情勢の特徴 - 2012年7月後半
●「消費増税をにらみ、住宅の駆け込み購入がじわりと出始めたようだ。過去最低水準に下がった住宅ローン金利も追い風となり、モデルルームの来場者は急増。住宅メーカーも住宅用地の在庫を積み増している。ただ、建築ラッシュが東日本大震災の復興と重なれば建設資材や人手不足がコスト増につながる懸念も浮上してきた。」(『日本経済新聞』2012.07.16)
●「財務、国土交通両省は本州と四国を結ぶ高速道路向けに続けてきた出資を来年度限りで打ち切る。利用低迷への打開策が見当たらず、運営主体である『本州四国連絡高速道路』の単独での再建を断念。2014年度をめどに他社と合併する計画だ。地域分割を前提とした05年の民営化時の基本理念を見直す。他線の利用者に料金の負担増が迫られる懸念もある。」(『日本経済新聞』2012.07.17)
●「国土交通省は、市街地再開発事業で再開発ビルを施行者に代わって整備する『特定建築者』について、一定の要件を満たす参加組合員が公募によらず特建者になれるように都市再開発法施行令を一部改正する。参加組合員は事業への関わり方をより柔軟に検討できるようになり、施行者側にとっては、民間資金・ノウハウを活用する選択肢が広がって事業が円滑化する効果が期待できる。改正案に対する意見募集を行っており、8月下旬〜9月上旬の施行を予定している。」(『建設通信新聞』2012.07.17)
●「3メガ銀行や大手信託銀行、地方銀行などで企業の海外展開を資金面から支援する動きが広がっている。企業のドル資金需要の高まりに対応してファンドを設けたり、損害保険会社と組んでリスク情報を提供したりして積極的に融資先を開拓。ドルを安定的に調達するため、日銀が9月から始める成長支援のためのドル融資の活用を予定する銀行も多い。日銀のまとめによると、三菱東京UFJ銀行など3メガ銀の海外向け貸出残高は3月末時点で約38兆2000億円と、2008年9月末以来の高水準。特にアジア向けが10兆9000億円と比較可能な05年以降で最高となった。国内の資金需要は低調だが、海外での設備投資や資源権益の確保などに伴い外貨の需要は高まっている。これを受け各行が活用を検討しているのが日銀のドル融資だ。日本の成長につながる外貨建て投融資をしている金融機関に、日銀が保有するドルを市場金利で貸し出すしくみ。貸出期間は最長4年で、9月に最初の融資を実行する予定だ。」(『日本経済新聞』2012.07.18)
●「政府は不動産投資信託(REIT)による海外不動産の取得を実質解禁する方針だ。海外の収益性のあるオフィスビルや店舗などを取り込み、停滞する日本の不動産投信市場をテコ入れする。アジアの新興国などに積極投資する日本企業の資金調達を支援しやすくする。日本の金融市場の再活性化と、日本企業の海外ビジネス拡大という好循環をつくるねらいだ。」(『日本経済新聞』2012.07.18)
●「大都市圏のオフィスビルや賃貸マンションなどを中心に、不動産取引に復調の兆しが出ている。1〜6月の上場企業(不動産投資信託=REITを含む)による不動産売買額は1兆1375億円と前年同期比10%増え、半期ベースで金融危機後最大になった。低金利を背景に不動産投信が活発に物件を取得しており、不動産価格全体を下支えする可能性もある。」(『日本経済新聞』2012.07.21)
●「地方の財政難が厳しさを増している。総務省は24日、地方交付税の自治体への配分状況を示す2012年度の『普通交付税大綱』を公表した。交付税に頼らずに財政を運営できる不交付団体は前年度より4自治体少ない55自治体で、5年連続で減少した。地価下落や企業の生産拠点縮小による税収減が響き、ピークだった1988年度の193自治体から3分の1以下に減った。」(『日本経済新聞』2012.07.24)
