情勢の特徴 - 2013年7月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「海外への援助・投資が急ピッチで増えている。2012年度の円借款などの政府開発援助(ODA)に国際協力銀行による海外投融資を加えた金額は前年度比95%増の約5兆7300億円と過去最大を記録したようだ。政府は今後も新興国支援を拡大する方針で、日本企業によるインフラ輸出や現地での資源開発を後押しする。」(『日本経済新聞』2013.07.01)
●「国土交通省は6月28日、13年度の国内の建設投資見通しを発表した。総投資額は前年度比11.2%増の49兆9500億円と2年連続で増加。2桁増は1990年度以来13年ぶりとなる。政府建設投資が12年度補正予算の建設投資額が反映される影響で、16.4%増の21兆9600億円と大きく伸び、全体を押し上げる。民間投資も景況感の改善や14年4月に予定されている消費増税前の駆け込み需要を背景に7.5%増の27兆9900億円を見込む。 建設投資の増加要因について国交省は『(安倍政権の経済政策)「アベノミクス」の効果が出ている』(総合政策局建設統計室)と分析。東日本大震災の復旧・復興需要によって12年度から回復基調にあった建設投資が、12年度補正予算というアベノミクスの『第2の矢』である財政出動でさらに押し上げられた格好だ。」(『建設工業新聞』2013.07.01)
●「中小業者の46.5%がアベノミクスで経営が悪くなる」―。全国商工団体連合会(全商連)が実施した『「アベノミク」円安による緊急影響調査』では、アベノミクスによる急激な円安で、あらゆる業種で材料・経費が上昇し、7割の業者が価格に転嫁できない.など経営が圧迫されている実態が浮き彫りになった。(『全国商工新聞』2013.07.01より抜粋。)
●「国土交通省は2日、『下水道施設の運営におけるPPP/PFIの活用に関する検討会』 (座長・滝沢智東大大学院教授)の第5回会合を開き、コンセッション(運営権付与)方式の積極導入に向けた展開イメージを提示した。価格弾力性が小さく、支出を収入で賄い切れていないなど、下水道分野のサービスや経営上の特性を踏まえ、管路、処理場、下水汚泥有効利用施設といった全施設対象のフルパッケージ型コンセッションを、現段階で導入するのは難しいと指摘。まずは、処理場など個別施設に限定した部分型コンセッションから始めて知見やノウハウを蓄積し、改築パッケージ型、フルパッケージ型へと発展させていく流れを描いた。」(『建設通信新聞』2013.07.03)
●「安倍政権の財政出動の効果が顕在化してきた。建設会社の公共工事の5月の請負金額は前年同月比で25%増と、2カ月連続の大幅増となった。緊急経済対策が実行段階に移ったためで、目先の景気押し上げ要因になる。建設業の倒産件数も減少した。ただ来年には政策効果が切れる見通しで、企業の設備投資など民需主導の成長への切り替えが急務となる。…請負金額は4月に29%増と3カ月ぶりにプラスに転じ、5月も25%増と高水準を維持した。…公共工事が活発なのは、2月に成立した2012年度補正予算に基づく緊急経済対策(国費ベースで10兆円超)が実行段階に入ったため。内閣府によると、6月1日時点で8割強の事業で民間企業などと契約済み。被災地のインフラ復旧や全国の学校の耐震化や老朽化対策などが動き出した。…もっとも、足元では公共工事の急増で建設業の人材や資材の不足、資材価格の高騰が指摘されている。こうした要因が予算の執行を遅らせる可能性も出ている。公共投資の一巡後は、反動減による景気への悪影響も懸念される。」(『日本経済新聞』2013.07.09)
●「先進34カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)は多国籍企業による課税回避抑止に向けた国際ルールづくりで、中国やインドなど新興国に参加を要請した。OECDが非加盟国に関与を求めるのは異例。経済規模が大きくなった新興国を巻き込むことで、ルールの抜け穴をふさぐ狙いがある。…多国籍企業が法人税率が低い国を経由した取引で節税を図る事例が相次ぎ発覚したことなどを受けて、企業の課税回避抑制策づくりが、主要国の経済外交の懸案として浮上している。ただ、先進国と新興国が共通のルールづくりで折り合えるかは微妙だ。米欧などの先進国は多国籍企業が本社機能を置く『居住地国』での課税が原則と主張する。一方、日米欧の多国籍企業が進出する新興国は実際に利益が生まれた『源泉地国』の課税強化を求めている。」(『日本経済新聞』2013.07.14)

