情勢の特徴 - 2012年11月後半
●民自公3党が大型公共事業のバラマキに道を開こうとしている。無駄な大型公共事業のバラマキで巨額の財政赤字を築きながら、その反省もない3党談合の構図を見ると―。 「(公債特例法案を)武器にして政策実現をゆがめられてしまうのはよくない」―。野田佳彦首相は2015年度まで赤字国債を自動発行できる公債特例法実についてこう述べ、「仮にわれわれが野党になったときにもそれに従う」(12日、衆院予算委)と明言。政権が代わってもノーチェックで予算の執行に賛成していく考えを示した。公共事業にも財源を注ぎ込む消費税大増税に続いて、先の臨時国会では赤字国債を国会のチェックなしに自動発行できる公債特例法案を民自公3党が談合で強行。成立と引きかえに2012年度予算に対する減額補正も3党で編成することで合意し、事実上の3党連立となっている。解散に乗じて民自公3党が法案を成立させた狙いは、どの政党が政権についても財源を気にすることなく大型公共事業に道を開くことにある。(『しんぶん赤旗』2012.11.20より抜粋。)
●「国土交通省は、建設業者の社会保険加入促進策の一環で、重層下請構造と『一人親方』の実態調査に乗りだす。現場での労働実態は労働者と同じにもかかわらず、個人事業主として保険加入の対象外となる一人親方が今後増加するとの指摘もあるため、国交省は年内に専門工事業者やゼネコンを対象にヒアリングやアンケートを行って重層構造下での就労形態を把握。保険加入逃れの一人親方化を未然に防ぐ対策に反映させる。本年度末に事業主、労働者に該当する事例などを解説する啓発資料を作成する。ヒアリングは、元請となるゼネコン、下請となる専門工事業者と一人親方を対象に行う。土木、躯体、設備、仕上げの4分野ごとに専門工事業団体を2団体選び、各団体が推薦した3社程度、合計24社程度から意見を聴取。これら24社と取引業績のある大手ゼネコンに在籍し、現場管理を多く経験した安全部長などの役職にある人にもヒアリングする。」(『建設工業新聞』2012.11.26)
●「大手銀行が住宅ローン金利を12月から一斉に過去最低水準に引き下げる。最初の10年が固定の最優遇金利は3メガ銀行とりそな銀行が1.3%、三井住友信託銀行は1.15%とする。病気で収入が減ったときに返済を軽くできるなどの条件を付けた商品も投入する。消費税率引き上げを前に発生するとみられる駆け込み需要を取り込み」(『日本経済新聞』2012.11.30)
●「12月16日の衆院選に向け、主要政党の選挙・政権公約が出そろった。建設産業界が関心を寄せる景気回復・経済成長を政策の柱に据えている点では各党一致しているが、インフラ整備と防災・減災という具体的政策では温度差がはっきり出ている。防災・減災の視点で内需喚起と地域経済回復の先導役として公共投資を捉える自民党、公明党に対し、環境や医療、介護関連などの産業振興や規制緩和で経済成長を目指す民主党、みんなの党、日本維新の会という対立の構図だ。」(『建設通信新聞』2012.11.30)
●「愛知県は、公共工事や業務委託、物品調達など良問企業などとの間で結ぶ契約(公契約)のあり方について、部局横断的に調査・研究を進めてきた成果を中間報告としてまとめた。報告では、公契約の課題を▽政策推進への公契約の積極的活用▽総合評価方式の導入拡大▽事業者の法令順守の徹底▽公契約のもとで働く人の賃金水準のあり方▽総合的な対応の枠組みづくり―に分けて論点を整理。今後、建設関連団体などに意見を聞いた上でさらに検討を深め、県としての対応を固める。」(『建設工業新聞』2012.11.21)
●「住宅のリフォーム市場の拡大が期待されるなか、地方公共団体によるリフォーム支援策も、さらに拡充を見せている。国土交通省が11月16日に公表した、地方公共団体のリフォーム助成制度の実施状況によると、昨年度に引き続き、今年もすべての都道府県がリフォーム支援制度を実施していることが分かった。市区町村段階では1742団体のうち87%で実施されており、昨年度より1ポイント増加している。支援制度数は7240制度にのぼり、昨年度より約1000制度増加していることから、年々拡大している傾向が続いている。」(『日本住宅新聞』2012.11.25)