●「野田佳彦首相は25日、官邸で政府・民主三役会議を開き、2013年度予算編成に関する基本方針の調整に入った。27日にも閣議決定する日本再生戦略の関連事業に重点配分する特別枠を設け、1兆円規模にする方向で調整する。東日本大震災の復興費は引き続き別枠とし、それ以外の政策経費は12年度当初予算の71兆円以下に抑える。新規国債発行も12年度当初の44兆円以下とするが、与野党から歳出圧力が強まるのは必至だ。野田政権は13年度予算編成について、14年4月からの消費増税を見据えて財政健全化と経済成長の双方に目配りした内容にしたい考え。ただ、高齢化に伴い社会保障関係費で1兆円以上の自然増が見込まれるほか、次期衆院選をにらみ与野党の予算要求は強まっており、抑制型とは言い難い予算案になる可能性がある。12年度予算の概算要求基準では、特別枠として新成長戦略に重点配分する『日本再生重点化措置』を設け、7000億円程度を確保。特別枠の対象はエネルギー、インフラ整備など4分野とし、昨年末にまとめた政府案では約1兆円に膨らんだ。来年度予算編成では、政府の成長戦略を盛り込んだ日本再生戦略に沿った事業に重点配分する特別枠と位置付ける。再生戦略の中でも@医療・介護A環境・エネルギーB農林水産業――の3分野に優先的に配分し、概算要求の段階から1兆円規模に拡大する方向だ。一般歳出では12年度予算の枠組みを堅持し、国債の元利払い費を除く政策経費を71兆円以下とし、歳入では新規国債発行を44兆円以下に抑える。この方針の実現や特別枠への財源捻出のため、社会保障費や地方交付税などを除く政策経費を全体で1割減らす。」(『日本経済新聞』2012.07.26)
●日本の大企業上位400社が納めた法人3税の負担率が、2003年度から11年度の9年間に10ポイント近く減少している。法人3税は法人税、法人事業税、法人住民税。3税を合わせた実効税率は約40%。しかし、大企業優遇税制のため、実際に納めた法人3税の負担率は税率より低くなっている。各企業の決算データをもとに、各年度の税引き前当期純利益の上位企業について、法人3税負担額の税引き前当期純利益に対する割合(負担率)を試算した。上位400社で03年度に34.4%だった負担率か、11年度には24.7%へ9.7ポイント下落した。上位50社に限定すれば34.9%(03年度)から23.0%(11年度)へ11.9ポイントも下落した。下落幅が目立つのは11年度。10年度には上位400社で28.9%だった負担率が24.7%へと4.2ポイント下落した。上位50社の場合では30.1%から23.0%へと7.1ポイントも急落した。背景には09年度に導入された「海外子会社配当益金不算入」の制度がある。この制度は外国子会社から受ける配当などの額の95%を非課税とするもので、海外に子会社を多く持つ大企業ほど恩恵が大きくなる。日本経団連(米倉弘昌会長)が導入を求めきた。また100%出資の子会社について、親会社と損益を合算して法人税額を計算する連結納税制度や研究開発減税なども大企業ほど減税になる制度だ。こうした恩恵を受けて03年度から11年度の合計で税負担率が低い主な企業には商社が目立つ。三井物産9.1%、住友商事9.9%、三菱商事11.5%など税引き前当期純利益の1割程度しか法人3税負担がない。また、経団連会長の米倉氏が会長を務める住友化学は19.9%、ゴーン会長の取締役報酬が9億7000万円だった日産自動車は22.9%、国内トップ企業であるトヨタ自動車は30.8%だった。財界は消費税増税を迫る一方で、日本の法人税は高い≠ニして、さらなる法人課税の引き下げを求めている。しかし、日本の大企業の実際の税負担は軽く、大企業にこそ応分の負担を求めるべきである。(『しんぶん赤旗』2012.07.29より抜粋。)
●「税制改正によって、企業の防災・減災対策を加速させる動きが経済界に出始めた。衆院で通過し参院で議論が進む消費増税法案でも、民主・自民・公明3党は、増税分を原資に事前防災や減災対策に重点投資するほか、建設業界が税制改正で大きな課題としてきた『請負工事契約書の印紙税』も負担軽減検討を行うことで合意。2013年度の税制改正に向けて、経済界や他産業が企業の防災・減災対策促進優遇や印紙税廃止を求めていることは、建設産業界にとっても市場拡大など、追い風になりそうだ。」(『建設通信新聞』2012.07.30)