行政・公共事業・民営化

●「埼玉県川越市は、入札契約制度のあり方について議論する市長の諮問機関『公共調達審議会』を設置する。▽公共調達の基本理念▽入札契約制度のあり方▽公契約条例のあり方における基本事項――の3項目を柱に、学識経験者3人、事業者2人、労働者2人の計7人の委員が同市にふさわしい入札契約制度について審議する場となる。公契約条例や労働者に支払われる賃金の確保、社会保険未加入問題など公共事業をめぐる諸課題も含めて検討する見通し。…公共工事設計労務単価の引き上げや低入札価格調査基準価格の改定など公共工事に関する国の制度改正が続く中、公共事業に従事する労働者に支払われる賃金の確保や社会保険加入の取り組み、地域経済活性化の方策などについて、発注者、元請け、労働者の3者がそれぞれ担うべき役割を探り、地域活性化にふさわしい制度のあり方を議論する場になる。」(『建設通信新聞』2013.07.01)
●「東京電力福島第1原子力発電所の廃炉作業を進める政府と東電などの廃炉対策推進会議(議長・茂木敏充経済産業相)は、工程表(中長期ロードマップ)の改定を正式決定した。原子炉からの燃料デブリ(燃料と被覆管などが溶融し再び固まったもの)の取り出し開始時期を従来の工程表より最大で1年半前倒し。最速のケースでは20年度上半期にも取り出しを始めるとしている。」(『建設工業新聞』2013.07.01)
●「自民党の脇雅史参院国対委員長は、国土交通省が検討している地域の建設産業と入札契約制度のあり方について見解を示した。同省が入札契約方式の多様化と併せて発注の平準化を打ち出していることについて、『これまでの公共工事は、業界の事情を考えず、発注する役所の都合だけで仕事を出してきたことが問題』と批判。公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の目的に業界の健全な発展を明記することが、地域の実情を踏まえて工事を安定的に発注していく根拠になるとの認識を示した。」(『建設工業新聞』2013.07.01)
●「南海トラフ巨大地震や首都直下地震が発生した際に、現地災害対策の重要な担い手となる国土交通省として、初動期に何を行うかなどを明確化するための議論がスタートした。発災直後から7−10日程度の間に緊急実施する『応急活動計画』と、それを補う『戦略的に推進する対策』を2本柱に、両地震それぞれの対策計画を定める。本省と並行し、各地方整備局などのブロックごとに地域対策計画も作る。政府の被害想定が公表されている南海トラフ巨大地震については、7月下旬から8月ごろにも先行して対策計画の中間とりまとめを示す。」(『建設通信新聞』2013.07.02)
●「東日本大震災の大津波で壊滅的な被害を受けた東北地方の太平洋沿岸市町村で、災害廃棄物(がれき)の処理が着実に進展していることが、環境省の調査で分かった。被災3県(岩手、宮城、福島)の平均で今年5月末までに約7割の処理が完了。目標としていた本年度末までの処理完了が現実味を帯びてきた。集積場所となっていた仮置き場の数もピーク時から半減。足かせとなっていたがれきの山が消え、復興がようやく本格化しそうだ。一方で、津波堆積物の処理に遅れが見えるなど課題も残っている。…市町村別に見ると、既に処理が終わった所もある。宮城県利府、松島の2町は処理が完了。ほかに宮城東部ブロックや仙台市、亘理名取ブロック、岩手県洋野町、普代村などでは進ちょく率が8割以上に達している。処理の進むにつれてがれきを受け入れるスペースができ、仮置き場に搬入済みとなったがれきの割合も増加。率にして約94%となった。11市町村ではすべてのがれきの搬入を終えた。…がれきの処理は順調に進んでいるが、津波で堆積した土砂などの不燃物の処理は、がれきほどには進んでいない。津波堆積物は保管場所の確保が難航し、再生利用調整もなかなか進まないという状況に直面している。…福島県については福島第1原発事故の影響により、一部で14年3月までの終了は困難として、国による直轄処理や代行処理で加速化を図るほか、今夏をめどに全体の処理見通しを明らかにする考えだ。」(『建設工業新聞』2013.07.02)