●2人以上の世帯のうち勤労者世帯の勤め先からの月収は、2000年から11年までの12年間に平均額で52万7818円から47万3115円へと5万4703円も下落している。総務省の「家計調査年報」からわかる。収入の高低順に第10分位から第1分位に分けた階級別にみると、もっとも月収が多い第10分位は7%の収入下落にとどまっている。一方、第6分位で14%、第3分位で13%下落するなど、いわゆる「中間層」での収入の下落が目立つ。第6分位では00年に51万9075円あった月収が11年には44万7953円へと、7万1122円も下がった。第3分位も37万8223円(00年)から、32万9225円(11年)へと4万8998円もの下落だ。(『しんぶん赤旗』2012.11.21より抜粋。)
●「解体工事のアスベスト(石綿)飛散防止へ大幅な規制強化を含む、『大気汚染防止法(大防法)改正』の方向性が21日固まった。最大の特徴は原因者負担の原則に基づいて、発注者に石綿飛散防止で一定の責任を負わせる点。具体的には、解体前の事前調査を義務付けるほか、立ち入り権限強化や罰則も追加する。また、現在、大防法で施工業者に義務付けている『特定粉じん排出等作業実施届け出』義務を、発注者に義務付ける。今回、法改正の方向性を盛り込んだ中間報告には、解体工事の石綿飛散防止に対し、『適切な施工業者に適正価格で発注』の文言も盛り込まれた。石綿が使用されている可能性が高い建築物は約280万棟。法改正で規制強化されれば、事前調査義務付け、適正価格発注などで建設業界にとっては、解体工事の適正利益確保への追い風になる。」(『建設通信新聞』2012.11.22)
●「国土交通省は、26日に開いた建設産業の担い手確保・育成策を検討する有識者会議で、若年層の入職促進に向けた今後の取り組みについて議論した。新卒者については、生徒や保護者による建設業への理解を深めるため、学校側との連携方策のあり方を模索。参加委員からは技能継承の実態を把握した上で教育・訓練制度を再構築し、若者が主体的にかかわるプロジェクトの創設など、教育の場を広げる官民連携施策を具体化する必要性が指摘された。」(『建設工業新聞』2012.11.27)
●「日本建設大工工事業協会(三野輪賢二会長)は27日、2012年度型枠大工雇用実態調査の結果をまとめた。10年度の調査開始以降減少を続けている技能工の就労者数が12年度も歯止めがかかっていない。今回初めて調査した社会保険の加入状況でも、厚生年金の加入率が近畿で3%、関東で4%となるなど低い数値が目立つ内容となった。三野輪会長は『非常にショッキングなデータだ。賃金が適正に払われない限り入職者は増えないので、調査結果を基に国土交通省などへ陳情し、型枠工の現状を広めたい』と述べ、問題の対処に単価水準の改善が必須であることを訴えていく考えを示した。」(『建設通信新聞』2012.11.29)
●「大林組は、災害廃棄物の選別・分級後に残ったリサイクルできない混合廃棄物(がれき残さ)をブロック状に固めた建設資材『アップサイクルブロック』を開発した。15日に、宮城県災害廃棄物処理業務亘理名取ブロック(亘理処理区)の現場で実証実験を行い、アップサイクルブロックを盛土用ブロックとして製作し、実物大盛土を築造する工程を公開した。」(『建設通信新聞』2012.11.16)
●「国土交通省が行った12年度の下請取引等実態調査で、新たに建設業許可業者の社会保険加入状況と下請企業への指導状況などを確認した結果、3保険(雇用、健康、年金)に未加入の企業が、都道府県知事許可の一般建設業者で2.6〜12.1%あることが分かった。大臣特定・一般、知事特定許可業者の加入率はほぼ100%。保険未加入対策で国交省は、5年後に許可業者の加入率100%を目指しており、知事一般許可業者への対策強化が課題になりそうだ。」(『建設工業新聞』2012.11.19)
●「東日本大震災の復旧・復興工事の本格化に伴う建設企業の対応や課題が顕在化している。国土交通省の調べによると大臣許可業者が被災3県(岩手、宮城、福島)に新設した営業所数は約370カ所となり、建設市場に参入しようとする企業が増えている一方、10月までの労働災害件数が前年同期間比2割増、暴力団犯罪の検挙件数も倍増となるなど、法令順守の徹底が求められる状況も浮き彫りになった。こうした状況を踏まえ、同省は被災3県と連携して立入検査を実施する。」(『建設通信新聞』2012.11.21)
