情勢の特徴 - 2013年5月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「鉄道や発電所などインフラ輸出に関する政府の促進戦略が16日、明らかになった。国際協力銀行(JBIC)による新興国通貨建ての長期融資を拡充し、企業の為替リスクを軽減する。円借款も外貨で返済できる仕組みを活用する。新興国がインフラ整備の計画を策定する段階からかかわり、旺盛なインフラ需要を取り込む政府の支援体制を整える。」(『日本経済新聞』2013.05.17)
●「日本、インド両政府は5月末の首脳会談で、東京電力福島第1原子力発電所事故後に中断した原子力協定交渉の再開で合意する。2014年1月の署名に向け協議を急ぐ。インドは20年までに原発18基の建設を計画し、9兆円規模の商機を見込む。核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドに技術管理の徹底を求めつつ、日本企業が原発を輸出できる環境を整える。」(『日本経済新聞』2013.05.20)
●「政府は、経協インフラ戦略会議(議長・菅義偉官房長官)を17日に開き、インフラシステム輸出戦略をまとめた。日本企業による現在約10兆円のインフラ受注実績を、2020年までに3倍の30兆円まで拡大する目標を掲げた。目標実現に向け、▽官民連携推進▽インフラ海外展開の担い手となる企業、自治体の支援と人材の発掘・育成支援▽国際標準の獲得▽防災やエコシティー、宇宙システムなど新フロンティアインフラ分野への進出支援▽安定的で安価な資源確保推進――を施策の5本柱に掲げた。また、アフリカなど地域別の取り組み方針も定めた。」(『建設通信新聞』2013.05.20)
●「PFI・PPP事業の拡大が決定的になりつつある。安倍晋三首相の指示を受け、政府が策定する『アクションプラン』では、コンセッション(運営権付与)方式など類型ごとに、ことしから10年間の事業規模を明記する方向で調整が進んでいる模様だ。また、政府は、全国の地方自治体と被災地自治体を対象にしたPFI案件の募集も開始。さらに、今後改定するPFIガイドラインでは、一般競争入札を原則とした事業者選定に、企画競争など競争性のある随意契約や競争的対話方式導入も追加することで、PFI事業を後押しする。」(『建設通信新聞』2013.05.21)
●「政府は、アフリカでのインフラ整備を推進していく方針を決めた。6月に開かれる第5回アフリカ開発会議でも主要議題の一つとして、アフリカの経済成長を後押しできるよう、日本の持つ技術や知識を生かして支援する。個別のインフラ整備に加え、資源開発や農業開発とも連動した広域的な物流インフラの整備も実施していく。アフリカでのインフラ展開は日本企業の位置付けが比較的低く、同会議での取り組みなどを通じて展開の足がかりにしていく。」(『建設通信新聞』2013.05.21)
●「政府が先週末に決定したインフラシステム輸出戦略で、建設関連企業の海外展開支援に向けた当面の政策メニューがまとまった。国内発注方式の国際標準化など企業が受注活動をしやすい環境づくりを行うのが柱。同戦略には20年の建設業の受注(現在約1兆円)を工場団地(同100億円)と合わせ、2兆円程度まで高める方針を明記した。」(『日本経済新聞』2013.05.22)
●「政府が地域を限って大胆な規制緩和や税制優遇を検討する新特区『国家戦略特区』に関する東京都の構想案が21日明らかになった。誘致した外国企業の法人実効税率を20%まで引き下げる目標を掲げ、海外の名門大学の誘致などで外国人向け教育や医療を充実させる。外国資本を積極的に呼び込み、経済成長に結び付ける考えだ。」(『日本経済新聞』2013.05.22)
●「政府が6月に取りまとめる成長戦略の素案の全容が27日、明らかになった。外国との経済連携を進め、貿易額に占める自由貿易協定(FTA)締結国の比率を現在の19%から2018年に70%に高める。公的資金を経営難の企業に注入する基準を作り、安易な企業救済を防ぐ。」(『日本経済新聞』2013.05.28)
●「政府は29日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を開き、『日本産業再興プラン』『戦略市場創造プラン』『国際展開戦略』を3本柱とする成長戦略の骨子をまとめた。今後、戦略市場創造プランで設定したエネルギーや次世代インフラなど4分野を対象に、2030年までの中長期のロードマップ(工程表)、15年度までと16年度以降の詳細な施策実施スケジュール(中短期工程表)を作成し、成長戦略実現の道筋を明確に示す。重要政策の数値目標と達成年次を示すKPI(政策成果指標)も設定し、政策の達成度を分かりやすくする。成長戦略は安倍政権の経済政策『アベノミクス』の“第3の矢”で、6月14日の閣議決定を目指す。」(『建設通信新聞』2013.05.30)

