情勢の特徴 - 2012年5月後半
●「日本企業によるベトナムへのインフラ輸出が本格化してきた。住友商事はこのほどベトナム初となる都市鉄道建設を受注。工費は約630億円で、2016年末の完成を見込む。同国では最大の港湾整備や空港ターミナル建設なども日本企業によって進んでいる。企業進出が増えるなか、インフラ建設は投資環境の整備にもつながり、日本勢は官民一体で『日の丸インフラ』を広げる構えだ。住商が受注したのは『ホーチミン都市鉄道1号線』建設で、べトナムに電気鉄道が走るのは初めて。…総事業費は3000億円規模になると見られ、住商はこのうち高架鉄道と車輌基地の建設を受注した。16日にホーチミン市鉄道局と正式契約を結び、7月にも着工する。ベトナム運輸省傘下の国営大手ゼネコンと共同で線路や高架橋の建設にあたる。フィリピンなどで都市鉄道の建設実績があり、受注につながった。同事業は円借款を使って海外に日本の技術やノウハウを導入する『ステップ案件』。車両部分の入札には日立製作所や三菱重工業など4グループが参加し、事業者選定を進めている。地下鉄区間の建設には鹿島など大手ゼネコンが応札するとみられる。車両や運行システムには、鉄道関連メーカーと国土交通省が作った都市鉄道の輸出用標準仕様『STRASYA(ストラシア)』が初めて採用される見通しだ。」(『日本経済新聞』2012.05.16)
●「三井物産はアフリカで物流インフラの整備に乗り出す。アフリカ中部のガボンや北アフリカのアルジェリアで主要港のコンテナ処理能力を増強するプロジェクトに着手した。貿易量の拡大を追い風にコンテナの取扱量を増やす。経済発展に不可欠なインフラ整備を通じて各国政府との関係を深め、成長市場で幅広い案件を受注するための足掛かりとする狙いもある。」(『日本経済新聞』2012.05.17)
●「東日本大震災で被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県でインフラの復旧工事に伴い鋼材など産業資材の需要が拡大している。工事は今後も増えるとの見方から価格も堅調で一部は東京の価格を上回る。工事関連の拠点を設ける建設業者も増え、オフィスビルの需給も締まった。一方、ビルや住宅など民間の工事着工は遅れ、値下がりする資材もある。」(『日本経済新聞』2012.05.18)
●自治体が支出した立地補助金の一部を大企業が返還するケースが増えている。電機製造業などが赤字を口実に工場再編などを進め、立地から5、6年という短期間での生産縮小・撤退が相次いでいるからだ。…液晶テレビのパネルを製造するパナソニック液晶ディスプレイの千葉県茂原市の工場は2006年5月、操業を始めた。前身は日立ディスプレイズの子会社(05年1月に設立)。10年に日立がパナソニックに株式を譲渡した。テレビの売れ行き不振による赤字を理由に撤退が決まった。12年3月に工場は閉鎖され、別会社のジヤパンディスプレイに譲渡された。同社には、県が「地元経済の振興」や「雇用確保」の名目で、50億円の補助金支出を決め、すでに06年の操業以降、20億3000万円を支出した。市も40億円の補助金支出を決め、うち13億5000万円を支出した。県はパナ社の工場譲渡を受け、企業立地補助金のうち3億4000万円の返遺を請求。パナ社もこれに応じ同額を返還した。市は返還を求めていない。同工場の正社員は操業開始時からすべて親会社からの出向で、新規採用はゼロ。その後も正社員を減らして非正規社員に置き換えてきた。工場の従業員数も08年5月の約2400人から11年末には1330人と大幅に減少した。パナ社は工場撤退に伴い茂原工場の正社員を兵庫県姫路工場に異動させたが、少なくない人が退職に追い込まれた。期間従業員など非正規労働者は雇い止めされた。地域経済への影響も避けられない。茂原市はかつて、日立を中心に企業城下町として栄えた。ブラウン管工場などで働く人たちで商店街も繁栄してきたが、現在は中心商店街の店舗数も激減。大型ショッピングセンターの郊外進出の影響もあって街は「シャッター通り」化し、にぎわいはない。市の担当者も「(パナ社の)資産償却に伴う固定資産税の減少など市財政にも大きなマイナスになる」としている。…電機産業の動向に詳しい桜美林大学教授の藤田実さんによれば、企業誘致に税金をつぎ込む制度はあるのに、その企業がリストラをやり放題にしても歯止めをかける仕組みがないという問題がある。誘致企業の多くは世界的な競争にさらされる電機産業などグローバル企業であり、規制がなければ当然、資本の論理がむき出しになる。雇用をどれだけ増やすかなどについて、自治体が誘致企業側と協定を結ぶルールの確立も必要だと述べている。(『しんぶん赤旗』2012.05.18より抜粋。)
