情勢の特徴 - 2013年4月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は、建設会社などの海外展開に円借款を戦略的に活用できるようにするため運用方法を大幅に見直した。日本企業の技術・資材活用を条件とする『本邦技術活用条件(STEP)』案件について、日本の建設会社の海外子会社も受注できるようにしたほか、3割以上とすることが求められる日本国内からの調達比率に算入できる項目も増やした。円借款の供与対象国も拡大。インフラ需要が旺盛なトルコやマレーシアなど高中進国にも供与できるようにした。」(『建設工業新聞』2013.04.17)
●「政府は17日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を開き、首相主導で規制緩和や税制優遇に取り組む『国家戦略特区』を創設する方針を示した。東京・大阪・愛知の三大都市圏を中心に推進し、都市の国際競争力を高めて国内外のヒト・モノ・カネを呼び込み、経済再生の起爆剤にする狙いだ。金融緩和と財政出動に続く、アベノミクスの第三の矢である成長戦略の柱に据える。…アベノミクス戦略特区の柱は外資誘致と公共インフラの民間開放だ。外資の誘致策は@法人税の引き下げA外国人医師の受け入れB海外トップクラスの学校誘致C(カジノを含む)統合型リゾートの設置――が中心。都営交通の24時間運行もこうした利便性の向上策の一環だ。」(『日本経済新聞』2013.04.18)
●「財務省が18日発表した2012年度の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は8兆1698億円の赤字となった。景気が落ち込む欧州や中国向けの輸出が減る一方、円安でエネルギーなどの輸入額が膨らんだ。2年連続で過去最大の赤字を記録したが、赤字額は11年度より84.8%増えている。今後は円安効果が輸出増に表れる公算だが、貿易収支改善には時間がかかりそうだ。」(『日本経済新聞』2013.04.18)
●「日銀の金融緩和を受けた金利低下や株高による資産効果を受けて、マンション業界に追い風が吹いている。不動産経済研究所(東京・新宿)が18日発表した3月の首都圏の新築マンション発売戸数は、前年同月比で約5割の大幅増となった。消費者がマンション購入に動きだしたことを受け、不動産各社も発売増を計画。2013年度の首都圏のマンション発売戸数はリーマン・ショック前の07年度以来6年ぶりに5万戸に達する見通しだ。」(『日本経済新聞』2013.04.19)
●「政府は17日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を開き、最先端技術を活用したインフラ管理による『インフラ長寿命化計画』の策定推進や国の主体的関与を高める『国際戦略特区』の創設、コンセッション方式の活用拡大などを進めることを決めた。短期的な財政出動と中長期の財政規律を掲げる安倍政権において、短期の財政出動を経済の成長につなげる“架け橋”として、インフラの長寿命化やコンセッションによるインフラ管理を掲げ、民間市場の拡大によって中長期的にも建設市場の規模を維持する考えが表れた格好だ。」(『建設通信新聞』2013.04.19)
●「経済産業省は18日、新興国への戦略的な取り組みに関する考え方をまとめた。新興国市場を、▽中国・ASEAN(東南アジア諸国連合)▽南西アジア、中東、ロシア・CIS(独立国家共同体)、中南米▽アフリカ――の3類型に分けた上で、日本企業の海外展開支援、インフラ・システム輸出、相手国からの資源供給確保を3重点分野に設定して、類型や各国の特性に応じた今後の取り組みを示した。この考え方を関係省と共有して戦略を実行に移すほか、政府が6月に策定する成長戦略にも反映させる。」(『建設通信新聞』2013.04.19)
●カナダのファスト国際貿易相兼アジア太平洋ゲートウエー担当相は20日、日本の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加についての両国の事前協議が「成功裏に」終了したとする声明を発表した。これにより、TPP交渉に参加している11カ国すべての政府が日本の交渉参加に同意する意向を示した。これを受けて、米国などTPP交渉を進めている11カ国は同日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易担当相会合が開かれているインドネシアのスラバヤで閣僚級会合を開き、日本の交渉参加を全会一致で正式に承認する共同声明を発表した。スラバヤで行われたTPP交渉参加国との協議では、カナダが、日本車の輸入関税撤廃の時期を先送りした日米事前協議の合意などを念頭に日本の譲歩を迫り、事務レベルの折衝が続いていた。それが大筋で合意に至ったもの。同地からの報道によると、ファスト国際貿易相は同日、「日本には高い目標を掲げて、重要な責献をしてもらいたい」と述べた。(『しんぶん赤旗』2013.04.21より抜粋。)
●「国土交通省は、国内のゼネコンが海外でPPP事業を展開する上での戦略をまとめた。事業への参入拡大には、プロジェクト・マネジメント(PM)やファイナンスの能力を強化し資金調達を主導的に進めることが必要と提示。これまでの請負モデルから、資金調達と建設、運営までを一貫して実施する事業一括受注モデルやPM、CM(コンストラクション・マネジメント)として事業に参画するモデルへの転換が必要としている。実現に向けて、ファイナンスなど専門部署の設置や、現地企業のM&A(企業の合併・買収)、専門の人材育成などを挙げている。」(『建設通信新聞』2013.04.23)
●「建設経済研究所と経済調査会がまとめた4月予測の建設投資見通し(名目)によると、2013年度は前年度比7.6%増の47兆7200億円とした。前回1月の見通しから3900億円ほど上昇し、民間の建設投資が前回から上向く予測が寄与した。政府建設投資では大型補正予算の執行が続くと分析したほか、民間建設投資でも回復基調の継続が見込めるとした。」(『建設通信新聞』2013.04.23)
●「国土交通省は、日本の建設会社による海外PPP事業への参画に向けた市場調査を拡大する。12年度は、インド、インドネシア、ブラジル、トルコ、米国、カナダの6カ国を対象にPPPに関する各国の法制度や市場の調査や具体案件のケーススタディーなどを実施した。本年度調査では、これら対象国での深掘りに加え、ゼネコンなどの関心が高そうな複数の国を対象として追加し、進出の可能性を探る。月内に調査業務の詳細内容を公示し、受託を目指すコンサルタントを選定する手続きに入る。」(『建設工業新聞』2013.04.23)
●「政府・自民党欄23日、農業の競争力強化に向けた改革案を固めた。放置された農地を都道府県が強制的に借り、集約して農業生産法人などに貸し出す制度を来年度にも導入する。農地全体の1割に達した耕作放棄地を有効利用する狙い。環太平洋経済連携協定(TPP)の本交渉入りをにらみ、生産性の高い大規模農業への転換を促す。」(『日本経済新聞』2013.04.24)
●「日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国が新たな金融協力の枠組みをつくる。日本が外貨準備で新興国の国債を購入、各国の財政資金の調達の安定を通じて成長を促す。通貨交換協定も結び、危機対応に備えるほか、日本からの進出企業の資金調達を支援する。金融危機を機に発足した中韓も参加する金融協力とは別の枠組みで、日本の支援姿勢を鮮明にすると同時にアジアの成長を日本にとりこむ。」(『日本経済新聞』2013.04.26)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、年金基金や生命保険会社の投資マネーを本格活用して鉄道を整備する検討を始めた。東京都心と羽田・成田の両空港を結ぶ地下鉄の路線が対象で、2020年代の開業を目指す。総工費は約4000億円。民間企業が単独で手がけにくい大型インフラの整備は公的資金の活用が一般的だった。国や自治体の財政悪化を避けつつ、交通インフラの利便性を高め企業誘致などでアジア諸国と対抗する。」(『日本経済新聞』2013.04.17)
●「総務省の2012年度補助事業として就労履歴管理システムの導入を目指していた福島市は、同事業を終了し、13年度は実施しない方針を固めた。システムでは除染業務に携わる作業員の就労状況や外部被ばく線量などを管理する目的だったものの、同省が補助を打ち切ったことで予算の確保が難しくなり導入を断念した格好だ。国土交通省も社会保険未加入対策の観点から一般の建設現場に普及させるモデルとして期待を寄せていただけに、今後何らかの対応が求められそうだ。」(『建設通信新聞』2013.04.17)
●「国土交通省や業界団体などで構成する社会保険未加入対策推進協議会のワーキンググループ(WG)が18日に開かれ、下請企業から元請企業に提出する榛準見積書を9月をめどに各団体が一斉に活用することを申し合わせた。標準見積書は、昨年11月から順次活用することになっていたが、法定福利費の計算方法や根拠が不明瞭という課題もあるため、考え方を整理し直した上で活用を始める。国交省でも、法定福利費の算出方法や取り扱いなどを近く発注機関や業界団体に通知するほか、法定福利費が技能労働者の保険加入に結び付いているか把握できる仕組みも検討する。」(『建設通信新聞』2013.04.22)
●「東京都は、2013年度公共工事設計労務単価の運用に当たって特例措置を講じることを決めた。旧労務単価を適用して3月に入札し、4月1日以降に契約した案件について大幅に上昇した新単価での契約変更を認める。新単価による請負金額の変更協議は、受注者からの変更請求に基づき実施する。請負金額変更協議の請求期限は契約日から2カ月以内。」(『建設通信新聞』2013.04.30)

