情勢の特徴 - 2012年11月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「会計検査院は2日、国の2011年度決算の検査報告をまとめ、野田佳彦首相に提出した。税金の無駄遣いなど経理処理が不適切と指摘したのは513件、計約5296億円。金額は前年度比1.2倍で、09年度(約1兆7904億円)に続き過去2番目に多かった。14年度の消費増税を控え、税金の使途に関する国民の視線は厳しくなっている。検査院は今後、『被災地と関係が薄い』との指摘が出ている東日本大震災の復興予算について重点的に検査し、問題があれば順次公表する。実質国有化された東京電力についても、政府が認定した総合特別事業計画の履行状況などをチエツクする方針だ。11年度の検査報告は、複数の独立行政法人で不要な余剰資産を抱えていることを指摘したため、全体の金額が膨らんだ。団体別では、都市再生機構が約937億円と最多。高速増殖炉原型炉『もんじゅ』に関連する休眠施設を指摘された日本原子力研究開発機構が約831億円で続いた。」(『日本経済新聞』2012.11.03)
●「上場企業の収益減速が一段と強まってきた。2013年3月期の予想経常利益は前期比6%増と1ケタの増益にとどまる見通し。期初時点では2割増が見込まれていたが、業績予想の下方修正が相次ぎ、3兆円強の下振れとなる。このうち8割を製造業が占め、電機や自動車、化学など日本を代表する産業の苦戦が足を引っ張る構図が餅明になっている。12年4〜9月期(上期)決算を発表済みの3月期決算企業(金融・電力・新興市場など除く)1258社の予想経常利益(米国会計基準などの採用企業は税引き前利益)は、20兆9000億円と期初から3兆2000億円下方修正された。うち製造業の下振れ幅は2兆7000億円に達した。」(『日本経済新聞』2012.11.10)
●「日経平均株価が13日、7カ月ぶりに7営業日続落となる中で、建設や小売りなど内需関連銘柄の下落が鮮明となっている。これまでは海外景気の不透明感を嫌う投資マネーの受け皿として堅調な展開が続いてきた。だが、足元では国内景気の後退を示す指標が相次ぎ、改めて業績悪化への懸念が強まった形だ。 業種別日経平均の内需関連業種を対象に、日銀が金融緩和を決めた10月30日と11月13日との比較で下落率を調べたところ、『建設』が約5%と全36業種中で首位。『食品』や『小売り』『陸運』も2〜4%程度下げ、同期間の日経平均の下落率(約2%)を上回った。背景の一つが、個人消費の減速懸念だ。内閣府が12日発表した2012年7〜9月期の国内総生産(GDP)で、個人消費はマイナス0.5%と2四半期連続でマイナスとなった。春先から堅調さをみせていた消費の変調ぶりが鮮明だ。」(『日本経済新聞』2012.11.14)
●「国土交通省は、インフラの海外展開方策を検討する有識者懇談会を13日に開き、道路など個別分野の海外プロジェクト動向に関する調査結果をまとめた。海外市場での他国の建設産業の進出事例などを基に事業の実施体制やスキームなどを分析。現地を熟知した地元企業や、技術力やノウハウを抱負に持つ外国企業との連携などの必要性を指摘している。」(『建設工業新聞』2012.11.14)