●「総務省の『第3セクター等のあり方に関する研究会』(座長・宮脇淳北大大学院教授)が5日、初会合を開いた。公営企業や第3セクターなどの抜本的改革集中期間が今年度で終了することから、同研究会では同期間中の取り組み状況の評価・分析を行った上で、事業廃止や事業譲渡、法人解散に必要となる資金調達のための『第3セクター等改革推進債』の来年度以降の延長の是非を含め、今後の第3セクターなどの抜本改革の枠組みについても示す予定だ。政府は地方道路公社などの地方公社や、上下水道など地方公営事業の業務に民間資金によるPPP・PFI事業を積極導入する方針を打ち出しており、研究会での議論はこうしたPFI事業の拡大を加速させる可能性もある。」(『建設通信新聞』2013.07.08)
●「国が管理する東京23区内の国道31区間(総延長163.2キロのうち、半分以上に当たる18区間(96.4キロ)で大規模災害時に被災道路の応急復旧作業を要請する建設業者を十分に確保できていないことが分かった。6区間(27.7キロ)では災害協定を結んだ業者がなく、複数の業者が必要なのに1者しか協定を結んでいない区間も12区間(68.6キロ)ある。管理を担当する国土交通省関東地方整備局東京国道事務所は業者の追加選定を急いでいる。…協定締結業者が足りない直接的な要因は、同事務所が4月に協定締結業者を公募した際、締結を希望した業者の数が前年度より4割以上も減少したことだ。…希望業者が激減した理由ははっきりしていないが、国交省が昨年4月に総合評価方式の入札手続きを抜本的に改善した影響があるのではないかとみられている。見直しでは、従来あった地域への『精通度』や『貢献度』、災害協定の締結などを評価する項目設定がなくなった。」(『建設工業新聞』2013.07.09)
●「国土交通省は、全国の下水道施設の情報を集約し、アセットマネジメントや災害復旧などに活用できる共通データベース(DB)を構築する。地方自治体はアセットマネジメント導入時にDBを活用すれば、将来の更新費用や導入効果を把握できる。国は全国の下水道施設全体の状況把握が可能になり、維持管理・更新などの政策立案に生かせる。災害発生時に被災状況を入力すれば全国で情報を共有できるため、支援体制の早期構築につながる利点もある。本年度内にDBの方向性を固める。」(『建設工業新聞』2013.07.09)
●「国土交通省は、国交相の諮問機関の中央建設業審議会(中建審)と社会資本整備審議会(社整審)産業分科会建設部会の下部組織として設けている基本問題小委員会(大森文彦委員長)を今月末に開く方向で調整に入った。省内会議『地域の建設産業および入札契約制度のあり方検討会議』(議長・鶴保庸介副大臣)が方向性を示した多様な入札契約制度などの具体化を議論するのが目的。工事現場の監理技術者資格を得るための受験要件の緩和案も示す。6月に開いた省内会議を経て国交省は、▽多様な入札契約方式の導入と活用▽ダンピング対策の強化と適正価格での契約▽技術者・技能者の確保・育成▽地域のインフラメンテナンス、災害対応などの的確な確保、将来的な品質確保―という4点について、具体化に向けた方向性を公表した。…省内会議が打ち出した方向性には、公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の体系について、発注者の責務の拡大や多様な入札契約方式の位置付け、予定価格のより適正な設定などを追加・拡充することも明記している。基本問題小委の議論によっては、法改正につながる可能性もあることから、国会提出なども考慮すると年末から年明けにかけて何らかの結論を出すことが必要になりそうだ。」(『建設工業新聞』2013.07.10)

労働・福祉

●「国土交通、厚生労働の両省は6月21日に『当面の建設人材不足対策』をまとめた。企業や行政と教育機関の連携による人材の確保・育成や、ハローワークで建設業に関する求人の強化・支援などとともに、人材育成につながる助成制度の周知が対策の柱に位置付けられている。厚労省が設けている助成制度は、労働者の新規雇用や職業訓棟の経費助成などメニューも多彩な上、事業規模が数百億円に上るものもあるが、建設企業が制度を知らないため活用されていないものも多いという。」(『建設通信新聞』2013.07.01)
●安倍政権が描く『成長戦略』の一つに、派遣労働の際限のない拡大がある。「常用代替防止」「臨時的・一時的業務」という労働者派遣法の根幹を取り払う方向で派遣期間の制限などを見直そうというもの。…「派遣労働は臨時的・一時的な業務に限る」というのが労働者派遣法の基本。それを保障するために、▽派遣期間は1年間(最大3年間)▽ソフトウエア開発や速記、通訳など「専門26業務」に限って派遣期間の制限はない―ことになっている。これは、直接雇用で働く正社員などの常用雇用労働者を派遣などの間接雇用に置き換えてはならない(常用代替防止)、という最低限の歯止め。政府は、これらの規制を見直しの対象にしている。(『しんぶん赤旗』2013.07.01より抜粋。)
