情勢の特徴 - 2012年7月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「ベトナム北部で計画されているラックフェン国際港建設事業の初弾工事について、べトナム政府は6月28日、埋め立て・地盤改良・護岸整備(パッケージ6)の入札を公示した。STEP(本邦技術活用条件)案件で、国際協力機構(JICA)が日本企業向けの事前事業説明会を同日開催。今秋以降に施工者が決定する見通し。同事業は日越両国による初のPPPプロジェクトで、16年の開港に向けて総額約1600億円を投じてコンテナターミナルなどを新設する計画だ。」(『建設工業新聞』2012.07.02)
●「総建設費3兆円規模となる整備新幹線未着工3区間(北海道、北陸、九州)の建設事業が着工に向けて動き出す。国土交通省は6月29日、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が申請していた3区間の工事実施計画を認可した。整備新幹線の着工認可は4年ぶりで、民主党政権下では初めて。国交省は12年度予算に、3路線の着工に向けて調査・設計費や用地取得費などを計上済みで、来年度以降の工事着手を目指す。」(『建設工業新聞』2012.07.02)
●「金融庁は4日、2013年3月末で期限が切れる『中小企業金融円滑化法(円滑化法)』適用企業のうち、5−6万社の債権が不良債権になりかねないとの見通しを示した。同日開いた金融審議会総会で説明した。不良債権化すれば、融資枠を含めた企業与信が大幅に縮小し、破たんの可能性が高まる。円滑化法の適用は業種別で建設業が上位3位に入っているとみられる。中小建設業にとって、不良債権にならないための条件である経営改善計画の策定も、建設市場低迷で売り上げの見通しは不透明な場合が多く、難しいことが想定される。」(『建設通信新聞』2012.07.05)
●「民主党を中心に超党派の議員で構成する『新たな戦略的国土地域政策を推進する議員連盟』(会長・伴野豊民主党衆院議員)は5日の会合で、社会資本整備に関する提言『日本再生計画〜ビジョン2030〜』をまとめた。災害に強い多軸型国土を形成するため、『子ども』や『地域』という観点を重視した社会資本整備を『次世代投資』と位置付け、30年までに集中実施することを打ち出した。30年までの投資規模を約160兆円と推計している。提言では、団塊ジュニア世代の定年退職が始まる30年ころまでが、将来のための投資余力がある最後の時期になるとの認識を表明。その上で、将来世代のための次世代投資を行うことは未来への責任だと強調した。次世代投資に当たっては、フルセットの投資ではなく、さまざまな個性を持つ地域が連携することで広域で諸機能を確保し、各地域が交流し合う『多軸型』『多重・分散型』の国土形成を目指すべきだと主張。エネルギー効率の良い循環型社会の形成も図るべきだとした。さらに、地域主権を進めつつも、基本的な部分の投資は国が主導する必要性にも言及した。次世代投資の具体例には、東日本大震災の復興や、首都直下地震・南海トラフ巨大地震などへの備え、食料生産の強化、インフラの維持更新対策、再生可能エネルギー・新エネルギーの推進などを列挙。『地域を支える良質な建設業の維持』も併せて打ち出した。」(『建設工業新聞』2012.07.06)
●「国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)の分科会は6日、国の長期ビジョン『フロンティア構想』の報告書をまとめた。国家の衰退を防ぎ、個人や企業が能力を最大限生かして新たな価値を生む国家像を2050年に実現するための政策を提言。『40歳定年』で雇用を流動化するなど労働生産性を高める改革案を盛り込んだ。学識者や企業人らで構成するフロンティア分科会(座長・大西隆東大大学院教授)が野田首相に報告した。首相は『社会全体で国づくりの議論が喚起されることを期待する』と述べ、近くまとめる日本再生戦略にも反映する意向を示した。改革案の柱は雇用分野だ。60歳定年制では企業内に人材が固定化し、産業の新陳代謝を阻害していると指摘。労使が合意すれば、管理職に変わる人が増える40歳での定年制もできる柔軟な雇用ルールを求めた。早期定年を選んだ企業には退職者への定年後1〜2年間の所得補償を義務付ける。社員の再教育の支援制度も作る。雇用契約は原則、有期とし、正社員と非正規の区分もなくす。」(『日本経済新聞』2012.07.07)
