情勢の特徴 - 2013年1月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府の緊急経済対策の一環で、老朽・低未利用不動産を耐震・環境性能に優れた良質な不動産に再生させる官民ファンドの創設に向けた動きが本格化する。政府は国の出資分350億円を12年度補正予算案に盛り込んでおり、今後、ファンドに国費を投入するための基金を設置・管理する法人の選定作業に入る。補正予算成立が見込まれる2月中をめどに公募手続きに着手し、3月にも選定する見通しだ。同法人が再生案件への投資ガイドラインづくりなどを進め、今夏にもファンドの組成・運営を行う不動産運営会社(ファンドマネジャー=FM)を決める。」(『建設工業新聞』2013.01.16)
●「国土交通省は、政権交代に伴い財務省に再提出した13年度予算の概算要求を発表した。一般会計の要求総額(国費)は前年度比4.3%増の4兆7410億円で、うち公共事業費は5.1%増の4兆1343億円。民主党政権下で昨年9月に提出した要求額と同規模だが、新政権が掲げる『国土強靭(きょうじん)化』と『防災・減災ニューディール』の推進方針を踏まえ、特別重点要求と重点要求の項目を変更。復興・防災対策の要求額を、民主政権時の3288億円から4849億円へとほぼ1.5倍に増やした。」(『建設工業新聞』2013.01.16)
●安倍晋三内閣は15日、総額13.1兆円にのぼる2012年度補正予算案を決定した。11日に閣議決定した緊急経済対策を裏付ける国の財政支出10.3兆円に加え、基礎年金の国庫負担分2.6兆円などを盛り込んだ。国債の追加発行額は5.2兆円。年度途中での国債の追加発行は3年ぶり。これにより、12年度の新規国債発行額は50兆円を上回る。今回の補正予算はリーマン・ショック後の世界不況に対応するための09年度第1次補正予算13.9兆円に次ぐ大規模な財政支出となる。(『しんぶん赤旗』2013.01.16より抜粋。)
●「政府は15日閣議決定した2012年度補正予算案のうち、一般会計の公共事業費として、4兆7000億円を計上した。国土交通省が再提出した13年度予算概算要求額とほぼ同額が、老朽化対策などインフラ整備や農業土木、施設整備、自治体工事として発注されることになる。新たに発行される建設国債5兆5000億円の内訳は、補正予算では過去最大規模の公共事業関係費として2兆4000億円、公共事業の自治体負担を国が肩代わりする分として1兆4000億円を計上、施設整備として9000億円充てる。このほか日本高速道路保有・債務返済機構への出資金として8000億円計上した。」(『建設通信新聞』2013.01.17)
●「日銀は21〜22日に開く金融政策決定会合で追加の金融緩和を実施する方針を固めた。昨年12月の前回会合でも緩和しており、2003年5月以来、約9年半ぶりの2回連続緩和となる。政府と日銀は17日、デフレ脱却に向けた政策連携の枠組みとなる共同文書の内容で大筋合意した。日銀が2%の物価上昇率目榛を採用することを明記し、日銀総裁はその進捗状況を定期的に政府に報告する責任を負う。」(『日本経済新聞』2013.01.18)
●「政府は月内にも、日本が環太平洋経済連携協定(TPP)に参加した場合の経済への影響について複数の試算を公表する。経済全体へのプラスと農業など個別分野へのマイナスの影響を分けて公表し、交渉参加をめぐる政府・与党内の議論のたたき台にする。各府省がばらばらに示してきた試算の前提を精査し、すべてを政府の公式見解として検討を進める。」(『日本経済新聞』2013.01.18)
●「不動産売買が回復しつつある。上場企業を中心とする2012年の取引額は前年比14%増の約2兆1700億円と、08年以来4年ぶりの水準となった。投資家から資金を集めて不動産で運用する不動産投資信託(REIT)の購入額が5割増の1兆円強となり、最大の買い手として市場をけん引した。投資マネー主導で売買が活性化する構図が鮮明だ。」(『日本経済新聞』2013.01.21)
●「政府は23日午前、安倍政権の最重要課題である経済再生に向けた成長戦略の具体策を検討する産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)の初会合を首相官邸で開いた。健康や農林水産業など4つの重点分野を設定。企業の競争力向上や技術革新を後押しする具体策を練り、政府が6月にまとめる成長戦略に反映させる。…安倍政権はデフレと円高の克服に向け、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を促す成長戦略を『三本の矢』に掲げる。甘利明経済財政・再生相は初会合で@新市場を戦略的に育成する『新ターゲティングポリシー(戦略市場創造プラン)』A主に製造業の復活を目指す『産業再興プラン』Bアジアなど海外の成長力の取り込みを狙う『国際展開戦略』――の3分野で成長戦略を策定する方針を示した。市場創造プランは2030年の日本の『社会のあるべき姿』から逆算し、少子高齢化、エネルギー制約など日本が直面する課題の解決に寄与する分野を新市場として育成する。健康、エネルギー、次世代インフラ、農林水産業など地域資源の4つを重点分野に掲げた。」(『日本経済新聞』2013.01.23)
●「大規模な財政出動による緊急経済対策に道筋をつけるとともに、2%の物価上昇率の目標を明記した共同声明を政府・日銀が行ったことで、政府は2013年度予算編成から、財政規律重視の方針を色濃く出し始めた。財政再建に舵(かじ)を切り直す推進役が財務省で、政府方針として打ち出す場が、経済財政諮問会議という構図だ。22日の諮問会議で提示された13年度予算編成基本方針案でも、21日に公表された財務省の財政制度等審議会の報告内容が反映された形となった。」(『建設通信新聞』2013.01.24)
●「政府が28日公表した2013年度の成長率見通しは、緊急経済対策などを織り込んだ民間見通しと比較しても感気の内容となっている。民間の見通しは実質で2.0%程度、名目で1.7%程度が中心。官民の主なズレは経済対策の効果と物価動向の見方だ。政府は1月に閣議決定した経済対策の効果が国内総生産(GDP)比で2%程度あり、『ほとんどの効果が13年度に出る』(内閣府)と説明している。これに対して民間エコノミストの多くは人材や資材の不足によって公共工事が遅れ、13年度の押し上げ効果はl%未満とみている。 甘利明経済財政・再生相は同日の記者会見で『即効性に留意した財政出動』だと強調したが、復興需要など『特需』の持続性を疑問視する建設業界が人員増に動くかは不透明な情勢だ。名目成長率が実質を下回る『名実逆転』が13年度に解消できるかという点でも、民間には懐疑的な見方が多い。」(『日本経済新聞』2013.01.28)
●「建設経済研究所が28日発表した建設投資見通しによると、東日本大震災の復興需要や民間設備投資の回復基調の継続、12年度補正予算での公共事業の積み増しなどによって、13年度の建設投資(名目)は前年度比7.7%増の47兆3300億円となる見込みだ。政府、民間いずれも投資額が増えるとみて、昨年10月末の前回予想より2.7兆円の大幅上方修正を行った。」(『建設工業新聞』2013.01.29)