行政・公共事業・民営化

●「国土強執(きょうじん)化政策を総合的・計画的に進めるための新たな法案が16日、最終決定した。法案の正式名称は『防災・減災等に資する国土強執化基本法案』。自民、公明両党による議員立法として今国会に提出する。国土強執化の指針となる国土強靭化基本計画の下に社会資本などの分野別計画を置く『アンブレラ方式』と呼ぶ施策体系とするのが最大の特色だ。」(『建設工業新聞』2013.05.17)
●「公共工事の低入札価格調査制度で、調査基準額の算定式にある一般管理費の割合(係数)を引き上げる動きが国土交通省を皮切りに拡大する。総務、国交両省は都道府県・政令市に国交省の引き上げを踏まえた見直しを要請する通知を16日付で行った。農林水産省は既に国交省と同様の引き上げを実施。16日以降に入札公告を行う工事から適用するよう省内各部局(内局)や林野庁、水産庁といった外局すべてに通達を出した。」(『建設工業新聞』2013.05.17)
●「2013年度の公共工事設計労務単価が大幅に上昇したことを受け、東京都23区でも特例措置の適用に向けた動きが活発化している。日刊建設通信新聞社の調べによると、17日現在で既に千代田、台東、北、大田、中野、杉並、板橋、足立、江戸川の9区が特例措置を講じる方針を決めているほか、新宿区も近く導入決定する予定だ。その他の区も時期は未定だが、適用する方向で検討が進んでいる。」(『建設通信新聞』2013.05.20)
●「政府が17日にまとめたインフラシステム輸出戦略は、日本企業の受注額推計としてエネルギーや交通、基盤整備など6分野で2020年度までに合計30兆円程度を目標に掲げた。エネルギー分野の9兆円を始め、交通分野で7兆円、農業や医療、海洋といった新分野で5兆円を見込んでいる。新分野を現状の受注額から4.5倍引き上げるほか、交通分野を約4.3倍、水ビジネスなどの生活環境分野を3.3倍に引き上げる。各分野ともアジアを中心に市場規模が拡大すると見込まれており、政府も相手国との政策対話や企業の取り組みの支援により、日本企業の展開を推進する。」(『建設通信新聞』2013.05.21)
●「国土交通省は羽田空港で実施している滑走路拡張工事の完成時期を前倒しする。2015年3月としていた完成時期を最大で半年早め、14年秋にも利用できるようにする。発着枠が余る深夜に大型機の就航が可能になり、欧米路線の増便につなげる。空港の本格的な『24時間化』へ環境整備を急ぎ、観光客やビジネス客の増加につなげる。拡張工事の対象はC滑走路(全長3000メートル)。現在は騒音の問題で、午後11時から午前6時まで夜間は3000メートルのうち2500メートル分しか利用できず、大型機が就航できない。このため深夜に発着する国際線は20便程度と利用可能な枠の半分にとどまっている。拡張後の滑走路は3360メートルになり、深夜も3000メートルまで利用可能になる。」(『日本経済新聞』2013.05.22)
●「東京都知事本局は、保有するインフラの更新などに民間資金の活用を促すため、PPP事業の調査検討に着手する。東京都発の『官民連携政策投資システム』の構築に向けて、新たなインフラ整備や膨大な老朽インフラの更新など、今後、新たなニーズが見込まれるPPP事業のあり方を探る。人口動向や財政、保有するインフラの現状と将来見通しに加え、国内外の先進事例の調査を通して、PPP事業における民間主導型のインフラ整備・更新のモデル事例を取りまとめる。」(『建設通信新聞』2013.05.22)
