは慎重意見が出ている。今後の公共事業に大きな影響を与える可能性がある制度で同小委会での議論に注目が集まりそうだ。」(『建設通信新聞』2011.09.21)
●「政府は東日本大震災の被災地で学校や病院など公共施設の再建を急ぐため、地方自治体による公有地の土地信託を解禁する検討に入った。公共施設の建設を目的にした土地信託を禁じている総務省の規制を緩和する。規制の緩和により民間資金を呼び込みやすくし、公共施設復旧にかかる自治体の初期負担を軽減。スピード感ある被災地復興を後押しする狙いだ。」(『日本経済新聞』2011.09.22)
●「国土交通省は、26日に開いた『総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会』(座長・小澤一雅東大大学院教授)に総合評価方式の抜本的な見直しに向けた検討方針を提示した。現行の高度技術提案型や標準型T型、標準型U型、簡易型の4方式を、施工能力評価型と技術提案評価型、高度技術提案評価型の3方式に大別する。T、U型二つのタイプを使い分けている標準型は施工能力評価型と技術提案型に振り分ける方向だ。12月に開催予定の次回会合で改善案をまとめる。」(『建設工業新聞』2011.09.27)
●「東京都は27日、都市開発プロジェクトの加速が見込まれる都心エリアなどを対象に、国の国際戦略総合特区と特定都市再生緊急整備地域の指定申請を行った。指定されれば大幅な税制優遇や都市開発の手続きの短縮化、規制緩和などが受けられる。いずれも早ければ12月にも指定される見通し。都では国際戦略総合特区のうち、アジア地域の業務・研究開発拠点に50社、同地域以外に500社以上の海外企業を5年間で誘致したい考えだ。」(『建設工業新聞』2011.09.28)
●「東京都世田谷区は27日、『世田谷区公契約のあり方検討委員会』(会長・塚本一郎明治大学経営学部教授)を設置した。公共工事などの労働者の最低賃金を条例で定める公契約条例制定の是非を含め、幅広い観点から入札・契約制度全般の改革に向けた検討を進めていく。」(『建設通信新聞』2011.09.28)
●「厚生労働省は16日、東日本大震災で被災した失業者について、雇用保険の失業給付期間を一部再延長する方針を固めた。震災の被災者には特例で4カ月、通常よりも給付期間を延ばしているが、10月以降、順次期限切れを迎えるのに対応する。再延長の期間は90日を軸に調整し、対象地域は震災被害の大きい被災地の沿岸部に限定する方向で検討する。」(『日本経済新聞』2011.09.16)
●「東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県で職を失った人たちが、建設業で働く場合に必要な技術や技能を習得しようとする動きが広がっている。今後、各地で復旧・復興工事が本格化していくと、不足する建設労働者を雇用する企業も大幅に増える見通しで、失職者の多くが復興需要を期待し、国や地方自治体が創設した建設機械の運転などの職業訓練コースを利用して技能習得を目指している。受講を希望する人の数が国や自治体が想定していた数字を上回り、講習コースを増設して対応している状況だ。」(『建設工業新聞』2011.09.16)
●「国土交通省は、8月の建設労働需給調査をまとめた。主要6職種の平均過不足率は3.1%(プラス数値が大きいほど技能労働者が不足)で、前月より0.7ポイント不足状態が拡大している。7、8月と連続の拡大で、夏場を向かえ不足感が急速に広がった。特に、建築と土木の鉄筋工で不足感が強い。」(『建設通信新聞』2011.09.28)
●「国土交通省が建設産業戦略として6月に打ち出した.『建設産業の再生と発展のための方策2011』の目玉政策の一つである、『保険未加入企業の排除』をスムーズに進めるためのアイデアとして、『法定福利費の別枠明示』が急浮上している。27日、全国建設労働組合総連合(全建総連)の東京都連合会は、組合員が参加した会合で、『建設産業の再生に向けた15の提言』を公表した。提言に盛り込まれた、法定福利費の別枠明示は韓国で導入され、建設産業専門団体連合会の才賀清二郎会長も賛成している。事実上、専門工事の経営者団体と労働者組合が、保険未加入問題解決の出口戦略で共同歩調をとった形だ。」(『建設通信新聞』2011.09.29)
