情勢の特徴 - 2012年9月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省が先に発表した13年度の予算概算要求は、一般会計の総額(国費)が前年度比4.3%増の4兆7410億円で、うち公共事業費は5.1%増の4兆1343億円となった。防災・減災対策、エネルギー・環境分野、国際競争力強化の施策に重点配分。総額、公共事業費とも増額要求になったが、要求が実現するかどうかは、政府が各省庁に認めた『日本再生戦略』の重点方転策に対する『特別重点要求枠』と『重点要求枠』分の獲得次第となる。同省が重点枠で要求したのは全省庁の中で最も多い6153億円。」(『建設工業新聞』2012.09.18)
●「国土交通省が19日発表した12年7月1日時点の都道府県地価(基準地価)は、全国的に下落傾向が続く一方、下落率は縮小し、上昇・横ばいの地点も増加した。全国平均の下落率は住宅地が2.5%(前年は3.2%)、商業地が3.1%(4.0%)。3大都市圏での回復基調が続くとともに、地方圏の住宅地の下落幅が4年ぶりに縮小に転じた。不動産市場には明るさが戻りつつあるが、円高や欧州債務危機の影響など先行きには不透明感が残っており、国交省は地価への影響を注視する必要があるとしている。」(『建設工業新聞』2012.09.20)
●「中古住宅市場の活性化に官民が連携して取り組む。政府は不動産会社などと共同で、2015年度にも価格や耐震改修の履歴など中古住宅100万件超の情報を集めたデータベースを構築する。中古住宅の品質を評価する新基準も作成し、価格形成に役立てる。大手銀行は中古住宅取得・リフォーム向けの低利融資を相次いで投入し始めた。新築中心だった日本の住宅市場を転換する試みが進みだしている。」(『日本経済新聞』2012.09.23)
●「不動産投資信託(REIT)への資金流入が続いている。上場する不動産投信の値動きを示す東証REIT指数は25日、約5カ月半ぶりに節目の1000台を回復した。都心部のオフィス市況の回復期待を支えに、オフィス系不動産投信の上昇が目立つ。国債や株式に比べた利回りの高さに注目した買いも根強く、中長期的にも資金流入が続くとの見方が多い。」(『日本経済新聞』2012.09.26)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、今年6月に施行された津波防災地域づくり法を適用して復興まちづくりを計画する東日本大震災の被災市町村を支援するため、来年度に被災地でモデル事業を実施する方針を固めた。同法に基づく津波防災地域づくりを行うには、被災市町村が推進計画を作成する必要があるが、職員不足やまちづくりの経験不足が指摘されている。国交省はモデル事業を行う地域に職員を派遣し、被災市町村の計画づくりを支援。モデル事業の取り組み内容を基に、14年度末にも被災自治体向けに推進計画の作成マニュアルをまとめる考えだ。」(『建設工業新聞』2012.09.24)
●「内閣府と復興庁は、PFI手法を活用した震災復興案件の支援対象を選定した。公共施設等運営権(コンセッション)を活用する案件が1件、複数の施設をPFI手法で整備する案件が4件、PFI活用のための民間事業者の構想の調査対象案件が4件の計9件が選定された。支援対象は、6月から7月にかけて応募を受け付け、11件寄せられた構想の中から選定。地方公共団体の計画や民間事業者の構想を公募し、新制度の利用促進やPFI事業の具体化に向けた調査の支援や復興への取り組みを促進する。コンセッションを活用する案件には、宮城県気仙沼市の『耐浪性漁業用燃料備蓄基地再建プロジェクト』の1件が選定された。複数の施設をまとめてPFIで整備する案件では、宮城県女川町の(仮称)女川町水産加工団地整備等復興事業のほか、福島県須賀川市の(仮称)市民交流センター、宮城県塩竃市の千賀の浦海洋文化施設、同名取市の名取市沿岸地域活性化事業の計4件が選ばれた。」(『建設通信新聞』2012.09.25)
●「東京都港区のJR浜松町駅西口周辺地区の一体開発を計画している民間事業者らが10月、都に対し都市再生特別地区制度の適用を提案する。約3.2ヘクタールの区域を特区に設定。現行の容積率上限(平均612%)を大幅に引き上げ、l120%とするよう求める。順調にいけば来年2月の都都市計画審議会を経て、同3月に都市計画決定する見込みで、これを受けて超高層3棟を含む総延べ床面積36.9万平方メートルの開発計画を推進する。特区エリアに隣接し、別途街づくりの議論を進めている地区を含めた約3.9ヘクタールの街区一体で地区計画を設定する提案も区に対して行う予定だ。」(『建設工業新聞』2012.09.25)
●「国土交通省が2011年度に導入した地域維持型契約方式の実績が上がっていない。導入を拡大したい同省の思いとは裏腹に、地域維持事業の抱える課題が地方・地域によって異なることやJV企業側の懸念を解消できないなど、課題が山積しているためだ。直轄工事での導入実績も地域が限定される上、地域維持型JVが落札したケースもわずかで、同方式のメリットが最大限に生かされているとは言えそうにない。このため、同省も対応に乗り出す意向を示している。」(『建設通信新聞』2012.09.26)
●「国土交通省は、公共サービス改革法に基づく官民競争入札(市場化テスト)で、国が管理する空港の土木施設維持修繕工事の入札に参加できる業者を拡大する。13年度から市場化テストを導入する11空港を対象に、参加業者の本・支店などの所在地を限定する地域要件を緩和。単年度の工事規模が5000万円以下の案件については、舗装A等級業者に加え、同B等級業者の入札参加も認める。門戸拡大により、事業者選定の透明性・競争性の向上を図る。」(『建設工業新聞』2012.09.26)