●「東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)の沿岸地域で生コンクリート、コンクリート用砕石、再生アスファルト混合物の主要3資材の価格が震災前に比べ軒並み高騰している。建設物価調査会の調査によると、価格高騰が顕著なのは仙台市、岩手県の宮古、釜石、大船渡の各市など。生コンや再生アス混合物の価格(1立方メートル当たり)が震災前に比べ1000円以上も高騰している。主要資材の生産量は震災前より増えているが、同調査会は今後、需要増に生産が追い付かず、供給が滞る可能性もあるとみている。同社が被災3県42市町村を対象に実施した主要3資材の価格動向調査によると、沿岸部15市町村の多くで震災前の11年3月時点の価格よりも12年3月時点の価格が高騰していた。」(『建設工業新聞』2012.07.30)
●「政府の国家戦略会議(議長、野田佳彦首相)が30日、2020年までの日本再生戦略をまとめた。健康、環境、農林水産業の3分野に優先的に取り組むのが柱で、財源を捻出するために『社会保障分野を含め、聖域を設けずに歳出全般を見直す』と明記。社会保障費の削減にも切り込む姿勢を示した。…『省庁の枠を超えた大胆な予算の組み替え。社会保障分野を含め、聖域を設けずに歳出全般を見直す』。日本再生戦略には11日に公表した原案になかった文言が盛り込まれた。民主党の前原誠司政調会長は30日、財務省に対して『社会保障費や義務的経費も含めて削れるものがないか洗い直してほしい』と指示した。政府は来年度の一般会計について、国債費を除く政策経費を71兆円以下、新規国債発行額を44兆円以下に抑える方向。財源が乏しいなか、高齢化で毎年1兆円規模で膨らむ社会保障費の削減も視野に入れ始めている。生活保護費の削減などが検討項目に上がりそうだ。」(『日本経済新聞』2012.07.31)
●「建設経済研究所が30日発表した建設投資見通しによると、東日本大震災の復興需要の押し上げや、民間投資の回復などで、12年度の名目建設投資は前年度比6.2%増の44兆5800億円となる見込みだ。4月の前回予想より1100億円程度の上方修正。13年度については震災関連予算の執行が進み、前年度からの繰越額が平年以下になるなどと想定したことから、0.9%減の44兆1700億円と予想している。国内建設投資は、震災復興特別会計等を加えた国の当初予算に、今後見込まれる12年度の補正予算2兆円程度のプラス効果を加え、政府建設投資が前回発表より6100億円増加すると予測。民間の住宅・非住宅投資も回復基調が続くとみている。ただ、欧州債務危機などの海外の経済動向や電力料金上昇による企業収益の圧迫といった懸念材料もあるとしている。」(『建設工業新聞』2012.07.31)
●「公共工事の積算に用いられる単価として毎年度国土交通省が公表する『設計労務単価』について同省は、通常の労務単価に必要経費分を上積みした場合の単価を併せて表示する方向で検討に入った。元・下請間の適正価格による契約につなげるのが狙い。奥田建副大臣が日刊建設工業新聞のインタビューで明らかにした。国交省の建設産業戦略会議が10日にまとめた報告書でも下請契約の支払いの透明性を確保する取り組みの一つとして対策の必要性を指摘していた。奥田副大臣は、建設産に入職する若手の人材が減少している状況に懸念を示し、『きつくて安い報酬では誰も入ってこない。元請と下請間の支払いを適正化する必要がある』と指摘。支払いの適正化を促す取り組みの一つとして、設計労務単価の表示を改める必要があるとの認識を示した。設計労務単価は、労働者に支払う純粋な賃金で、法定福利費や労務管理費、現場作業経費などの必要経費は含まれていない。ただ、労務単価に必要経費が含まれていると誤解している企業も多く、これが従業員を社会保険に加入させないことで経費を削減する『保険未加入企業』を生み出す一因ともいわれている。」(『建設通信新聞』2012.07.17)
●「鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、6月29日に国土交通省から工事実施計画が認可された整備新幹線の3路線3区間について、本年度末にも初弾工事に着手する。工期が長期間に及ぶ長大トンネルを先行。地元調整や調査・設計など準備が整ったトンネルから順次、工事発注の手続きに入る。認可に当たって国交省から要請されたコスト縮減の具体策として、トンネル工事1工区当たりの施工延長を伸ばすことを検討する。」(『建設工業新聞』2012.07.17)