●「復興庁は、2013年度予算の成立を受け、同庁に一括計上した公共事業費の配分個所を決定した。国土交通省の事業では、復興道路の整備に関する直轄事業に前年度から200億円増の1600億円(事業費ベース)が盛り込まれほか、河川津波対策に57億円、港湾整備の直轄事業に39億円などが配分された。社会資本整備総合交付金は、10道県に前年度から約170億円増の約432億円(国費ベース)を計上。土砂災害対策や浸水対策などに各自治体が費用を充てる。」(『建設通信新聞』2013.05.23)
●「国土交通省は、東日本大震災の復旧・復興工事で積算上の特例を認める『復興歩掛かり』を設定する検討に入る。生コンなどの資材調達が滞って工期延長を余儀なくされるなど実態と標準歩掛かりのかい離状況を調べた上で、1日当たり作業量を工種ごとに見直したり、一律に補正係数を乗じたりできるかを探る。直轄工事で実態把握を行うのに加え、被災3県(岩手、宮城、福島)や仙台市に、道路や河川などの代表的な工種で検討に必要となるデータの提供を近く要請する。」(『建設工業新聞』2013.05.24)
●「自民党の脇雅史参院国対委員長は24日、日刊建設工業新聞らの取材に応じ、公共工事品質確保に関する議員連盟の公共工事契約適正化委員会(野田毅委員長)で議論している公共調達新法について、『公共工事品質確保促進法(品確法)を無くして、品確法の要素も取り入れた公共調達新法を作れば良い』との考えを表明した。具体的な対応として、総合評価方式で予定価格より高いケースであっても優れた総合点の企業を採用し、その後の協議で予定価格以下の金額で契約する手法を取り入れることを提案した。国土強靭(きょうじん)化へ向けた体系的な長期計画の重要性にも言及し、政府に早期対応を求めていく考えも示した。」(『建設工業新聞』2013.05.28)
●「国土交通省は28日、地域建設業の維持や状況に応じた入札契約制度の運用方法を探るため『地域の建設産業及び入札契約制度のあり方検討会議』を立ち上げる。防災・減災への取り組みやインフラの老朽化への対応を進める上で、事業を担う地域建設産業を支えるための施策を検討するとともに、状況により多様な選択肢を活用できる入札契約制度の方向性を示す。会議は鶴保庸介国土交通副大臣を議長に据え、事務次官や技監など省内の幹部10人で構成して議論する。」(『建設通信新聞』2013.05.28)
●「国土交通省が多様な入札契約制度の導入と活用の検討を始めた。28日に鶴保庸介副大臣をトップに省内幹部で構成する検討会議が発足。ダンピング受注が横行する中、下請けへのしわ寄せが現場の技能者の処遇悪化と若年入職者の減少という事態を招いているとして、入札契約の側面からどのような解決策を講じられるかを検討する。時代のニーズや事業特性に対応する多様なメニューを模索する同会議で6月にも大きな方向性を整理し、具体策の検討に入る。初会合では、メンバーから『できるだけシンプルな内容にするべきだ』との注文もついており、多様性とわかりやすさを両立させるための議論の行方が注目される。」(『建設工業新聞』2013.05.30)
●「内閣府の民間資金等活用事業推進委員会(PFI推進委員会)は、PFI事業に関する新たなガイドライン案をまとめた。公共施設の運営権を民間に売却する『コンセッション方式』に対応する指針を新たに設け、運営権対価の算出方法や支払い方法、第三者への運営権譲渡の扱いなどを明示。現在の指針を改定し、民間事業者の提案を引き出すための事業者選定方式や選定事業者の株式譲渡に関する考え方を明記している。来週開く政府のPFI推進会議(議長・安倍晋三首相)で正式決定する見通しだ。」(『建設工業新聞』2013.05.31)