●「民間の資金を活用した社会資本の整備を進めるため、政府が今年度中に創設するファンドの最終案が固まった。官民が出資する株式会社を創設。その新会社が調達する最大で1000億円規模の資金を空港の運営や新エネルギー設備の建設などに投融資する。ファンドの資金を呼び水に、民間参入を促す狙いがある。政府は国会に提出済みの関連法案が成立次第、新会社『民間資金等活用事業推進機構』を設立する。2012年度は50億円を財政投融資から出資。メガバンクや証券会社、投資家の資金も合わせて、当初100億円規模の出資金で始める。新たな枠組みによる投融資の対象として有力なのは、仙台空港や関西国際空港など空港の運営だ。国土交通省は国が管理する全国の空港の運営権を順次売却し、民間に任せる方針を固めている。政府はファンドからの資金供給を通じて民間参入を促す考えだ。」(『日本経済新聞』2012.05.19)
●「政府・民主党はインフラ整備の資金を民間から調達する新型地方債(レベニュー債)を地方自治体の公営企業に解禁する方針だ。新型地方債で調達した民間資金で水道や交通、病院といった公共インフラの整備・改修を可能にする。2013年度の実施を目指す。…レベニュー債の公営企業への解禁は、政府が今夏にまとめる『日本再生戦略』に金融分野の柱の一つとして盛り込む。金融庁や総務省は具体的な制度作りに近く着手し、来年の通常国会にも必要な法制度の改正案を提出する方針だ。」(『日本経済新聞』2012.05.21)
●「日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)の『ヒト・モノ・カネ呼び込み戦略委員会』(委員長・山本和彦森ビル副社長)は、アジア諸国で増加が見込まれるインフラ整備や都市開発などのプロジェクトへの投資需要を取り込む『アジアプロジェクトセンターTOKYO立地構想』の具体化に乗りだした。18日の初会合で今後の活動の方向性を示すとともに、都市開発分野でのプロジェクト輸出の推進策として『アジア都市投資ファンド』の創設を提案した。アジア各国で旺盛なインフラ需要を取り込むため、同戦略委では東京に集積しているインフラ・都市機能を最大限に生かした活用方策を検討。同構想を主要テーマに設定し、プロジェクトの具体化に取り組む。相手国のニーズに合わせたプロジェクト輸出を目標に、設計・エンジニアリングや機械・部材、建築・土木、維持・運営、ビジネスサービス、民間・政策金融などさまざまな主体による官民連携体制を構築。総合的なプロジェクトマネジメントカを強化し、インフラ・都市開発事業の輸出を想定した社会実験特区(規制の特例措置など)でモデル事業を実施することを計画している。プロジェクト輸出のうち、都市開発分野では国内で培ったノウハウの活用と併せ、政府資金などを主要原資とするアジア都市投資ファンドの創設を提案。東京をアジアの都市開発プロジェクトの形成拠点とするため、官民連携の中核組織として株式会社組織の『(仮称)都市革新機構』を設立し、国内のモデル事業や海外で展開する都市輸出プロジェクトなどへの資金供給の円滑化を図る考えだ。同機構にはデベロッパーや建設、設計、コンサルタントなど関連分野の人材・技術を集めてプロジェクト形成を支援する。」(『建設工業新聞』2012.05.21)
●「世界の年金マネーが、道路や港湾などの公共インフラ事業を投資対象に入れ始めた。株や債券など従来の投資対象と比べ、安定した収益を上げやすいと見ているためだ。先進国は財政難のため公共事業向けの資金を得ることが難しくなっている。民間の年金マネーはこの一部を補う面もある。年金基金は、道路や港湾、水道といった公共事業を運営する事業体に投資。事業体の利益を配当金などの形で受け取る。インフラ投資ファンドを経由して投資するケースが多いが、一部では公共事業体に直接投資することもある。