情勢の特徴 - 2012年12月前半
●「現在、海外展開している国内製造業が、今後も海外事業強化・拡大を維持しながら、国内事業を縮小する姿勢が強まっていることが、国際協力銀行(JBIC、奥田碩総裁)が7日公表した『2012年度 海外直接投資アンケート結果』で浮き彫りになった。また、中期的海外展開先には、市場が急拡大するインドネシアのほかメキシコ、ミャンマーなどが新たな有望事業展開国として浮上、中国への事業拡大姿勢に一服感がある中で、新たな市場に関心が向きつつあることを示している。建設業にとって製造業は民間受注の大きな柱。製造業の設備投資動向には、建設産業界も関心を寄せていた。…一方、国内事業については、『強化・拡大』回答企業は調査開始以来最低の25.7%にとどまったほか、『縮小』選択企業は前回調査から3.3ポイント増の9.5%と1割近くまで上り、国内事業の縮小姿勢が強まった。」(『建設通信新聞』2012.12.10)
●内閣府が10日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、物価変動の影響を除いた実質が前期比0.9%減、年率換算では3.5%減で、速報値と変わらなかった。4〜6月期が前期比0.1%増(年率換算0.3%増)から0.0%減(同0.1%減)に改定された結果、2四半期連続のマイナス成長となった。世界経済の減速により、景気が春以降に後退色を強めたことが改めて確認された。(『しんぶん赤旗』2012.12.11より抜粋。)
●「経済産業省は13日、次世代エネルギー・社会システム協議会を開き、東日本大震災被災地域のスマートコミュニティ・マスタープラン策定事業に採択されていた7地域がまとめたマスタープランを評価・審議した結果、事業の採算性を高めることや電力会社との関連性を強めることなどの修正を加えることを条件に、原則認定することを決めた。今後、正式な認定を受け、必要な手続きを経た上で、補助金の交付を受けて、マスタープランに基づく再生可能エネルギーや蓄電池などのシステム整備に着手する。」(『建設通信新聞』2012.12.14)
●「国土交通省は3日、中央自動車道上り線の笹子トンネルの天井板崩落事故を受けて、東日本、中日本、西日本、首都、阪神、本州四国連絡の各高速道路会社と国が管理する一般国道を対象に緊急点検を実施することを関係機関に通知した。点検は、つり構造の天井板があるトンネル49カ所で実施する。12日までに調査結果の報告を求める。国交省は中日本高速道路とともに事故原因を検証した上で、今後の対策に乗り出す。天井板設置の必要性を改めて検討する可能性もあり、構造面での対応も焦点になりそうだ。」(『建設通信新聞』2012.12.04)
●「国土交通省は、インフラ構造物全般を対象に老朽化対策を検討する専門組織を発足させる方針だ。高度経済成長期に建設された大量のインフラの更新期が間近に迫る中、同省はインフラストックの更新費の将来推計や管理運営戦略を検討する専門委員会を既に設置している。新たに設ける専門組織は、インフラの分野別の維持管理指針や安全基準類のあり方、技術者教育など個別インフラの老朽化対応に絞って検討するとみられる。」(『建設工業新聞』2012.12.04)
●「国土交通省は、港湾施設の維持、更新修繕の目標水準や費用、スケジュールなどを示す『予防保全計画(仮称)』の策定に乗りだす。当面は重要港湾以上の国有港湾施設を対象に、今後5年程度で計画作成を推進する。個々の港湾施設の利用状況や老朽度に応じて対応方針を明示し、効率的・計画的な維持・更新対策を進める考えだ。」(『建設工業新聞』2012.12.04)
●「内閣府の設置した『不動産・インフラ投資市場活性化法策に関する有識者会議』(座長・川口有一郎早大大学院ファイナンス研究科教授)は3日、複数の自治体が一括して公共施設の整備・運営を委託できる新たなPPP制度の導入などを柱とした報告書をまとめ、前原誠司経済財政政策担当相に提出した。内閣府は、今後、公契約制度の見直しも含めて導入実現に向けた取り組みを進める考えだ。このほか、事業への投資の“受け皿”となるインフラファンドの整備や個人投資家層の誘導、関係省庁の連携などにより、インフラの維持更新や価値向上に投資資金を呼び込むことを打ち出した。」(『建設通信新聞』2012.12.05)