労働・福祉

●「厚生労働省の『2011年雇用動向調査』で、建設業の入職者数増加によって、入職率と離職率の割合を示す入職超過率が前年調査で全産業最悪から改善したことが分かった。また、建設業は、10年の調査で入職者に占める転職入職者(転職者)の割合は全産業の中で最も高かったが、12年調査では4.6ポイント低下した。震災需要などを背景に、新規入職者数が増加したことが理由だ。」(『建設通信新聞』2012.09.18)
●「関東7県(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨)の建設業協会の若手経営者などでつくる関東建設青年会議は、公共工事の積算に用いる『公共工事設計労務単価』の引き上げを求める提言をまとめた。単価設定が低く、生活を維持できないとして適切な単価設定を求めている。…提言では、▽巨大災害が懸念される中、建設産業の衰退は災害復旧作業の遅れにつながるため、技能労働者を確保するためにも公共工事設計労務単価の上昇が必要▽労務単価調査では、調査後に十分な検証を行い、負のスパイラルに陥らないようにする▽公共工事設計労務単価の設定について他産業の生産労働者の賃金との比較を考慮する―との3点の改善要望を提示した。」(『建設工業新聞』2012.09.18)
●「富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)は、東日本大震災で被災し、やむなく離職した人々の再就職を支援するため、2011年度に引き続き、静岡県(静岡県立沼津技術専門校)からの委託職業訓練として、再就職に役立つ技能を修得する公共職業訓棟(4コース)を実施する。受講はすべて無料だが、交通費の一部負担(5000円)が必要になる。岩手県、宮城県、福島県の公共職業安定所(ハローワーク)の窓口に申請し、受講あっせん後に訓練実施となる。1回目を4コースで9月17日から28日までの日程で実施している。」(『建設通信新聞』2012.09.19)
●「中央環境審議会(環境相の諮問機関)大気環境部会は19日の会合で、『石綿飛散防止専門委員会』によるアスベスト(石綿)飛散防止対策のさらなる規制強化策の検討状況の報告を受け議論した。専門委の委員長を務める浅野直人委員は『建築工事の解体現場は想像以上に問題点が多く、解体工事が終わると証拠が残らず、(石綿飛散防止対策の)手抜きにつながりやすい』と指摘した上で、『施主である発注者の責任を強化する方向で今後、検討したい』と述べた。これに対し部会の委員からは、『発注者の概念、定義を明確にする必要がある』『発注者責任の強化ではなく、施工者に対する指導強化や優良施工者を定める制度導入によって対策を強化すべき』などの意見が出された。専門委で検討している論点は、▽自治体による現場立ち入り権限強化と事前調査の義務化▽敷地境界などでの大気濃度測定の義務付けと測定結果の評価▽大気濃度測定の試料採取と分析▽発注者による配慮(責任強化)▽法令徹底と透明性の確保▽特定建築材料以外の石綿含有建材(レベル3)を除去する際の飛散防止対策▽罰則強化や違反者の公表、石綿除去後の完成検査の導入など――の7項目。」(『建設通信新聞』2012.09.20)