全米最大の公的年金基金、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)のインフラ投資は2009年に1億ドル(約80億円)だったが、11年には7倍に増えた。米ミシガン州の公務員退職年金(SMRS)も昨年10〜12月期にインフラ投資を始めた。欧州ではオランダの年金基金がインフラ投資を15年までに2倍以上に増やすなどの動きが出ている。日本国内の企業年金もインフラ投資に積極的になっている。10兆円強の資産を運用する企業年金連合会は4月下旬、三菱商事や国際協力銀行、みずほコーポレート銀行とともに、カナダのオンタリオ州公務員年金基金が主導するインフラ投資に参加することで合意した。…ただ、運用成績の低迷が長引くなか、年金基金は株や債券などの伝統的取引とは違う投資に注目。損失が生じる恐れがある一方で高収益も期待できるヘッジファンド投資を増やすと同時に、安定した収入が見込めるインフラ事業向け投資を拡大している。経済協力開発機構(OECD)によると、30年までに世界のインフラ整備に必要な資金は53兆ドル。だが、多くの先進国は金融危機後の財政悪化で、インフラ事業にこれまで通り資金を配分することが難しくなっている。こうした事情を背景に、実際のインフラ運営・整備を担うインフラ事業体の側も、年金マネーなどの大口投資を呼び込もうとしている。」(『日本経済新聞』2012.05.23)
●「景況感が改善傾向にある中、金融機関の建設業向け融資残高(貸出残高)の減少に歯止めがかからない。日銀がまとめた2012年3月末の貸出先別貸付金(業種別、設備資金新規貸付含む)は、全業種合計額が419兆8248億円と3年ぶりに前年同期比で増加に転じた。しかし建設業向け貸出残高は前年同期比3.7%減の12兆0146億円と減少傾向が続く。特にこれまで中小向け融資を支えてきた『中小企業金融円滑化法(円滑化法)』を政府は2013年3月で終了させることを決め、金融機関も円滑化法終了を前提にした出口戦略に取り組んでおり、資金繰り環境は厳しくなる可能性もある。」(『建設通信新聞』2012.05.25)
●「民主党は31日午前、衆院社会保障・税一体改革特別委員会の法案審議を後押しする『一体改革推進会議』を国会内で開き、自民党など野党に対して同日中にも修正協議を呼びかける方針を決めた。自民党は同日午前の執行部らによる会合で、6月21日までの今国会会期内の採決を前提に、修正協議に応じる立場で一致した。今国会最大の焦点である消費増税関連法案が与野党協議による修正に向けて動き出す。」(『日本経済新聞』2012.05.31)
●「相模原市は、市が保有する757施設(計1335棟)の更新・改修コスト試算結果を盛り込んだ公共施設白書をまとめた。2012‐71年度までの60年間に計約4793億円の更新費が必要と試算、年平均は約80億円となり、直近3カ年(08−10年度)の改修・修繕費実績平均の1.9倍にのぼる。また、過去の実績から今後の公共施設の更新・改修に充てることができる最大費用を一般会計ベースで年間155億円と仮定した場合、今後15年間は現状の施設のすべてを保有しても更新・改修費を賄えるが、27年度以降は施設を削減しなければ困難と結論付けている。」(『建設通信新聞』2012.05.17)
●「国土交通省は、東日本大震災の被災地で難航している災害公営住宅の建設に関して、供給を促進するための検討に着手する。市町村や地区の被災状況によって検討の進捗状況が異なる問題を解決するため、岩手、宮城、福島の3県それぞれを対象に地域特性や入居者の二−ズを踏まえた検討を後押しし、今後の事業促進につなげる方針だ。被災した3県の災害公営住宅の整備状況(4月30日時点)を見ると、岩手県は供給計画4000−5000戸に対して、用地が確保できたのは21地区390戸。このうち設計に着手したのは7地区322戸で、いまだ着工した住宅はない。宮城県は、約1万5000戸の供給計画に対して、用地確保が完了したのは21地区1452戸で、うち8地区712戸で設計に入った。工事着手したのは、このうち1地区12戸。福島県の全体計画は未定であるものの、同様に用地確保が5地区151戸で完了し、うち2地区58戸で設計を進めている。工事も2地区58戸で着手したという。」(『建設通信新聞』2012.05.17)
