情勢の特徴 - 2012年10月前半
●「日銀が1日発表した.9月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の景況感は3四半期ぶりに悪化した。企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でマイナス3になり、6月の前回調査から2ポイント悪化した。大企業非製造業の業況判断DIはプラス8と前回調査から横ばい。海外経済の減速で輸出産業の悪化が目立つ一方、内需型産業は底堅さを保った。」(『日本経済新聞』2012.10.01)
●「日本とインドネシア両政府は9日、インドネシアの首都ジャカルタでの都市開発計画で合意する。道路整備や鉄道建設などインフラ開発を中心に、総事業費は2020年までに3兆円規模。計画作りには日本企業も参加し、約1兆円分の受注を目指す。計画から保守・点検までを一体的に手掛ける『パッケージ型インフラ輸出』のモデルとする考えだ。9日に玄葉光一郎外相や枝野幸男経済産業相が、都内でインドネシアのハッタ経済担当調整相との会談で正式合意する。日本政府は東南アジア諸国連合(ASEAN)の成長市場であるインドネシアで投資環境を整え、民主化を進めるミャンマーなど他のASEAN諸国やインドなどとの経済協力の強化を目指す。『東南アジアや南西アジアで影響力を強める中国の影響力拡大をけん制できる』(外務省幹部)との狙いもある。」(『日本経済新聞』2012.10.09)
●「国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会出席のため来日したべトナム計画投資省のカオ・ビエット・シン副大臣は12日、滞在先の東京都内のホテルで日刊建設工業新聞などの取材に応じ、近く副首相を委員長とするPPP指導委員会を設置する意向を表明した。個別のPPPプロジェクトを具体化するに当たって障害となる問題を、新設する指導委員会で調整するという。」(『建設工業新聞』2012.10.15)
●「国土交通省は、東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)内で国や自治体が発注する復旧・復興工事で、被災地域と被災地域外の建設業者で結成する『復興JV』が参加できる工事の範囲を拡大する。従来は予定価格5億円程度以下の工事を対象範囲としていたが、この制限を撤廃。自治体の工事は19.4億円未満(特定JV対象工事を除く)、国の工事5.8億未満と、WTO政府調達協定が適用されない工事は原則すべて対象範囲に含める。」(『建設工業新聞』2012.10.05)
●「東日本大震災の復興街づくりを支援している都市再生機構は11日、CM(コンストラクション・マネジメント)を活用した復興事業の初弾として宮城県女川町で行う『震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務』の契約先(CMr=コンストラクション・マネジャー)を鹿島・オオバJVに決めた。今後、リスク分担などの詳細協議を経て基本協定を締結。工事請負契約を交わした後、着工する。早期整備エリアでの同業務に関する契約金額は70億3500万円(税込み)。都市機構は他の被災地でもCM導入を計画しており、今後の復興モデルとして初弾事業の取り組みが注目を集めそうだ。」(『建設工業新聞』2012.10.12)
●「国土交通省は、建設業の海外展開支援の一環で、インフラ整備で導入が広がるPPP事業への参画促進に向けた戦略の検討を始めた。ゼネコンやコンサルタント、法律事務所などの関係者による有識者会議の初会合を12日に開いた。今後、海外のPPP事業の動向を調査し、案件獲得の課題や成功要因などを分析。PPP事業に主導的立場で関われるようにするための環境づくりを進める。来年3月にも議論の成果をまとめる。」(『建設工業新聞』2012.10.15)