●「国土交通省が、日本型CM(コンストラクション・マネジメント)方式の検討を本格化させる。東日本大震災の被災地である宮城県女川町の復興街づくりを対象に都市再生機構が試行するモデル事業で、設計・施工一括で発注するCMr(コンストラクション・マネジャー)の公募手続きが20日に始まり、9月にも選定する見通し。同省は今回導入するCM方式の検討組織を早急に立ち上げるほか、CMへの理解促進を図る自治体向け説明会も開く計画だ。」(『建設工業新聞』2012.07.18)
●「自治体の発注工事や委託業務に従事する労働者の最低賃金を決める『公契約条例』を制定する動きが拡大の兆しを見せている。6月には東京都渋谷区と国分寺市が相次いで条例を制定、2009年9月制定の千葉県野田市を皮切りに、条例を制定した自治体は全国で6市区となった。自治体にとっては、地元の企業・労働者の経営・生活苦境の打開と、低価格競争の負の連鎖歯止めが狙い。社会政策として位置付ける公契約条例の検討議論が進んでいる背景には、景気低迷と政権交代を契機に労働者団体の発言力が増していることもありそうだ。」(『建設通信新聞』2012.07.19)
●「国土交通省は、東日本大震災で地盤の液状化被害を受けたインフラ構造物などの復旧を支援するために開発を急ぐ新たな対策技術の概要を明らかにした。空港や港湾施設、住宅・宅地、ライフライン、道路などの各種インフラ別に液状化を軽減または抑制する9件の技術を開発する。港湾空港技術研究所や民間企業に開発を委託。空港と港湾の対策技術は13年度末、残る技術は12年度末までに実用化のめどをつける。」(『建設工業新聞』2012.07.19)
●「都市再生機構(UR)は20日、CM(コンストラクション・マネジメント)を活用した設計・施工一括発注方式を採用する宮城県女川町の面的整備事業のプロポーザルを公告する。国土交通省が東日本大震災の被災市町村をモデルに実施する考えを示していた方式で、CMr(コンストラクション・マネジャー)への支払いは調査や測量、設計、工事の原価にフィー(報酬)を加えた『コスト・プラス・フィー』とし、不確定要素のリスクに対応できる『リスク管理費』を事前に設定する方式も試行する。従来の業務だけのCMではなく、元請けが業務と工事を担う新しいタイプのCMで、CMの音及に向けた突破口になる可能性がある。」(『建設通信新聞』2012.07.20)
●「地方自治体が出資する第三セクターや地方公社の整理が進んできた。東京商工リサーチによると、三セクなどの2011年度の破綻件数は前年度を85%上回る26件で、調査を始めた1994年度以降で最高。多額の債務を抱えた三セクの集中処理を促すための特別な地方債の発行期限が近づき、自治体が重い腰を上げ始めた。消費増税を控え財政健全化を印象付ける狙いも浮かぶ。」(『日本経済新聞』2012.07.23)
●「国土交通省は、直轄事業における企業評価のあり方の検討に着手した。『建設産業の再生と発展のための方策2012』でも重要視した優良企業像≠具体化し、適正な競争環境を整えるとともに、入札・契約制度でこれを実現する内容を探る。12月に公表する中間まとめで一定の方向性を提示し、2013年3月に最終成果を取りまとめる予定だ。検討は『直轄事業における公共事業の品質確保の促進に関する懇談会』(座長・小澤一雅東大大学院教授)の中で進める。…論点は、▽優良企業像▽適正な競争環境▽下請企業の適正な評価▽入札・契約制度――の4点。議論の発端として、直轄事業の担い手として望ましい企業像(優良企業像)を評価するための指標を整理し、事業量を踏まえた適正な競争環境を実現するための方針をまとめる。これらの議論を踏まえた上で、優良企業に対するインセンティブ付与や民間の高度な技術力の活用といった入札・契約制度で実現する内容を提示する考え。」(『建設通信新聞』2012.07.25)