行政・公共事業・民営化

●「社会保険未加入対策として1日から建設業の許可・更新時、新たに保険加入状況を記した書面の提出が必要になる。さらに保険未加入の申請企業に対して、国や府県の建設業担当部局による加入を求める指導も始まるとあって、近畿地方整備局や府県も、追加された新様式の書類を用意するなどの対応に追われた。府県からは『国土交通省の標準プランに基づき、着実に取り組む』(兵庫県県土整備部県土企画局建設業室)などの声が聞かれた。」(『建設通信新聞』2012.11.01)
●「国土交通省は、社会保険未加入対策の推進策の一つとなる法定福利費の確保に向け、法定福利費の流れを透明化する目的で、直轄工事を対象に法定福利費の概算額や工事費に占める平均的な割合を公表するとともに、重層下請構造下の一人親方の就労環境に関する調査を開始する。ことし5月末にまとめた行政側の未加入対策への対応方針を改定し、新たな事項として盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2012.11.01)
●「技術者不足に悩む小規模自治体を中心に、発注者支援型のCM(コンストラクション・マネジメント)方式導入が今後拡大していくことも予想される。しかし、請け負う企業側から見れば、リスクに応じた適切なフィー(報酬)の設定がなければ決してうま味があるとは言えないのが事実だ。また、そもそも人員が不足する自治体がCMの複雑な契約手続きに対応できるのかといった疑問の声もある。導入拡大にはさまざまな課題が見え隠れしている。」(『建設通信新聞』2012.11.05)
●「公共工事の入札で、予定価格の公表を入札後(事後公表)とする地方自治体が増えていることが国土交通省の調査で分かった。予定価格を入札前に公表する事前公表では、最低制限価格や低入札価格調査の基準額付近に応札が集中。ダンピング受注を誘発するとの批判がある。事後公表の増加は、行き過ぎた安値受注に歯止めを掛けようとする自治体が増えているためとみられる。 国交省が12年9月1日時点で実施した調査によると、予定価格を事後公表のみに絞った自治体は、都道府県が13団体(11年9月時点では11団体)、政令市が.4団体(同3団体)、市区町村が510団体(同470団体)といずれも1年前と比べて増えていた。特に市区町村で大きく増えている。」(『建設工業新聞』2012.11.07)
●「財務省は7日、今後の社会資本整備(公共事業投資)についての論点を整理した。『急速な少子高齢化と人口減少が見込まれる中、社会資本ストックの大幅な拡大指向は困難』としたほか、『新規投資は長期的に有効性を発揮し得るかを十分慎重に判断すべき』との方針を示した。また、防災・減災対策は『避難体制の確立や住民への周知徹底といったソフト対策を徹底すべき』とした。公共事業投資をさらに減らすとの記述はないものの、東日本大震災以降の防災・減災事業の拡大や、自民党などが掲げる国土強靭化に向けた大規模公共投資に対する財務省の考えを示すことで、公共投資増額をけん制した格好で、2013年度予算編成に反映するとみられる。」(『建設通信新聞』2012.11.08)
●「民主党が先送りしていた国土交通省地方整備局など国出先機関の事務・権限を広域連合に移譲する『出先機関移譲法案』の党内事前審査が再度加速し始めた。野田佳彦首相が今臨時国会での法案提出に意欲を見せていることが理由。また、同党が事前審査を中断し、政府に求めた改善要求を受け、内閣府がまとめた改善案に対し、党内と、反対表明していた全国市長会など基礎自治体がどう判断するか、大詰めの局面を迎えつつある。」(『建設通信新聞』2012.11.08)
●「国土交通省は12日、『建設産業の魅力を発信するための戦略的広報検討会』を立ち上げた。災害対応や地域維持活動などに貢献している建設業の一般国民への浸透や、建設業に就職先としての関心を寄せる学生の増加などに向け、効果的な広報手法を検討する。業界団体のほかマスコミ関係者や教育関係者などを交えて議論し、今年度内に2013年度から取り組む内容を固める。検討会は、建設産業戦略会議で提言された事項の実行に向けて立ち上げた『担い手確保・育成検討会』の下部組織として設置する。建設産業がインフラや建物の整備だけでなく、地震や豪雨、除雪などの災害対応、まちづくりといった幅広い分野で活動していることが一般に認知されにくい現状を踏まえ、業界の内外の視点からアピールの方法を議論する。座長には蟹澤宏剛芝浦工大教授が就く。」(『建設通信新聞』2012.11.13)

