情勢の特徴 - 2013年2月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国際協力機構(JICA)は2013年度、約10年ぶりに復活した海外投融資事業を加速させる。東南アジア諸国などのインフラ整備や貧困削減事業を対象に、民間企業との間で年200億〜300億円を目安に投融資契約を積み上げる。低利資金の出し手として事業に関与することでリスクを引き下げ、日本企業の海外進出を後押しする。」(『日本経済新聞』2013.02.19)
●「自民党のPFI調査会(佐田玄一郎会長)が20日、民間需要拡大へ再始動した。今通常国会に提出される改正PFI法案成立後の、さらなる改正を視野に入れている。大胆な金融緩和と2012年度補正予算と13年度予算による大幅な財政出動をけん引役に経済再生を目指す安倍政権にとって、財政再建と経済再生を両立させるには、民間資金を活用した民需拡大が必要不可欠と判断した。自民党は、その呼び水となる日本初の官民連携インフラファンド設立を柱にした改正PFI法案の早期提出と成立を後押しするとともに、地域経済活性化につながるPFI事業の枠組みを支援する。」(『建設通信新聞』2013.02.21)
●「20政令指定都市の13年度当初予算案が21日出そろった。一般会計の総額は12兆3034億4300万円で前年度比0.3%減とほぼ横ばい。12年度補正予算案による公共事業の前倒し分などを含めた『14〜15カ月予算』として見た実質的な予算額は増加となる。デフレ脱却を目指す国の緊急経済対策に沿った形で切れ目なく予算を執行し、景気浮揚に取り組む。」(『建設工業新聞』2013.02.22)
●「政府は環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に踏み出す。安倍晋三首相は22日昼(日本時間23日未明)の日米首脳会談で、すべての関税撤廃重刑提にしないことを確認した。与党から一任を取り付け、今週中に参加表明する考えだ。関係国との協議を経て6月にも日本の交渉参加が決まる見通しで、交渉では農業や自動車、保険市場の扱いが焦点になる。TPP交渉参加国は3月、5月、9月に会合を開く。交渉に参加する11カ国は早ければ10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場での大筋合意を目指している。日本の交渉参加には米政府との協議を経て、米議会の了承を得る必要がある。議会に通告後、交渉に入れるまで90日かかる。日本の正式な参加決定は早くても6月で、実際の交渉に参加するのは9月からになる。共同声明は『日本には一定の農産品、米国には一定の工業品というように両国ともに2国間貿易上のセンシティビティ(重要品目)が存在する』と明記した。」(『日本経済新聞』2013.02.24)
●「民法の契約ルールの見直しを進めてきた法制審議会の部会は26日、法改正の中間試案を決めた。銀行などが中小企業に融資する場合に求める個人保証について経営者以外は認めないなど、中小企業保護に配慮したのが特徴の一つだ。消費者契約の透明性向上や法定利率の見直しも盛り込んでおり、実現すれば幅広い取引に影響がありそうだ。」(『日本経済新聞』2013.02.27)
●「首都圏で住宅ローンを固定金利で借りる人がじわり目立ち始めた。デフレ脱却を掲げる新政権に歩調を合わせ日銀が物価上昇率目標を導入し、低い金利がどこかで上昇に転じるとの観測もあるからだ。現在の住宅ローンの主流は金利がより低い変動金利型だが、今後は金利動向をどう見るかによって、選ぶタイプが鮮明に分かれることになりそうだ。」(『日本経済新聞』2013.02.28)
●「電気料金やガソリンなど燃料代の上昇に加え、鉄鋼、石油化学、繊維など産業素材でも値上げを目指す動きが広がってきた。円安による燃料や原材料の輸入価格の上昇を転嫁するためだ。政府は27日、製粉会社に売り渡す小麦価格を4月から引き上げると発表。製紙会社はトイレ紙やティッシュ紙の値上げも表明した。デフレ脱却には『所得増と消費回復が不可欠』との指摘が多く、川下への値上げ浸透は難航が予想される。」(『日本経済新聞』2013.02.28)

