情勢の特徴 - 2012年3月後半
●「日本の主要製造業が自由貿易協定(FTA)を活用し、海外生産を拡大する。東芝はインドの火力発電用タービン工場の能力を2015年度までに倍増し、東南アジアなどへ輸出する。トヨタ自動車は米国工場から韓国への輸出を始めた。こうした海外工場の第三国向け輸出は10年度で.1888億ドル(約15兆7000億円)と10年間で3倍強になった。関税など貿易の障害を相互に撤廃するFTAの広がりに対応し、最適地からの輸出に切り替えて国際競争力を高める。」(『日本経済新聞』2012.03.18)
●「出光興産、国際石油開発帝石、三菱マテリアルなどは福島県内で国内最大の地熱発電所を建設する方針を固めた。環境省が地熱開発について国立・国定公園内での掘削を条件付きで認める規制緩和を実施するのを受けたもので、新設は1999年以来。2020年ごろの稼働を目指す。発電容量は27万キロワットになる見通しで、原子力発電プラント4分の1基分に相当する。総事業費は1千億円規模になるとみられる。再生可能エネルギーの中でも安定した出力が見込める地熱発電の本格利用が日本でも始まる。」(『日本経済新聞』2012.03.23)
●「環太平洋経済連携協定(TPP)に関する交渉の分野別状況について、関係府省が交渉参加を視野に入れた米国など関係国との協議内容の最新状況をまとめた。建設業界に直接的影響を及ぼすと見られる政府調達では、対象機関を中央政府に集中する形で協議を進めているが、地方政府やその他機関も含めることを目指している国もあることを報告。調達基準額についても一部からさまざまな主張、提案が出されているようだ。…政府調達では、前回と同様に世界貿易機関(WTO)の政府調達協定(GPA)をベースに、GPA並みの規定とするか、それを上回る水準にするかが交渉のメーンテーマとなっている。対象機関について現時点では議論が中央政府に集中しているものの、前回時点では取り上げられていなかった地方政府など他の機関を対象に加えようとする動きも一部の国で出てきた。」(『建設工業新聞』2012.03.23)
●「日本政府はベトナムのハイテク都市建設や鉄道などインフラ整備を支援するため、同国に総額約1360億円の円借款を供与する。これを含め、今年度の対ベトナム支援額は2700億円と過去最大になる見通し。政経両面でアジアにおける存在感を増す中国をにらみ、日本としてはベトナムとの関係強化を重視。円借款増加は、同国への日本企業進出の支援を超えた狙いを込めている。国際協力機構(JICA)は週内にべトナムと8件の円借款契約に調印する。昨年6月、11月にも港湾や高速道路などの整備に1300億円強を支援しており、2011年度の対ベトナム円借款供与額は合計2700億円強となる。今回はべトナム北部で開発が進む産業都市『ホアラックハイテクパーク』の道路や上下水道、配電など基礎インフラ工事に152億円を供与する。20年の工業国化を目指すべトナム政府は、同都市を最先端の電子・IT(情報技術)関連企業や研究開発(R&D)施設の集積地にする考え。日本が開発を支援する宇宙センターも敷地内に建設予定だ。」(『日本経済新聞』2012.03.29)
●「国内の不動産投資信託(REIT)の新規上場が5年ぶりに動き出す。4月下旬に2007年以来となる新規上場が予定されるほか、年央にもシンガポールの企業が資金調達規模で国内最大級となるREITの上場を計画しているもよう。大和ハウス工業なども準備に入った。不動産価格に一部下げ止まり感も出るなか、投資マネーの動きが活発になってきた。 年央にも傘下のREITを上場させる見込みなのはシンガポール政府投資公社(GIC)系で物流施設の開発投資会社、グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)。日本国内の物流センターなどに投資するREITを上場させるもよう。」(『日本経済新聞』2012.03.30)
●「みずほコーポレート銀行、日本政策投資銀行、三菱東京UFJ銀行など国内の20金融機関が羽田空港の拡張事業に1200億円を協調融資する。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)では過去最大級。施設を運営する特別目的会社の東京国際空港ターミナル(東京・大田)と30日に契約を交わす。協調融資の対象は2010年に開業した羽田空港の国際線旅客ターミナルビルで、融資期間は26年。約900億円の借り換え分も含まれる。みずほが主幹事として融資を取りまとめた。拡張事業ではターミナルビル内の飲食店や搭乗施設、手荷物を受け取る場所などを増築する。東京国際空港ターミナルはビル内の飲食店の売り上げや賃貸料、駐車料金などの収入を原資に金融機関に返済する計画だ。」(『日本経済新聞』2012.03.30)
