情勢の特徴 - 2013年5月前半
●国有財産の有効活用を検討する国の「有識者会議」に顔を出し、政策決定にかかわった大手不動産会社が、都心の一等地の国有地を入手していることが分からました。そのなかには、相場の半額程度の格安取引も。国民の財産である国有財産の売却をめぐる、国と大企業の「癒着」の一端が浮かび上がった。一般競争入札で3月に売却されていたことが分かったのは東京都港区の物件。登記簿謄本などによると、@南青山住宅跡地(約4717平方メートル)を三菱地所レジデンス、三菱倉庫(東京都)が94億7600万円でA法務省分室跡地(約1588平方メートル)をアパホーム(石川県)が30億1200万円で―それぞれ落札している。…南青山住宅の周辺で土地の売却価格実績を調べると1平方メートルあたり約400万円。ところが94億7600万円で売却された同住宅は、1平方メートル約201万円という相場の半額で売られている。財務省は2006年8月、「国有財産の有効活用に関する検討・フォローアップ有識者会議」を設置。「民間の知見を最大限活用」することをうたい、中央と地方で民間からの「ヒアリング」を実施した。参加したのは不動産会社、証券会社、銀行、不動産関連業界団体など。三菱地所は07年1月、中央のヒアリングに参加。マンション販売を展開するアパは北陸財務局が主催する地方ヒアリングに名前がある。これを受け、財務省は11年12月、5年を目途に公務員宿舎2393住宅の廃止を打ち出し翌年、2653住宅を追加。計5046住宅(5万6千戸=全体の25.5%)の廃止を決定した。(『しんぶん赤旗』2013.05.01より抜粋。)
●「国土交通省は、海外でPPP事業を展開する上で地域ごとの戦略を構築するため、今夏以降に検討会議の設置を予定している。有識者や建設企業、不動産企業などを交えて意見を聴取し、建設・不動産企業の戦略をまとめる。アジアや北米、ブラジルなどでPPPが導入された事例や市場規模を分析するほか、現地企業との連携策などを模索。都市開発分野などで建設企業と不動産企業が連携した事業展開の可能性も探る。今年度末にも戦略を策定する予定だ。」(『建設通信新聞』2013.05.02)
●「米国やオーストラリアなどが参加する環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る交渉で、全21分野のうちインターネット通信事業者の競争促進を議論する『電気通信』分野で、参加11カ国が大筋合意していたことがわかった。通信インフラを持つ事業者が新規参入者に通信網を開放するのが柱。…既存の通信事業者が支配的な立場を利用して新規参入を邪魔するのを阻止する条項も盛り込む。日本国内ではNTTグループが巨大なインフラを持つが、電気通信事業法や総務省の指針などで通信網は開放済み。総務省は『東南アジアの新興国は閉鎖的だったため、日本企業が海外に打って出るチャンス』(総合通信基盤局)とみている。」(『日本経済新聞』2013.05.08)
●「政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)は7日、老朽化する社会インフラの修繕や更新に民間資金を積極的に活用する方針で一致した。空港や高速道路など公共施設の運営権を民間に開放し、民間の経営ノウハウでより効率的に運営してもらう。大災害に強いインフラ整備も優先順位を付けながら進め、財政再建との両立を狙う。」(『日本経済新聞』2013.05.08)
●「国土交通省がまとめた12年度の建築着工統計と建設大手50社の工事受注動態統計が4月30日に発表された。新設住宅着工戸数は3年連続、大手50社の工事受注総額は2年連続でそれぞれ増加。いずれも民間の建設投資が伸びているのがプラス要因で、東日本大震災の復旧・復興需要も寄与した。」(『建設工業新聞』2013.05.01)
●「国の13年度公共工事設計労務単価(新単価)の大幅な引き上げを踏まえ、東日本、中日本、西日本の高速道路3社は、12年度の単価(旧単価)を用いて3月末までに入札が行われた工事でも、受・発注者間の契約締結日が4月1日以降になった場合に受注者からの要請によって新単価を適用した請負金額に変更することを決めた。国土交通省が先に同様の特例措置を講じており、3社も同省の動きに追随した。」(『建設工業新聞』2013.05.02)