労働・福祉

●「太田昭宏国土交通相は18日、日本建設業連合会(日建連)、全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会(全中建)、建設産業専門団体連合会(建専連)の4団体に、適正価格での受注、技能労働者への適正水準の賃金支払いと社会保険加入の徹底を要請した。東京都内で4団体の首脳と直接会い、13年度の公共工事設計労務単価を過去最大の上げ幅で設定したことを踏まえた業界側の取り組みを促した。業界側も強い決意で対応する考えを表明した。」(『建設工業新聞』2013.04.19)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、山田栄治議長)は、加盟組合の組合員を対象に実施した時短アンケートの結果を発表した。1カ月の平均所定外労働時間は、組合全体で68.6時間となり、前年度実績よりも4.5時間増加した。外勤建築では99.1時間(前年度比6.9時間増)、外勤土木では87.0時間(4.6時間増)と特に多く、ともに過去最高を記録。全職種で増加しており、中でも外勤建築は100時間に迫る勢いで、“危険水域”にあると言えそうだ。」(『建設工業新聞』2013.04.23)
●建設現場でのアスベスト(石綿)による健康被害について国・建材メーカーの責任を追及している建設アスベスト九州訴訟本部は24日、「福岡地裁の勝利判決をめざす建設アスベスト訴訟全国決起集会」を福岡市内で開き、全国から約350人が集まった。(『しんぶん赤旗』2013.04.25より抜粋。)