行政・公共事業・民営化

●「東京都は首都直下地震など巨大地震に備えた防災・減災対策を強化する。18日発表した2013年度予算原案で政策の柱に据え、前年度比17%増の1530億円を計上。帰宅困難者対策や木造住宅密集地域(木密)の不燃化など首都の弱点の克服に向けた対策を盛り込んだ。東日本大震災の教訓を生かし、災害に強い都市づくりを急ぐ。」(『日本経済新聞』2013.01.19)
●「国土交通省は、戦略的な社会資本の維持管理・更新事業を進めるための工程表づくりに着手した。組織横断で今後の社会資本の維持管理・更新のあり方を議論する『社会資本の老朽化対策会議』の初会合が21日に開かれ、太田昭宏国交相が関係部局の幹部に対し、今後の取り組みについて『中身を詰めて全体像をしっかり示し、手段・工程も踏まえて対策に乗りだす』と表明した。工程表を今春までにまとめ、個々のインフラ施設ごとに、ハード・ソフト両面から維持管理・更新を着実に進めるための施策を具体化する。同会議には政務三役と同省幹部らが参加し、組織横断で社会資本の老朽化対策を議論する。」(『建設工業新聞』2013.01.23)
●東京都が計画している築地市場(中央区)の移転先、豊洲新市場(江東区)の整備費が計画(3926億円)より574億円ふくらむことが26日までに分かった。新市場予定地の土壌汚染対策に手間取り、開場が2015年度中と1年遅れることが明らかになったばかり。 都は09年2月に策定した新市場整備方針で、豊洲市場の整備費を総額3926億円と公表していた。ところが、13年度予算案を編成する過程で事業費を見直した結果、4500億円になる見込みとなった。土壌汚染対策費が672億円(86億円増)に、施設建設費が1532億円(542億円増)に、基盤整備費も436億円(66億円)に、それぞれ大幅に増えた。減少したのは用地取得費だけ。中央卸売市場管理部では「東日本大震災を踏まえて防災対応力を強化し、業界の要望を受け入れた施設に変更して、周辺の緑地帯対策を拡充し、民間業者が整備する計画だった加工パッケージ施設などを都整備に切り替えたためだ」と説明している。(『しんぶん赤旗』2013.01.27より抜粋。)
●「国土交通省は、耐震改修促進法改正案の方向性をまとめた。旧耐震基準のすべての住宅・建築物を耐震診断・改修の努力義務対象とし、うち大規模な特定建築物や災害対策上の重要建築物は診断を義務化、結果を公表する。また、改修で増築を伴う場合、指定容積率・建ぺい率を超えることも一部で認める。法改正に伴い各種施策も充実させる考えで、診断を義務化した建築物の耐震診断に建築士の資格を持つ専門家の関与を求める仕組み作りなどにも乗り出す方針だ。同法改正案は、28日に召集する今通常国会への提出を目指す。」(『建設通信新聞』2013.01.28)

