情勢の特徴 - 2013年2月前半
●「国土交通省が1月31日発表した12年(1〜12月)の新設住宅着工戸数は、前年比5.8%増の88万2797戸となり、3年連続の増加となった。マンションは、堅調な首都圏に加え、近畿圏が3年連続で2桁増となるなど、増加傾向が鮮明になってきた。100万戸台で推移していた08年秋のリーマンショック以前に比べると依然、低水準だが、東北の震災被災地での住宅整備が今後加速することなどから『緩やかながら回復基調が続く』(総合政策局建設統計室)としている。着工戸数の内訳は、持ち家31万1589戸(前年比2.0%増)、貸家31万8521戸(11.4%増)、分譲住宅24万6810戸(5.2%増)。」(『建設工業新聞』2013.02.01)
●「政府が今国会に提出した2012年度補正予算案によると、一般会計の土木と建築を合わせた12年度公共事業予算規模は、10兆4070億円となることが分かった。補正予算案のうち、建築分野に当たる『その他施設費』は2兆3061億円となった。ただ、公共事業の自治体負担を肩代わりする『地域の元気臨時交付金』などが含まれることから、施設整備費は8600億円程度とみられる。補正予算額のうち46%を公共事業に充てることになる。 補正予算額のうち、建築分野のその他施設費には、自治体の財政を支援する交付金や関係省庁が計上した船舶建造費が含まれる。このほか、農林水産関係の整備交付金もその他施設費扱いになることから、施設整備費相当額ととらえることができる予算額は、8600億円程度と推計できる。…補正予算案のうち、治山治水や道路、港湾空港鉄道、住宅都市環境、公園水道廃棄物、農林水産基盤などの『一般公共事業費』と『災害復旧等事業費』を合わせた公共事業(関係)費は、特定財源見合い分を除き2兆4108億円となった。このうち、災害復旧等事業費は1731億円。公共事業費補正予算額のうち51%が土木分野になる。」(『建設通信新聞』2013.02.04)
●「安倍晋三首相が経済3団体トップと首相官邸で会談し、業績が改善した企業に対して賃上げを求めた。デフレ脱却を狙うアベノミクスの恩恵を国民が実感できるようにするのが狙いだ。今夏の参院選を前に、首相が異例の賃上げ要請に踏み切ったのは、2%の物価上昇を達成しても、名目賃金が上がらなければ実質的に賃金が目減りするとの批判が野党から出ているためだ。足元で本格化している春季労使交渉では、月例賃金だけでなく、年間賞与の扱いも同時に決める企業が多い。賞与の増額を実現すれば、今夏の参院選を前に国民に賃金増の成果を示すことができるとの判断も働いたとみられる。」(『日本経済新聞』2013.02.13)
●「国土交通省は群馬県の八ツ場ダムを建設するのに必要な道などをつくる関連工事を2013年度中に始める方針だ。関連工事の予算は12年度にも計上したが、当時の民主党政権内から反対の声があがり、着工できていなかった。利根川流域の洪水を防止するため、八ツ場ダムの早期建設へ準備する。着工するのは、ダム本体をつくるのに必要な作業場所や工事用の道路を建設する本体関連工事。国交省は13年度予算案に事業費をl8億円計上しており、予算成立後に執行する方針だ。八ツ場ダムの着工に前向きな自民党を中心とした政権に交代したうえ、利根川水系などの河川整備計画の原案を関東地方整備局が作り、本体関連工事を始める環境が整いつつある。」(『日本経済新聞』2013.02.13)
●「内閣府が14日発表した2012年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.1%減、年率換算で0.4%減となった。海外経済の低迷に伴う輸出や設備投資の不振で3四半期連続のマイナスとなった。ただ個人消費や公共投資が堅調で、マイナス幅は前期(年率3.8%減)から縮小した。」(『日本経済新聞』2013.02.14)