●「福島県内で秋以降、土地、建物、道路などを含めた放射性物質の除染作業が本格的に始まるのを控え、作業を担う民間の業者らが準備に奔走している。除染効果の高い作業法や放射性廃乗物の管理などを学ぶ勉強会を開催したほか、作業を共同で受注する組合も発足した。計画を進める立場の自治体も、専門知識を持った人材の養成などを通じて民間の動きを後押しする。」(『日本経済新聞』2011.09.17)
●「大和ハウス工業は26日、屋根に置いた太陽光発電設備で作り出したエネルギーを一部住戸に戸別供給する分譲マンションを建設すると発表した。供給を受けた部屋の年間光熱費は1992年の省エネ基準で建てたマンションより65%削減可能。戸建て住宅が主流だった太陽光発電住宅がマンションにも広がってきた。」(『日本経済新聞』2011.09.27)
●「大林組はニュージーランドの大規模道路プロジェクトで発注者との優先交渉権を獲得したと発表した。現地企業などとの6社JVで応札、JV総額は11億2700万ニュージーランドドル(約737億円)で、このうち同社分は約170億円。大林組にとってニュージーランドで初の大規模工事となる。海外事業強化に向けた重点地域の一つとしてオセアニアを掲げており、今回の実績を生かし、受注拡大を目指す。」(『建設通信新聞』2011.09.29)
●「東日本大震災の影響で住宅リフォーム市場にも変化が出ている。(株)富士経済の市場調査によると、『創エネリフォーム市場が拡大している』と指摘。2014年度には創エネリフォーム市場が10年度比148.2%増との予測を打ち出した。これまでの住宅の省エネリフォームは断熱性能の向上等も含めて『いかにエネルギー消費を抑えるか』が主眼だったが、創エネ市場拡大の背景には『いざという時のため』という新たなファクターが存在している。地域工務店には、従来の性能向上リフォームに、いかに『創エネ』という新たなニーズを加えていくかが求められる。」(『日本住宅新聞』2011.09.15)
●「東日本大震災の被災地支援の名目で住宅エコポイントが復活する。国土交通省は、震災からの復興を目指す本年度第3次補正予算案に、復活住宅エコポイント制度″を盛り込んだ。住宅の新築についてはこれまでの制度の半分の15万ポイント発行を基本とするが、3次補正予算は被災地支援を目的としていることから、被災地での住宅の新築には優遇策として30万ポイントを発行する。前田武志国交相は『被災地域の復興とその地帯の住宅・建築物のゼロ・エネルギー化に向けて、3次補正予算でも芽を出させよう』という狙いで、『低炭素循環型社会、持続可能なまちづくり、地域づくりのスタートをここできりたい』としている。」(『日本住宅新聞』2011.09.25)
●世界の失業者は1929年から33年にかけて起きた大恐慌時に匹敵する2億人に達しており、主要20カ国・地域(G20)では、2008年の金融危機発生後、2000万人が失業し、もし現在の雇用情勢が続けば12年までにさらに2000万人が職を失う―。国際労働機関(ILO)と経済協力開発機構(OECD)は26日発表した世界の労働市場に関する報告でこう警告した。同報告は、26、27の両日フランスで開かれたG20労働相会議に合わせて公開されたもの。長期失業、若者の失業、非正規雇用が増大する傾向がある中、現在の雇用危機が社会階層のもっとも脆弱な部分を直撃していると指摘している。(『しんぶん赤旗』2011.09.28より抜粋。)
●「ユーロ圏の景況感悪化が止まらない。欧州連合(EU)の欧州委員会が29日発表した9月の景況感指数は、7カ月連続で前月比マイナスとなった。指数の水準は2009年12月以来、1年9カ月ぶりの低さだ。ギリシャなどの債務危機が実体経済を下押ししている格好で、7〜9月期のユーロ圏経済は低調に推移した公算が大きい。」(『日本経済新聞』2011.09.30)