●「国土交通省は、今後発生が予想される首都直下地震や東海・東南海・南海3連動地震などを見据え、災害時に活用する工事発注方式の検討に乗りだす。応急復旧や本格復旧を迅速に進められるようにするのが狙い。東日本大震災の被災自治体が復旧工事の発注で試みている多様な方式のうち、効果が高い仕組みを抽出。海外で導入されている方式も参考にして新たな発注方式を検討し、本年度末までに一定の方向性を打ち出す。」(『建設工業新聞』2012.07.26)
●「国土交通省は、将来のインフラ整備を支える若年技術者の育成を目指し、総合評価方式の入札で、配置する若手技術者を評価するタイプを試行導入する検討を始めた。九州地方整備局と北海道開発局が独自に試行している方式を参考に評価方法を検討。配置予定技術者に年齢制限を設ける方法や、若手技術者を現場に配置する際に、技術指導するベテラン技術者の能力も含め評価する案などが挙がっている。年内に内容を固め本年度中に試行を始める。」(『建設工業新聞』2012.07.27)
●「東京都財務局は、工事入札で著しい低価格で応札した業者に行う低入札価格調査の内容を厳格化する。調査対象者には1次以下すべての下請予定業者の社会保険加入状況を確認してもらい、未加入が発覚した場合は落札を認めない。調査対象者に義務付けている主任級配置技術者の増員についても、履行されない場合は工事成績評定の減点対象とする。いずれも10月以降の入札に適用する。」(『建設工業新聞』2012.07.30)
●「厚生労働省は20日、日本経済の低成長が続いて労働市場の改革も進まなかった場合、2030年の就業者数は10年に比べて約850万人少ない5450万人程度に減るとの推計をまとめた。高齢化によって企業などで働く15〜64歳の人口そのものが減るためだ。政府が成長戦略を着実に進め、若者や女性、高齢者の働き手を増やせば、就業者数の落ち込みは210万人程度に抑えられるとしている。」(『日本経済新聞』2012.07.21)
●「厚生労働省は、2013年度から始まる第12次労働災害防止計画の検討に着手した。12年度に終了する第11次計画を受け、労働災害の発生状況に合わせた対策の重点化など5つの柱を据えて計画の策定に取り組む。建設業界については、東日本大震災の復旧・復興工事の本格化に伴う災害の増加も懸念されるため、工事発注者に対して施工時の安全衛生確保のための経費の計上を要請することも検討する。今後議論を重ね、年内の計画策定を目指す。」(『建設通信新聞』2012.07.24)
●「国土交通省は、工事の発注元となる民間企業の団体(31団体)に対し、建設労働者に法定福利費が確実に支払われるよう必要経費を盛り込んだ価格で発注を行うことを求める通知を23日付で出した。従業員を社会保険に加入させないことで経費を削減している『保険未加入企業』の排除策の一環。各団体から所属企業への周知を要語した。通知では、国交省が今年4月から、法定福利費を公共工事の予定価格に適切に反映させるために現場管理費率式を見直したことを紹介。民間工事でも、行き過ぎた低価格による発注をできる限り避け、労働者の社会保険(雇用、健康、年金保険)などの福利厚生費を適切に見込んだ価格で見積もり・契約が行われるよう配慮を求めた。具体的な配慮事項として、▽法定福利費を含む適正な積算に基づく予定価格の設定▽適正な単価設定▽適正な工期設定▽必要以上の低価格発注の抑制―の4点を列挙。国交省が各専門工事業団体に出した『法定福利費を含む標準見積書』の作成依頼書も添付した。」(『建設工業新聞』2012.07.24)
●「厚生労働省は24日、建設事業主や業界団体が助成を受けていた『建設雇用改善助成金』を廃止し、新たに『(仮称)建設雇用安定助成金』を創設する方針を固めた。同日開いた『労働政策審議会の雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会』(座長・鎌田耕一東洋大教授)に提示、条件付きで了承した。助成金全体の規模は維持するが、これまで対象だった、富士教育訓練センターなどで受講する場合の旅費一部助成など3項目は廃止し、若年労働者確保・育成、技能承継に重点配分する。建設雇用改善助成金は、建設事業主が支払う雇用保険料で1000分の1分を余分に負担したものが原資。これまで、中小建設事業主と中小建設事業主団体に対し、それぞれ教育訓棟助成金と建設雇用改善推進助成金として経費や賃金助成の支援をしてきた。2011年度実績で総額は39億8550万円。ただ民主党政権発足後の省内事業仕分けによって、『雇用改善助成金の一定期間経過後に廃止』方針が決定。学識者・労使代表者で構成される厚労省建設労働専門委員会は、存続を求めることで労使代表者が一致、再考を求めていた。」(『建設通信新聞』2012.07.25)