●「アジアで原子力発電所の建設が急増し、今後20年間に約100基増える見通しだ。中心は中国、インド、韓国で新設計画の9割を占める。経済発展に伴う電力需要増に対応するためだ。日本企業にとっては原発関連の輸出機会が広がる。同様にアジアへの原発輸出を目指す韓国やロシアなどと官民を挙げた受注競争が加速しそうだ。各国のエネルギー計画などをもとに日本経済新聞が集計した。中国は2020年までに56基を新設し、発電能力を8000万キロワットと現在の9倍に増やす。総発電量に占める原発の割合を現在の約l%から10%まで高める。インドは18基を造り、原発の発電能力を50年には4700万キロワットと現在の11倍強にする。韓国は19基を新設し、30年までに原発比率を約3割から59%に高める。ベトナムは30年までに合計14基を新設する計画だ。」(『日本経済新聞』2013.02.15)
●「国土交通省は13年度から下水道施設の老朽化対策と防災・減災対策を強化する。施設の更新・改築への交付金を自治体に配分する際、長寿命化計画の策定を条件にする。50年以上が経過した都市部の枝線管きょの老朽化対策を交付金の配分対象に加える。自治体が都市部で実施する管きょの耐震化事業の一部費用を助成する『下水道総合地震対策事業』も延長・拡充。施設の点検履歴などを一元管理する『下水道施設情報システム』の構築にも乗りだす。」(『建設工業新聞』2013.02.05)
●「国土交通省は来年度、『住宅ストック活用・リフォーム推進事業』を創設し、中古住宅流通・リフォーム市場活性化に向け、総合的に施策展開する。政府が1月29日に閣議決定した2013年度当初予算案に盛り込んだ。同事業以外にも耐震改修や省エネ改修に関する支援策も拡充しており、中古住宅・リフォームを中心にした住宅政策の方向性が鮮明になっている。『住宅ストック活用・リフォーム推進事業』は具体的には4事業で、地域工務店等を支援する。『住宅消費者への相談体制の整備事業』は、リフォームに関する専門家相談の取り組みや、地域における相談体制を整備するための研修等の取り組みが対象。『リフォームの担い手支援事業』は、中小工務店等が連携して取り組むリフォーム工事に関する設計・施工基準の整備等や、リフォーム事業者の技術力・信頼性に関する情報提供の取り組みを支援する。『住宅リフォーム市場の環境整備を図る調査研究』は、中古住宅を購入してリフォームする場合に、リフォームによる質の向上を担保価値等に反映させる評価方法を確立させるための実証的な調査研究が対象だ。『住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業』は、今後、郊外型住宅団地での空き家の増加が見込まれることから、既存住宅の流通・活用を促進するためのコーディネート、住宅のリフォーム、生活利便施設の整備等を行うモデル的な取り組みを対象としている。」(『日本住宅新聞』2013.2.05)
●「国土交通省は6日、2012年度補正予算の執行を前に、直轄工事における入札不調対策の一環として、▽施工個所が点在する工事の間接費の積算▽遠隔地からの建設資材調達にかかる設計変更▽地域外からの労働者確保に要する間接費の設計変更――の3事項を、各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合事務局に通知した。いずれも東日本大震災の被災地域で特例的に実施していたものを、全国の直轄工事に対象を広げた。補正予算の成立日以降に入札契約手続きを開始する工事を対象に試行する。」(『建設通信新聞』2013.02.07)
●「地方公務員の今年度の給与は9年ぶりに国家公務員を上回った。東日本大震災からの復興財源に充てる目的で国が昨年4月から7.8%下げていることが理由だ。国はこの格差をもとに地方に給与削減を要請。一方で地方は納得せず、相互不信が深まっている。総務省によると、国を100としたときの自治体の給与水準を示すラスパイレス指数は昨年4月一時点で107.0。前年比8.1ポイント上がり、9年ぶりに国を追い抜いた。…国は『地方も身を削るべきだ』と主張し、給与を7月から国と同じ水準に減らすことを要請。来年度に配る地方交付税を地方公務員の給与分の7.8%にあたる4千億円減らし、『兵糧攻め』で削減を迫る。独自に給与を削減している自治体には『地域の元気づくり事業費』の名目で総額1500億円の交付税を配る。今年度時点で給与が国を下回っている点や大幅な人員削減をしてきたことを条件に配る見返りといえるが、交付税は差し引き2500億円減り、地方の取り分は少なくなる。」(『日本経済新聞』2013.02.09)