●「宮城県石巻市は、東日本大震災で被災した住民が入居する災害公営住宅に関して、建設・整備する事業者を民間から公募し、土地・建物を一括して買い取る『公募型買取市営住宅制度』を創設する。9月28日には制度概要を公表。11月下旬に公募を開始し、来年1月を目途に対象事業者を決定する予定だ。石巻市は、4000戸の災害公営住宅を整備する計画。東日本大震災の被災自治体で最多戸数のため、『公共供給のみでは早期供給が難しい状況にあることから、早期整備を図る』ことを目指し、同制度の創設を決めた。応募対象者は、土地の所有権を有し(所有権取得見込みのある場合を含む)、土地と建物を一括して契約できる個人・法人。買い取る住宅は、新築(公募時点で工事中も含む)の耐火構造・準耐火構造(鉄筋コンクリート構造・鉄骨造)の共同住宅と長屋(戸建は対象外)で、土地、共同施設(集会所、広場、緑地、駐車場など)、附帯施設も対象とする。土地の買い取り額は、石巻市の不動産鑑定評価に基づき決定。建物の買い取り額は、石巻市の積算額、対象事業者の希望価格、国が示す標準建設費のうち最も低い額に基づいて決定する。」(『日本住宅新聞』2012.10.15)
●「社会保険未加入対策を進める上で、一人親方の扱いなどで理解が進んでいない。使用人数や労働時間などで、適用事業所になるかの判断が難しいこともある。国土交通省では、こうした状況の実態調査を進めており、調査結果を踏まえて、個別ケースごとの事例集をまとめるなどの対策を実施し、周知の向上に取り組む構えだ。」(『建設通信新聞』2012.10.03)
●「厚生労働省は1日、企業の安全衛生対策の取り組みを促進するため、労災が繰り返し発生したり、長時間労働で健康障害が複数発生している企業名とその労働災害状況を公表する、新たな制度の導入を検討する方針を明らかにした。同日、2013年度から始まる5カ年計画の『第12次労働災害防止計画骨子案』を議論した、労働政策審議会安全衛生分科会で示した。分科会の産業界委員からは、公表による影響が大きいことを理由に慎重な対応を求める声が相次いだ。厚労省は、公表するまで一定の基準を設けて慎重に対応する考えを示し、理解を求めた。次期労災防止計画骨子案は課題指摘を受け、内容を再構成して修正することが決まった。」(『建設通信新聞』2012.10.03)
●トンネル工事に従事して、じん肺になったとして熊本県などの労働者30人が鹿島建設や大林組などゼネコン30社に損害賠償を求めていたトンネルじん肺根絶第3陣九州・熊本訴訟の口頭弁論が2日、熊本地裁(原克也受任裁判官)であり、残っていた原告1人の和解が成立し、全面解決となった。裁判では、大林組が2005年以降、国のガイドラインに従い防塵(ぼうじん)対策をしていたとして争う姿勢を見せていたが、原告側は散水を怠るなど対策が不十分だったことは明らかと指摘していた。(『しんぶん赤旗』2012.10.03より抜粋。)
●「東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)で、復旧・復興工事に従事する建設技能者の不足問題が依然として解消されていない。国土交通省が3県を対象に行った最新の調査によると、12年度第1四半期(4〜6月)時点で3県にある建設業者の約6割が『労働者の確保が難しい』と回答。労働者不足を訴える業者の割合は依然高止まりしている。3県と仙台市が発注する工事での入札不調の月別発生件数も本年度に入って改善していない。国交省が5日に開いた『多様な契約方式活用協議会』の初会合で、被災3県の復旧・復興工事や入札契約の現状を明らかにした。」(『建設工業新聞』2012.10.09)
●「日本電設工業協会(山口学会長、正会員319社)は9月28日、社会保険加入促進計画をまとめた。企業会員に対し、下請け指導ガイドラインに基づき協力会社に指導・周知啓発するとともに、協力会社を通じて2次下請け以下に周知啓発するなどの取り組みを要請する。2017年3月時点の社会保険加入率目標を企業会員、その協力会社(1次下請け)それぞれ100%を目標とする。計画は、12年度から16年度までの5カ年を実施期間とし、中間時点の14年度に実態を調査するとともに、必要に、応じて計画を見直すなどの措置を取る。…加入促進計画を効果的に進めるため、国に適正な工期の確保、極度な低価格入札・ダンピング(過度な安値受注)対策、労務費、法定福利費を含む適正な見積もりのほか、通常必要とされる原価の確保により、法定福利費が適正に流れる仕組みの構築などを要請する。公共発注者、民間発注者に対する法定福利真の確保のほか、4週8休(完全週休2日)を要請する。また、会員企業が取り組むべき対策として、適正な契約の締結・施工体制の確立、雇用・労働条件の改善、福祉の充実といった指導・助言など、元請企業の役割と責任を実践する。協力会社登録制度を採用している企業には、必要に応じ協力会社に保険料の領収済み通知書など関係書類の写しを提出させるなど、真正性の確保に向けた措置を講じる。」(『建設通信新聞』2012.10.01)
