情勢の特徴 - 2012年5月前半
●「国土交通省がまとめた11年度の新設住宅着工戸数は、前年度を2.7%上回る84万1246戸と2年連続で増加した。ただ、84万戸台は1965年度と同水準。同省は『持ち直し感は出てきたが、12年度も11年度と同水準で推移する』(総合政策局建設統計室)とみている。新設マンションも2年連続で2桁の大幅増となっており、3年ぶりに10万戸を超えた。…分譲住宅の増加について、国交省は『住宅エコポイントや(住宅金融支援機構の住宅ローン)フラット35Sなどの政策効果もあり、需要の押し上げ要因となっている』と分析。東日本大震災の被災地で今後、災害公営住宅の建設や防災集団移転促進事業などが本格化すれば『12年度の住宅着工戸数も伸びる可能性がある』としている。」(『建設工業新聞』2012.05.01)
●「4月に東京で開かれた日メコン地域諸国首脳会議で、日本政府はメコン地域の発展に貢献する主要インフラ整備プロジェクトとして、57件、総額約2兆3000億円に上る事業リストを提示した。べトナム、タイ、ラオス、カンボジア、ミャンマーの5カ国で既に計画・実施段階にあるものから、資金手当てなど具体的な協力方法が未定の案件も含まれる。日本の建設業各社はメコン地域での案件受注に向けた営業活動を強化しており、市場拡大への期待が一段と高まっている。」(『建設工業新聞』2012.05.02)
●「政府は日本企業のグローバル化に対応し、海外取引すべてを貿易保険で補償する方針だ。従来は日本や海外の拠点からの輸出が対象だったが、2013年4月から海外拠点が現地の市場で販売する場合にも適用できるようにする。海外拠点の現地取引の安全性を高めることで日本企業による海外市場のシェア拡大につなげ、国際競争力を高める。」(『日本経済新聞』2012.05.03)
●「消費税増税に向けた動きが活発化している。増税の是非は別にして、仮に増税された場合は、建設業界に少なからず影響が出てくる。その一つが、賃貸住宅を始めとする『消費税の還付を受けられない建物』の投資利回りが悪化し、事業が成り立たなくなることだ。公共建築の予算が減少を続ける中、民間案件の重要度は増しているが、増税により民間事業者が建設にブレーキをかける可能性も否定できず、設計者、施工者にとって大きな問題となりかねない。」(『建設通信新聞』2012.05.07)
●「経団連がまとめた日本経済の成長促進に向けた政策提言の原案がわかった。『グローバル化の進展が日本の経済成長につながっていない』と指摘。国税と地方税を合計した『法人実効税率』を現行の約35%から20%台への引き下げなどを求めた。11日にも公表し、政府が6月にも作る『日本再生戦略』に盛り込むように働き掛ける。」(『日本経済新聞』2012.05.09)
●「日本、中国、韓国の3カ国による自由貿易協定(FTA)に関して、13日から北京で開く3カ国首脳会談の声明案が9日明らかになった。焦点となっていた交渉開始の時期を『年内』と明記した。日本は即時開始を目指してきたが、昨年の米韓FTA締結への反発など国内に慎重論を抱える韓国が期限の設定に抵抗。『年内』と遅らせることで折り合った。」(『日本経済新聞』2012.05.10)
●「財務省は10日、国債や借入金などをあわせた2011年度末の『国の借金』の残高が959兆9503億円になったと発表した。10年度末に比べて35兆5907億円増え、過去最大を更新した。4月1日時点の日本の総人口(1億2765万人)で割ると、国民1人あたり約752万円の借金を抱える計算になる。残高の内訳は国債が789兆3420億円、借入金が53兆7410億円、政府短期証券が116兆8673億円だった。このうち国債が10年度末に比べ約30兆円増加した。毎年の多額の新規国債の発行により国の借金が積み上がっている。」(『日本経済新聞』2012.05.11)
●「経済産業省は、海外子会社による取引や債券発行など新たな資金調達手法、外国金融機関による資金提供、国内で外国企業に技術・役務を提供する取引などに対し貿易保険を付保できるよう、貿易保険法を改正する方針を打ち出した。改正法案は2013年の通常国会に提出する。10日に開かれた産業構造審議会(経産相の諮問機関)のインフラ・システム輸出部会で提示した。」(『建設通信新聞』2012.05.11)