●「国土交通省は、老朽化したインフラの総点検に向けて、分野別の点検指針・基準類の再周知に乗りだす。国交省は12年度補正予算案や13年度予算案で全国のインフラの総点検を重点施策に掲げている。総点検では特に地方自治体が管理するインフラの健全性把握を重視する方針で、点検方法などにばらつきが出ないよう、補正予算案の成立後に同省の関係各局が自治体の関連部局に指針・基準類を再周知し、円滑な点検につなげる考えだ。…点検・診断方法はインフラの種類によって異なり、それぞれに国などが指針・基準類を整理しているが、自治体には参考送付にとどまっているものも少なくない。…基本的には自治体もこの基準類に沿って点検・診断を行っているが、基準類を独自に見直し、運用しているケースもある。道路や港湾、公営住宅、海岸、空港の指針・基準類は参考送付にとどまるものも多く、都道府県以外の市町村では内容白体を把握していない可能性も指摘されている。…国交省は全国での一斉点検に向けて見直し内容や留意事項も含め指針・基準類の周知を徹底。点検・診断のやり方を統一することで精度のばらつきをなくし、最終的に構築するインフラの維持管理に役立てるためのデータベースに生かす。」(『建設工業新聞』2013.02.12)
●総務省が1日発表した労働力調査によると、2012年12月の完全失業率(季節調整値)は、前月比0.1ポイント上昇の4.2%と、8カ月ぶりに悪化した。電機メーカー大手で強行されている大リストラなどが影響。同月の製造業の就業者は、51年ぶりに1000万人を下回った。完全失業者数(同)は前月に比べ7万人増加し、278万人となった。解雇などの勤め先や事業の都合など、非自発的な理由で離職した人は111万人で、前月に比べ15万人増加した。12年12月の製造業の就業者数は、前年同月比35万人減の998万人となった。1000万人割れは、1961年6月(984万人)以来。製造業の就業者数は、大企業が海外進出する一方で、国内で工場閉鎖や人員削減といったリストラを推進していることなどを背景に減少傾向が続いている。(『しんぶん赤旗』2013.02.02より抜粋。)
●「国土交通省は、労務費や資材価格などが上昇局面にある場合、市場価格を適切に予定価格に反映させるための新たな仕組みづくりに乗り出した。東日本大震災の被災地では、こうした状況に対応するため、見積もり方式の活用を特例的に導入しているものの、特に労務費に関しては課題も多く、活用事例がない。政府方針の『15カ月予算』で、今後膨大な量の公共工事が発注されることで、一層価格が上昇するとの懸念も高まっており、入札不調の急増に備えた共通のルールが必要と判断した。…労務費や資材価格の高騰が著しい場合、通常の積算価格では市場価格を適切に反映するのが難しい。このため、被災地では価格変動が著しい特定の地域を対象に見積もりを積極的に活用して、積算に市場価格を反映させる特例的な対応を実施している。ただ、特に労務費は供給側が限られる資材価格と異なり、地域的な要因や労働者間での差もあるため全体像をとらえるのが難しく、適時適切に見積もりを取る作業も容易ではない。実際、被災地で見積もりを活用した事例はないという。今後の復旧・復興工事の増加、2012年度補正予算と13年度予算を一体的に執行する『15カ月予算』による膨大な量の公共工事で、労務費や資材価格が一層の上昇局面に入る可能性も高まっている。このため、価格が定量的に上昇し続ける局面であればその上昇分を積算に反映させる可能性も含めて、新たなルールづくりを急ぐ考え。」(『建設通信新聞』2013.02.08)
●「国土交通省が1月31日発表した12年(1〜12月)の建設工事受注統計によると、大手50社の受注総額は前年比3.2%増の11兆円となった。増加は3年連続。受注額自体は09、10、11年に次いで統計開始以来4番目の低水準だが、10年度以降は増加基調に転じ、受注環境は回復傾向にある。12年は、東日本大震災の被災地での復興事業の発注が本格化したほか、全国的にインフラ網の整備が堅調に推移し、公共工事の受注額が2年連続で増加した。民間工事も不動産業や電気・ガス・熱供給・水道業などのエネルギー関係を中心に発注が増え、国内受注全体では4.1%増の10兆5068億円となった。海外受注は13.2%減の4932億円で、3年ぶりに5000億円を割り込んだ。