●「東京都は地下鉄トンネル、道路橋へ下水道の耐用年数を延ばす工事を始める。老朽化したインフラが相次いで更新時期を迎えるなか、新たに建設し直すには莫大な費用がかかるためだ。大規模な修繕工事によって都市基盤を『長寿命化』する。都は来年から都営浅草線のトンネル修繕工事を本格的に始める。1960年に押上駅−浅草橋駅が開業し、68年に西馬込駅までの全線が開通した浅草線のトンネルは、都営地下鉄4路線の中で最も傷んでいる。開通から50年前後がたち、都は『大規模な修繕工事によって、さらに50年ほど耐用年数を延ばす』(交通局)。腐食した鉄筋を取り換えたり、ひび割れたコンクリートに接着剤を流し込んだりしてトンネルを補強する。」(『日本経済新聞』2012.12.06)
●中央自動車道上り線の笹子トンネル(山梨県大月市、甲州市)でコンクリート製の天井板が崩落し9人が死亡した事故で、同トンネルと同じ構造だった小仏トンネル(東京都八王子市、神奈川県相模原市)では、中日本高速道路の前身、旧道路公団が2001年と03年に天井板を撤去していたことが5日、本紙の調べでわかった。関係者などの証言などから、改修費用への懸念から中日本高速が対策を先延ばしし、安全対策に消極的だったことが浮き彫りになった。事故が起きた笹子トンネルは、トンネル最上部に固定されたつり金具がコンクリート製の天井板を支える構造。同トンネル上り線が全長4700メートルあるのに対し、小仏トンネルは約2000メートル。小仏は、01年11月に上り線、03年11月に下り線で、天井板を撤去し、換気用のジェットファンを設置。照明も更新していた。中日本高速は本紙に「小仏以外にも他のトンネル数カ所で改修を行った。笹子については、検討していたが『やる』という結論にはなっておらず、内部での検討にとどまっていた」と認めた。(『しんぶん赤旗』2012.12.06より抜粋。)
●「国土交通省と復興、水産両庁は、東日本大震災の住宅再建・まちづくりの復興事業を促進させる方策をまとめた。被災者の生活再建に配慮するため、事業のスピードアップを図る目的でCM(コンストラクション・マネジメント)方式や設計・施工一括発注(デザインビルド)方式など事業施行上の工夫を検討するよう促す。さらに、地区別、年度別に住宅の整備戸数の目標を提示するとともに、これらの目標を県単位や被災地全体で取りまとめ、住宅資材や建設事業者の確保に役立てるよう求めていく方針だ。」(『建設通信新聞』2012.12.07)
●「国土交通省は、建設産業の海外展開を支援する一環で、国内の防災技術を現地のニーズに合わせて改良し、競争力を高める取り組みを始める。産官学が連携して知恵を出し合う仕組みを構築。さまざまな分野から意見やアイデアを持ち寄り、既存の技術・製品を現地で活用されやすいものへと作り替える。他国の関連技術・製品との差別化を図ることで、海外の防災インフラ市場での提案力を向上させる。」(『建設工業新聞』2012.12.07)
●「老朽化したインフラの維持管理が問題視される中、国土交通省が所管する橋梁約2万2000橋のうち、大半が補修などの対応が必要なことが、国土技術政策総合研究所の分析で分かった。このうち速やかに補修が必要な橋梁は約4割を占める。また、この5年で補修の必要がない橋梁は減少傾向にあり、インフラ管理のあり方が改めて問われる結果となった。」(『建設通信新聞』2012.12.10)
●「国土交通省や建設業関係の元請・下請団体、発注者団体などが参加する社会保険未加入対策推進協議会は、社会保険加入に関する問題や課題を把握するための相談窓口を各団体に設置する。11日には協議会の事務局を務める国土交通省が、協議会に登録している建設業者団体75団体に体制整備を依頼。25日までに窓口の設置方法など対応方針をまとめてもらい、活動を始める。窓口では会員外企業の意見も受け付け、団体の活動内容や社会保険加入の必要性を伝える場にもする。国交省も把握した課題をすくい上げて、施策に反映させたい考えだ。」(『建設通信新聞』2012.12.12)
