情勢の特徴 - 2013年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は15日開いた産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)で、今後5年間を集中期間と位置付け、産業構造の改革に取り組むことを決めた。再編など構造改革に取り組む企業を税制などで支援するほか、雇用制度を見直して人材の移動を促し、日本経済をけん引する国際トップ企業を増やす。世界に通じる人材を育てる教育改革を進め、産業を支える人材力を底上げする。」(『日本経済新聞』2013.03.16)
●「安倍晋三首相は15日、首相官邸で記者会見し、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加すると正式に表明した。『TPPはアジア太平洋の未来の繁栄を約束する枠組みだ。米国と新しい経済圏をつくる』と述べ、アジア太平洋地域でのルールづくりを主導する考えを強調。『日本の農と食を守ることを約束する』として、参加に伴う影響が大きい農業対策に万全を期す考えを示した。」(『日本経済新聞』2013.03.16)
●「内閣府の専門家作業部会は18日、太平洋の『南海トラフ』を震源域とするマグニチュード(M)9.1の巨大地震が起きた場合、被害額が最大220兆3000億円に上るとの試算を公表した。インフラやライフラインなどの被害は関東以西の40都府県に及ぶ。被害額は東日本大震災の10倍超で、民間部門が大半を占める。減災対策で半減できるとしており、企業は事業継続に向けた防災計画の練り直しが急務だ。」(『日本経済新聞』2013.03.19)
●「ベトナム政府が同国の南北を結ぶ全長1600キロメートルの高速鉄道計画を見直す。これまで検討していた時速300キロ台の高速鉄道建設を凍結し、160〜200キロの準高速鉄道に切り替える。巨額の建設費用に国民の反発が強まったためだ。『新幹線』方式を前提とした計画が暗礁に乗り上げた格好で、官民を挙げて輸出を目指してきた日本は戦略の練り直しを迫られる。」(『日本経済新聞』2013.03.19)
●「中小企業の事業再生を支援する『地域経済活性化支援機構』が18日、発足した。地域金融機関など民間との共同出資を通じて全国に約70基金、総額2000億円規模の再生ファンドを育てる。第1弾は今春にも立ち上がる見込みだ。前身の企業再生支援機構から機能を拡充し、疲弊する中小企業を地域単位で再生させる取り組みも始める。」(『日本経済新聞』2013.03.19)
●「国土交通省は、インフラ関連企業の海外展開支援の一環で、民間企業などと『航空インフラ国際展開協議会』を新設する。アジアを中心に空港建設プロジェクトが具体化していることから、官民連携で事業参画の取り組みを強化する狙い。ゼネコンや商社、設備機器メーカーなど幅広く参加を募り、『オールジャパン』体制を構築する。4月下旬か5月に初会合を開き、今後の活動方針などの詳細を詰める。」(『建設工業新聞』2013.03.21)
●「政府は22月、2014年4月の消費増税に合わせ、商品やサービスの増税分の価格転嫁を円滑にする特別措置法案を閣議決定した。大手スーパーなどによる『消費税還元セール』を禁止する。仕入れ側が納入業者に値下げを迫り増税分の上乗せを拒んだ場合は公正取引委員会が是正を勧告する。転嫁拒否の実態を調べる調査官を各省庁に置き、監視体制を強化する。…転嫁拒否の監視体制を強化するために、内閣官房に司令塔となる『消費税価格転嫁等対策室』を設置する。各省庁に調査官を置き、転嫁拒否の実態を書面調査や立ち入り検査などで調べる。違反した場合は業界を所管する省庁などが指導する。公正取引委員会は悪質な場合に是正を勧告し、企業名を公表する。中小企業が価格転嫁をしやすいように、独占禁止法で禁止されているカルテルを一部容認する。複数の企業が話し合って増税分の価格転嫁を取り決めるカルテルは、参加企業の3分の2以上が中小企業であることを条件に独禁法を適用しない。」(『日本経済新聞』2013.03.22)
●安倍晋三首相が交渉参加を表明した環太平洋連携協定(TPP)によって、農林水産業をはじめ、地域経済が壊滅的な影響を受けることが14道県の試算によって浮き彫りになった。14道県の試算は、15日に政府が発表した統一試算の方法に準拠したもの。政府の試算方法の変化で、多くの試算では影響額が縮減しているが、それでも農林水産業の生産額が半減するところが出ている。なかでも食料自給率が210%の北海道では、自給率が89%へと激減。農林水産業全体の生産への影響は4762億円で、農家は2.3万戸も減少し、半減となる。政府試算は、農林水産物の生産額減少のみですが、北海道は地域経済や雇用への影響も試算。11万2000人の雇用が失われ、地域経済も7383億円減となるなど、壊滅的な影響を受けることを示している。…各県ともに、米の生産額は3〜6割近く減少。米どころ茨城県では469億円(49%)もの減。和歌山県のミカンや高知県のマグロ・カツオなど、地元の産業と雇用が依存する特産品がいずれも重大な影響を受けることは避けられない。一部の県は、農林水産業の「多面的機能」=水利や自然環境保護、観光資源などの役割が影響を受ける損失額を試算した。(『しんぶん赤旗』2013.03.25より抜粋。)
●「国際協力機構(JICA)は、ベトナムが計画する11事業に総額1750億2500万円を限度とする円借款供与を決定し、同国政府と貸付契約を締結した。日本企業の入札参加などを条件に付すSTEP(本邦技術活用条件)案件の『ハノイ市都市鉄道建設事業(1号線)フェーズT(ゴックホイ車両基地)(T)』、『ニャッタン橋(日越友好橋)建設事業(V)』、『南北鉄道橋梁安全性向上事業(V)』、『カイメップ・チーバイ国際港開発事業(U)』の4事業が含まれており、未発注のハノイ市都市鉄道の事業は、7月にも最初の調達パッケージとなる地盤改良工事の国際競争入札が公告される予定だ。」(『建設通信新聞』2013.03.27)
●「政府は、インドの貨物鉄道や地下鉄建設など4件のインフラ整備への支援として約2200億円の円借款を供与する。26日に岸田文雄外相とインドのクルシード外相が会談し、円借款に関する書簡を交換した。4件のうち貨物鉄道建設計画(第2期)には約1361億円を供与する計画で、STEP(本邦技術活用条件)案件となる。」(『建設工業新聞』2013.03.28)

