情勢の特徴 - 2012年1月前半
●「政府・与党は6日午前、首相官邸で社会保障改革本部(本部長・野田佳彦首相)の会合を開き、消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げることを柱とする社会保障・税一体改革の素案を正式決定した。与党は素案をもとに10日にも野党に協議を呼びかける方針だが、自民党は衆院解散・総選挙を求めて対決姿勢を強めており、関連法案成立までの道筋は描けていない。」(『日本経済新聞』2012.01.06)
●東日本大震災による直接、間接の影響を受けて倒産した企業が2011年末までの累計で510件に達した。1995年に発生した阪神・淡路大震災時に比べ約3倍のペースで増加している。民間信用調査会社、帝国データバンクの調査で分かった。業種別では建設業が91件と多発したほか機械・金属製造が44件、ホテル42件などが続いた。都道府県別では東京都の106件が最多で、北海道35件、埼玉県32件、福島県29件、大阪府25件、福岡県24件の順となっている。同社は「大震災による影響に加え、長引く円高や家計・消費の停滞など企業を取り巻く外部環境が厳しさを増している」と指摘。今後も倒産に追い込まれるケースが相次ぎ、震災から1年間の累計は600件前後まで膨らむとの見通しを示している。(『しんぶん赤旗』2012.01.12より抜粋。)
●「原則関税ゼロを掲げる環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を控え、政府は月内にも米国などとの事前協議を始める。米政府は日本の交渉参加を認める前提として、自動車、農業、保険分野の市場開放を求める構え。一方、政府はオーストラリア、マレーシア、シンガポールにも近く協議チームを派遣する。TPP交渉への参加を巡る各国との折衝がいよいよ本格化する。」(『日本経済新聞』2012.01.13)
●「前田武志国土交通相は、日刊建設工業新聞など建設専門紙各社の新年インタビューに応じ、今年の国土交通政策の重点方針を語った。この中で前田国交相は、昨年11月に運用準則ができた『地域維持型JV』を活用して地域建設業を維持し、災害に強い国づくりに取り組む考えを表明。日本の優れたインフラ技術の輸出と、民間の知恵と資金を生かした国内インフラの整備加速にも意欲を示した。東日本大震災からの復興ではゼロエネルギー住宅などの環境モデル事業を積極展開し、『持続可能で活力ある地域づくりを展開する』と意気込みを語った。」(『建設工業新聞』2012.01.05)
●「1962(昭和37)年に東京の京橋〜芝浦間で初の営業路線4.5キロが開通した首都高速道路。総延長が300キロを超え、都心環状線など開通から既に40年以上が経過した路線が約90キロと3割近くに上る。老朽化した橋脚・橋桁の疲労亀裂などの損傷も増加傾向にあり、大規模更新の必要性も指摘され始めた。首都高速道路会社はこうした状況を踏まえ、有識者による『首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会(仮称)』を設置。長期にわたり道路を安全に管理する方策の検討に乗りだす。」(『建設工業新聞』2012.01.10)
●「11年度第3次補正予算で、東北地方整備局に1569億円が配分された。目玉となるのは、命の道として評価された三陸沿岸道路など復興道路・復興支援道路未着手区間224キロの新規事業化だ。東日本大震災で被災した河川、海岸、道路、港湾の復旧は災害申請手続き中だったことから、その多くが11月21日の成立時に発表した予算資料に含まれていないが、釜石港や大船渡港の湾口防波堤の復旧にも着手する。東北整備局の3次補正予算はトータルで3000億円規模になる見通しだ。1569億円の内訳は、直轄1279億円、補助290億円(うち社会資本整備総合交付金269億円)。事業別にみると、復興道路・復興支援道路の緊急整備に930億円、道路の防災・震災対策等に183億円、河川津波対策等に55億円、被災地港湾での防波堤等整備に42億円、大規模災害に備えた河川管理施設の機能確保等に10億円を計上。」(『建設工業新聞』2012.01.12)