建設産業・経営

●「国土交通省は13日、技能労働者の法定福利費確保に向け、元請企業で構成する73の業界団体へ取り組みの周知徹底を図るよう通知した。通知は6月の下請企業の団体、7月の民間発注者団体に続き3件目。関係する受発注者の理解も進んでいることを踏まえ、元請企業から発注者側へ法定福利費の確保を働き掛けることや、企業内でも営業担当者など全体への周知徹底を求めている。…発注者との契約については、請負契約の見積もりの際に法定福利費を経費に含んだ形で内訳を提示することを要請。7月には民間発注者団体にも見積もりや契約時に法定福利費が確保されるよう配慮することを通知しており、発注者側の理解も進んでいることから、元請企業からも確保に向けた働き掛けを要望している。一方、元請企業としての立場や法定福利費の扱いを再認識してもらうことも呼び掛ける。法定福利費は変動費として扱うべきでなく、必要な労務費と合わせ適正な法定福利費を確保することを、改めて社内に周知してもらう。営業部門担当者や加入指導する現場関係者など、企業内全体での理解を徹底するよう求めている。」(『建設通信新聞』2012.09.18)
●「厚生労働省は20日、2013年度に創設する建設事業主や業界団体向けの助成金について、制度設計の大枠を明らかにした。建設産業界が危機感を強めている若年労働者の確保・育成と技能承継問題に重点的に対応する制度とし、事業主向けには4つのメニューをそろえた。団体は『魅力ある職場づくり』の事業を助成対象とし、現行制度と比べ、助成金の上限額を引き上げることで、団体の積極的な取り組みを支援する。新たな助成金は、12年度で廃止する『建設教育訓練助成金』と『建設雇用改善推進助成金』に替わる制度。技能労働者の処遇低下による入職や、技能継承が進まないという国土交通省が抱える政策課題の解決にもつながるため、厚労、国交両省が調整し、事業主や団体が取り組む若年者に魅力ある職場づくりや技能向上への支援を前面に打ち出した。」(『建設通信新聞』2012.09.21)
●「建設産業専門団体連合会の会長を務める才賀清二郎才賀組会長は、行政と建設業界が一体となって取り組み始めた社会保険未加入対策について、『大手ゼネコンから下請けに対し、労働者名簿に保険番号を記載することを求める動きが出始めている』ことを明らかにした。厚生労働省が20日に開いた労働政策審議会建設労働専門委員会で述べた。才賀発言の背景には、社会保険未加入の下請企業が保険加入を進めるための原資である法定福利費を確保するための道筋が定まっていない段階で、元請けからの保険加入指導が強まれば、下請けの経営悪化につながりかねないとの懸念がある。」(『建設通信新聞』2012.09.24)
●「シンガポールで送配電事業を展開するシンガポールパワー(SP)アセット社は、送電線を敷設するための大深度地下トンネル工事を大林組、西松建設の日系2社を含む5者に発注した。総事業費20億シンガポールドル(約1,250億円)を投じ、シンガポール島の地下60メートルに東西と南北を結ぶ、総延長35キロのトンネルを建設する。年末に着工し、2018年完成を目指す。」(『建設通信新聞』2012.09.24)
●「西松建設は、シンガポールで超高圧送電線用の大深度トンネル建設工事を受注した。発注者は送配電事業を手掛けるシンガポールパワーアセット。現地の建設会社KTCCEとJVを組み受注した。請負金額は約162億円。地下60メートルの大深度区間を含む延長5442メートルのトンネルをシールド工法で構築する。今後着工し、17年4月の完成を目指す。」(『建設通信新聞』2012.09.24)
●「清水建設は横浜市のみなとみらい21地区に大規模なオフィスビルを建設する。約220億円を投じ、2014年5月に完成する予定だ。1フロア当たりの面積は約5600平方メートルと国内最大規模。非常時にはテナント向けに約72時間利用できる電源を設けるなど事業継続計画(BCP)を重視する。」(『日本経済新聞』2012.09.25)
●「日本道路建設業協会(三好武夫会長)は、『道路建設業界における人材確保等に関する基本方針』をまとめた。2012年度の取り組みでは、毎月第2土曜日の統一閉所や日曜日の全閉所推進などを示した。同協会として、人材確保の基本方針を作成したのは初めてで、深刻化する若年層の入職者減に協会として取り組む意志を示す目的があるとみられる。あわせて、『社会保険加入促進計画』も策定した。社会保険未加入対策推進協議会に提出する。」(『建設通信新聞』2012.09.25)
●「昨年3月の福島第1原発事故の後、ゼネコン各社が急ピッチで開発を進めてきた放射性物質の除染・減容化技術が実用化段階に入ってきた。地表面の水洗いなど人手に頼ったこれまでの方法から、さまざまな分野の技術を結集して高度化を図っているのが特徴。汚染土の仮置き場や中間貯蔵施設の建設コスト圧縮が期待される減容化の新技術も目立つ。除染事業の効苧効率アップとコスト削減に役立ちそうだ。」(『建設工業新聞』2012.09.25)
●「国土交通省は25日、建設業構造実態調査の結果を公表した。経営上の課題では、人材不足を挙げる意見が増加し、労働者の確保に対する懸念が浮き彫りになった。また、社会保険の加入や事業転換の状況も明らかになった。保険の加入状況の調査結果では、医療保険の加入が84.5%、年金保険が83.7%、雇用保険が80.5%と、いずれも8割を超えている。いずれの保険も、資本金1000万円以上の法人は加入が90%を超えた一方、個人は40−50%台、1000万円未満の法人は70−80%台と、差が見られた。ただ、国交省では、企業に関するアンケートのため非正規社員の加入状況などを算定していない企業もあるとみており、正確な実態把握は別の調査でも実施していくとしている。」(『建設通信新聞』2012.09.26)

まちづくり・住宅・不動産・環境

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