情勢の特徴 - 2012年8月後半
●「政府は17日の閣議で、2013年度予算の概算要求基準を決定した。7月末に決定した日本再生戦略で掲げた『エネルギー・環境(グリーン)』などの最重要分野に予算を重点配分する。公共事業費など政策的経費を前年度比l割削減する一方、各省庁は削減額のl.5−4倍を重点分野で要求できる。重点分野の要求総額は2兆−4兆円となる。各省庁の要求は9月7日に締め切る。」(『建設通信新聞』2012.08.20)
●「政府は風力で起こした電気を消費地に送るための送電線を電力会社、風力発電事業者と共同で整備する。官民で3000億円規模の基金を設立し、まず北海道や東北で重点的に建設する方針だ。政府は風力を再生可能エネルギーの柱と位置づけているが、発電に適した場所は都市部や工業地域から遠い。初期投資のかかる送電線を用意することで、新規事業者の参入を促す。」(『日本経済新聞』2012.08.22)
●「政府は、2015年度までの中期財政フレームを固めた。毎年度の予算の大枠を縛るための計画で、近く閣議決定する予定。今回のポイントは14年度、15年度の消費増税による税収増が織り込まれたことだ。消費増税によって、毎年度、公共事業費の削減傾向が変わるとの期待もあるものの、今回のフレームからは、この構図を変えないという政府の意図が透けて見える。」(『建設通信新聞』2012.08.28)
●「東日本大震災の被災地で生コンクリートの供給が綱渡り状態に陥っている。骨材(砂、砕石)の不足に加え、生コン工場の製造能力自体が限界に近づくエリアも出始めている。骨材不足問題に対応するため、経済産業省はJIS工場の認定審査で手続きの迅速化を登録審査機関に要請した。一方、製造能力の増強では岩手県内で仮設プラントの設置に動いた協同組合もある。復興工事に不可欠な生コンをどう安定的に確保していくのか、官民を挙げた取り組みが求められている。」(『建設工業新聞』2012.08.31)
●「国土交通省は、地方道路公社などに道路の維持管理業務を民間企業に複数年で包括的に委託する『長期メンテナンス契約』の導入を促す。民間の持つ知恵や工夫を最大限に生かして維持管理業務の効率化と低コスト化を図るのが狙いで、導入に向けた検討・調査費用を助成する。奈良県道路公社が本年度から試行中の長期メンテナンス契約の取り組みを支援。同様の取り組みを他の地方道路公社にも促す。13年度予算の概算要求にも関連経費を盛り込む方針だ。」(『建設工業新聞』2012.08.21)
●「東日本大震災からの復興で不足する技術系職員の確保に向けた動きが急速に進んでいる。復興庁は24日、今年度後半に各被災自治体で591人の職員数が不足するとし、不足職員が確保できない場合には、宮城県東松島市、女川町で導入した『新CM(コンストラクション・マネジメント)』の他地域への拡大の可能性にも言及した。不足数が浮き彫りになった技術系職員確保の行方が、地域の街づくりを設計・施工で一括して行う新CMが拡大のかぎを握っていることが明らかになった格好だ。」(『建設通信新聞』2012.08.27)
●「文部科学省は27日、『学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議』(杉山武彦主査)と、同会議の『老朽対策検討特別部会』(上野淳部会長)の合同会合を開き、『学校施設老朽対策ビジョン』と『学校施設整備基本構想の在り方』についてそれぞれ中間まとめを行った。老朽対策ビジョンでは、施設の劣化状況や教育内容への適応状況などの適切な把握、中長期的な整備計画に基づいて、『事後保全型』から『予防保全型』への転換を要請した。」(『建設工業新聞』2012.08.28)
●「社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)と交通政策審議会(交整審、同)技術分科会技術部会が設置した『社会資本メンテナンス小委員会』の初会合が29日開かれ、社会資本の維持管理・更新費用の将来推計や今後の維持管理・更新のあり方の検討が始まった。国や地方自治体などが所管する10分野のインフラ施設を対象に2013年〜62年の50年間に必要となる更新費用を明らかにし、インフラ別の対策を打ち出す。同小委は来年3月末の中間報告を経て13年度中に最終報告をまとめる。」(『建設工業新聞』2012.08.30)
●「国土交通省は、有識者会議の建設産業戦略会議が7月にまとめた報告書『建設産業の再生と発展のための方策2012』に盛り込まれた主要施策の実施に向けて9月中旬に発足予定の三つの検討組織のうち、技能者の確保・育成に関する検討会(本会)の下に三つの検討の場を設置する。検討項目が多岐にわたり、具体化には専門知識を持つ実務者による検討が必要と判断した。『専門工事業の評価』『就労履歴管理システム』『戦略的広報』の三つを想定している。」(『建設工業新聞』2012.08.30)
●「環境省は再生可能エネルギーの発電能力を増やす新目標をまとめた。2030年までに洋上風力発電や地熱発電など新しい4種類の発電能力を計1941万キロワットと10年度の約6倍に拡大し、全体の約1割に高める。原子力発電を減らす政府の方針を踏まえ、発電手法を多様にする。ただ、コスト高の再生エネが増えると電気料金の上昇要因となる可能性もある。」(『日本経済新聞』2012.08.31)