●「ゼネコン各社の建築工事の採算悪化が顕著になっている。主要ゼネコン25社が先に発表した12年4〜9月期決算で、売上高に計上した工事の採算を示す完成工事総利益率(粗利益率、単体ベース)を日刊建設工業新聞社が集計したところ、21社の粗利益率が前年同期より低下。ほとんどの社が『建築工事の採算悪化』をその要因に挙げた。ゼネコン各社は労務単価の上昇などに頭を悩ませているが、民間のデベロッパーなどが発注する建築工事での価格転嫁は難しく、当面は厳しい状況が続きそうだ。」(『建設工業新聞』2012.11.22)
●「大和ハウス工業は今後2〜3年で約600億円を投じ、全国の大都市近郊に大型物流施設を6〜7カ所建設する。インターネット通販の利用者が増え、通販各社が即日配送など速さを競っている。消費地に近い施設の賃貸需要が高まると判断した。三菱地所や三井不動産も物流施設事業に本格参入し、ネット通販を巡る競争が不動産・建設業界でも激しくなる。特定の企業向けではなく、複数の企業が同時に利用できる物流施設を建設する。食品やアパレルのチェーンが大都市近郊に商品の保管・発送場所を集約する動きも広がっている。立地がよい施設の供給が増えれば物流が効率化し、消費者の利便性向上につながる。」(『日本経済新聞』2012.11.25)
●「日本建設業連合会は21日の理事会で、2013年4月1日に一般社団法人化するに当たっての『今後の事業活動の基本方針』を決めた。野村哲也会長は委員会の再編について理事会後の会見で『一般社団法人化する中で、組織を新しくし、事業項目を見直した。各委員会の政策的な面を積極的に展開する』と語った。会費については、12月の理事会で方針を示す見通し。委員会の再編などは、11年4月の旧3団体合併に積み残しになっていた課題。13年4月の一般社団法人化で合併が一段落する。」(『建設通信新聞』2012.11.26)
●「日本建設業連合会(日建連)は、来年4月の一般社団法人への移行に合わせて発効する新たな企業行動規範をまとめた。東日本大震災で建設業が果たした役割を踏まえ、自然災害発生時に災害対応を迅速かつ組織的に行うことを『建設業の社会的使命』と宣言。公衆災害防止の徹底も柱の一つとして新たに打ち出す。協力会社に取り組みを促すことも盛り込んだ。」(『建設工業新聞』2012.11.27)
●「国土交通省は、専門工事業者の評価制度構築に向け、26日に開かれた有識者会議『担い手確保・育成検討会』に検討の視点を提示した。経営事項審査(経審)のように第三者機関が評価を行い、手数料を払う仕組みについては、対象が元請業者より数が多く、規模も多様な専門工事業では難しいと指摘。元請が専門工事業の取り組みを容易に確認できる簡素な仕組みとし、経審とは切り離した形で運用するとした。評価項目は10以下に抑える方向で検討する。」(『建設工業新聞』2012.11.27)
●「全国建設業協会(全建、淺沼健一会長)は28日、東京都内で全国会長会議を開き、本年度の地域懇談会・ブロック会議を踏まえた意見書をまとめた。老舗も含め多くの会員企業が倒産・廃業している現状から、災害空白地帯の一層の拡大が懸念されると指摘。災害に強い社会を目指すため、公共事業予算の確保・拡大や、ダンピング対策のさらなる徹底、公共事業設計労務単価の引き上げなどが必要だと訴えた。」(『建設工業新聞』2012.11.29)
●「土木学会(小野武彦会長)による東日本大震災フォローアップ委員会の災害対応マネジメント特定テーマ委員会(委員長・高野伸栄北大准教授)が、『東日本大震災の災害対応マネジメント』と題した報告書をまとめた。今回の震災では、発生直後から国土交通省や地方自治体、建設業者などが被災者の救出・支援やインフラ復旧などに懸命に取り組んだ。こうした実例の調査結果を基に活動の成果と課題を探ったものだ。情報や人的・物的資源が限られる災害時に、どう迅速に判断し、活動を実行に移すべきか。巨大地震の発生懸念が高まる中、次の危機への備えとする狙いがある。」(『建設工業新聞』2012.11.29)