●「経済産業省は、東南アジア諸国やインドを中心としたインフラ・システム輸出のさらなる展開に向け、アフリカに狙いを定めて、輸出促進策の検討に着手する。『アフリカの5、6カ国を対象にスタディーし、施策を検討する』(貿易経済協力局)方針だ。2013年1月には施策をまとめる予定。」(『建設通信新聞』2012.07.09)
●「日本経済団体連合会は9日、『震災からの復興の加速に向けた提言』をまとめた。被災地域の生活再建と産業復興に向け、緊急に取り組むべき課題を整理した。CM(コンストラクション・マネジメント)を活用した設計・施工一括発注方式の導入による公共事業の推進や、公用・公共施設に係わる土地信託の活用を提言している。復興事業の発注集中化に伴う人手不足への対策として配置技術者要件の緩和なども盛り込んでいる。…まちづくり関連では、被災自治体や技術者・技能者の人材不足、労務単価・資材費の上昇を課題に挙げ、復興JVの柔軟化や主任技術者・管理技術者の配置要件緩和などを対策として盛り込んだ。建設要員や資機材の安定確保に向けた体制づくりや、作業員宿舎建設スキームの拡充についても打ち出した。復興施策の推進体制では、司令塔である復興庁について、被災地のエージェントとしての機能発揮が求められ、一元的な窓口として機能すべきと言及。」(『建設通信新聞』2012.07.11)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省東北地方整備局は、東日本大震災関連の復旧・復興工事を円滑に進めるため、複数工事の発注に対して同一テーマの技術提案を求めて一括で審査する『一括審査方式』の試行導入を検討している。提案内容を統一化することで、受発注者双方の業務負担が軽減されるほか、事業のスピードアップが期待できる。初弾として、宮城県石巻市内の築堤工事5件で試行する方針で、必要に応じて適用工事を拡大していく考えだ。…これら5件はWTO(世界貿易機関対象)の一般競争入札として、6月29日と7月2日にそれぞれ官報掲載されたが、一括審査方式の導入に伴い、公告を取り消し、7月中に改めて公告する予定だ。」(『建設通信新聞』2012.07.03)
●「公共発注機関の間で、入札ボンド制度を導入する動きにブレーキがかかっている。国土交通省などが行った調査によると、11年9月時点で入札ボンドを導入していた機関は、国・地方機関合わせて171団体と、1年前の10年9月時点に比べ27団体の増加にとどまった。中でも国や都道府県の導入機関数が09年9月時点からほとんど増えていない。国交省は制度の周知不足を理由に挙げるが、同省がここ数年力を入れてきた低価格入札の排除策が効果を上げてきたことも背景にあるようだ。」(『建設工業新聞』2012.07.03)
●「群馬県はこのほど、少子高齢化や人口減少に対応した県の将来像を構築するための『ぐんままちづくり<rジョン』の原案を公表した。市町村と連携し、人口減少を前提とした土地利用計画を進め、コンパクトシティーへの転換を図る。住宅関連では空家・空地の有効活用のほか、『良質な住宅を入手しやすくする』『良好な居住環境を増やす』ことなどを盛り込んだ。今後、市町村ごとに将来的に生じる課題を検証し、具体的なまちづくりのための施策展開を検討する方針。ビジョンはパブリックコメントを経て、今秋を目途にまとめる。」(『日本住宅新聞』2012.07.05)
●「川崎市は、2011年度から契約条例を改正して施行している公契約規定の契約実績(11年度分)をまとめ、4日に開かれた作業報酬審議会(会長・國重慎二弁護士)に報告した。工事は条例対象15件の約9割に当たる13件が低入札調査の対象となり、落札率は36.90%−99.35%だった。契約課は『賃金とは別の工法や技術的工夫による低価格応札で、労働者の賃金に影響はない』としている。作業報酬額は、いずれも条例で規定する下限額以上となっており、いまのところ規定違反は発生していない。…4日の作業報酬審議会では、審議会委員の丸田幸一首都圏建設産業ユニオン中央執行委員が、川崎市内の建設労働組合10団体で構成する『川崎市公契約条例建設連絡会』による調査結果を報告した。公契約規定の対象9現場で聞き取り調査などを実施した結果、条例で規定する周知様式事例や下限報酬額の掲示がないケースもあり、『受注者によって公契約規定の理解度に差異があり、特に労働者への周知義務不徹底が見受けられる』と指摘している。」(『建設通信新聞』2012.07.06)