●「国土交通省地方整備局などの事務、権限、予算を広域ブロック単位組織に移譲する、国の出先機関の事務移譲法案づくりが大詰めを迎えている。内閣府は16日に開いた『アクションプラン推進委員会』(委員長・川端達夫地域主権推進担当相)に、『国の特定地方行政機関の事務等の移譲に関する法律案骨子』を提示した。同法案に『特定』を付けたのは今回、地方整備局、経済産業省経産局、環境省環境事務所の3出先機関の事務・権限移譲を念頭に置いているため。」(『建設通信新聞』2012.05.18)
●「釧路市は17日、市立学校施設耐震化PFI事業(1期)の実施方針を公表した。事業方式は対象校の耐震補強業務、大規模改造業務と2期分の先行調査、維持管理業務を実施するRO方式。耐震化対象の市立小中学校19校のうち、4校の耐震補強と大規模改造工事、8校の耐震2次診断などを実施する。事業期間は10年を想定し、6下旬に総合評価一般競争入札を公告し、10月下旬に落札者を決定する見通し。実施方針の説明会は25日、現地見学会は26日に開く。同事業では、対象19校を第1期と第2期に分け、さらに第2期をそれぞれの三つのグループに区分し四つのPFIを設定する。…受注形態については、特別目的会社(SPC)の設立有無は入札参加者が選択し、SPC無しの場合は、いずれも北海道内に本店または支店、営業所を有する設計、施工、工事監理、維持管理の各企業で構成するグループが対象。施工企業と設計企業、工事監理企業を兼務することはできない。このうち施工は建築と管、電気のA等級による3〜12者構成の特定JVで、それぞれ市内業者を含むことを求める。また建築は、釧路市内での耐震補強工事の元請実績を有する業者1者以上を含むことが要件となる。」(『建設工業新聞』2012.05.18)
●「福島県伊達市は、住宅などの面的除染業務を5地区に分け、指名型随意契約でゼネコン4者に委託する方針を決めた。…市は各企業に対し見積書を提出するよう要請。ヒアリングを行った上で受託候補者を決めた。4者は、5地区で仮置き場設置や除染作業を手掛ける。除染対象の世帯数は2500程度。履行期限は13年3月15日。市は当初予算で、住宅等面的除染業務に205億400万円、農地等除染業務に15億1800万円を措置した。」(『建設工業新聞』2012.05.18)
●「国土交通省東北地方整備局は21日、従来は発注者が手掛けてきた事業の川上段階のマネジメント業務から民間を活用する『事業促進PPP』を初適用した『三陸沿岸道路事業監理業務』10件(10工区)の担当事業者を決めた。提案競技で選定が行われ、9件をゼネコンと建設コンサルタントなどで構成する設計JV、1件を単体が担当する。選定には単体1と設計JV23の計24者が参加。外国企業の参加は単体、JVともなかった。」(『建設工業新聞』2012.05.22)
●鳥取市庁舎住民投票が20日、投開票され、「耐震改修」が4万7292票と竹内功市長らが推進してきた「新築移転」の3万721票を上回り、「耐震改修」が勝利した。投票結果を受け、竹内市長は21日、「耐震改修という方向性ははっきりした」とのべ、新築移転計画を断念する考えを表明した。…市本庁舎は、今年築48年を迎え、震度6強で倒壊の恐れがあると耐震診断されている。…4月に「市民の会」が結成され、8月に5万人の署名を添えて住民投票条例案を議会に提出。新築移転派が多数を占める議会は、条例案をいったん否決したが、市民の声を無視できず、住民投票を決定した。(『しんぶん赤旗』2012.05.22より抜粋。)
●「自民党の国土強靭化総合調査会(二階俊博会長)は23日、大規模災害対応を含め新たな国づくりと地域社会構築を目的とした『国土強靭化基本法案』を了承した。総務会までの党内手続きを行い、6月上旬に議員立法として提出する。法案は防災・減災含めた大規模災害対応と日本海・太平洋など複数の国土軸形成による地域振興を目指す。具体的には、ソフト・ハード対策を合わせた事業規模として、10年間で総額200兆円の投資を念頭に置いている。事実上、新たな国づくりを通じて、自民党政権時代の財政再建路線を一時的に留保し、デフレ経済解消に向けた積極的な財政路線に転換する形だ」(『建設通信新聞』2012.05.25)