労働・福祉

●「2012年の建設業での労働災害による死亡者数が、前年比9.9%増の354人と、8年ぶりに前年と比べて増加に転じたことが、厚生労働省が24日にまとめた12年の労災発生状況(1月7日時点、速報値)で分かった。また、休業4日以上の死傷者数も、2.9%増の1万8062人(12年12月末時点、速報値)となり、2年連続して増えている。東日本大震災復旧・復興関連の建設業死傷者は、11年3月11日から12年12月31日までの期間で577人だった。」(『建設通信新聞』2013.01.25)
●「東日本大震災の復旧・復興工事が急ピッチで進む被災地で、建設現場での死傷事故が後を絶たない。宮城県では2012年の事故発生件数が過去10年で最悪を記録したほか、岩手、福島両県も増加。工事の増加に加え、作業員が不足し、高齢者の現場復帰や未経験者の新規就労が増えたことも要因とみられる。各地の労働局などは、講習会などで安全意識の向上を呼びかけている。」(『日本経済新聞』2013.01.29)
●政府は27日、生活保護費のうち食費など生活費に使う「生活扶助費」を8月から段階的に減らすことなどにより、2015年度以降、支給額を年740億円削減することを決めた。削減幅は7.3%。生活扶助の基準額を6.5%下げることで670億円削減、年末に支給される「期末一時扶助」を70億円削減する。厚労省によると、受給世帯の96%で基準額が減る見通しで、子育て世帯にとりわけ大きな打撃となる。このうち、13年度の削減額は生活扶助150億、「期末一時扶助」70億、あわせて221億円としている。生活保護費の引き下げは04年度以来9年ぶり。(『しんぶん赤旗』2013.01.29より抜粋。)