行政・公共事業・民営化

●「環境省は15日、除染等工事共通仕様書を改正した。元請けに対して、除染作業の『作業指揮者』を置く下請企業との契約は同省の工事か役務の入札参加資格取得者から選ぶことを義務化する。また、▽発注者との週間工程会議で示す今後1週間の施行予定個所を地図で提出することを義務化▽作業日報にも地図を添付▽除染電離則違反が多かったことを踏まえ、作業日報に作業区域の放射線量を記載▽作業日報の添付資料として、できるだけ多くの写真と『除染作業チェックリスト』の提出を1日の工程終了ごとに提出義務化――を共通仕様書の除染等工事施工管理基準に追記し、施工管理を強化する。改正した共通仕様書は、2013年度事業から適用する。」(『建設通信新聞』2013.02.18)
●「国土交通省は、下水道分野における水環境マネジメントの観点から流域別下水道整備総合計画を再構築する際の要点と方向性をまとめた。中長期的視点でエネルギー使用量の削減や水環境の改善状況を住民に対して『見える化』する視点を取り入れる考え。2013年度には流総計画調査の指針改定に向けて体制を整える。あわせて、新しい流域別下水道整備総合計画の策定に当たり、国としてモデル流域を勘定して試行的に取り組みを先導していく方針だ。」(『建設通信新聞』2013.02.18)
●「国土交通省は、今後の官民連携による海外市場での事業展開の方向性や具体的施策を示した報告書『これからのインフラ・システム輸出戦略』をまとめた。昨年開いた有識者会議での議論に基づき、海外市場に進出する上での基本的考え方や取り組み姿勢を整理。これまでの海外事業で明らかになった課題を踏まえ、事業の川上・川下も含めて全方位的に海外での競争力を高める必要性を指摘した。今後取り組むべき具体策を随時実行に移し、海外市場での日本の存在感を高めていく方針だ。」(『建設工業新聞』2013.02.18)
●「麻生太郎財務相は、18日の参院予算委員会で、自民党の脇雅史参院国対委員長が、より安いところと契約するという現行の会計法や地方自治法に縛られない公共工事に限定した公共調達に関する新法の制定を求めたのに対し、『価格だけに縛られない公共工事の品質に着目した法律の検討が必要』との認識を示した。脇氏は、長引くデフレと公共事業の削減によって建設産業界でのダンビング受注が深刻化し、建設業者の疲弊や若年建設技能者の入職減少などが進み、このままではインフラの維持管理や災害時の対応に欠かせない技能者がいなくなると指摘。『安ければよいという会計法や地方自治法を適確に適用すればするほど、業界が傷むことになっている。会計法の特例的な法律をつくるしかない』と財務、総務、国土交通省などが協力して新法を制定する必要性を強調した。」(『建設工業新聞』2013.02.19)
●「都市再生機構は19日、岩手県大槌町でピュア型とアットリスク型を併用したCM(コンストラクション・マネジメント)方式を試行することを明らかにした。新たに事業調整を実施するCMr(コンストラクション・マネジャー)を選定し、施工に関するマネジメントなどを実施するCMrを監理する。これまで被災地で実施したCMでは都市機構のCMr選定に負担が生じていたため、業務量を軽減させるのが狙い。今回の方式を一つのモデルとし、今後は市町村の要望に応じて拡大させる。」(『建設通信新聞』2013.02.20)
●「国土交通省は、東日本大震災の復興工事を円滑に進めるため、19日に東京都内で自治体や建設業界団体と開いた『復旧・復興事業の施工確保に関する連絡協議会』で追加対策を打ち出した。被災地で深刻化している生コンクリート不足への対策として、国と県が独自に公共工事向け専用プラントを設置。生コンの実勢価格を契約額に反映させる単品スライド条項の運用指針も3月中に作成する。作業員宿舎の建設費用を共通仮設費に計上できるようにする措置も講じる。」(『建設工業新聞』2013.02.20)