行政・公共事業・民営化

●「群馬県議会は19日、松本耕司議長名で公共工事設計労務単価等の改善に関する意見書を国に提出した。過当競争による設計労務単価の下落に歯止めをかけ、優秀な技術者や若年者の建設業離れを防ぎ、業界の魅力を高め、健全な社会資本整備につなげるのが目的。▽公共事業労務費調査の抜本見直し▽労務単価の設定▽労務費高騰時の即応▽公共工事標準歩掛――の4項目を提案した。」(『建設通信新聞』2013.03.21)
●「東京都世田谷区の公契約あり方検討委員会は、公契約のあり方に関する中間報告書をまとめた。労働賃金の適正化だけでなく、そこから波及する地域経済の活性化や地元業者の防災貢献といったことも視野に入れた検討が必要だと指摘した上で、入札制度改革では履行品質やコンプライアンス(法令順守)の確保、最低制限価格の適正化など、公契約条例では条例の目的や理念、適用範囲の設定などを課題に挙げている。今後、議会や事業者などの意見を踏まえてさらに検討を進め、8月下旬をめどに最終報告書をまとめる予定だ。」(『建設通信新聞』2013.03.21)
●「国土交通省は、老朽化・劣化が進むインフラの維持管理・更新に関する今後3カ年の取り組みを示した工程表をまとめた。自治体管理分も含めて緊急性の高い施設から優先的に総点検と必要な修繕を実施。基準・マニュアルの策定・見直しや新技術の導入促進、予算や法制度、人的支援などの体制構築にも取り組む。事務次官をトップとする省横断の『社会資本老朽化対策推進室』も設置。他省庁との連携体制の強化も進める。21日に開いた『社会資本の老朽化対策会議』(議長・太田昭宏国交相)で決定した。太田国交相は『老朽化対策の全体像が今回示された。国交省の総力を挙げて取り組む』と表明した。今後3カ年の工程表では、13年を『社会資本メンテナンス元年』と位置付け、さまざまなインフラ施設の老朽化対策として重点的に取り組む事項を明示した。」(『建設工業新聞』2013.03.22)
●「環境省は22日、除染特別地域の福島県内11市町村で実施する直轄除染工事のJV構成員数を、最大5社に増やすことを決めた。現行は『おおむね20億円以上』の除染工事で2社か3社のJVが入札に参加できる。これを『おおむね50億円以上』の除染工事を対象に、最大で5社構成JVの入札参加を認める。これにより、元請けはゼネコンだけでなく『放射線測定専門会社や地元建設会社にまで選択肢が広がる』(環境省)とみている。今後、入札公告する除染工事から適用する。」(『建設通信新聞』2013.03.25)
●「国土交通省が開会中の今通常国会に提出する予定の『民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律案』の概要が分かった。多様な空港管理形態の選択肢の一つとして、国が土地などを所有した上で、PFI法の公共施設等運営権(コンセッション方式)制度を活用できる仕組みを創設。事業者が地域の実情に応じた一体的な経営を実践し、国が所有者として災害復旧など有事へ対応する。採算性の低い空港については引き続き国が管理していく考えだ。法案では民間事業者を選定する際に、自治体や航空会社など地域の関係者との合意を踏まえることや外資参入といった安全保障上の関与として、契約の相手方は国土交通大臣が個別に審査するといった対応も明確化する。同時に地方管理空港も、地方公共団体の判断によって民間委託ができるよう、特別措置などの関係規定も整備していく。」(『建設通信新聞』2013.03.28)
●「国土交通省は、東日本大震災の被災地で復興工事で使う生コンクリートの不足を解消するため、岩手県の宮古、釜石両地区と宮城県気仙沼地区に設置する生コン製造プラントの場所や数、製造規模などを今夏までに固める。宮古、釜石両地区に設置するプラントは国交省、気仙沼に設置するプラントは宮城県が整備主体になる見通し。プラント設置工事は生コンを使う各工事と一体で発注。今秋以降、総合評価方式の入札を順次公告する。」(『建設工業新聞』2013.03.28)
●「政府は、発生する可能性がある大規模災害に備え、復興の枠組み創設を柱とした新法と、災害対策基本法改正案を固めた。これまで国が代行することが難しかった被害を受けた市町村インフラのがれき処理など応急対応や、国が災害復旧を代行できることを盛り込むのが最大の特徴。また、災害対応や災害復旧に協力する民間事業者との協定(災害協定)締結などを必要措置として、法律に明記する。4月中旬の閣議決定を目指す。28日、自民党の災害対策特別委員会でも議論した。」(『建設通信新聞』2013.03.29)