労働・福祉

●「若年者の建設業入職者数の減少が深刻化している中で、高校卒業者の入職・離職が課題となっている。厚生労働省が10月31日に公表した『新規学卒就業者の産業別卒業3年後の離職率』では、大学卒業者の建設業離職率が全産業を下回っているのに対し、高校卒業者の離職率は全産業を大きく上回り、製造業の倍近い離職率となった。専門工事業者からは、高卒採用の厳しい制約の問題を指摘する声が上がっており、高卒者と企業のミスマッチングの改善が求められている。」(『建設通信新聞』2012.11.05)
●「民間や地方自治体の建設技術者の減少が深刻化している。国土交通省の調査によると、2011年度時点で、設計や現場監督を手掛ける民間の技術者の数はピークだった1992年度比で17%減、自治体の土木系技術職員もピークの94年度比で26%減と大幅に減っていた。現場の作業を支える民間の技能労働者も92年度比23%減と技術者同様に減っている。東日本大震災の被災地では復興工事の人手不足が深刻。災害対応やインフラの維持更新の増加を考えても人材確保が急務といえる。」(『建設工業新聞』2012.11.12)
●「国土交通省は、登録基幹技能者の活用促進に向け、元請企業や発注機関、有資格者と雇用企業を対象にした実態調査を行う。工事現場への基幹技能者の配置効果を明らかにするとともに、活用上の課題を探る。調査結果を踏まえ、処遇改善や最上級の技能労働者としての位置付けの明確化などについて検討する考え。検討の場として、建設関連団体の関係者らで組織している専門委員会を活用。来年3月にも成果をまとめる。」(『建設工業新聞』2012.11.15)