●「国土交通省は来年度にも、全国に40万社超ある建設業の下請け業者を対象にした評価制度を導入する。工事の受注、施工数のほか、10〜20代の若年者を毎年採用して雇い続けているかといった項目を評価し、点数にして公表する。工事の発注者が優秀な事業者を選びやすくするのが狙いで、建設業の競争力強化や事業費削減につなげる。10日に公表する『建設業の再生と発展のための方策』に盛り込む。国交省は8月にも具体策を検討する有識者会議を新設する。売上高や利益といった経営状況だけでなく、従業員の研修制度があるか、とび職や左官といった技術者を何人雇っているかなども評価する。国交省傘下の地方整備局や地方自治体が会社を訪問して採点する。」(『日本経済新聞』2012.07.10)
●「国土交通省は、コンストラクション・マネジメント(CM)方式を導入する宮城県の東松島市と女川町の震災復旧・復興のモデル事業で、進ちょくに応じて事業エリアを区分し、コンストラクション・マネジャー(CMr)がプロジェクトを段階的に推進する事業イメージをまとめた。先行する早期整備エリアで地盤調査、詳細設計、施工の一連の業務の迅速化を図ると同時に、次期整備エリアでは基本設計段階までの業務を推進。被災地の復興事業をCMrがより効率的に一括管理することを重視している。モデル事業では『アットリスク型』と呼ばれる設計・施工一括発注のCM方式を採用。東松島市が区画整理事業、女川町が全域を対象に区画整理、防災集団移転、漁業集落防災機能強化の3事業などを想定している。被災自治体の発注業務を代行する都市再生機構が業務全般(工事・事業計画・換地・補償)の総合調整役を担い、近くCMrの公募手続きを開始する予定。大規模な土木工事の実績を持つゼネコンなどをCMrの対象とみている。」(『建設工業新聞』2012.07.10)
●「国土交通省は、有識者会議『建設産業戦略会議』が10日まとめた報告書『建設産業の再生と発展のための方策2012』に盛り込まれた主要施策について、具体策を検討するため三つの検討組職を立ち上げることを決めた。検討対象は、▽コンストラクション・マネジメント(CM)方式▽技能者の確保・育成▽リフォームを中心とした軽微な工事への対策。このほか建設業法など法改正を伴う方策は中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)の基本問題小委員会で対応する。」(『建設工業新聞』2012.07.12)
●「国土交通省の建設産業戦略会議(座長=大森文彦・東洋大学教授)は、住宅リフォームなど500万円未満の軽微な工事≠ノ関して、今後、建設業許可の対象とすることや建設業許可に準ずる仕組みを導入することなどについて、早期に検討を開始することを提言した。7月10日にまとめた『建設産業の再生と発展のための方策2012』に盛り込んだ。適正施工の確保と発注者保護が狙い。建設企業が消費者に説明すべき基本的な事項を取りまとめたマニュアル等を策定することなども求めた。」(『日本住宅新聞』2012.07.15)

労働・福祉

●「厚生労働省は2日、東日本大震災復旧・復興関連の労働災害で、2011年3月11日からことし5月31日までの休業4日以上の建設業死傷者が475人(6月7日時点、速報)となったことを明らかにした。このうち死亡者数は25人で、5月7日時点と同数だった。震災復旧・復興労災のうち、建設業の死傷者は、11年3月11日以降で全業種の81.7%を占める。死亡者数では78.1%が建設業となる。また、ことしに入っての5カ月間では、全業種の死傷者が99人(うち死亡者5人)で、うち90.9%に当たる90人(同4人)が建設業だった。震災復旧・復興工事に伴う工事量の増加で、技能労働者の不足が生じ、異業種から転職した未熟練労働者が増えていることが労災発生の背景にある。」(『建設通信新聞』2012.07.03)
●「厚生労働省は5日、2010年の1世帯あたりの平均所得が538万円と前年比11万6000円(2.1%)減少したと発表した。1987年(昭和62年)以来23年ぶりの低水準で、これまで最も多かった94年と比べて約126万円減った。…世帯所得の減少の要因を専門家は『企業の価格競争が激しくなるなかで、非正規雇用が増えたことが所得低下につながっている』(日本総合研究所の山田久調査部長)とみている。」(『日本経済新聞』2012.07.06)