労働・福祉

●「デフレ脱却のカギを握る賃金の上昇に向け、政府、経済界、労働組合の3者で協定を結ぶ構想が官民で浮上している。企業が賃上げする代わりに労働者は雇用の流動化を受け入れ、政府が財政面で後押しする。19、80年代のオランダの成功例にならい、3者の合意をめざす。安倍晋三首相の要請で広がり始めた企業の賃上げの動きに弾みをつけるねらいだ。」(『日本経済新聞』2013.03.24)
●「全国社会保険労務士連合会は、国土交通省、厚生労働省、建設業界が進める『社会保険未加入対策』の支援を目的に、会員に対する『建設業における社労士業務の実態調査』を開始した。未加入企業が今後、社会保険に加入する場合、社会保険労務士への相談や手続き依頼が増加する可能性を踏まえ、社労士が顧客としている建設企業数や、その内容について把握するのが目的。調査は団体として、社会保険未加入対策の促進をどのように支援していくかの判断材料とするほか、国交省にも提出し、今後の施策検討に役立ててもらう狙いがある。」(『建設通信新聞』2013.03.28)
●「国土交通省が近く公表する2013年度公共工事設計労務単価の全国全職種(51職種)単純平均が前年度比約15%増、東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)では約20%増となる見込みだ。労働者本人負担分の法定福利費相当額を適切に反映したことや、特に被災地は入札不調の増加に応じて段階的に単価を引き上げる新たな仕組みを導入したことが影響したとみられる。新単価は4月1日以降の入札から適用する。今後、建設業団体や公共、民間各発注者にも適切な対応を要請していく。…上昇は、従来の単価設定の考え方を大きく見直したため。取引の実例価格だけでなく労働需給のひっ迫や社会保険未加入対策などを総合的に勘案することにし、特に被災地では入札不調の増加に応じて、段階的に引き上げる新たな仕組みを導入した。国交省は今回の措置に関して、技能労働者の賃金低下や社会保険料が適切に支払われていない状況は、若年入職者の減少を招く要因と考えた。さらに労働需給のひっ迫が顕在化し、被災地の公共工事では入札不調が減少せず、再発注によって受注者が決まっているものの、結果的に復興の遅れの要因となる可能性が高いことも指摘。これらの事実は一時的なものではなく、適切な対策を実行しなければ災害対応やインフラの維持・更新にも影響を及ぼすと判断した。」(『建設通信新聞』2013.03.29)
●総務省が29日発表した労働力調査によると、2月の完全失業率(季節調整値)は4.3%と前月に比べ0.1ポイント悪化した。悪化は2カ月ぶり。新たに仕事を探し始めた人が前月に比べ4万人増加した。完全失業者数(同)は5万人増加し、284万人となった。就業者数(原数値)を産業別にみると、製造業は前年同月比37万人減と大幅に減少し、1028万人。卸売業・小売業が21万人減の1041万人、運輸業・郵便業が17万人減の341万人、情報通信業が18万人減の184万人と、いずれも減少傾向が続いている。…完全失業率(季節調整値)を年齢別にみると、15〜24歳の若年層は6.6%だった。前月に比べ0.7ポイント低下した。一方、25〜34歳の青年層は、0.6ポイント増の6.0%となった。…また、厚生労働省が同日発表した2月の有効求人倍率(季節調整値)は前月に引き続き0.85倍。正社員の有効求人倍率は前月に比べ0.01ポイント悪化し、0.54倍だった。(『しんぶん赤旗』2013.03.30より抜粋。)