●中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は25日、2012年度の最低賃金(時給)引き上げの目安額を全国平均で7円とし、最賃を現在の737円から744円にすることを決めた。東日本大震災を口実に、引き上げ額を6円に縮小した昨年度を1円だけ上回り、2年連続で引き上げ額を1ケタ台にとどめた。引き上げの目安は、都道府県ごとにA〜Dの4ランクに分けられ、Aランクを5円、その他を4円引き上げるとした。最賃が生活保護費を下回る「逆転現象」が起きていると厚労省が認めた11都道府県について、労働者側は今年度中に解消するよう主張したが、使用者側が引き上げに抵抗。原則2年で解消させるとした幅を持たせた目安となっている。目安は26日の中央審議会で正式決定した後、都道府県の審議会がこれを基に最賃引き上げ額を審議し決定することになり、各地の審議会に向けた大幅上積みを求める運動が重要になる。(『しんぶん赤旗』2012.07.26より抜粋。)
●パートや契約社員などの有期労働に関する労働契約法改定案が衆院厚生労働委員会で25日、民主、自民、公明、生活、みんな各党の賛成多数で可決された。非正規労働者の雇用と生活を左右する重要法案にもかかわらず、わずか3時間余の質疑で強行された。(『しんぶん赤旗』2012.07.26より抜粋。)
●「不動産大手が大規模な分譲マンション建て替え事業に動き出した。野村不動産は都心で、東京建物は郊外団地で低層の老朽マンションを耐震性能や省エネ性能が高い大型物件にする。用地を手当てせずに大量の販売用住戸を生み出せるメリットがある。老朽物件の建て替えは災害に強い街づくりや、住民の高齢化が進んだニュータウンなどの活性化にもつながる。分譲マンションは昭和40年代から本格的に供給が始まり、建築後30年以上たつマンションは全国で100万戸を超す。だが、国土交通省によると昨年10月までの累計の建て替え件数(施工中や準備中を含む)は194件にとどまっており、潜在的需要は大きい。」(『日本経済新聞』2012.07.16)
●「国際建設技術協会は12日、2011年度海外コンサルティング業務等受注実績の調査結果をまとめた。受注総額は前年度比26.1%増の892億1000万円で過去最高を記録。受注件数は2.9%増の1040件となった。l件当たりの受注額が8600万円と、ここ数年では最高額となったほか、政府開発援助(ODA)関連が62%増の834億2000万円と大幅な伸びを示した。ODA関連のうち、国際協力機構(JICA)からの受注額は56%増の693億5000万円。前年度から51件増えた。円借款関連業務でも158億9000万円と前年度の80億円からほぼ倍増。円借款以外の受注も4.7%増の534億6000万円となっている。」(『建設通信新聞』2012.07.18)
●「九州北部豪雨は、熊本、大分両県に加え、福岡県内でも久留米市など7市町が福岡県から災害救助法の適用を受けるなど、甚大な被害をもたらした。各県の建設業協会会員は、土砂の除去や陥没した道路に土のうを置いて通行できるようにするなどの応急措置に追われている。大分県日田市の花月川や中津市の山国川は、3日に続いて14日にも再び氾檻(はんらん)した。大分県建設業協会の日田支部(原田安泰支部長)、中津支部(山ア弘彦支部長)も、ようやく復旧作業が落ち着いたところでの災害に、気を休めることができない状況が続いている。原田支部長は、『会員65社が道路の復旧作業に追われている。重機のリースも追いつかない』と、状況を説明する。市内では、橋が落ちて孤立状態が続いている地区もあり、『「コンクリートから人へ」では安全・安心は確保できない』とため息をつく。…福岡県建設業協会は、県と災害協定を結んでいないため、各社が個別に対応している。久留米市と協定を結んでいる久留米市土木協同組合も3日から土砂の除去やバリケードの設置などに追われている。石井一朗事務局長は『市からの依頼は150−160件に達している。組合員73社で14日からの3連休も休まずに復旧作業を行っている』と話す。」(『建設通信新聞』2012.07.18)