●「東京都小金井市は、公契約条例の制定の是非を含め、幅広い観点から入札・契約制度全般のあり方を検討するため、市内業者や同市と契約実績のある事業所など約260社を対象としたアンケートを実施している。この調査結果や各種業団体との意見交換を踏まえ、2012年度中に公共調達に関する基本方針案や取り組み事項を抽出した個別目標を定める。13年度から入札制度の改善に向けた具体的な制度設計の検討に入る方針だ。」(『建設通信新聞』2012.12.12)
●「国土交通省は3日、資金需要が増す年末を前に、建設業関係100団体に対し、適正な下請契約や下請代金の支払い、施工管理の徹底を会員各社に指導するよう求める通達を出した。今回の通達では、下請業者らの社会保険加入促進策として、専門工事業団体が作成した標準見積書に基づく法定福利費の内訳を明示した見積書の活用を新たに求めた。都道府県にも同内容を通知し、指導への協力を要請した。通達では、景気が後退局面に入り、建設産業を取り巻く経営環境が一段と厳しくなっているとして、元請企業に対して経営基盤のぜい弱な中小企業が多数を占める下請業者に代金を適正に支払うよう要請。着工前の書面による契約の徹底と、適正な手順による追加・変更契約などを求めた。」(『建設工業新聞』2012.12.04)
●東京電力は3日、福島第1原発で事故収束作業に従事する下請け作業員を対象に実施した就労実態に関するアンケートの集計結果を公表した。雇用主以外から作業指示を受けていると回答し、「偽装請負」の疑いが強い作業員が約半数いたほか、雇用時に条件を示した書面や説明がなかったと答えた作業員も約4割おり、遵法な雇用実態が横行している可能性が強まった。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は「改善しないといけない状況は存在する」と述べ、元請け企業に法令順守を徹底するよう要請するほか、改善状況の確認などの対策を取る方針を明らかにした。…東電によると、「現場で作業を指示する会社と、給料を支給する会社が異なる」と答えた作業員が47.9%いた。(『しんぶん赤旗』2012.12.04より抜粋。)
●「建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんなどを発症した首都圏の元建設労働者と遺族ら337人が国と建材メーカー42社に計約119億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が5日、東京地裁であった。始関正光裁判長は『石綿粉じん防止対策として講じた国の規制措置は不十分だった』と述べ、原告170人に総額約10億60千万円の支払いを命じた。メーカーの責任は否定した。建設現場でのアスベスト被害を巡る集団訴訟は6地裁に起こされ、『東京訴訟』は原告数が全国最大。作業現場を転々とした建設労働者について国の責任を認めた判決は初めて。全員の請求が認められなかったことなどから、原告側は控訴する方針。判決は石綿が引き起こす疾患の危険性について医学的知見が確立した時期を石綿肺が1958年、肺がんと中皮腫は72年とそれぞれ認定した。その上で、国による防じんマスクの着用義務付けは、遅くとも@吹き付け工が74年Aその他の屋内作業の労働者が81年――には必要だったと指摘。『事業者に罰則を伴うマスクの着用を義務づけさせるなどの規制を国が怠ったことは、著しく不合理で、遵法』と結論付けた。一方、吹き付け工を除く屋外作業の労働者については『当時、研究などがなく、国は危険性を認識できなかった』としたほか、個人事業主も『労働者に当たらない』として訴えを退けた。建材メーカーの責任は『発症原因の建材を特定できない』と否定した。アスベストによる健康被害を巡っては、大阪府南部の石綿関連工場の元従業員らによる集団訴訟で、大阪地裁は2010年と今年3月の判決で、国の責任を認めた。うち1件は控訴審で逆転敗訴とし、原告が上告中。国の責任を巡る司法判断は分かれている。」(『日本経済新聞』2012.12.06)
●「国土交通省は、同省が発注する直轄工事で、法定福利費の事業主負担分を、工事価格とは別枠で計上する方向で検討に入る。雇用、健康、厚生年金の三つの社会保険への加入が確認できる仕組みの構築と、建設業許可業者の社会保険加入率100%達成を前提条件として、5年後をめどに法定福利費の別枠計上を行いたい考えだ。5日に省内で開いた『技能労働者の技能の「見える化」ワーキンググループ(WG)』の初会合の中で明らかにした。」(『建設工業新聞』2012.12.06)