建設産業・経営

●「大和ハウス工業はマンション分譲のコスモスイニシアを買収する。今夏にも第三者割当増資を約100億円で引き受け発行済み株式数の6割強を取得し、子会社とする。不動産市況の回復を見すえマンション事業を拡大、野村不動産など上位3社を追撃する。銀行支援の下で事業再建を進めてきたコスモス社は大和ハウス傘下で成長を目指す。」(『日本経済新聞』2013.04.16)
●「三井ホームは16日、2013年3月期の連結純利益が前の期比78%減の6億4000万円になったと発表した。従来予想は11億円だった。注文住宅の着工・工事の多い1〜3月期に想定以上に工事が集中したことで労務費が上がり、採算が悪化した。」(『日本経済新聞』2013.04.17)
●「下請けの技能労働者の賃金水準を元請けが確保しなかった場合、発注者が元請けとの契約を解除できる制度が具体化する可能性が出てきた。法務省が16日、パブリックコメントを公表した『民法(債権関係)の改正に関する中間試案』で、民法537条『第三者のためにする契約』に解除権を新たに盛り込んだことが理由だ。自治体が導入する『公契約条例』は民法537条を根拠に制度化されており、中間試案どおり民法が改正されれば、条例を導入した自治体が、労働者の賃金水準が低いことを理由に元請けとの契約を解除できるようになる。建設業界にとって、民法改正動向が新たな関心事になるのは確実だ。」(『建設通信新聞』2013.04.18)
●「日本建設業連合会は25日、2013年度定時総会・理事会を東京都千代田区のホテルニューオータニで開き、新会長に中村満義鹿島社長、新副会長に宮本洋一清水建設社長など新しい役員を決定、中村新体制がスタートした。総会時の理事会で、13年度公共工事設計労務単価の引き上げに呼応した業界の行動として、適切な価格での下請契約の締結、適正な受注活動の実施、就労管理システムの構築の3点を柱とする『技能労働者の適正な賃金の確保』を決めた。あわせて『民間工事における適正な受注活動の徹底』も決議。民間工事でいわゆるダンピング(過度な安値受注)抑止の努力と適正価格の受注を求めるのは初めてで、会員への通知よりも重い『決議』とする極めて異例の対応となった。」(『建設通信新聞』2013.04.26)
●「国土交通省は25日、航空インフラ国際展開協議会の初会合を開いた。航空インフラプロジェクトがアジアを中心に多数見込まれることを踏まえ、プロジェクトの獲得に向けて官民で情報共有する場とする。会議には、民間からゼネコンや設計事務所、コンサルタントを始め、空港運営会社やディベロッパー、シンクタンク、メーカー、商社、金融機関など58社の役員や幹部が参加。計画段階から整備・運営まで一体化したプロジェクトも増え、PPPの導入事例も目立つことから、多様な分野の企業が連携して取り組む。」(『建設通信新聞』2013.04.26)
●「28日から7日間の日程でロシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコを歴訪する安倍晋三首相に大手企業幹部からなる経済ミッションが同行する。建設・不動産分野からは大成建設、大林組、三井不動産、三菱地所、IHI、日建設計、住友林業、都市再生機構の幹部が参加。大成建設からは山内隆司社長が同行する予定だ。安倍政権は経済ミッションの同行によって、ロシアでは事業参入のきっかけをつくり、経済関係を強化。中東ではインフラ輸出の促進などにつなげたい考えだ。」(『建設工業新聞』2013.04.26)
●「東京商工リサーチがまとめた2012年(1−12月)の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年比11.4%減の3002件となり、4年連続して前年を下回った。水準としては、1993年の3211件を下回り、過去20年間で最少となった。負債総額は16.3%減の4030億4700万円だった。負債10億円以上の大型倒産は前年と同数の39件。平均負債額は5.6%減の1億3400万円で、過去20年間で最少金額となっている。上場企業の倒産は、東証1部上場の橋梁工事のサクラダの1件だった。年間の『震災関連』倒産は54件、『金融円滑化法』に基づく貸付条件変更利用後倒産が66件だった。」(『建設通信新聞』2013.04.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京電力福島第1原子力発電所事故で建設された福島県内の仮設住宅で早くも老朽化が目立っている。避難指示の出た県内11市町村のうち6市町村で年月を経たことによる損傷を確認。天井がはがれたり床が沈んだりするなど生活に支障となるケースも出ている。復興の遅れから国は入居期間の延長を可能にしたが、住民からは耐久性に疑問の声も上がっている。」(『日本経済新聞』2013.04.16)

その他