国内受注のうち、民間工事の受注額は1.0%増の7兆3979億円。震災後に工場の再建や施設の増強を進める企業が増えたが、12年は一段落し、製造業からの受注は4.9%減の1兆4845億円と落ちこんだ。一方で非製造業からの受注は2.6%増の5兆9134億円と2年ぶりの増加になった。公共工事の受注額は14.9%増の2兆6193億円だった。11年9、10月に震災のがれき処理・除染などの大型案件があったことによる反動で、地万機閑からの受注は10.6%減の9550億円と減った。ただ、国の機関からの受注は、全国的にインフラ網整備が加速し、37.2%増の1兆6643億円と大きく伸びた。」(『建設工業新聞』2013.02.01)
●「長谷工コーポレーションは、マンションリフォーム事業を強化する。築30年程度の壁式低層共同住宅の長寿命化と省エネ化を図る改修メニューを策定。低層マンション向けサービス関連事業の核として、グループ会社の長谷工リフォームや長谷工アネシスなどが提案活動に乗り出す。新メニューを採用した第1号案件が2月に着工。国土交通省の補助金事業として総工事費11億円超の大型リフォーム工事が始動する。今後グループの施工実績やノウハウ、技術力など総合力を生かした事業展開を図っていく。」(『建設工業新聞』2013.02.01)
●「建設業振興基金は1日、若年の技能労働者や技術者の確保育成に向けた検討を進める『建設産業人材確保・育成方針策定会議』の初会合を開いた。ゼネコンや専門工事業、業界団体、教育関係者などを交え、若年層の業界への入職を進めるための教育機関との連携強化策などを議論。5月にも中間とりまとめを作成し、今秋にも建設産業人材確保・育成に関する方針を策定する。」(『建設通信新聞』2013.02.04)
●「三井不動産が6日発表した2012年4〜12月期の連結決算は純利益が469億円と前年同期比69%増えた。都内を中心にマンションなどの分譲事業が好調だった。昨年4月に開業した『ダイバーシティ東京』(東京・江東)など大型商業施設の好調も利益を押し上げた。」(『日本経済新聞』2013.02.07)
●「大和ハウス工業が8日発表した2012年4〜12月期連結決算は純利益が前年同期比62%増の514億円だった。4〜12月期としては過去最高。相続税対策などを背景に賃貸住宅の建設が伸び、子会社が手掛ける賃貸管理事業も順調だった。介護施設の建設案件も全国で増加。前年同期に繰り延べ税金資産を取り崩していた反動が出て、大幅な最終増益になった。」(『日本経済新聞』2013.02.09)
●「大手ゼネコン3社の受注高が微減傾向を示している。大手4社が12日までに発表した2013年3月期第3四半期累計期間(12年4−12月)の単体受注高は、大林組のみ2桁の増を示した。4社の受注高は合計2兆7860億4200万円で前年同期比2.5%減。このうち土木工事は5592億2500万円で20.7%減、建築工事は2兆1425億7100万円で4.1%増加した。受注競争の激化や労務費の高騰などから、建築での収益が悪化傾向にある。」(『建設通信新聞』2013.02.13)
●「国土交通省は、耐震改修促進法を改正して耐震診断を義務化する旧耐震基準の建築物の対象要件を固めた。不特定多数が利用する5000平方メートル以上の特定建築物と、地方自治体が耐震改修促進計画に位置付けた緊急輸送道路沿道建築物と防災拠点施設に診断を義務付ける。特定建築物は、全国で約4000棟が対象になる見込み。2月中に開く予定の社会資本整備審議会に同法改正案のベースとなる耐震化促進方策最終報告を提示し、答申を経て、今通常国会に改正案を提出する。」(『建設通信新聞』2013.02.05)
●「住宅・建築物の耐震化促進策を検討してきた社会資本整備審議会建築分科会・建築基準制度部会(部会長=久保哲夫・東京大学名誉教授)は2月12日、報告をまとめ建築分科会に提出した。報告は住宅も含むすべての建築物に耐震診断の努力義務を課すほか、緊急輸送道路の沿道などの住宅・建築物には診断を義務付ける。また、義務化対象の建築物の診断は、耐震診断に関する講習を受講した建築士に限ることで、耐震診断の水準と信頼性を確保することを求めた。」(『日本住宅新聞』2013.02.15)