●「大成建設は、新構造の津波造波装置を開発し、技術センター(横浜市)に津波実験施設を設ける。津波を再現できる装置はこれまでもあったが、新装置は規模を抑えながら多種多様な波形の津波を作り出せるのが特徴。新装置を使った水理実験と従来の数値計算による津波シミュレーションを併用することで、東日本大震災で未曽有の被害をもたらした津波の挙動や影響を高精度に把握できる。臨海部のエネルギー施設などを対象とした津波対策のBCP提案に生かし、受注拡大を目指す。同社は10月から既存の多目的大型水槽に新装置を8ユニット設置する。装置は台形で高さ2.3メートル、幅1.5メートル。水槽自体の改修は不要で、装置を設置するだけで津波実験施設になる。」(『建設工業新聞』2012.10.04)
●「戸田建設と西松建設は4日、技術提携の契約を更新することで合意したと発表した。提携期間は3年。内容は、研究開発が▽開発途中の技術テーマの継続研究▽新規開発テーマの発掘、技術に関する現業での連携が▽人材交流▽資機材相互利用▽技術交流▽安全衛生管理。現業での連携については、従来は『現場見学会、安全パトロール』としてきたが、これを『安全衛生管理』に改めることで、事故や災害の防止に向けた取り組みを両社で協力して幅広く行っていくことにした。両社は99年に初めて提携関係を結んだ。両社がそれぞれに開いている技術発表会に技術者が相互に参加して最新の事例を報告するなど、提携のメリットを生かす試みを続けている。」(『建設工業新聞』2012.10.05)
●「国土交通省は、地方・中小建設会社の海外進出支援の一環で、経営者向けの『海外展開経営塾』を来月から東京と大阪で順次開催する。一般の業界関係者を対象にしたセミナーとは異なり、参加者を20人に絞って2グループ制の参加型ディスカッション形式を採用。既に海外に進出している地方・中小の経営者らを講師に招き、自社の企業規模・業態と近い企業の成功・失敗事例など実体験に基づく知識・ノウハウを共有してもらい、海外進出への意識啓発や人脈づくりを後押しする。」(『建設工業新聞』2012.10.10)
●「前田建設工業は洋上風力発電事業に参入する。山口県下関市で2015年に着工し、16年4月に稼働する計画で、総事業費は約250億円。出力は合計6万キロ持と稼働時点で国内最大級の洋上風力発電施設となる見通しだ。売電収入とともに発電機の設置ノウハウを蓄積し、今後の市場拡大が見込まれる洋上風力発電施設の建設受注の取り込みにつなげる。」(『日本経済新聞』2012.10.11)
●「新日鉄住金は、復興住宅をターゲットにスチールハウス(薄板軽量形鋼造)の売り込みを加速させる。RC造の集合住宅と比べた場合、工期を最大で半分に短縮することが可能になることから、早期完成を求める被災地域の二−ズに合致すると判断、岩手県釜石市の復興住宅に初採用されたのを機に各地域への提案を拡大する。4階建ての新プランも準備中で、1万−2万戸とも言われている復興住宅の『1割』を営業目標に掲げる。」(『建設通信新聞』2012.10.11)
●「東京商工リサーチがまとめた2012年7月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比17.7%減の259件となり、5カ月連続して前年同月を下回った。依然として『中小企業金融円滑化法』などの各種金融支援が効果を発揮している。ただ地区別では、9地区のうち北海道、中部、北陸、中国の4地区で前年同月を上回った。東日本大震災の被災地以外での公共事業の進展が気にかかる。業種別にみると、件数は少ないものの、とび・土工・コンクリート工事業が30.0%増、電気通信・信号装置工事業が125.0%増だった。負債総額は、17.8%減の345億1400万円で、7月としては1993年以降の過去20年間で最少金額にとどまった。7月の『震災関連』倒産は9件だった。」(『建設通信新聞』2012.10.12)