●「国土交通、文部科学両省は、太陽光発電・蓄電のできる新たな小中学校施設の建設に乗り出す。電力需給への懸念を受け、学校の周辺地域にも電力を供給できる拠点とする。今年度中に東日本大震災の被害を受けた岩手、宮城、福島の3県の学校から対象を選び、改修に着手。今後5年で全都道府県に広げる。災害時の避難拠点ともなる学校の耐震化と省エネ化を同時に進める。震災では、小中高各校で6000校以上が地震と津波の被害を受け、大規模な改修と復旧工事が必要な学校が200弱あることが文科省の調査で確認されている。」(『日本経済新聞』2012.05.05)
●「宇都宮市が、市施行の土地区画整理事業では全国初となる『地籍整備型土地区画整理事業』を進めている。08年7月に国土交通省が運用の考え方を示した地籍整備型は、現道を生かすことで建物の移転補償費を抑えられる上、減歩率が低く、短期間・低予算で施行できるのが特色だ。人口減少時代を迎え、区画整理事業の多くが保留地の売却難など厳しい環境にあり、事業を進めやすい柔軟な手法として注目されている。」(『建設工業新聞』2012.05.07)
●「政府は福島第1原子力発電所の周辺住民の集団移住を進めるため、移転を受け入れる周辺市町村や福島県に住宅建設費用などを支援する。集団移住は数万人規模となり、費用は数百億円に膨らむ可能性がある。受け入れ自治体の負担を減らし、原発周辺の4町が打ち出した『仮の町』構想を後押しする。原発事故被災者の生活再建を軌道に乗せ、復興を迅速に進める狙いだ。」(『日本経済新聞』2012.05.11)
●「環境省は11日、同省直轄事業となる福島県内11市町村の汚染特別地域のうち、本格除染の初弾となる『平成24年度田村市除染等工事』をWTO(世界貿易機関)対象の一般競争入札として公告した。施工体制確認型総合評価落札方式と総価契約単価合意方式を適用する。契約金額が大きくなるため、2社か3社のJV方式による受注を可能にするとともに、公共工事と同様の前払い金と中間前払い金を導入することを主な理由に、本格除染は『先行除染』の役務請負業務から『工事』として扱うことにした。作業すべてが工事に当たらないため、経営事項審査(経審)で土木工事の完成工事高としてどの程度まで認めるのかは今後、国土交通省が検討する。その際、さまざまな除染の方法(除染工法)を一つひとつ、土木工事の工法としてみなすことができるのかの検討が必要になるとみられる。」(『建設通信新聞』2012.05.14)
●国際労働機関(ILO)は30日、世界の雇用情勢に関する最新報告を公表し、2012年の失業者数が約2億200万人と前年から600万人増えると予測。先進国の緊縮財政策は雇用増につながらないと警告し、13年はさらに500万人が職を失うとしている。先進国では、25〜49歳の求職者の「40%超が1年以上働き口がない」と指摘。緊縮財政、労働者保護に関する規制の緩和は「経済成長と雇用創出の失敗を招く」と懸念を表明し、「労働市場改革と雇用(拡大)は明確な関連性がない」として、雇用確保の重要性を訴えた。その上で雇用への配慮を欠いた緊縮財政策の見直しが必要だと指摘。各国に中小企業支援を通じた雇用創出、失業が高止まりしている若年層への職業訓練などに取り組むよう提案した。(『しんぶん赤旗』2012.05.01より抜粋。)
●30代の離職(中途退職)とメンタル疾患者の発生が最多――。建設コンサルタンツ協会の調査結果によると、離職した年代は30代が半分近くを占め、売上高規模別では100億円以上の企業が7割に達していた。転職先は大規模企業で公務員志向が5割を超えている。メンタル疾患者の発生年齢も30代は20代の3.6倍だった。大島一哉会長は、離職とメンタル疾患が『多くの会社で増加の実態が明らかになった』と述べた。(『建設通信新聞』2012.05.08)
●「東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の被災3県における3月の建設業への就職者数は、前年同月比165.7%増の1047人だった。厚生労働省が8日まとめた資料で明らかになった。一方、3県の建設業の3月新規求人数(新規学卒者を除く採用予定人員)は5144人あり、単純比較で求人に対する人材確保は2割程度にとどまっていることも分かった。」(『建設通信新聞』2012.05.09)
●「東北建設業協会連合会(佐藤博俊会長)が会員企業を対象に実施している労務費調査によると、東日本大震災の被災3県(岩手・宮城・福島)における16職種の3月の実勢単価平均と、2月に改定された公共工事設計労務単価の平均には、いずれも1割以上の乖離(かいり)が生じている。今後、復旧・復興工事の本格化に伴い、労務費はさらに上昇する見通し。国土交通省では、おおむね3カ月に一度のペースで設計労務単価を見直す方針でいるが、次回の改定で実勢単価との差がどれだけ縮まるかが注目される。」(『建設通信新聞』2012.05.14)
