情勢の特徴 - 2013年6月後半
●全国商工団体連合会、(全商連)は、安倍内閣の経済政策(アベノミクス)・急激な円安による中小企業・小規模事業への影響を緊急に調査した結果を19日、発表した。すべての業種で材料、経費が高騰し、価格に転嫁できずにいる実態が浮き彫りになった。昨年末に比べて「材料・経費が上昇している」との回答は57.6%。コストの上昇分を「価格に転嫁できていない」は70.5%にのぼる。(『しんぶん赤旗』2013.06.20より抜粋。)
●「政府は、経済財政運営の基本指針『骨太の方針』と成長戦略である『日本再興戦略』、IT(情報技術)の利活用を進める『世界最先端IT国家創造宣言』、『規制改革実施計画』を14日に閣議決定した。公共投資分野への民間参入を進め、民間資金やノウハウを活用するとの方針を掲げるとともに、ITやICT(情報通信技術)を使ったインフラ老朽化対策などに取り組む姿勢を鮮明にしていることが特徴だ。甘利明経済財政・再生相は、閣議後の記者会見で『公共事業は国や自治体の公共部門が100%行うのが当たり前との考えを打破していく』と強調した。甘利経済財政・再生相は会見の中で、公共投資分野への民間参入について『PPP・PFI事業で12兆円との挑戦は世界から注目されている。民間資金で公共事業を進めることが、(結果として)産業の足腰を強くし、国内のインフラが強化され、海外展開につながる』と述べた。」(『建設通信新聞』2013.06.17)
●「復興庁と福島県は14日、福島第1原発事故で長期の避難生活を強いられている住民向けに、低賃料で入居できる災害公営住宅(復興住宅)を同県内に合計3700戸整備すると発表した。建設地は避難住民の意向を踏まえ、いわき市や南相馬市などに割り振った。用地取得状況にもよるが、14年度に入居を開始し、15年度までには希望者全員が入居できるようにすることを目指す。」(『建設工業新聞』2013.06.17)
●「政府は、17日に開いた128団体を対象にしたTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加に関する説明会で、政府調達については『中央政府について集中議論』し、『基準額については議論が収れんしていない』、また越境サービスについても『個別の資格・免許を相互承認することについての議論はない』とした状況説明文書を配布した。…政府調達については現在、中央政府に集中して議論されていることは既に自民党の会合で政府が表明していたが今回、業界団体向け説明会文書で、対象金額や地方政府(地方自治体)基準については議論が収れんされていないことを明確した。」(『建設通信新聞』2013.06.18)
●「政府の13年度予算は一般会計の総額が前年度比2.5%増の92兆6115億円となった。復興特別会計を含め、過去最大の予算となった12年度予算をさらに上回る規模。緊急経済対策を盛り込んだ12年度補正予算との総額は100兆円を超え、切れ目のない『15カ月予算』で景気浮揚効果を高める。13年度の公共事業関係費は15.5%増の5兆2853億円と、他の経費と比べ最も伸び率が高い。インフラの老朽化対策として道路や橋などの構造物の補修工事を集中的に行うのに加え、事前防災・減災など国民の命と暮らしを守る予算を充実させている。…復興庁の13年度予算総額は、東日本大震災復興特別会計(復興特会)に計上された4兆3840億円のうち2兆9037億円となった。福島の復興・再生を加速させるため、被災住民の生活拠点形成などに予算を重点配分。復興庁の司令塔機能の強化では、復興特会の復興加速化・福島再生予備費に6000億円を充てるなど、被災地全体の課題に機動的に対応する。…農林水産省の13年度予算総額は前年度比5.7%増の2兆2976億円で、うち公共事業費には合計6506億円(32.9%増)を計上した。…国土交通省関係の13年度予算総額は、前年度比11.6%増の5兆0743億円(国費ベース)で、うち公共事業関係費が14.1%増の4兆4891億円。自治体が一定の範囲で自由に使える地域自主戦略交付金(内閣府)を廃止し、東日本大震災復興特別会計への繰入額の計上という特殊要因を除くと、前年度からほぼ横ばいの予算となった。…『復興・防災対策』『成長による富の創出』『暮らしの安心・地域活性化』の3分野に重点化を図ったのが13年度の同省関係予算の特色。」(『建設工業新聞』2013.06.18)