●「国土交通省は、都道府県と政令指定都市を対象に除雪や災害対応、構造物の維持管理など地域維持事業の『包括発注』や『地域維持型JV』と呼ぶ新たな契約方式の導入状況を諷査した結果をまとめた。都道府県は全体の4分の1に当たる11道府県が包括発注を実施。うち青森、秋田、長野の3県は地域維持事業に限定して地元建設業者同士での結成を認める地域維持型JVの運用基準を定め、同JVを参加資格要件にする入札を始めていた。国交省は今後も自治体に地域維持型契約方式の積極導入を促す。」(『建設工業新聞』2012.03.21)
●「東北地方整備局は21日、事業促進PPPを初適用した『三陸沿岸道路事業監理業務』の発注手続きを開始する。三陸沿岸通路などの新規事業区間183キロを対象とした全10工区の参加者を簡易公募型プロポーザル方式に準じた手続きで一括して募集する。技術提案とヒアリングにより10者(企業・設計JV)を選定し、評価点の高い者から、あらかじめ提出させた希望工区の順位表に基づき工区を割り振る。」(『建設工業新聞』2012.03.21)
●「長野県は、公共工事などで労働者の最低賃金を確保する公契約条例の制定について12年度中に何らかの方向性を打ち出す考えだ。昨年秋に庁内組織の公契約研究会が中間報告をまとめ、課題の洗い出しを進めている。制定されれば全国の都道府県で初となる。阿部守一知事が10年8月の知事選時の公約に『公契約条例の検討』を盛り込んだのがきっかけ。10年11月29日付で庁内組織の公契約研究会を設置した。研究会は、技術管理室、管財課、農地整備課、森林政策課、建築指導課、会計課の課長級職員で構成する。…研究内容は視察、建設工事や測量等委託業務、清掃・警備・受付等の委託業務、指定管理者の業務をそれぞれ対象とした賃金実態調査の実施(継続中)、労働団体、経営団体との意見交換会など。」(『建設工業新聞』2012.03.26)
●「国土交通省と中央建設業審議会は、各省庁や都道府県・政令市、独立行政法人、主要民間発注者、建設関係団体などに対し、建設業者の社会保険加入を徹底するための対策に協力するよう求める通知を今週中に出す。公共機関や民間事業者が工事を発注する際、建設業者の保険加入の前提となる法定福利費を工事価格に組み入れることを要請するのが目的。国交省が保険未加入問題でこうした要請を行うのは初めて。…民間の要請先には、不動産や住宅業界の団体や日本経団連、日本商工会議所などが挙がっている。」(『建設工業新聞』2012.03.26)
●日本共産党の清水ひで子東京都議は26日の都議会予算特別委員会で、木造住宅耐震改修助成の抜本的な充実を求めた。清水氏は、都が震災対策事業計画の執行額を2002年の5239億円から10年度3757億円に減らしたことをあげ、「知事が震災予防条例を対策条例に改悪して、都民の自己責任を強調し公的責任を不明確にした結果だ」と指摘。…清水氏は建築物等の安全化対策事業費は1999年度の1000億円から、08年度には204億円まで落ち込み、木造住宅の耐震化は10年間で2万2000戸の目標に対し、06〜10年度の実績は計約300戸、耐震化率が69%と遅れていると批判。木造住宅耐震改修助成の対象を都内全域に広げ、高齢者や障害者世帯への上乗せ助成を求めた。石原知事は答弁に立たず、飯尾豊都市整備局長は助成対象の拡大を拒否した。清水氏は、現行の耐震基準ぎりぎりの建物が震度7では倒壊する危険があることを専門家の研究や実物大実験の結果を示して指摘し、基準の1.5倍の性能をめざす住宅耐震化対策を進めるよう提案。また耐震化が大きく遅れている東部低地帯の河川堤防などの対策強化を求めた。(『しんぶん赤旗』2012.03.27より抜粋。)
●「国土交通省は、社会保険未加入対策として実施する建設業許可申請書への保険加入状況の追加と、施工体制台帳などの記載事項への保険加入状況の追加のため、建設業法施行規則を改正する。改正案のパブリックコメントを経て、5月上旬に交付し、11月上旬に施行する。また、中央建設業審議会で固めた経営事項審査での保険未加入企業の減点と、海外子会社の経営実績の評価については、7月上旬に施行する予定だ。」(『建設通信新聞』2012.03.28)