●「国土交通省は28日、2012年度から16年度まで5年間のインフラ整備の指標となる社会資本整備重点計画素案(案)を明らかにした。大規模災害や国際化への対応などを視点に、緊急輸送道路上の橋梁、主要ターミナル駅の耐震化など新規34項目を含む計68項目を設定し、それぞれに目標値を明示した。また、計画の実行性を確保する方策としてフォローアップのための仕組みや、地方ブロックごとの重点整備方針の策定なども導入する考え。パブリックコメントの募集を経て、今夏の閣議決定を目指す。」(『建設通信新聞』2012.05.29)
●「政府は関西電力大飯原子力発電所(福井県おおい町)3、4号機の再稼働を来週中に正式決定する方向となった。野田佳彦首相は30日夜、周辺自治体を含む関西広域連合が同日、政府に判断を事実上委ねる方針を決めたのを踏まえ『最終的には私の責任で判断したい』と述べた。立地する福井県の西川一誠知事も再稼働を了承する意向を固めた。」(『日本経済新聞』2012.05.31)
●「国土交通省地方整備局など国出先機関の事務・権限・職員を、ブロック単位の広域連合に移譲する政府の『出先機関事務移譲法案』策定・閣議決定を控え、拙速な出先機関移譲に反対する声が高まっている。政府が法案骨子をまとめ、法案作成作業が大詰めを迎える中、法案に反対する声も拡大しつつある。現行の出先機関移譲に強い懸念を持つ基礎自治体首長で構成する『地方を守る会』の参加者も、全国で500人に達したほか、既に自民党委員会が23日に反対決議をした。さらに、国家公務員組合の一つ、日本国家公務員労働組合連合会(略称・国公労連)も25日、議員会館内で出先機関廃止・移譲反対集会を開いた。同集会には、共産党・民主党の両衆議院議員も出席し、明確に法案に対し反対を表明。出先機関の原則廃止を掲げる民主党内にも、現行の出先機関移譲に対して根強い反対の声があることを裏付けた。」(『建設通信新聞』2012.05.31)
●環境省は16日、建物の解体現場でのアスベスト(石綿)飛散防止策を徹底するため、大気汚染防止法を改正する方針を固めました。自治体が現場に立ち入る権限を強化することなどが柱。東日本大震災の被災地などで飛散が問題になっていることを受けたもの。来年の通常国会への改正案提出を目指す。現行制度では、業者が解体前に建物を調べ、アスベスト使用が判明した場合は自治体に届け出て、現場の立ち入り検査を行う。しかし、業者の調査が不十分な例があることなどから、自治体がアスベスト使用の恐れがあると判断した現場については届け出がなくても検査できるようにする。また、アスベスト飛散防止の作業基準が確実に守られるよう、業者に現場でのアスベスト大気濃度測定を義務付ける。(『しんぶん赤旗』2012.05.17より抜粋。)
●「厚生労働省は、今夏の職場での熱中症予防対策を徹底するよう、全国の労働局と建設業など関係団体に18日付で通知した。屋外が職場となる建設業と建設現場に警備員を派遣する警備業に対しては、暑さの厳しい7、8月の午後2時から5時までの時間帯に、健康に被害を及ぼす恐れのある高温多湿時には作業を原則休止するよう要請した。建設業などにこうした要請をするのは、厚労省として今回が初めて。通知では、気温や湿度などを基に環境省が独自の計算式で熱中症の危険度を示すWBGT値(暑さ指数)を参考にすることを求めた上で、暑さが厳しく湿度が高い場合には、直射日光や照り返しを遮る簡易屋根の設置やスポットクーラー、大型扇風機を使うことを要請。労働者の単独作業を実施しないことや連続作業時間の短縮、長目の休憩時間を設けることなど作業時間の見直しも求めた。特に、7、8月の午後2時から5時まで、建設業などでの屋外作業休止を要請した。作業の休止は工期に影響を及ぼす可能性もある。また、朝礼の際、体調不良や睡眠不足が顕著な労働者には、作業内容や場所を見直すことも求めている。」(『建設通信新聞』2012.05.22)
●関越自動車道で乗客7人が死亡した4月29日の高速ツアーバス事故。背景には、安全を二の次にした規制緩和によって、運転者の労働条件が限界を超えて悪化している問題がある。政府は2000年、道路運送法を「改正」し、バス事業の規制を大幅に緩和した。中心は、貸し切りバス事業への参入を免許制から許可制にしたこと。そして運賃、料金も認可制から届け出制にしたことだ。バス、タクシー運転者らでつくる全国自動車交通労働組合総連合会(自交総連)は、これが実行されると「過当競争が運転者の労働条件を低下させ、いずれ重大事故がおきかねない」と再三にわたって危険性を指摘し、反対してきた。