●「東日本建設業保証は、12年度第1回(4〜6月期)の建設業景況調査の結果を発表した。地元建設業界の景況について、『良い』と回答した企業の割合から『悪い』と回答した企業の割合を引いたBSI値は、マイナス19.5と前期比で1.5ポイント回復したものの、依然として悪い傾向が続いている。地区別では東北を除いて悪い傾向が続いており、北海道がマイナス25.5で最もマイナス幅が大きかった。受注総額のBSI値はマイナス14.5。マイナス幅が前期に比べ1.0ポイント縮小したものの、受注の減少傾向は続いている。官公庁工事と民間工事ともマイナス幅は小さくなっている。資材調達のBSI値はプラス1.0で、容易傾向に転じた。東北を除き容易傾向となっている。」(『建設工業新聞』2012.07.19)
●「東北地方整備局は、東日本大震災後に地元建設企業が実施した初期活動の実態調査結果をまとめた。それによると、震災発生から1週間以内に道路啓開や緊急応急復旧に出動した企業のうち、約6割が発災後4時間以内に活動を開始していたことが明らかになった。短時間に活動を開始できた要因には『従業員が地元の地理に詳しい』『自社で建設機械を保有し、オペレーターも地元だから』などが挙げられており、地元建設企業だからこそ可能だったことが裏付けられた。災害発生時に応急復旧する企業がいない災害対応空白地帯≠ナは、こうした迅速な対応ができないケースが想定されるだけに、何らかの事前対策が必要と言えそうだ。」(『建設通信新聞』2012.07.25)
●「東京商工リサーチがまとめた2012年6月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比31.7%減の232件となり、4カ月連続して前年同月を下回った。また、250件を割り込んだのはことし1月の226件以来となった。業種別では、土木工事業が29.3%減と減少が目立つ。一方で件数は少ないものの、建築リフォーム工事業は33.3%増、左官工事業が倍増した。負債総額は、25.4%減の306億4200万円で、5月に次いでことし2番目に少ない。平均負債額は10.0%増の1億3200万円だった。また『震災関連』倒産は1件、『中小企業金融円滑化法』に基づく貸付条件変更利用後の倒産は5件だった。」(『建設通信新聞』2012.07.30)
●「国土交通省は30日、行政や建設関係団体の実務者による『社会保険未加入対策推進協議会』のワーキンググループ(WG)の2回目の会合を省内で開き、業界団体が作る社会保険加入促進計画と、元請企業に提出する標準見積書に関する作成上の課題を協議した。団体から、保険加入の実態把握が難しく、加入促進計画の作成が思うように進んでいないとの声や、標準見積書は事業者の規模別や業種別で作成する必要性があるとの指摘もあり、作成が難航している状況が明らかになった。国交省は、5月末に社会保険未加入対策推進協議会と傘下のWGの初会合を開催。各団体ごとに加入促進計画と、法定福利費の標準的な見積書を作成するよう要請し、10月に開く3回目の会合までに検討状況を報告することを求めていた。30日の会合では、推進協の主要11団体の実務者が検討状況を報告したが、会員以外の下位企業の関係者や再雇用者などの実態把握が難しく、会員でもどのような保険に加入しているかを把握するのに苦労している現状が指摘された。標準見積書については、小規模事業者と元請として活動する大規模事業者、異なる業種の事業者では法定福利費の内訳が違うとの指摘がでた。さらに、当初契約時と精算時では請負額が変更されていることもあって、福利厚生費の算出方法の確定が難しいとの声もあった。