●「東京都財務局は、都発注工事の安値受注対策を強化する。元・下請関係に着目して入札制度を改定。低入札価格調査の対象となった業者に対し、調査項目を増やして2次以下を含む下請業者の社会保険の加入状況を把握。さらに低入札価格調査を経て受注した業者には、工事完了後、すべての下請業者に対する代金支払いの状況を確認して都に報告する ことも義務付ける。」(『建設工業新聞』2012.03.28)
●「政府は、公共施設等運営権(コンセッション方式)制度の新設などを定めた改正PFI法に基づく基本方針を27日付で施行した。今後、具体的な運用規定などを示すガイドラインの改定を経て、改正内容を反映した個別プロジェクトが具体化する見通し。基本方針の中では、公共施設の種類ごとにコンセッションの設定可能性が示されており、産業廃棄物処理施設と、要検討の道路以外はおおむね適用できるとしている。」(『建設工業新聞』2012.03.29)
●「前田武志国土交通相は28日の参院国土交通委員会で、公共工事の発注にコンストラクションマネジメント(CM)方式の導入が必要との認識を示した。藤原良信氏(民主)が、元請企業によるダンピング受注が下請企業の技能者の賃金に悪影響を与えているとして対応策をただしたのに対して答えた。藤原氏は、公共投資を含め建設投資の縮小で全国的に低価格受注が広がった結果、下請企業にしわ寄せがいっていると指摘。下請の経営悪化によって技能者の減少が著しく、東日本大震災の被災地では既に型枠大工などの技能者不足が深刻化していると強調し、国交相に下請賃金の引き上げなどに向けた改善策を打ち出すよう求めた。これに対し前田国交相は、公共工事発注の新たな考え方の一つとして、専門工事会社への分離発注が可能なCM方式の導入を挙げ、検討を進めていることも明らかにした。また、公共工事の予定価格算定に使う公共工事設計労務単価について、最近の実態を反映した単価に改め、被災3県の工事で既に適用。全国でも4月から導入することを説明し、理解を求めた。」(『建設工業新聞』2012.03.29)
●「津波で大きな被害を受けた宮城県岩沼、石巻両市は30日、沿岸部の住民を内陸や高台に移転させる復興整備計画をそれぞれ公表し、防災集団移転促進事業に着手した。東日本大震災に伴う集団移転事業の着手は初めて。宮城、岩手、福島の3県で対象は3万世帯ともいわれる移転事業が震災発生後1年を経てようやく動きだす。両市合わせて対象は510世帯、1593人。両市は既に開発先の地権者全員からの同意も取り付けた。移転元となる両市の8地区は、建築基準法上の災害危険区域に指定し、住宅の建築を制限する。」(『日本経済新聞』2012.03.30)
●「国土交通省は、企業・労働者の保険加入状況の調査結果をまとめた。雇用保険、健康保険、厚生年金保険の3保険いずれも加入している割合は、企業単位で84%、労働者単位で57%となった。国交省の社会保険未加入対策では、5年後をめどに企業単位で100%、労働者単位で製造業並み(雇用保険92.6%、厚生年金保険87.1%)という目標を立てており、今後、職種の就業形態など実情に応じた加入促進の取り組みが重要になりそうだ。」(『建設通信新聞』2012.03.16)
●「国土交通、農林水産両省は26日、12年度の公共工事の積算に用いる『設計労務単価』を発表した。全51職種の単純平均単価は前年度比0.9%上昇し、1万6504円となった。設計労務単価は毎年、前年の10月に実施した公共事業労務費調査に基づき算出しているが、今回は東日本大震災の影響で調査後も単価に変動が見られたため、勤労統計調査や建設業界団体への賃金調査などのデータを活用して補正。この結果、97年度に単価の公表を始めて以来、初の上昇となった。」(『建設工業新聞』2012.03.27)
●「国土交通省は、2012年度の公共工事設計労務単価(基準額)とあわせて、1級技能士と登録基幹技能者の資格保有者の賃金水準を参考公表した。昨年に続く公表で、登録鉄筋基幹技能者の賃金が鉄筋工の平均より6−10%高いなど、昨年同様、資格保有者の賃金水準が全国平均より高い傾向が表れた。資格保有者の賃金水準の参考公表によると、登録鳶・土工基幹技能者はとび工より7−11%賃金が高く、電工についても登録電気工事基幹技能者の方が15−19%高い。…国交省では、資格保有者の賃金水準を設計労務単価とあわせて参考的に公表することで、企業による資格取得促進やキャリアパス(段階的な職務経歴)の提示などに活用されることを期待している。」(『建設通信新聞』2012.03.28)