●「主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)は18日、首脳宣言を採択して閉幕した。金融機関が持つ企業や個人の口座情報を自動的に共有して課税回避を防ぐ仕組み作りや、日米欧を中心とする自由貿易協定(FTA)の推進で合意した。企業の課税回避行為や多国間の自由貿易交渉の頓挫など、グローバル経済の現実は、G8など国家間で作る旧来の枠組みに再構築を迫っている。首脳宣言は、多国籍企業の課税回避防止策で、企業や個人の資金の流れを把握するため、金融機関が保有する口座情報を他国の税務当局と自動的に共有する枠組みの構築を明記。『多国籍企業が世界のどこで利益を生み、税を支払っているか』を税務当局に報告させるひな型を作るとした。」(『日本経済新聞』2013.06.19)
●原子力規制委員会は19日、原子炉等規制法の改定に伴う、地震・津波対策、重大事故への対策などを求めた新規制基準を決定した。また原発の運転期間を最長で60年まで認める制度に関する政令案を了承。…東京電力福島第1原発事故の原因究明が終わっていない中、審議過程で専門家から出された疑問や、多くの国民から寄せられた意見を全く無視し、拙速に決められた新基準は、原発の危険から国民の安全を保障するものとは程遠い内容だ。…原発輸出と再稼働に前のめりの安倍政権が掲げる「原発の活用」方針に沿って、再稼働ありきの基準となっている。…新基準が施行されれば、複数の電力会社がただちに審査を申請すると表明している。(『しんぶん赤旗』2013.06.20より抜粋。)
●「国土交通省は21日、地域の建設産業及び入札契約制度のあり方検討会議の第2回会合を開いた。これまでの画一的な入札契約方式から、事業の特性に応じて選択できる多様な入札契約方式への転換を提示。公共工事の品質確保の推進に関する法律(品確法)に方式を新たに位置付け、多様な手法を選択できるようにするイメージも示した。具体化に向けては、詳細を詰めた上で7月以降に有識者会議を開き制度設計に入る。」(『建設通信新聞』2013.06.24)
●「安倍政権と自民・公明両党が与党として運営した今通常国会が26日、会期末を迎える。今国会では2011年3月の東日本大震災を教訓に、新法として『大規模災害復興法』を成立させたほか、災害対策基本法改正を始め、道路、河川、港湾など各法律を今後発生する可能性がある大規模災害への対応を理由に一斉に改正。さらに経済成長実現へ民間資金活用を目的にした法改正や、地域の中小・小規模企業再生を視野に入れた、成長戦略支援のための法改正が相次いだのが特徴だ。」(『建設通信新聞』2013.06.26)
●「環境省は、福島第一原発事故による帰還困難区域を対象とした初のモデル除染工事に着手する。東北地方環境事務所福島環境再生事務所は25日、WTO(世界貿易機関)対象となる『平成25年度双葉町・浪江町帰還困難区域モデル除染等工事』の一般競争入札を公告した。…同業務は、帰還困難区域における除染による線量低減効果を把握するとともに、効率的・効果的な除染工法や作業員の安全を確保する方策を確立。避難が長期化せざるを得ないと見込まれる地域の復興への取り組みを検討するための基礎データを収集する。」(『建設通信新聞』2013.06.26)
●「公契約条例の制定に向けて検討を進めている東京都世田谷区は、早ければ9月に開かれる第3回区議会定例会に公契約条例素案を提出する方針だ。順調に進めば11月の第4回定例会に条例案を提出、可決されれば2014年4月1日から施行する。同時に、現在試行段階の総合評価競争入札制度も14年度に本格実施したい考えだ。…公契約条例に関しては、事業者からも要望が多い最低賃金の引き上げを盛り込むかどうかの検討を専門家を交えて進めている。担当課では、条例の制定によって発注者、受注者、下請事業者などが共通の認識を持つことが大切だとしている。」(『建設通信新聞』2013.06.27)
●「日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)がまとめた会員企業の労働災害発生状況調査で、民間工事での災害が増えている状況が浮き彫りになった。過去3年間の4日以上の休業災害発生件数は、全体では10年730件、11年870件、12年1018件と増加。内訳を見ると、公共工事では200件台で推移しているのに対し、民間工事では10年の460件に対し、12年は739件と約1.6倍に膨れ上がった。工事件数などの条件が異なるため単純比較はできないものの、注意が必要といえそうだ。」(『建設工業新聞』2013.06.18)