●「日本建設業連合会は1日、『建設技能者の人材確保・育成に関する提言』(2009年4月発表)の実現に向けて、会員企業144社に優良職長手当制度の導入や下請次数の目標設定などに努めるよう通知した。優良職長手当制度は、旧日本建設業団体連合会会員企業48社のうち、11年度から新たに3社が導入し、計12社に増えたものの、取り組みに慎重な会員企業も多く、改めて協力を要請。作業所の土曜50%閉所を目指し、新たに12年度から毎月第2土曜日を統一土曜閉所日に設定した。」(『建設通信新聞』2012.05.02)
●「大和ハウス工業の2012年3月期の連結純利益は、前の期比28%増の350億円前後となったようだ。従来予想を50億円上回る。政府の住宅購入支援策を追い風に住宅販売が好調。都心部でのセキュリティー性能の高い女性向け賃貸物件の需要が拡大したほか、東日本大震災の被災地で仮設住宅の建設を手がけたことも収益の押し上げ要因となった。」(『日本経済新聞』2012.05.03)
●「日本建設業連合会(日建連)は、公共土木工事の生産性向上や適正利益の確保について会員に行ったアンケートの結果をまとめた。予測し得ない要因で工程が遅れたり、工事が中断したりするケースが増えていることを背景に、全体の62%が『工期延長があった』と回答。適正利益の確保に与える影響については『非常に大きい・やや大きい』との回答が約9割を占め、多くの企業が工期延長による利益への悪影響を危慎していることが分かった。日建連は調査結果を基に、9日に始まる公共発注機関との意見交換会で改善を求めていく。」(『建設工業新聞』2012.05.07)
●「民主党が検討を進めている、建設工事で全下請けに支払う労務費を明示させる『支払い透明化法案』に対し、専門工事業界が対応に苦慮している。元請けのダンピング(過度な安値競争)による下請労務費へのしわ寄せ防止という法案の最終目的には全面的に賛成するものの、低価格競争に歯止めがかからず、施工管理業務が拡大している現行の元下関係と、下請けの重層化の中で、支払い透明化が義務化された場合の悪影響への懸念が払しょくされないことが理由だ。専門工事業界では同法案に対する評価は賛否が二分されている。」(『建設通信新聞』2012.05.09)
●「家電量販最大手のヤマダ電機は、住宅設備機器大手のハウステックホールディングス(HD、東京・板橋)を買収する。同社の100%の株式を保有するファンドから、全株式を取得。買収金額は100億円程度とみられる。ヤマダは昨秋、住宅メーカーのエス・バイ・エルを買収。さらに住設メーカーを傘下に入れ、次世代省エネ住宅『スマートハウス』事業に弾みをつける。」(『日本経済新聞』2012.05.10)
●「建設機械メーカー大手4社の12年3月期決算が9日、出そろった。コマツ、日立建機、住友重機械工業建設機械部門(住友建機グループ)は増収増益を達成した。中国市場の落ち込みを日本やアジア、北米など他地域でカバーし売り上げを確保。円高が続いたものの、製品価格の値上げや販管費の削減などが奏功し利益を伸ばした。中国市場が売上高の約半分を占めるコベルコ建機は、需要低迷が響いて減収減益となった。日本市場は、東日本大震災の復旧・復興で需要が高まり、新車の販売が好調に推移した。国内の売上高は、コマツが2863億円(11年3月期比13.8%増)、日立建機が2110億円(22.0%増)、コベルコ建機が990億円(17.8%増)と2桁の伸びを示した。今期も各社は復興事業で油圧ショベルなどの需要が伸びると予測している。」(『建設工業新聞』2012.05.10)
●「国土交通省の建設工事受注動態統計調査報告(速報)によると、2011年度の受注高合計は前年度比1.1%減の41兆2160億円と00年度の調査開始以来、過去最低を記録した。このうち元請受注高は1.4%増の29兆6040億円と4年ぶりに増加したものの、3年連続で30兆円台を下回った。一方、日本建設業連合会が旧日本建設業団体連合会の会員企業48社を対象に調査した受注総額は、10.8%増の10兆2610億円と5年ぶりに上向くとともに、3年ぶりに10兆円台に回復した。」(『建設通信新聞』2012.05.11)
●「国土交通省は14日、2012年3月末の建設業許可業者数(個人含む)を公表した。総許可業者数は前年同月比3.0%減(1万5167者減)の48万3639者となった。00年のピーク時からは19.5%、11万7341者の減少で1980年とほぼ同水準になった。新規業者は、経年の数値が存在する92年以降最低の1万6034者となった。」(『建設通信新聞』2012.05.15)