●「東日本大震災の被災地で復興工事の発注が本格化する中、人手不足や資材価格の高騰などを背景に公共工事の不調・不落が依然続いている。国土交通省の調査によると、被災3県(岩手、宮城、福島)と仙台市が発注した土木工事での不調・不落の発生割合は11年度より12年度が上昇していた。随意契約や発注ロットの大型化などの工夫で再入札し、ほぼ契約はできているが、再入札によって工期が遅れる工事が増え、今後の工事発注に影響を与える懸念も出ている。」(『建設工業新聞』2013.02.20)
●「厚生労働省は2013年度から南海トラフ地震などで津波が短時間で襲来する危険がある民間福祉・医療施設の高台移転を支援する事業を始める。移転費用の最大4分の3を国と自治体が負担し、施設が負担する残り4分の1も無利子融資で支援する制度をつくる。13年度は約80施設の移転を促し、避難が難しい高齢者や障害者の安全を確保する。」(『日本経済新聞』2013.02.21)
●「国土交通省は26日、社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会技術部会社会資本メンテナンス戦略小委員会(委員長・家田仁東大大学院教授)を開き、今後目指すべき戦略的維持管理・更新についての中間取りまとめ(素案)を作成した。重点施策として、施設の健全性を把握するための基準などの整備、カルテの作成による維持管理・更新情報の整理・活用を提言。整備を計画に進めるための予算確保や人材育成なども求め、維持管理・更新に軸足を置いた制度への転換を要請した。素案では、維持管理・更新の現状と課題のほか、管理者が取り組むべき基本的考え方、今後の重点施策の3項目を柱にしている。現状と課題では、特に市町村で担当する技術職員の不足や技術力不足による施設の機能低下が懸念されるとし、管理者が維持更新を実践する体制が十分でないと指摘した。基本的な考え方としては、社会資本の機能を持続的に発揮させることや、活力ある経済社会の実現、安全安心の確保などを見据えた維持更新を進めることを示した。」(『建設通信新聞』2013.02.27)
●「国土交通省は、東日本大震災の復興工事の円滑化策として打ち出した作業員宿舎の建設費用を共通仮設費に計上できるようにする措置について、具体的な積算方法を決めた。営繕費の積み上げ分として宿舎の設置・撤去に要する費用を計上。1戸当たりの単価は複数者の見積もりなどを参考に適切に設定するとしている。東北、北陸の両地方整備局に対し、この方法で試行するよう22日付で通知を出した。」(『建設工業新聞』2013.02.27)
●「国土交通省は、自治体の社会資本の維持管理・更新に関するアンケートの結果をまとめた。道路や河川、港湾など同省所管のインフラを対象に各自治体の管理体制や実態把握状況、老朽化施設への対応状況などを調査。インフラ全体で中長期的に必要となる維持管理・更新費用について、把握をしていない団体が都道府県・政令指定都市で4割強、市町村で約7割に上った。…維持管理・更新業務を担当する職員数については、規模が大きい自治体では『30人以上』と回答する団体が多かったが、市区町村など小規模自治体では『1〜4人』が大半を占め、技術系職員が『ゼロ』と回答した団体も目立った。」(『建設工業新聞』2013.02.27)
●「国土交通省は、インフラの老朽化対応が急がれる中、戦略的な維持管理・更新の取り組みを加速させる。点検・補修と事前防災・減災対策に重点を置いた12年度補正予算が26日に成立したのを受け、自治体管理分も含めてインフラの総点検に本格着手。先行する道路では新たに策定した総点検実施要領を自治体に送付し、構造物の老朽・劣化状況の全容把握を急ぐ。点検結果を踏まえ緊急修繕を実施。法制度や技術基準類の改善も進める。」(『建設工業新聞』2013.02.28)