●「国土交通省と厚生労働省は21日、建設業の人材不足の打開に向けて両省が連携して取り組む『当面の建設人材不足対策』をまとめた。対策は、人材確保、人材育成、人材移動の円滑化の三つの視点で構成。人材確保・育成に役立つ厚労省の各種助成制度について、企業や業界団体の活用を促進するための情報提供や具体的な申請方法のガイダンスを実施するほか、ハローワークで建設に特化した相談や情報提供を行う『建設人材確保プロジェクト』にも取り組む。建設人材確保プロジェクトでは、求人条件の設直などについて事業主に対する相談・援助に応じるほか、資格保有者に対する建設求人の最新動向の情報提供や面接会を積極的に行うことで広域マッチングを含めた求人充足を促進する。」(『建設工業新聞』2013.06.24)
●「建設業界全体で技能労働者数の減少が続く中、一人親方の数は相対的に高い水準にあり、その経験年数が短いほど解雇されるなど非自発的な理由で一人親方になっているケースが目立っている――。国土交通省が一人親方の就労環境や処遇に関して2012年度に実態調査した結果からはこうした姿が浮かび上がっている。国交省は、企業が社会保険の経費負担を避けるため一人親方にさせた事例も多いことから、勤務実態が労働者に近い場合には企業で社会保険に加入させる必要があることをパンフレットを配布して周知していく方針だ。…調査結果によると、建設関係の技能労働者数が減少する一方で、一人親方の割合は増加傾向にあることが分かっている。国勢調査では、建設・土木作業従事者の総数が1995年の308万人から10年には207万人に減少、同様に『雇人のある業主』は23万人から13万人への減少を示した。ただ、一人親方に該当する『雇人のない業主』はこの間40万人程度で横ばいとなっており、一人親方の全体に占める割合は相対的に高くなっている。…一方、一人観方になった時期が直近になるほど受動的な理由からだった状況がアンケートの結果から浮かび上がってきた。一人親方となって20年以上は『解雇されたから』『かつて雇用主だったが人を雇えなくなったから』などの非自発的な理由は20%程度にとどまるのに対し、10年未満では50%近くを占め、10年以上20年未満でも40%近い割合となっている。ヒアリングでも、雇用主だったものの仕事量の減少や社会保険料の経費負担を理由に従業員を独立させて一人親方となったと述べるケースや、会社の外注化への方針転換により一人親方となったという報告も寄せられた。近年の一人親方の増加傾向には、仕事量の減少や社会保険の負担を企業が避けるなどの要因が絡んでいる格好となっている。」(『建設通信新聞』2013.06.25)
●「国土交通省は、重層下請構造の中で存在する『一人親方』の働き方に着目して、自己診断できるチェックシートを作成した。形は一人親方であっても、実態が本来は事業者に雇われるべき労働者である場合、違法状態で働いていることが想定され、社会保険にも加入していないケースが考えられる。同省は、チェックシートを通じて自身が違法状態にあるかを確認してもらい、労働基準監督署に相談するなど適正な対処を促していく考えだ。」(『建設工業新聞』2013.06.25)
●「国土交通省は7月から、建設技能労働者の賃金水準についての詳細な実態調査を行う。民間調査機関が刊行している価格一覧や厚生労働省が発表する毎月勤労統計調査から賃金の実態を捉えられる指標を抜き出し、その動向を調べる。3カ月に1回のペースで実施することで、技能労働者に支払われる賃金水準の推移を見る。大幅に引き上げた本年度の公共工事設計労務単価が技能労働者の賃金に的確に把握されているかを把握するのが狙いだ。」(『建設工業新聞』2013.06.27)
●「ゼネコン各社の工事採算が悪化している現状が、日刊建設工業新聞社がまとめた13年3月期決算の集計であらためて浮き彫りになった。売上高上位25社を対象に、売り上げ計上した工事の採算を示す完成工事総利益(粗利益)率(単体)を調べた結果、21社が前期より悪化。単純平均では4.7%と前期より1.3ポイント低下した。東日本大震災の復興本格化に伴う労務・資材費の高騰が採算悪化の主因。各社は利益重視の選別受注やコスト構造の見直しなどを徹底し、14年3月期の粗利益率は19社が改善を見込む。」(『建設工業新聞』2013.06.17)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は19日の理事会で、1次下請けとの契約で労務単価を明示するための具体的な方策や支払い賃金の調査方法などを検討する『設計労務単価の改定に関する検討会議』(座長・大田弘熊谷組社長)を設置することを決めた。国土交通省が新労務単価フォローアップ相談ダイヤルを開設した中で、日建連会員が支払いを徹底していることを十分に説明できる形での労務単価明示方法などを探る。検討会議で課題などを整理し、7月18日の理事会で具体策を決定する予定だ。」(『建設通信新聞』2013.06.20)