●「環境省が福島県内11市町村の除染特別地域で実施する『本格除染』に備えた物件調査や同意書案作成を行う事前調査業務のうち、4市町村の業務を担当する事業者が分かった。いずれも企画競争方式で発注し、葛尾村はパシフィックコンサルタンツ、川内村がいであ、楢葉町が日立プラントテクノロジー、田村市が建設技術研究所をそれぞれ選定した。また、参加者確認公募方式で発注した、除染対象の全住民、所有者など関係者を把握する『除染等の措置に必要な土地等の関係人調査業務』は、日本補償コンサルタント協会を選んだ。」(『建設通信新聞』2012.03.16)
●「国土交通省は、ゼネコン各社で海外事業を展開する実務部門の担当者との定期的な意見交換を始めた。内田要土地・建設産業局長、佐々木基官房建設流通政策審議官、深澤淳志官房技術審議官ら建設産業・発注政策に関わる幹部と、海外建設協会(海建協)の会員企業の担当者らが今後、2、3カ月に1度のペースで意見交換会を開く。同省幹部と民間の海外担当者との結び付きを深めることで、海外展開の課題や問題意識を共有。支援施策などに反映させていく方針だ。」(『建設工業新聞』2012.03.19)
●「東京商工リサーチがまとめた2012年1月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比3.0%減の226件となった。11年1月の233件以来、1年ぶりに250件を下回った。地区別では9地区のうち5地区が前年同月を下回った。一方で、中国が前年同月比128.5%増、九州が36.8%増、北陸が28.5%増、中部が25.0%増と増加した。負債総額は、23.3%減の314億0100万円だった。平均負債は21.1%減の1億3800万円で、1月としては1993年以降の過去20年間で最少金額となり、小規模企業の倒産が目立った。1月の『震災関連』倒産は4件だった。」(『建設通信新聞』2012.03.21)
●「日本建設業連合会(日建連)は26日の理事会で、12年度の事業計画案を決定した。建設業の市場動向について、縮小に一応の歯止めが掛かったとの見解を示す一方で、東日本大震災の復旧・復興関連事業は『採算的にリスキー』だとして、経営環境は楽観視できないと指摘。そうした状況を踏まえて、安全・安心な国土づくりや、グローバル競争への対応などの活動を進めるとした。真に必要な公共投資の推進への提言・要望を積極展開する方針で、大規模自然災害に備えるための全国防災や、輸出不振を補う観点からの内需による経済対策などを訴えていく。」(『建設工業新聞』2012.03.27)
●宇都宮市は4月から、住宅の改修などの際に経費の一部を自治体が補助する住宅リフォーム助成制度を実施する。…市は2012年度当初予算に補助金1億円を計上。4月から周知徹底を行い、申請受け付けは7見の見込み。助成対象は、10万円以上のバリアフリー改修や防犯工事など住宅の性能・機能の向上をはかる工事を含むリフォーム工事。補助額は費用の10%で上限は10万円。対象業者は、市内の個人事業者や市内に本店がある法人。(『しんぶん赤旗』2012.03.16より抜粋。)
●「地震や台風などの自然災害に備え、木造の仮設住宅を準備する自治体が増えている。仮設住宅はプレハブが主流だが、東日本大震災後は供給が追いつかず、木造の方が単価もやや安いためだ。木造住宅建設の業界団体と供給協定を締結済み、もしくは検討中の自治体は全国27道府県にまで広がっている。震災後、プレハブの供給難から福島、宮城両県の一部では木造の仮設住宅が急きょ建てられた。工期は約1カ月とプレハブより約1週間長いが、仮設1戸当たりの価格は580万円程度と、通常600万円程度のプレハブをやや下回る。このため昨年9月、木造の仮設住宅の供給を目的とした全国木造建設事業協会(全木協)が発足。全国の自治体との間で災害時に備えた仮設住宅の供給協定を結んでいる。今月29日には埼玉県と協定を結ぶ予定だ。」(『日本経済新聞』2012.03.21)
●「『(建物の一部を除却する)減築によって耐震性向上やメンテナンスコストの削減につながる場合がある』。国土交通省のシンクタンクである国土交通政策研究所がまとめた調査で、こうした結果が出た。戸建て住宅の密集市街地では、減築によって火災の延焼を防ぐ効果も認められた。認知度の低さやコスト面など課題があるものの、街づくりを進める際の一手法として政策的に活用する可能性も見えてきた。」(『建設通信新聞』2012.03.21)