●「東日本大震災の発生から約10カ月が経過し、海沿いを中心に壊滅的な被害を受けた岩手、宮城、福島3県の復興の方向性がほぼ固まった。昨秋までに復興計画を策定した若手・宮城両県は沿岸の津波対策を重視。地域性を勘案し高台移転や堤防による多重防御を進め、災害に強いまちを構築する。地震・津波被害に加え原発事故の処理が重くのしかかる福島県も昨年12月に復興計画(第1次)を策定。原発依存からの脱却を前面に打ち出し、医療やエネルギー分野などを産業再生のけん引役に据える戦略を描く。」(『建設工業新聞』2012.01.12)
●「東京都は、木造住宅密集地域の解消策として、特定の区域で建て替え時の所有者負担を減らす制度を創設する。対策を先行する地域を指定し、税制優遇や助成金の上乗せを実施。転居する場合には都有地を用意する。来年度に3地区程度を選定してモデル事業に乗りだす。13年度からの本格運用を目指す。」(『建設工業新聞』2012.01.13)
●中小企業労働者3500万人が加入する協会けんぽ(旧政府管掌健康保険)の全国平均保険料率が4月納付分から上がる。現行の9.5%(労使折半)から10.0%にアップ、平均的な年収(375万円)の人で本人負担分が年間9400円も増える。(『しんぶん赤旗』2012.01.06より抜粋。)
●「政府は厚生年金・企業健保の加入条件を週30時間以上労働から20時間以上に緩め、約400万人のパート労働者を国民年金・国民健康保険から厚生年金・企業健保に移す目標を掲げている。一体改革関連法案に盛り込む方向で、2015年度までの実現を目指している。」(『日本経済新聞』2012.01.11)
●東日本大震災と東京電力福島原発事故で甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島の被災3県で、特例措置として延長されてきた失業手当について、給付期間が最も短い人の支給が12日、期限切れを迎えた。厚生労働省によると、2月末までに最大で約4000人の給付が切れる。失業手当は雇用保険への加入期間や離職理由、年齢に応じて給付日数(90〜330日間)が決まり、在職時の給与の5〜8割を受け取ることができる。震災の特例で延長期間を120日へ拡大し、さらに被災3県の沿岸部や原発事故の影響が大きかった地域は90日間再延長したが、小宮山洋子厚労相は昨年11月、「今後は就労支援の方に切り替えていきたい」と表明し、その後の延長策を中止した。厚労省によると、昨年11月末時点の失業手当受給者は被災3県で計5万8134人で、前年比1.8倍に上っていた。被災者の生活再建の土台になる雇用が依然として深刻ななか、失業手当の支給が終了した人にたいする具体的支援策が政府に求められる。(『しんぶん赤旗』2012.01.13より抜粋。)
●建設現場でのアスベスト(石綿)曝露(ばくろ)によって肺がん、中皮腫、石綿肺などの健康被害を受けた神奈川県の建設労働者と被害者の遺族87人が国と建材メーカー44社を相手に損害賠償を求めている訴訟が13日、横浜地裁(江口とし子裁判長)で結審した。判決は、5月25日に言い渡される。裁判は、発がん性など石綿の危険性を知りながら利潤追求を優先しアスベスト含有建材を供給してきた建材メーカーと、その使用を積極的に推進した国の責任を問うもの。この日の意見陳述で、平田岩男原告団長は、裁判の原告患者75人のうち原告団長だった杉山忠雄さんを含め半数が亡くなっていると証言。「子どもたち、将来の若者たちにアスベストの恐怖を残していきたくはない」と訴え、国と企業が責任を認め「被害者救済基金」制度をつくるよう求めた。原告弁護団は、国が規制権限の行使を怠った違法性やアスベスト含有建材を普及・促進してきた事実を指摘するとともに、仕事だけでなく楽しく平穏な日常生活まで奪われている原告らの実態を告発した。国が原告に断りもなく労災申請の際の申立書などを証拠として急に出したことについて、阪田勝彦弁護士は、個人情報の目的外使用であり、却下するよう裁判長に要求。裁判長は証拠として採用しなかった。(『しんぶん赤旗』2012.01.14より抜粋。)
●宮城県気仙沼市の建築関連の中小企業グループ「気仙沼地区住環境復旧復興支援プロジェクト」が、国の中小企業等グループ施設復旧整備補助金の交付を受けることになった。…補助金額は2億1千万円。東日本大震災の津波で店舗、工場などを流失した工務店、左官工事業者などが申請を繰り返し3度目で獲得した。「気仙沼地区住環境復旧復興支援プロジェクト」は、被災した市民の住宅や店舗の早期復旧をめざしてとりくむ地元建築業者と建築関連業者の集まり。参加している業種は建築業のほか、電気工事、建具、板金工事、内装、左官工事業など。…補助金は、プロジェクトに参加する16社のうち店舗、事務所、工場、重機類に被害のでた12社に対して、施設の復旧や整備のために交付される。「再建に必要」と申請した合計額がほぼ認められた。(『しんぶん赤旗』2012.01.04より抜粋。)