建設産業・経営

●「海外建設協会(海建協、竹中統一会長)がまとめた12年度上半期(4〜9月期)の会員企業48社の海外受注高は5408億円と前年度同期を11.1%下回った。件数ベースでは1090件(前年度同期比32.0%増)と大幅に増加したものの、土木工事の受注が伸び悩んだこともあって100億円を超す案件が5件にとどまり、200億円以上の大規模案件もなかったことから、金額ベースでは前年度実績を下回った。一方で、民間の工場案件の受注は好調で、受注高全体の5割弱を占めた。タイを中心に日系のメーカーの進出が旺盛なことが要因で、インドネシアへの進出も増えているという。受注高の内訳は、会員企業本体(本邦法人)による受注が1756億円(49.5%減)、現地法人での受注が3652億円(40.0%増)。本邦法人による受注高は4月からのすべての月で前年度実績を下回った。公共土木の案件が低迷していることが影響したとみられる。地域別では、アジアでの受注が4041億円(5.8%減)と全体の約4分の3を占め、最も多かった。」(『建設工業新聞』2012.11.01)
●「日本建設業連合会(日建連)東北支部と岩手県は10月31日、12年度意見交換会を岩手県庁で開き、復旧・復興事業をめぐる諸課題を中心に意見を交わした。日建連は事業川上段階から民間を活用する仕組みの導入で膨大な事業に対応する必要性を指摘した。県は用地取得が事業推進の現在の課題だとし、用地業務の一部を民間に任せる考えを示した。新たな事業推進方式では、錯綜(さくそう)する被災地の工事を民間のノウハウで総合調整するスキームを検討していることを明らかにした。」(『建設工業新聞』2012.11.02)
●全国商工団体連合会(全商連)付属・中小商工業研究所がまとめた2012年下期「営業動向調査」で、増税に伴う景気への不安が深刻な形で広がっていることが浮き彫りになった。今期調査は前回に続き、消費税の特別調査を実施。10%に増税された場合の影響などを聞いた。消費税を売り上げ・単価に完全には転嫁できていないと回答した事業者が54.1%と半数を超えている。消費税が10%になった場合の転嫁の見通しについては72.6%が完全には転嫁できないと回答。また「利益が減る」は31.7%で、「売り上げが減る」「大幅に減る」を合わせると49.7%と半数に達し、「廃業を考えざるを得ない」との回答も13.9%に及ぶなど、消費税増税が中小業者の営業に深刻な影響を及ぼすことが、あらためて明らかになった。「経営上困っていること」への回答では、「税金対策」13.9%(前期9.9%)、「消費税問題」32%(前期27.1%)と、前期に比べ、税金・消費税に対する危機感がより強く表れている。それに伴い、「経営の勉強の希望」では「消費税対策」が20.3%(前期17%)に及んだ。(『全国商工新聞』2012.11.05より抜粋。)
●「上場ゼネコンの12年4〜9月期決算の発表が始まるのを前に、売上高などの下方修正が相次いでいる。期初の見込みほどに工事の出来高が上がっていないのが主因。特に東日本大震災の復興関連工事では、受注したものの、労務のひっ迫と発注者側の調整不足で工事がスムーズに進められなかったり、着工できなかったりしている案件が少なくない。売上高の減少は損益にも直結。業績予想を修正した企業の半数以上が営業・経常損益を下方修正した。…売上高を見ると、15社のうち五洋建設、三井住友建設、安藤建設を除く12社が下方修正。ほとんどの企業が『手持ち工事の進ちょくが遅れた』ことをその理由に挙げた。具体的な工事の内容には言及していないが、『労務のひっ迫』『発注者の都合による着工の延期』(大手ゼネコン)などが原因で、ある準大手の担当者は『震災関連工事は確実に遅れている。関東以北の工事が一時的にストップしたり、着工が遅れたりするケースが目立つ』と明かす。」(『建設工業新聞』2012.11.07)
●「建設機械メーカー3社の2013年3月期第2四半期連結決算は、中国の景気減速、石炭価格の下落によるマイニング(鉱山)機械の需要減が響き、コマツとコベルコ建機は減収減益、日立建機は増収だが経常利益が減少した。また、コマツが7月に第2四半期と通期、日立は10月に通期をそれぞれ下方修正しコベルコは通期見通しが非公表だった。建機需要はリーマン・ショック後、順調に回復していたが、中国やインドの経済情勢が影響して不透明感が強まっている。」(『建設通信新聞』2012.11.08)
●「大和ハウス工業は8日、2013年3月期の連結業績予想を上方修正した。純利益は前期比87%増の620億円と従来予想を40億円上回り、過去最高になる。主力の戸建て住宅販売が伸びるうえ、首都圏を中心に防犯配慮型の女性向け賃貸住宅など集合住宅の販売が好調なためだ。コンビニエンスストアや薬局など、商業施設の建設案件が全国で増加することも業績を押し上げる。」(『日本経済新聞』2012.11.09)
●「三井住友建設の海外受注高が今期、過去最高を更新しそうだ。12年4〜9月期の連結ベースの海外受注高は前年同期比56.4%増の341億円。単体業績に計上する政府開発援助(ODA)案件の獲得に加え、インドやタイなどで工事受注が進み、4〜9月期としては過去最大になった。海外受注高の年間目標は500億円に設定しており、既に7割近くを確保した形。日系企業の海外進出や、海外大手企業による設備投資は堅調で、同社は『目標達成の材料はそろっている』(経理部)として、13年3月期は過去最高の650億円(前期比28.4%増)を見込む。」(『建設工業新聞』2012.11.12)
●「清水建設は12日、2013年3月期通期の連結経常利益が前期比7%減の150億円になる見通しだと発表した。従来予想(30%増の210億円)から一転して減益となる。労務費上昇などで工事採算が悪化するのが響く。東日本大震災後、建設業界は復興需要の発生などにより受注高は増加傾向だが、人手不足が生じて収益性の低下が目立ってきている。」(『日本経済新聞』2012.11.13)
●「ゼネコン(総合建設会社)大手4社の2012年4〜9月期連結決算が13日出そろった。東日本大震災後の工事増加による人手不足への懸念が高まるなか、労務費上昇などによる工事採算の悪化で清水建設は経常減益となった。一方、採算の良い工事の完成が相次いだ鹿島など3社は経常増益を確保し、明暗が分かれた。」(『日本経済新聞』2012.11.14)

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