●「岩手、宮城、福島の被災3県で建設業の雇用確保が厳しさを増している。厚生労働省と岩手、宮城、福島の各労働局がまとめた10月の雇用情勢統計で、建設業の新規求人数が3県ともに増加の一途をたどっていることが浮き彫りになった。地元建設業界では資材とともに労働力不足が問題視されており、業界の指摘を雇用統計が裏付けた格好だ。被災3県の建設業新規求人数は、被災前の2010年10月と比較すると、2倍から3倍以上に増加、『少ない求職数に対して求人数だけが増加する』雇用のミスマッチが拡大しつつある。 被災3県の10月有効求人倍率(季節調整値)は、全国平均0.80倍に対し、岩手が0.85倍、宮城は1.09倍、福島も1.03倍となった。宮城はことし5月から6カ月連続、福島も6月から5カ月連続して1倍以上となっている。」(『建設通信新聞』2012.12.07)
●「国士交通省は、海外大学との人材交流プログラム事業で、アジアの大学を中心に提携関係を拡充する。14日に事業委託先の海外建設協会(海建協)とタイのアジア工科大学が協定を結ぶ。これまでに欧州2カ国の大学と提携しており、アジアの大学とは初めて。来年1月にはフィリピンのアジア経営大学院大学とも提携し、人材交流プログラムを構築する。インフラ需要が急増するアジアを中心に建設関連分野での人的ネットワークを戦略的に広げ、日本企業の海外展開を後押しする。」(『建設工業新聞』2012.12.10)
●「中央環境審議会(中環審、環境相の諮問機関)大気環境部会の石綿飛散防止専門委員会(浅野直人委員長)は、大気汚染防止法(大防法)を改正し、石綿の飛散防止に向けた規制を強化することを求める中間報告をまとめた。解体工事の請負契約前に事前調査を実施することや、都道府県への特定粉じん作業の実施届け出を義務付けることや、解体工事への立ち入り検査、罰則規定の拡大などを打ち出している。現行法では、石綿使用が疑われる建物の解体時に届け出を求めているが、故意または過失によって届け出がないと、行政側は件数の把捉すらできない。石綿使用を確認する手段がなく、作業員や地域への安全対策を求めることもできない。」(『建設工業新聞』2012.12.10)
●「11月1日からスタートした建設業法に基づく立入検査における社会保険の加入指導。各地方整備局は、2012年度当初の方針に沿って動き出しつつあるものの、当面は手探りの状況にあり、本格化するのは13年度以降となる模様だ。一方、保険関係の指導が従来の立入検査にもたらす影響は不透明な状況にあるのも事実。ブロック間で許可業者数が偏在する中で、一部の整備局からは共通の指導方針が必要との声も出始めており、公平・公正な検査体制の構築が求められている。」(『建設通信新聞』2012.12.03)
●「国土交通省は3日、建設業関係100団体と47都道府県に対し『下請契約および下請代金支払の適正化並びに施工管理の徹底などについて(盆暮通達)』を送付した。建設業の経営環境が依然として厳しい状況を強調した上で、新規事項として建設業関係団体には社会保険未加入対策の一環で専門工事業団体が作成した標準見積書を活用するよう促した。あわせて、公共工事設計労務単価は建設労働者などの賃金相当であり、法定福利費や安全管理費といった必要経費を含まないといった留意事項も改めて周知した。」(『建設通信新聞』2012.12.04)
●「積水ハウスが6日発表した2012年8〜10月期の連結決算は、純利益が前年同期比22%増の97億円だった。太陽電池や燃料電池などを備えた環境配慮型住宅の販売が好調だった。既存の住宅に太陽光発電システムを取り付けるリフォーム事業や分譲マンション事業も伸びた。」(『日本経済新聞』2012.12.07)
●「除雪や道路維持、災害対応などの『地域維持事業』の実施を条件に地元建設業者に結成を認める『地域維持型JV』の運用が伸び悩んでいる。国士交通省が自治体を対象に行った調査によると、地域維持型JVを導入していたのは今年3月には3県だったが、12月でも4県にとどまり、広がっていなかった。国交省は制度創設から1年を経過したことを踏まえ、地域維持型JVのメリットを再度周知し、自治体に活用を促す。」(『建設工業新聞』2012.12.13)