…総務省の調査によると、届け出運賃を受け取ることができていないと回答した事業者は91.9%。その理由として「規制緩和による貸切バス市場の供給過剰状態により、契約相手先の主導による届出運賃・料金を下回る安価な価格が提示され…やむを得ず契約している」と、59.2%が回答している。このしわ寄せを受けるのが運転者だ。人件費抑制のために、嘱託や臨時の採用拡大、賃金水準の切り下げや手当のカット、勤務時間の延長など、労働条件が悪化の一途をたどっている。…一方、国土交通省には、バス事業などを監査・監督する「自動車監査官」と「監査担当運輸企画専門官」がいる。しかし全国でわずか320人。バス事業者だけでなく、タクシー、トラックの事業者も監査対象で、対象事業者数は10万件を超えるとみられる。届け出運賃が適切に受け取れているかを監査しようにもできないのが実態だ。(『しんぶん赤旗』2012.05.23より抜粋。)
●24日午前10時半ごろ、新潟県南魚沼市欠之上(かけのうえ)で建設中の『八箇(はっか)峠トンネル(仮称)』で爆発が起き、トンネルの外にいた作業員3人が負傷した。中には4人が取り残されているとみられ、南魚沼市消防本部などが救出活動を続けたが、トンネル内はガスの濃度が高く、作業は難航した。工事を請け負った佐藤工業の北陸支店(富山市)などによると、トンネル内には当時、同支店の現場監督(37)と下請け会社の作業員ら計4人が送風ファンの点検のため入っていた。(『しんぶん赤旗』2012.05.25より抜粋。)
●建設現場でのアスベスト(石綿)曝露(ばくろ)によって健康被害を受けた神奈川県の建設労働者と遺族87人が国と建材メーカー44社を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、横浜地裁であった。江口とし子裁判長は国と建材メーカーの責任を認めず、原告の請求を棄却した。原告側は、国は危険性を知りながら建築基準法の耐火構造などにアスベスト含有建材を指定・認定してきたと主張した。判決は、国の指定行為について、「石綿含有建材の使用を促進した面があったことは否定できない」としながら、「使用を強制するものとは評価することはできない」とし、建材メーカーについては、「共同不法行為が成立するということはできない」などと形式的な判断を下した。一方で、「国には、石綿被害に関する法律の充実、補償制度の創設の可否を含め、再度検証の必要がある」とした。…判決後の記者会見で、統一弁護団長の小野寺利孝弁護士は「加害者を免責し、被害者に受忍しろというありえない判決だ」と批判。控訴する意向を示すとともに、同様の訴訟で9月26日に判決が出る東京地裁での勝利に向けたたかい抜くと表明した。(『しんぶん赤旗』2012.05.26より抜粋。)
●「15日までに発表された大手・準大手ゼネコンの2012年3月期決算によると、単体受注高は26社中17社が前期実績を上回った。受注合計は土木が前期比27.6%増、建築が0.5%減となり、全体でプラスに転じた。復興・復旧関連が押し上げ要因となった土木が、民間設備投資の不透明感が漂った建築をカバーした格好。半数の14社が期初目標をクリアし、大手4社は3年ぶりにそろって受注工事高1兆円を突破した。」(『建設通信新聞』2012.05.16)
●「東京商工リサーチがまとめた2012年3月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比3.9%減の292件となった。都道府県別では、22道県で前年同月を下回り、16府県が増加、9都県は前年同月と同数だった。また、地区別をみると、9地区のうち北陸、九州、関東、中国の4地区が前年同月を上回った。これに対し、復旧・復興工事が進む東北は57.1%減だった。負債総額は6.5%減の372億6300万円となった。平均負債額は3.0%減の1億2700万円にとどまり、3月としては過去20年間で最少金額だった。」(『建設通信新聞』2012.05.17)
●「東北地方整備局は17日、6月に生コンクリートの供給不足が見込まれている宮城県石巻地区で、公共発注機関、資機材供給者が課題解決に向け協議する『石巻地区復旧・復興工事情報連絡会』を石巻市の宮城県東部下水道事務所会議室で開いた。今回、砂や砕石を供給する業者からの報告で、同地区での砂の供給能力が既に限界に達している状況が浮かび上がった。」(『建設工業新聞』2012.05.21)