建設産業・経営

●「2012年の建設業倒産(負債額1000万円以上)が、過去20年間で最少の3002件にとどまったことが、東京商工リサーチが15日公表した『2012年建設業倒産状況調査』で分かった。前年比較の倒産件数は4年連続で減少した。東京商工リサーチでは、金利減免など企業の資金調達の配慮を金融機関に求める『中小企業金融円滑化法(円滑化法)』などの金融支援効果と東北を中心とした復興工事の本格化が影響したと分析している。また、これまで負債額の大きかった倒産企業に多かった民事再生法適用など再建型倒産形態が少なくなっているのも特徴の一つだ。」(『建設通信新聞』2013.01.16)
●「宮城県山元町は、復興まちづくりを手掛けるCMr(コンストラクション・マネージャー)を選定するため、公募型プロポーザルを行った結果、オオバを契約候補者に選定した。新山下駅、新坂元駅、宮城病院の周辺で行う復興まちづくりの計画作成から地元調整、設計などを包括的に手掛ける業務。参加表明、提案書を提出したのは同者のみ。今月末に見積もり合わせを行い契約する。」(『建設工業新聞』2013.01.16)
●「宮城県東松島市は、民間事業者が建設した住宅を市が買い取る『買取災害公営住宅事業』の公募型プロポーザルを行い、4地区の事業者を選定した。赤井地区(川前4)は大和ハウス工業、同(川前2)は大和リース、同(赤井南1)は積水ハウスを最優秀者に選定。小野駅前北地区は市内の花坂ハウス工業JV(構成員=佐々木工務店、山形工務店、赤間建築)に決めた。議会承認を経て契約する。2月に事業着手し、14年2月の竣工を目指す。同3月に建物を市に引き渡す予定だ。業務範囲は、要求水準に基づく全体計画・買取災害公営住宅などの設計と、同住宅などの建設工事。各事業者の提案によると、赤井南1地区には約3.9ヘクタールの敷地に合計70戸の一戸建て、集合住宅のほか、公園や調整池、集会所などを建設。赤井川前4には38戸、赤井川前2には20戸、小野駅前北地区には23戸の住宅を設ける。」(『建設工業新聞』2013.01.16)
●「大成建設は3月、住宅関連事業のグループ一体営業に乗り出す。現状では戸建て、マンションなど子会社ごとに営業体制が分かれるが、相互の商品知識を共有し、グループで展開するすべての住宅を消費者に提案できる体制に切り替える。同社が得意とする災害に強い住宅の売り込みを強化し、2020年3月期の住宅関連の連結売上高を12年3月期比30%増の1300億円に引き上げる。」(『日本経済新聞』2013.01.21)
●「『建設市場がX字回復したらサブコンが持たない』――。建設産業専門団体連合会の才賀清二郎会長は、建設市場が今後、一気に急拡大する可能性について、『本当にX字回復したら、専門工事業(サブコン)はついて行けない』との不安を表明した。18日、建専連傘下の全国鉄橋工業協会新年賀詞交歓会で述べた。建設市場の長期縮小が続く中、デフレ脱却の先導役として大規模な財政出動による市場回復を歓迎する声が大勢を占める中、才賀会長があえて市場の急拡大の影響に言及し、着実な市場回復を訴えるのは、ゼネコンと比較して経営体力が劣る中小・小規模企業のサブコンにとって、中長期の建設市場規模が不透明な段階で、雇用拡大に踏み切ることへの不安があるからだ。『建設生産システムのかぎである技能労働者の確保・育成へ社会保険未加入対策を進めるという大きな決断をした』 (才賀会長)専門工事業界にとって、社会保険未加入問題への対応を先送りし、当面の市場増加に対して、社会保険未加入の企業・技能労働者への再下請けで対応することが、結果的に重層化拡大につながることを容認できないことが背景にある。」(『建設通信新聞』2013.01.22)
●「北海道建設業協会(北海道建協、岩田圭剛会長)は、会員企業の技術者に関する実態調査結果をまとめ、23日に開かれた理事会に報告した。1級建築士や1級土木施工管理技士では、4年前に比べ資格者数が2割程度減少。さらに年齢別では25〜54歳が減少する一方で、55歳以上は増加しており、技術者の減少とともに、高齢化が進んでいる実態が浮き彫りとなった。」(『建設工業新聞』2013.01.24)
●「全国中小建設業協会(岡本弘会長)は、2012年10月末から11月にかけて会員会社に実施した社会保険加入状況アンケートの調査結果をまとめた。元請けの団体が下請けも含めて加入状況を調査した結果を公表するのは初めて。正社員より正社員以外の加入率が低く、特に工事現場(下請けを含む)では社員以外の未加入率が健康、年金(厚生、国民)、雇用の3保険いずれも2割を超えた。全中建では下請けの未加入率が高いとみており、加入状況を精査した上で全中建の社会保険未加入対策検討会で問題点を探り、元請けによる下請けへの指導方法を検討する。」(『建設通信新聞』2013.01.29)
●「建設業の企業数は2012年2月1日時点で46万2879社あり、11年(1−12月)の売上高が79兆4352億7200万円であることが、経済産業、総務の両省が29日にまとめた『経済センサス 活動調査』の速報結果で明らかとなった。同調査は、日本の全産業分野の売上高などを同一時点で網羅的に把握する唯一の統計調査として初めて実施した。全産業に占める建設業の売上高は6.1%。建設業の売上高から売上原価、販売費、一般管理費の費用総額を引いて給与総額と租税公課を足した『付加価値額』は、13兆9124億7900万円となり、全産業の5.7%だった。付加価値率は17.5%で、全産業平均の18.6%と比べ1.1ポイント低い。調査は『経済の国勢調査』といわれ、内閣府のGDP(国内総生産)集計の推計値に対し、実測値を積み上げている。この調査のために09年に行った基礎調査結果と比べると、建設業の企業数は11.1%減。事業所数では9.7%減の52万6793所、従業者数は9.1%減の392万6854人だった。建設業の従業者のうち、正社員・職員は77.1%で、22.9%が非正規雇用者となる。建設業の売上高のうち、本業の売上高は93.8%の74兆5000億2100万円。」(『建設通信新聞』2013.01.30)
●「全国建設業協会(全建、淺沼健一会長)は、傘下の都道府県建設業協会が自治体などと結ぶ災害協定に関する調査結果(13年l月時点)をまとめた。都道府県との災害応急対策などの協定は45建協が締結済みで、国の出先機関との協定や防疫分野で協定を結ぶ取り組みも進展。さらに、災害時の行方不明者捜索などのために警察から協定締結を求められる事例も出始めた。地域の建協の存在感が増している形だ。」(『建設工業新聞』2013.01.31)

その他

●「東南アジア各国やブラジルなど新興国が今年1月、公定の最低賃金を一斉に引き上げた。外資系製造業の進出が急拡大し、製造現場の人手不足が強まった。賃上げストの多発などを受け、新興国の工場の賃金は2003年の2.2倍に高騰。この傾向は今後も加速する見通しだ。安い賃金のみに着目した製造業の『国際分業』は岐路に立っている。」(『日本経済新聞』2013.01.16)

まちづくり・住宅・不動産・環境