建設産業・経営

●「帝国データバンクは、2013年度の雇用動向の企業意識調査をまとめた。建設業は、調査対象3211社のうち1427社が答え、回答率は44.4%だった。ことし4月の高年齢者雇用安定法改正や老齢年金支給開始年齢の引き上げなどにより高年齢の従業員の増加が見込まれる中、今後の対応(複数回答)について建設業は、『60歳までの従業員の賃金体系を見直し』が182社で12.8%、『60歳以降の従業員の賃金体系を見直し』が921社で64.5%を占めた。13年度の正社員雇用は、復興需要に加え、公共工事への期待が高まりを受けて全産業で最も高かった。」(『建設通信新聞』2013.03.18)
●「東日本大震災の復旧・復興事業に加え、2012年度補正予算と13年度当初予算で措置する膨大な公共事業を前に、ゼネコン各社は『技術系社員が不足している』と口をそろえる。このため、技術系社員を中心に今春13年4月の新卒採用が増加傾向にあり、日刊建設通信新聞社の調査によると、大手・準大手クラスでは32社中18社が前年実績を上回った。来春14年4月の採用計画数も31社(安藤建設とハザマの合併で1社減)中22社が増員を予定している。」(『建設通信新聞』2013.03.21)
●「全国鉄筋工事業協会(内山聖会長)は、社会保険未加入対策として作成を進めている『標準見積書』について、4月1日から活用を始めるよう求める文書を会員各社に近く通知する。とび・土工、鉄筋、型枠大工、左官の躯体4職種の中で、鉄筋が先行する格好だ。今後、他職種の進捗を見ながら共同歩調を取る。実際の見積書の活用は、2次下請け以下への教育の徹底が大きな課題になるとみられる。」(『建設通信新聞』2013.03.25)
●「東京商工リサーチがまとめた2012年12月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比22.1%減の214件となり、10カ月連続して前年同月を下回った。ただ、業種別では、建築リフォーム工事業が300%増の12件、電気工事業が33.3%増の20件と増加した。負債総額は、67.5%減の288億3600万円となった。負債10億円以上の大型倒産は5件で、平均負債額は58.5%減の1億3400万円だった。12月の『震災関連』倒産は1件、『中小企業金融円滑化法』に基づく貸付条件変更利用後倒産は6件となった。」(『建設通信新聞』2013.03.26)
●「社会保険未加入対策促進に必要な標準見積書作成と契約への浸透を目的に統一行動を取ることを確認していた日本建設躯体工事業団体連合会、全国鉄筋工事業協会、日本鳶工業連合会、日本建設大工工事業協会、日本左官業組合連合会のとび・土工、鉄筋、型枠大工、左官の4職種5団体は、消費税問題など4項目について統一歩調を取ることを決めるとともに、国土交通省などに要望していく。」(『建設通信新聞』2013.03.28)
●「専門工事業界で社会保険未加入問題への対応が大きな課題となる中、全国鉄筋工事業協会(全鉄筋、内山聖会長)が4月から、経費とは別枠で社会保険料の事業主負担分を明記した『鉄筋工事標準見積書』の運用を開始する。まず公共工事が多く、保険加入が比較的進んでいる地方の組合を先行させ、順次、全国へ広げていく。全鉄筋傘下組合の加盟企業は、ゼネコンへの見積もり提出や価格交渉で、この標準見積書に準拠した書式を活用することになる。」(『建設工業新聞』2013.03.29)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は27日、2040年までの地域別の推計人口を発表した。全ての都道府県で20年から人口が減り、40年には7割の市区町村で人口減少率が20%以上と全国平均を上回る。高齢化が進み、総人口に占める65歳以上の割合は36%を超える。人口増を前提にした社会保障制度の再設計やインフラの見直しが課題になる。」(『日本経済新聞』2013.03.28)

その他