●「東京商工リサーチがまとめた2011年度(11年4月−12年3月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年度比1.8%減の3376件だった。年度としては3年連続して前年を下回り、1993年度の3321件以来の低水準となった。都道府県別件数では、27道府県が前年度を下回り、『中小企業金融円滑化法』などの政策効果が影響した。負債総額は、5.1%減の4774億5900万円だった。年度としては過去20年間で最少金額となった。これに伴い、平均負債額も3.4%減の1億4100万円となり、1989年度の1億1400万円以来の低水準にとどまった。これは負債10億円以上の大型倒産が、前年度の50件から22.0%減の39件に減ったことが要因。」(『建設通信新聞』2012.05.22)
●「国土交通省は25日、下請けの社会保険加入を元請けが指導する際のガイドライン案をまとめた。元請けが指導すべき項目や再下請通知書の作成例などを示したほか、保険加入に向けて下請けが果たすべき役割も明記している。2012、13年度に元請けと下請けが保険加入に向けて実行すべき内容を中心に示しており、今後、ガイドラインに沿った各関係者の取り組みが期待される。ガイドライン案は、パブリックコメントを経て7月上旬に決定し、建設業界団体に通知する。」(『建設工業新聞』2012.05.28)
●「国土交通、厚生労働両省を始め、建設業関係の元請・下請団体、発注者団体など計87団体が出席する社会保険未加入対策推進協議会の初会合が29日、国交省内で開かれた。会合では、国交省が建設業、行政双方で取り組む保険未加入対策について説明するとともに、近く専門工事業団体などに対して標準見積書の作成依頼を通知する考えを伝えた。出席者は、発注者から下請企業まで関係者が一体となって保険加入を徹底することを申し合わせた。協議会の会長には蟹澤宏剛芝浦工大教授が就任。副会長には水町勇一郎東大社会科学研究所教授を始め、日本建設業連合会、全国建設業協会、建設産業専門団体連合会の3団体を当てた。…会合では加入促進計画の枠組み(案)について、建設業団体に対しては加入状況をアンケート調査などを通じて把握し、推進目標の設定と実現するための具体策を提示するよう求めた。一方、行政側の対応として地方ブロックや都道府県を単位に地方協議会を設け、6月以降順次開催することを要請。許可申請・更新時の加入状況の把握や営業所の立入検査などによって未加入企業に対する指導を徹底していく考え。近く専門工事業団体を中心に標準見積書の作成依頼を通知する考えも伝えた。業種ごとに見積もり時に法定福利費の内訳を明示するための標準見積書と作成手順を検討、作成し、10月に開催の第2回協議会までに報告するよう要請。2013年度の本格運用に向けて、10月以降に順次、試行するとともに、元請団体・元請企業に標準見積書の活用を求めていく。」(『建設通信新聞』2012.05.30)
●「復興庁は18日、東日本大震災の復旧施策に関する国の事業計画と工程表を見直し、計18分野のうち海岸対策と災害廃棄物処理の2分野の事業が遅れていることを把握した。海岸対策は2011年度の成果目標として471地区の3割で本復旧工事に着手するとしていたものの約2割にとどまり、災害廃棄物処理は一般家屋などの解体が進んでいない状況が明らかになった。復興庁では、復興施策の進捗状況の確認や地元への説明責任などの観点から、事業計画と工程表を取りまとめている。初回は11年度第3次補正予算が成立した際にまとめ、今回は12年度当初予算も反映させて計画と工程表を見直した。」(『建設通信新聞』2012.05.21)
●「国土交通省は、都道府県向けに応急仮設住宅の整備マニュアルを作成した。東日本大震災の教訓を踏まえ、平常時からの準備と、災害時の対応に分けて取り組むべき項目を整理。大規模災害を想定し、平常時の実務上のポイントや災害発生後の具体的作業と対応フローを明示した。過去の被災時の参考事例や、手続き上の各種様式・文書のひな形集なども添付している。今後、各自治体に独自のマニュアル整備を促し、被災者の安全・安心な居住環境の早期確保への対応強化を図る。」(『建設工業新聞』2012.05.23)