●「東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)の復旧・復興工事における現場配置技術者の不足感が鮮明になってきた。国土交通省が3県内の企業を対象に実施した実態調査によると、2月時点で調査対象の企業に在籍する技術者の6割が既に現場に配置され、7割以上の企業から不足を懸念する声が上がっている。ただ、不足への対応をみると、社内技術者で可能な範囲で入札参加するとした企業が最も多く、JVなどを活用して対応する企業はほとんどない状況で、今後、さらに本格化する復旧・復興工事にも影響を与えそうだ。」(『建設通信新聞』2012.07.12)
●「最低賃金で働く人の手取り(可処分所得)水準が生活保護受給者より低くなる『逆転現象』が広がっている。昨秋の最低賃金の引き上げで逆転地域はいったん3つに減ったが、最新の実績で計り直したところ11の都道府県に増えた。最低賃金で働く人の社会保険料負担が増えたためだ。生活保護の方が暮らしが楽というのでは働く意欲が減退しかねず、見直しが急務となる。厚生労働省が10日、最低賃金の目安を話し合う委員会に調査結果を示した。昨年度の引き上げ分を加味した最低賃金から社会保険料を差し引いて可処分所得を計算。2010年度の1人当たり生活保護実績を時給に換算して比べた。」(『日本経済新聞』2012.07.11)

建設産業・経営

●「大成建設は、全国で1日約3万人が働く同社の建設工事現場の安全対策を一段と強化する。安全管理のキーマンとなる職長のモチベーションを高めるため、優秀な職長を評価・認定する制度の導入を検討。独白の方法で支店ごとの安全成績を点数化し、成績の思わしくない支店の安全管理の方法を短期間で見直していく新たな仕組みも導入した。現場運営や労働災害の実態を踏まえた対策を強化することで事故の根絶を目指す。」(『建設工業新聞』2012.07.04)
●「国土交通省は、経営事項審査時に社会保険の未加入企業であることが分かった場合に、加入指導する方針を決めた。未加入企業に対して送付する経審の結果通知書と合わせて保険加入に関する指導書も送付し、指導書に対して保険加入の報告がない場合は、厚生労働省の社会保険担当部局に通報する。11月1日から対応する。既に未加入対策として決定している建設業許可・更新時と立入検査時の加入指導とあわせて、同日以降の対応を強化する方針だ。」(『建設通信新聞』2012.07.06)
●「大成建設は環境関連設備大手、米CH2Mヒル(コロラド州)と除染事業で提携した。今後本格化する福島第1原発周辺の除染活動において、住民に対する説明や作業への同意取得など、現地での一連の折衝にCH社の手法を全面的に採り入れる。大規模な除染は日本のゼネコン(総合建設会社)にとって初のケースとなる。」(『日本経済新聞』2012.07.01)
●「国土交通省は、11年の建設業活動実態調査の結果をまとめた。大手建設業55社の直近事業年度の国内売上高総額は11兆9560億円(前年比8.3%減)と4年連続で減少した。土木建築工事が8兆8947億円(8.2%減)、設備工事が2兆5621億円(10.4%減)と大幅に落ち込んだ。海外展開をしている企業は46社で、海外工事の契約金額は総額1兆2674億円(8.8%増)と4年ぶりに増加した。調査は、総合建設業3.5社と設備工事業20社の計55社が対象で、11年10月1日時点での直近事業年度1年間の企業活動状況を調べた。回収率は100%。」(『建設工業新聞』2012.07.09)
●「総合商社が中国で大規模なマンション開発に乗り出す。三菱商事は現地の不動産大手と組み中国・大連市で分譲マンション約80棟を建設する。住友商事も江蘇省蘇州市で今夏建設を始める。中国の高度成長には減速傾向がみられるが、都市部への人口流入は続き中間所得層による住宅購買意欲は堅調。中国政府が規制を強めている投資目的の高額物件は避け、1戸1千万〜2千万円の物件で『実需』を狙う。」(『日本経済新聞』2012.07.10)
●「国土交通省の有識者会議『建設産業戦略会議』(座長・大森文彦東洋大教授)は10日、報告書『建設産業の再生と発展のための方策2012』をまとめ、奥田建副大臣に提出した。地域を支える足腰の強い建設産業の構築を掲げ、優良な専門工事業を評価する仕組みの創設や、コンストラクション・マネジメント(CM)方式の全国での導入を提案。海外で通用する建設業の育成も目指し、単価・数量精算契約など多様な入札契約方式の導入や中小建設業の海外展開支援も打ち出した。」(『建設工業新聞』2012.07.11)

まちづくり・住宅・不動産・環境

その他