国交筈は、団体からこうした意見が出ていることを踏まえ、8〜9月にもWGを開催することを検討する考えだ。…国土交通省は、建設業者の社会保険(年金、医療、雇用)加入促進に関し、医療保険への加入をめぐり一部に誤解が生じている可能性があるとして、地方整備局や都道府県を通じて正しい情報を周知する。医療保険には、従業員5人以上の法人などを加入対象に全国健康保険協会が運営する健康保険(協会けんぽ)と、従業員5人未満の事業主や一人親方が加入する国民健康保険(国保)があり、全建総連から『国保に加入している事業主の中に、協会けんぽにあらためて入り直す必要があると誤解している事業主がある』との指摘があったためだ。これを受け国交省は、社会保険加入促進で求めている医療保険の加入者の位置付けを明確化する必要があると判断。『国保に加入済みの事業主や一人親方は既に必要な健康保険に加入しているものと扱い、あらためて協会けんぽに入り直す必要はない』とする通知を近く出すことにした。」(『建設工業新聞』2012.07.31)
●「全国鉄筋工事業協会(全鉄筋、内山聖会長)は、社会保険未加入問題で三つのプロジェクトチーム(PT)を設置し、協会としての対応を加速させる。三つのPTは、『社会保険未加入対策推進計画策定PT』『同標準見積書作成PT』『加入状況調査票作成PT』。このうち標準見積書作成PTは、25日の初会合で標準見積書作成要領(試行案)について議論。8月28日の次回会合で最終案を作成することを決めた。標準見積書作成PTの初会合では、全鉄筋加盟の各団体から提出してもらった現在使用中の標準見積書などを比較検討した。全国10団体から提出があり、その中で東鉄協の案をベースに全鉄筋の標準見積書をまとめることにした。その後、9月中に協会の経営委員会で検討し、9月末に社会保険未加入対策推進協議会(国土交通、厚生労働省が所管)に提出する。」(『建設工業新聞』2012.07.31)
●住環境の整備や地域経済対策などを目的とした「住宅リブオーム助成制度」の創設が、全国533自治体(3県、530市町村)に広がっていることが分かった(7月1日現在)。全国商工新聞が各都道府県の商工団体連合会(県連)の調査などを基にまとめたもの。リフォーム助成の全国調査は04年12月に始まり、今回が7回目。第1回の調査(87自治体)と比べ、6倍と飛躍的に増加。同制度が地域活性化策として大きく広がっていることを示している。制度創設にあたり、全国の県連・民商は建設関連団体との協力・共同を広げ、自治体への働きかけを強化。また、その活用でも、ビラを作って宣伝したり、制度の学習会を積み重ねるなど、業者自身の営業力を高めてきている。しかし自治体総数1789に対し、実施自治体は3分の1に到達したばかり。さらに制度の創設とその活用、制度そのものの改善を進めることが求められている。(『全国商工新聞』2012.07.16より抜粋。)
●「木造住宅の液状化対策を検討している東京都は30日、本年度末までに建て主や所有者向けにつくる対策の基本方針案を明らかにした。地盤調査や対策工法の事例を紹介。これらの内容を理解してもらえるよう、来年度に創設する建築士などの派遣相談制度の枠組みも説明している。さらに分かりやすい内容に仕上げて、来年度から対策の実施を本格的に促す。都の有識者会議『東京都建築物液状化対策検討委員会』が同日開いた会合で報告した。基本方針は、昨年3月の東日本大震災で液状化被害が発生した木造住宅の地盤や建物の補強・補修を促すため、建て主や所有者の参考にしてもらう考えだ。基本方針案では、敷地の地盤調査や最適な対策工法などを理解してもらうため、それぞれ複数の事例を紹介。うち対策工法については、新築や改修、沈下修復といった工事の内容別に計14の列記を示した。ただ、有識者会議の委員からは、各事例の利点や欠点、コストといった都民が最も判断材料にしやすい事項が不十分との指摘があった。このため都は、来年度から建築士や地盤改良などの専門家を派遣して、対策工法の概要や費用などの相談に応じたり助言したりする制度をつくる。」(『建設工業新聞』2012.07.31)