●「国土交通省は、13年度公共工事設計労務単価の適用状況を都道府県に緊急調査した結果をまとめた。全51職種平均(全国、単純平均)で前年度より15.1%引き上げた新単価を4月から全都道府県が導入。12年度中に旧単価に基づく積算で落札者を決め、契約が4月以降になった工事の請負額を新単価を反映させて変更する特例措置も、『検討中』とした群馬、高知両県を除く45都道府県が国交省直轄工事と同様に対応することも分かった。」(『日本経済新聞』2013.05.07)
●「安倍政権が、高齢化するインフラ維持・修繕を含めた公共事業に対し、PFI・PPP手法を拡大させて新たな財源確保を図る方針を、鮮明に打ち出し始めた。7日、政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)後の会見で、甘利明内閣府特命担当相(経済財政政策)が、PFI・PPP拡大のための抜本的なアクションプラン策定を、安倍首相から指示されたことを表明した。ただ、『公共事業悪玉論』が先行し、公共事業予算削減が続いた過去と違い、今回は高齢化したインフラの維持・修繕や防災・減災対策の重要性を政府が認識しており、インフラ整備・維持・修繕に、どの程度民間資金が導入できるかが焦点になりそうだ。」(『建設通信新聞』2013.05.09)
●「ダンピング(過度な安値受注)抑止へ、日本最大の自治体である東京都がついに重い腰を上げた。都財務局は、6月1日から技術力評価型総合評価方式と技術実績評価型総合評価方式における価格点の算定式を改正する。最大のポイントは調査基準価格(調査基準値)を下回る価格、すなわち低価格入札での競争性を排除する点だ。最低限とも言える価格競争の要素は残しつつも、価格競争力に特化することで受注できるという構図はもう通用しない。これは、最大自治体から建設業界に対して適正受注を促す強いメッセージとも受け取れる。」(『建設通信新聞』2013.05.13)
●「東京都は14日、南海トラフを震源とするマグニチュード(M)9級の巨大地震が起きた場合の都内の被害想定を公表した。震度6弱の地域もあり、東京湾沿岸で2メートル超の津波を想定。島しょ部では最大約1800人の死者を推計した。各自治体は避難経路の見直しなどの対応を急ぐ。」(『日本経済新聞』2013.05.15)
●「厚生労働省は、2013年度に創設する『建設労働者確保育成助成金』の概要を、近く同省のホームページ(HP)で公表する。『若年者に魅力ある職場づくり支援事業』『雇用管理制度導入』など7つの助成コースとそれぞれの助成額を示す。また、概要の公表に伴い、3月の時点で調整中だった、中小建設事業主が雇用する建設労働者に有給で認定訓練を行った場合の賃金の一部助成額が、1人1日当たり4000円に決まったことを明らかにした。建設労働者確保育成助成金は、12年度で廃止の『建設教育訓練助成金』と『建設雇用改善推進助成金』に代わる制度。建設産業界が重要課題に位置付けている若年労働者の確保・育成と技能承継に対する取り組みに対し、重点的に助成するメニューをそろえている。新助成金制度の詳細は、13年度予算成立後にHP上で公表する予定だ。」(『建設通信新聞』2013.05.09)
●「建設産業の六つの労働組合で構成する建設産業労働組合懇話会(建設産労懇、会長・山田栄治日本建設産業職員労働組合協議会議長)は14日、6月8日を実施日に設定した本年度の『統一土曜閉所』の概要を発表した。本年度の共通キャッチフレーズは『作業所のスイッチOFFで節電を 休日であなたのこころに充電を』に決定。…14日に東京都内で記者会見した山田会長は『13年度の公共工事設計労務単価の引き上げは、人材育成や確保の面で望ましいことだが、賃金に加え労働環境の改善もしっかり進めていく必要がある。次世代の人が働きたいと思える産業にするために、休むことの大切さを啓発していきたい』と述べた。」(『建設工業新聞』2013.05.15)
●「国土交通省は4月30日、大手建設企業55社を対象にした2012年建設業活動実態調査結果をまとめた。国内売上高の総額は前年比3.2%増の12兆3339億円、常時従業者数は1.8%減の15万7014人となった。また、海外建設事業の契約金額は、21.6%増の1兆5410億円となり、2年連続で増加している。」(『建設通信新聞』2013.05.01)