労働・福祉

●「国土交通省がまとめた2012年度の企業・労働者の保険加入状況の調査結果によると、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の3保険にいずれも加入している割合は、企業で87.3%、労働者で57.9%となった。職種別にみると、前年度調査で加入率の低かったとび工や鉄筋工、型枠工などで改善傾向が顕著だ。国交省は社会保険の加入率を17年度までに企業単位で100%、労働者単位で製造業並み(雇用保険92.6%、厚生年金保険87.1%)とすることを目標に掲げており、今後も職種ごとの加入に向けた対応が重要になりそうだ。」(『建設通信新聞』2013.05.20)
●「建設業界団体の間に、技能労働者の賃金水準を適正化しようという動きが急速に広がってきた。先陣を切った日本建設業連合会(日建連)や全国建設業協会(全建)に続き、多くの元請業者団体や専門工事業団体で、対応方針を決議するなどの動きが相次いでいる。国土交通省に寄せられた情報では、20日までに20程度の団体が決議を実施または予定していることが判明。今後も同様の動きがさらに広がっていくとみられる。」(『建設工業新聞』2013.05.21)
●「厚生労働省は、建設業と製造業で、高い技能と経験を持つ者を対象に『ものづくりマイスター』制度を創設する。一定要件を満たす技能士などを認定し、若年技能者への実技指導などを行う。6月中に認定基準を決め、技能者などが所属する企業が認定を申請し、『中央技能振興センター』が認定する。最初の認定者は今夏にも誕生する見通し。」(『建設通信新聞』2013.05.29)
●「国土交通省は、公共工事設計労務単価の引き上げ要請に対する建設業関連団体の取り組みに関する緊急調査結果をまとめた。先陣を切って4月に団体として取り組み方針を決めた日本建設業連合会(日建連)や全国建設業協会(全建)をはじめ、56団体が技能労働者の適切な賃金水準を確保することを決議するなどの実施状況を確認できた。国交省では、50を超える団体が前向きに対応していることを評価しており、今後も行政と業界が連携して賃金確保に向けた諸施策に取り組む。」(『建設工業新聞』2013.05.29)
●「全建総連東京都連などは29日、建設現場で働く技能労働者の賃金水準の引き上げを目指すため、東京・永田町の衆院第1議員会館で集会を開いた。13年度の公共工事設計労務単価が大幅に引き上げられたことを踏まえ、技能労働者の賃金・単価引き上げや労働環境の改善を行うよう訴えた。賃金実態を把握するために調査を行う方針も示し、集会後は国会議員への要請活動も行った。全建総連による国会議員への大規模要請活動は、労務単価の大幅引き上げ後は今回が初めて。」(『建設工業新聞』2013.05.30)

建設産業・経営

●「大手・準大手ゼネコン26社の2013年3月期決算が15日までに出そろった。工事利益の確保に苦戦した企業が多く、営業赤字となった企業は10社。特に建築事業の完成工事総利益(工事粗利)の落ち込みは深刻な状況にある。一方、受注高が前期を上回ったのは18社。政府の経済・金融政策に対する期待もある半面、『現時点では実体経済への影響は限定的』(準大手)との見方が大半を占める。受注、利益面ともに好転材料に乏しく、今後も引き続き厳しい舵(かじ)取りを迫られそうだ。」(『建設通信新聞』2013.05.16)
●「東京商工リサーチがまとめた2013年1月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比7.9%減の208件となり、11カ月連続して前年同月を下回った。1月としては1994年以降の過去20年間で最少だった。ただ、地区別では9地区のうち、東北、関東、中部、四国の4地区が前年同月を上回った。業種別では、土木工事業が25.0%増の45件、管工事業が14.2%増の24件、木造建築工事業が46.6%増の22件と増加した。負債総額は、8.2%減の288億1600万円で、負債10億円以上の大型倒産は4件だった。平均負債額は前年同月と同額の1億3800万円。1月の『震災関連』倒産は5件、『中小企業金融円滑化法』に基づく貸付条件変更利用後倒産が3件となった。」(『建設通信新聞』2013.05.16)
●「日刊建設通信新聞社は、建設コンサルタント業務の売上高上位50社程度に、総合評価落札方式とプロポーザル方式の受注・特定状況、問題点などをアンケートした。今回は総合評価方式の集計結果を紹介する。同方式は、技術と価格を総合的に判断して落札者を決定する仕組みだが、実態は低価格でなければ受注できないというのが、業界の“常識”となっている。」(『建設通信新聞』2013.05.29)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東日本大震災の被災地で今後本格化する災害公営住宅の建設に向け、国土交通省や被災県、業界団体などからなる情報連絡会を設置することが決まった。建設工事を円滑に進める上で関係者間で人材や資材の情報を共有し、技術者や技能者、資材の安定確保を狙う。人材や資材の不足により、入札不調や不落などで工事の進捗に遅れが出ないようにする。22日に国交省で開いた復旧・復興事業の施工確保に関する連絡協議会で合意した。」(『建設通信新聞』2013.05.23)

その他