労働・福祉

●福島県労連労働相談センターは、「除染労働者110番」(14日)に寄せられた16件の相談内容を16日までに公表した。1万円の除染手当(危険手当)が支払われるべき国直轄の「除染特別地域」から7件の相談があった。環境省が明示している「1日1万1700円+危険手当」をもらう人は誰もおらず、逆に「最低賃金+危険手当」の1万5312円を下回る日当しかないとの相談が3件もあった。相談では、除染手当がまともに支払われていないことを隠す悪質な例もあった。危険手当が支払われていないのに会社から「もらっていることにしてくれ」といわれたという人や、「危険手当はもらわない」と一筆を書けといわれた人がいた。…雇用保険や社会保険の加入、交通費の末支給、内部ひばく線量を調べるホールボディーカウンターを受けるときは無給になることなどの苦情があった。国直轄の除染特別地域と放射線量に違いはない市町村実施の「除染実施区域」から、おもに「危険手当の対象にならないのか」との相談が5件あった。(『しんぶん赤旗』2013.02.17より抜粋。)
●「ゼネコン各社の労働組合で組織する日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、山田栄治議長)は、13年の賃金交渉に向けた基本構想をまとめた。東日本大震災の復興需要やデフレからの脱却を掲げる安倍政権の経済政策を背景に建設投資の回復が見込まれる半面、労務費や資機材費の高騰などにより利益面の改善には不透明感が漂っていると現状を分析。一時金については前年実績以上、総合職の初任給(学卒年齢22歳)については21万円以上をそれぞれ目指す。基本構想では、厳しい情勢を認識しつつも、『働きがい』や『誇り』を持って仕事に取り組める賃金水準に近づけるため、加盟組合が連帯して賃金水準向上に取り組むとしている。」(『建設工業新聞』2013.02.19)
●厚生労働省は18日、2012年勤労統計調査(従業員5人以上の事業所)の確報を発表した。基本給、残業代、賞与などを合わせた1人当たりの現金給与総額は、月平均31万4127円と前年比0.7%減少した。1月31日公表の速報値31万4236円(前年比0.6%減)から109円下方修正された。(『しんぶん赤旗』2013.02.19より抜粋。)
●「厚生労働省は、建設業退職金共済制度(建退共)などの共済制度で、退職金請求の権利を持ちながらこれまで退職金の申請を行わない『長期未請求者』に時効の導入も視野にした新たな長期未請求者数縮減策を検討する。18日に開いた労働政策審議会中小企業退職金共済部会で説明した。厚労省は同時に、勤労者退職金共済機構・建退共本部が運用している建退共の被共済者(労働者)データベースを抜本的に見直し、今後、共済手帳の長期未更新者の現状をより詳細に把握する方針も示した。時効導入は、勤退共や建退共の事務管理コストの縮減が狙い。政策評価・独立行政法人評価委員会は1月下旬に、退職金未請求者の縮減策や累積欠損金の確実な解消を骨子とした『勤退共機構の事務・事業改廃に関する勧告方向性』を提示した。このため、厚労省は、時効導入の検討や建退共のデータベースの抜本見直しを柱にした退職金未請求者の縮減策の検討に踏み切ることにした。」(『建設通信新聞』2013.02.20)

建設産業・経営

●「竹中工務店は、3月1日付で本社組織を改編する。都市再開発事業やPFI・PPPなど事業参画型のプロジェクトを強化するとともに、グループ経営やグローバル化への対応に一段と力を入れるため本部や担当部署を設置。教育施設分野で川上段階からの提案を行う部署を設けるほか、将来のニーズを踏まえた研究開発を推進するため『技術本部』を新設する。」(『建設工業新聞』2013.02.19)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)が21日発表した全国マンション市場動向によると、2012年の企業別の発売戸数は野村不動産が6181戸で初の首位となった。発売上位20社の合計シェアが3年連続で5割を超え、大手への販売集中が続いた。人口減少に伴う中長期の市場縮小も予想されるなか、大手間の競争が激化しそうだ。全国のマンション発売戸数は11年比8.4%増の9万3861戸。3年連続で前年を上回り、リーマン・ショック直後の09年を底に改善が続く。」(『日本経済新聞』2013.02.22)
●「とび・土工、鉄筋、型枠大工の躯体3職種に左官を加えた4業種の専門工事業団体は、社会保険未加入対策促進に必要な標準見積書作成と実際の契約への浸透を目的に、統一行動することを決めた。社会保険加入のための経費計上の根拠や考え方などについて、契約相手方のゼネコンと全国各地の専門工事業者に理解を求めるため、合理的な統一的見解を早急に示す必要があると判断した。専門工事業界は、先行して今後まとめる『4業種統一的見解』をもとに各業種団体が作成した標準見積書を改定、国土交通省だけでなく元請団体とも連携し、保険未加入促進を進める方針だ。」(『建設通信新聞』2013.02.26)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は2013年度にも、耐震性のある建物を認定する制度を新設する。公共建築やマンションなど全ての種類の建物が対象で、現在の耐震基準を満たしていれば適合マークをつけられる。耐震診断を受ける所有者には補助金を出し、より多くの建物の耐震性の有無を明確にする。適合しない建物には建て替えや改修を促し、地震に強い街づくりをめざす。」(『日本経済新聞』2013.02.22)
●「全国で700万戸を超える空き家を低所得者の住宅として活用する試みが広がっている。自治体が不動産の業界団体やNPO法人などと連携。独居の高齢者、母子家庭、障害者ら『住宅弱者』の家探しを支援する。公営住宅の入居待ちが常態化するなか、民間物件の活用で需給のミスマッチ解消を狙う。」(『日本経済新聞』2013.02.26)

その他