●「ゼネコン(総合建設会社)各社が東日本大震災の復興需要をにらみ、東北地方に人材と先端技術を重点投入する。日本の建設市場は2010年度で40兆円強とピーク比でほぼ半減したが、東北では今後3年で17兆円規模の復興需要が生まれる見通し。清水建設など大手は東北の人員を1〜2割増やす。海水が使えるセメントなど新技術を投入し、工期短縮を目指す。」(『日本経済新聞』2012.01.08)
●「国土交通省は、東日本大震災の被災地域で復旧・復興工事を担う下請建設業者や建設機械販売・リース業者への支援を強化する。下請業者が持つ元請向け債権の支払い保証を支援する『下請債権保全支援事業』の期間を12年度末(13年3月末)まで1年延長。支払い保証支援の対象債権に被災地での建機の割賦販売・リース・レンタル債権を追加する。下請や建機業者の資金繰りを助けると同時に、建設業者が工事に必要な機械を円滑に調達できるようにするのが狙い。16日から施行する。」(『建設工業新聞』2012.01.10)
●「国内産業の代表とも言われた建設産業界でも、業界として海外展開のあり方を検討する動きが本格化してきた。鉄骨建設業協会が昨年夏に海外問題特別委員会を立ち上げたほか、日本橋梁建設協会も海外展開を鋼橋業界として取り組むことを目的にした新たな活動の初会合を19日に開く。国内建築物でゼネコンの海外鉄骨調達による国内大手ファブリケーター(鉄骨の加工・組み立て)はずしや、不透明な鋼橋新設市場といった、先行きへの懸念が高まっていることと、政府が海外へのパッケージインフラ輸出拡大を成長戦略の柱に据えていることへの期待が理由だ。」(『建設通信新聞』2012.01.12)
●「鹿島は現地法人を設け、インドの建築市場に進出した。初弾案件としてフォードインディア社の自動車一貫生産工場のプロジェクトを受注、これを足掛かりに事業の拡大を目指す。同社はこれまでインドでは、土木でODA(政府開発援助)のダム工事などの施工実績はあるものの、建築分野での進出は初めて。高い成長率を誇るインドを有望な市場と位置付けており、設計、コンストラクション・マネジメント(CM)業務、工事施工で事業を展開する。」(『建設通信新聞』2012.01.13)
●「政府は老朽化したマンションの建て替えを促すため、区分所有法など関連法制を見直す。専有面積などに比例する『議決権』の5分の4以上の同意を必要とする決議条件を3分の2程度に減らし、建て替えをしやすくすることが柱。共用部分の改修も4分の3以上の同意から2分の1超にする方向。都心などで増える中古マンションの安全性を高めるための投資を後押しする狙い。2013年の通常国会に法案を提出する方針だ。」(『日本経済新聞』2012.01.04)
●「『公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(公共建築物木材利用促進法)』が昨年施行され、地域工務店など木造建築を扱う地方の建設事業者の関心が高まっている。国交省、農水省がこのほど発表した実施状況のまとめによると、木材利用促進に関する方針を策定済みの地方自治体が、35都道府県、81市町村に上ることが分かった。事例としては例えば、高知県梼原町の雲の上のギャラリーは伝統的木材表現をモチーフとしたブリッジ部が特徴で、木材は同町内FSC認証林から搬出している。また、秋田県鹿角市の鹿角市定期市場は、雁木の懐かしい街並みを再現した。国レベルでは13の低層公共建築物を木造で建設する計画が進んでいる。内装の木質化も、参議院事務局や最高裁、法務省、厚労省、防衛省の建物で予定している。国交省も公共建築物の木造化を促進するため、『木造計画・設計基準』を制定した。低層の公共建築物を原則としてすべて木造化する方針は平成22年10月に告示されたが、現実的には住宅が中心で、木造による事務所用途の建築物は官民問わず少ない。そのため、従来の設計手法では公共建築物に適用できない場合が少なくなかったことから、同基準をまとめている」(『日本住宅新聞』2012.01.05)