●「日本建設業連合会がまとめた会員99社の5月の受注総額は、前年同月比24.0%増の8283億4400万円となった。民間と官公庁がともに大幅に増加している。官公庁の増加は、2012年度大型補正予算の発注が進んだことが影響していると見られ、特に国からの受注では、旧日本建設業団体連合会の会員48社を対象とした調査では前年同月比減となったものの、99社の調査では増加した。12年度受注総額のうち、民間の受注は28.3%増の5949億5800万円で、官公庁は14.5%増の2053億9500万円だった。」(『建設通信新聞』2013.06.27)
●「東京商工リサーチがまとめた2013年3月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比26.0%減の216件となり、13カ月連続して前年同月を下回った。3月としては1994年以降の過去20年間では、2012年の292件を下回り最少となった。地区別では、9地区うち北海道と四国を除く7地区で前年同月を下回った。業種別では、木造建築工事業の倒産が前年同月の14件から22件となり増加が目立った。負債総額は、40.3%減の222億1600万円で、4カ月連続して前年同月を下回った。平均負債額は、3月として過去20年間で最少の1億200万円だった。3月の『震災関連』倒産は4件、『中小企業金融円滑化法』に基づく貸付条件変更利用後の倒産が9件となった。」(『建設通信新聞』2013.06.27)
●オフィスビルなどを改装して、極端に狭い居室に違法に住まわせる「脱法ハウス」。この間題の深刻な背景と直面する支援について、「国民の住まいを守る全国連絡会」の坂庭国晴代表幹事に寄稿してもらった。…問題の背景には、こうした劣悪で違法な居住スペースに住まざるを得ない実態がある。「脱法ハウス」に住む人は、生活保護利用者、単身高齢者、非正規雇用など低所得の単身者(女性を含む)、外国人などだ。本来これらの人びとは、住宅セーフティネット法(2007年施行)によって、公的賃貸住宅や民間賃貸住宅に居住する権利をもつ市民です。ところが、都営住宅などは新規建設ゼロ、応募倍率平均30倍、若年単身者は応募もできない現状だ。民間賃貸住宅は全くの市場まかせで、高家賃をはじめとした高いハードルがある。…「脱法ハウス」に住む人は、勤務先や就労先に近い(自転車などの通勤者も多い)都心の便利なところを選択している。住宅セーフティネットからはじかれた人々は、空きビルや空きマンションを違法的に改造し、悪質業者によって提供される「脱法ハウス」に追い込まれるという重い現実にさらされている。その重い現実はさらに困難に直面する事態になっている。「脱法ハウス」の摘発(建築基準法違反など)を前に、廃止・封鎖をするハウスが続出し、そこから追い出される人びとが多く生まれてくる問題だ。(『しんぶん赤旗』2013.06.22より抜粋。)
●「住宅リフォーム工事を巡る訪問販売などのトラブルが増えている。国民生活センターによると、2012年度の相談件数は東日本大震災が要因で大幅増だった11年度と同水準で、13年度はそれを上回るペースで推移。来年4月に予定される消費増税を持ち出し、十分な情報提供をせずに契約を急がせるケースもあり、同センターは注意を呼びかけている。」(『日本経済新聞』2013.06.24)
●「政府・与党は26日、2014年4月の消費増税に併せて導入する住宅購入者向けの給付制度を固めた。住宅ローン減税を利用する場合は年収510万円以下の人に最大30万円を給付する。現金で買う場合は50歳以上で年収650万円以下に限定し最大30万円を給付する。消費増税後の住宅市場の冷え込みを避ける狙いがある。」(『日本経済新聞』2013.06.26)
●「11月に経営統合する一建設やアーネストワンなど戸建て住宅6社は27日、統合契約を正式に結び、共同持ち株会社の株式移転比率などを決めたと発表した。持ち株会社の社名は『飯田グループホールディングス』。6社合計の売上高は約9000億円となり、住友林業を超える。少子高齢化や競争激化で環境が厳しい中、規模拡大による収益力向上を図る。 統合するのは2社の他に飯田産業、東栄住宅、タクトホーム、アイディホーム。」(『日本経済新聞』2013.06.28)