●「政府が29日に南海トラフ巨大地震の被害想定を公表したのを受け、国土交通省と内閣府は、13年度予算の概算要求で全国防災を推進する事業費の確保を最重点政策の一つに据える。政府は公共事業などの政策的経費を前年度比1割削減する一方、各省庁には削減額の1.5倍を重点分野で要求することを認めている。人的被害が従来想定を上回る自治体からは津波対策などを求める陳情が増えるとみて、内閣府、国交省とも重点要求枠を最大限に活用。要求に上限を設けない東日本大震災復興予算の特別会計枠でも防災予算の上積みを目指す。」(『建設工業新聞』2012.08.31)
●「建設業就業者の年齢構成に変化が表れ始めていることが、国土交通省の分析で明らかになった。ここ数年、高い技術と豊富な経験を持ち、建設業を支える中心的な世代となる50代の就業者数が、若年層の減少を上回るペースで加速度的に減少し続けている。人材の“量的”な縮小だけでなく、技術・技能継承の観点から“質的”な低下も懸念される状況にあり、建設業界にとって大きな課題に発展する可能性もある。」(『建設通信新聞』2012.08.21)
●「埼玉土建一般労働組合が『労働者供給事業』をスタートさせた。営利目的の労働者派遣事業とは異なる同事業は、職業安定法の規定に基づいて労働組合だけが実施でき、労働者にとってはより水準の高い労働条件を確保できるというメリットがある。埼玉土建は7月1日に厚生労働相の認可を受けて今月、事業に着手した。労働者供給事業では、労働組合が供給先と供給契約(労働協約)を結び、労働者の賃金や労働条件を確保した上で労働組合から供給先に組合員を派遣する。労働者は供給先と労働協約に基づく雇用契約を結び、賃金は供給先から労働者に直接支払われる。労働者派遣事業と違って手数料や紹介料が発生せず、より高い水準の労働条件も実現できると期待されている。」(『建設工業新聞』2012.08.27)
●「大和ハウス工業は、フジタの株式を取得し、子会社化することを決めた。フジタの持つ技術力、企画力、販売チャンネルと大和ハウスの提案力、ビジネスモデルを融合することで、コア事業の競争力強化、収益機会の開拓といった『成長の継続』と海外拠点の整備、海外展開の業容拡大といった『成長への布石』につながるとみている。ゴールドマン・サックスが組成したファンド『フジタ・ホールディングス』が保有するC種優先株式888万8889株、D種優先株式1000万株を500億円で取得、12月20日に株券を譲り受ける予定だ。フジタの海外事業は、北米・東南アジアで大和ハウスより先行しており、『その海外プラットホームを活用することで、グループとして海外事業の拡大、強化を促進することが可能になる』(大和ハウス工業)という。また、『国内でも事業施設、商業施設などのビジネスを拡大、強化することが可能』(同)。」(『建設通信新聞』2012.08.16)
●「大手・準大手ゼネコンの2012年4−6月(第1四半期)の受注高は、25社中16社が前年同期の実績を上回った。東日本大震災の復興需要を背景に『景気は緩やかな回復基調にある』との見方が広がりつつあるものの、受注競争の激化や労務費の高騰などで『厳しい経営環境が続いている』というのが各社の共通認識だ。ただ、こうした状況下で、25社の受注高合計は前年同期比23・8%増となり、通期受注見通しに対する達成率では、11社が20%を超え、順調な滑り出しとなった。」(『建設通信新聞』2012.08.17)
●「国土交通省は、社会保険未加入対策を推進する上で専門工事業団体が抱く多くの懸念に対して見解をまとめ、23日付で同対策推進協議会を構成する73団体に送付した。法定福利費の内訳明示によって法定福利費以外の経費が削減されかねない状況に対し、そうした行為について明確に声を上げるよう指摘。また、保険加入を促進する上で問題となっている労働者か事業主かの判断に関しては、実例をもとにした資料集を作成する考えを示した。」(『建設通信新聞』2012.08.24)
●「家電量販最大手のヤマダ電機は高齢者向け住宅の開発事業を始める。家電や医療システムなどを組み込んだ『サービス付き高齢者向け住宅』を設計し、2012年度中に仙台市など10カ所程度で建設する。住宅関連事業を15年3月期までに現在の約4倍の3140億円に伸ばす計画。家電販売が頭打ちとなるなか、高齢者向け住宅事業で成長力を維持する。」(『日本経済新聞』2012.08.31)
●「政府は29日、駿河湾から九州沖にかけての太平洋に延びる海底の溝、南海トラフを震源とする巨大地震の被害想定(第1次報告)を発表した。新たに示された震度分布や津波の浸水域などを踏まえ、地震動・津波モデルのケースごとに被害規模を推定。その結果、中央防災会議が設定した強震動生成域の基本ケースでは約62万7000棟、生成域が陸地に近い陸側ケースでは134万6000棟が揺れによって全壊するとした。建物の耐震化率(現状約8割)を約9割まで引き上げれば、基本ケースでは全壊棟数を約4割減の約36万1000棟に抑えられるとみている。」(『建設工業新聞』2012.08.30)