●「住友不動産の2013年3月期は連結営業利益が前の期比3%増の1520億円前後となったもようだ。従来予想(2%増の1500億円)を20億円程度上回る。株式相場の上昇を背景とする景気拡大への期待も追い風となり、マンション販売が想定を上回った。新規のオフィスビル稼働も利益を下支えした。14年3月期は営業利益が過去最高を更新する公算が大きい。」(『日本経済新聞』2013.05.08)
●「住友林業は北海道で社有林の間伐材などを燃料にする大規模なバイオマス(生物資源)発電事業を始める。2016年にも5万〜6万世帯分となる発電能力5万キロワットの発電所を稼働させる。バイオマス発電では国内最大規模になる。広大な社有林を持つ製紙大手もバイオマス発電に相次ぎ参入しており、太陽光への偏りが目立つ再生可能エネルギーの多様化につながりそうだ。」(『日本経済新聞』2013.05.10)
●「国土交通省は、2012年度の企業・労働者の保険加入状況の調査結果をまとめた。昨年10月時点で雇用保険、健康保険、厚生年金保険の3保険いずれも加入している割合は、企業で前年度から3.1ポイント増の87.3%、労働者では1.1ポイント増の57.9%となった。鉄筋工や型枠工、とび工などは加入率が低かったものの、伸び率は他の職種より高く、一定の改善傾向を示した。」(『建設通信新聞』2013.05.10)
●「大和ハウス工業が10日発表した2013年3月期連結決算は、経常利益が前の期比34%増の1453億円と2期連続で最高益を更新した。相続税対策などで、都市部を中心に賃貸住宅の建設が伸びた。コンビニエンスストアや薬局など、商業施設の建設案件が全国で増加したことも収益を押し上げた。年間配当は35円と前の期から10円増やした。」(『日本経済新聞』2013.05.11)
●「国土交通省がまとめた2012年度受注動態統計調査報告によると、受注高は前年度比17.4%増の48兆4111億円となり、建設投資の上昇基調が鮮明に表れた。元・下請け別では元請けの民間からの受注高が2桁増となった上、公共機関からの受注高が8年ぶりに10兆円台に回復。東日本大震災の復興事業を始め、不動産業の住宅、事務所、市区町村の医療・病院などが増加に寄与した格好だ。」(『建設通信新聞』2013.05.13)
●「大手ゼネコン4社の2013年3月期決算が14日出そろった。単体の受注高は清水建設と大成建設、鹿島が前期より減少したが、4社とも1兆円台をキープした。売上高も土木、建築ともに伸びた大林組が大台に乗せ、4社そろって1兆円以上を確保した。一方、し烈な受注競争や労務費の高騰などに伴う国内建築の採算悪化、一部海外大型工事の損失などが響き、本業のもうけを示す営業利益は各社とも減益となった。政権交代以降の景気回復基調や全国的な防災・減災への取り組み、国土交通省が打ち出した労務単価の上昇などに対する期待感はあるものの、まだ実感に乏しいのが現状で、引き続き厳しい経営環境が続くとの見方が大半を占めている。」(『建設通信新聞』2013.05.15)
●「太平洋セメント、住友大阪セメント、三菱マテリアル、宇部興産のセメント大手4社の13年3月期連結決算が14日出そろった。東日本大震災の復興需要に加え、首都圏を中心とした大規模再開発や道路関連工事などで販売数量が増加。宇部興産を除く3社が増収、全社が大幅な営業増益となった。」(『建設工業新聞』2013.05.15)
●「国土交通省は、投資対象をサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、病院などの『ヘルスケア施設』に特化した不動産投資信託(Jリート)の創設を後押しする環境整備に乗りだした。ヘルスケア専門Jリートの認可に関するガイドラインを年内をめどにまとめる。民間資金が流れ込む仕組みが整えば、ヘルスケア施設の整備がさらに加速しそうだ。」(『建設工業新聞』2013.05.02)
●「東南アジアで水資源管理の問題が深刻化している。2011年に未曽有の洪水被害に直面したタイでは今、一転して渇水懸念が浮上。ベトナムやインドネシアでも両面の被害に苦しむ。対策の遅れは域内の経済成長の足かせにもなりかねない。14日にタイで開幕した『第2回アジア・太平洋水サミット』には各国首脳に加え企業も参加。水資源の確保や治水対策といった難題に官民が連携して臨む姿勢を確認する。」(『日本経済新聞』2013.05.15)