●「公共工事設計労務単価の引き上げなどを踏まえて技能労働者の待遇改善を実現しようと、『賃金引き上げを求める建設現場従事者大集会』が6月30日、東京・平河町の砂防会館で開かれた。全建総連の関係者や技能労働者ら611人が参加。技能労働者の賃金引き上げへ向けて、国土交通省や地方自治体、民間発注者、大手建設会社などに対して運動を展開することを確認した。…今が賃金引き上げの絶好のチャンスとして、積極的に行動することや、賃金引き上げを行わない企業やダンピング受注をやめない企業を社会的に告発していくことなどを盛り込んだ決議も採択した。集会を主催したのは『人が育つ明るい建設現場をめざす討論集会実行委員会』。代表してあいさつした全建総連東京都連の佐脇政幸執行委員長は『太田昭宏国交相は、最先端で働く皆さんの労賃が上がるようしっかりと進めていきたいと言っている。労賃が上がらなければ何の意味もない』と訴えた。人材確保や若年層の入職促進の観点から、待遇改善が急務との指摘も多数出された。」(『建設工業新聞』2013.07.02)
●「厚生労働省は3日、製造業や建設業などの現場で働く外国人技能実習生の実習実施機関に対する監督指導や送検の状況をまとめた。労使協定を超えた残業や賃金不払いなど労働基準関係法令に違反した事例は後を絶たず、監督指導を行った2776事業場のうち、約8割の2196事業場で何らかの関係法令達反が認められた。重大、悪質な違反で送検された事例も15件に上った。厚労省は引き続き、技能実習生の適正な労働条件が確保できるよう指導を徹底していく考えだ。」(『建設工業新聞』2013.07.04)
●「国土交通省は、建設現場で働く技能労働者の賃金水準動向を把握するため、きめ細かな実態調査に乗り出した。2013年度の公共工事設計労務単価を大幅にアップさせた効果が、現場最前線まで行き渡っているか確認するのが狙い。発注者、元請企業、下請企業、技能労働者という、それぞれの関係者間で交わされている取り引きや契約内容の変化などをとらえ、労務単価引き上げによって生み出された労賃アップの『原資』の流れを見る。実態調査は継続的に行うが、9月ごろをめどに1回目の結果を取りまとめる。労賃の上昇が認められない場合などは、業界団体への再要請といった必要な措置を講じる。体系的に行う新たな実態調査では、工事入札の落札率の推移や労務費など各種調査の数値データに加え、個別ヒアリングによる『生の声』も集める。川上から川下までの各段階で多様な項目を立て、さまざまな角度から実態を分析。賃金原資がしっかり流れているか、どの段階で滞っているかなど全体像をつかむ。」(『建設通信新聞』2013.07.05)
●「厚生労働省は8月3日までを期限とした『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準に係る疑義応答集案』で、安全確保のために必要な下請作業員への元請けの直接指示は、請負契約の中でも問題がないとの考えを示した。…建設現場ではこれまで、複数の専門工事業が元請けと請負契約を結び、施工作業を行う中、元請けと実際の作業を行う下請作業員の指示命令関係で請負の解釈が成り立つか否かが指摘されるケースもあった。労働者派遣は、派遣された労働者が派遣先からの指示命令に基づいて作業を行うのに対し、請負は請負契約に基づく範囲の業務は請け負った企業が責任を持つ。そのため建設現場の場合、元請けから請け負った専門工事業は、基本的に請け負った職種に携わる作業員の指示命令も担う。また、建設労働者は労働者派遣法の適用外のため、現場作業に関する契約はすべて請負契約となる。…疑義応答集案では、建設作業で複数の請負事業社が同じ現場に入場している場合、元請けが労働安全衛生法に基づき下請けの作業員の安全衛生のために必要な指示を直接、作業員に行うことについて、『指導や指示は安全確保のために必要であり、(元請けから下請作業員に)直接行われたとしても、業務の遂行に関する指示に該当しない』と見解を示した。…ただ一方で、発注者(元請け)との打ち合わせ会議や、発注者の事業所朝礼に、請負事業主(下請け)の管理責任者だけでなく請負労働者が出席する場合、『作業の順序や従業員への割り振りなど詳細な指示や、作業方針の変更が日常的に指示されるなど、請負事業主自らが業務遂行方法に関する指示を行っていると認められない場合は、労働者派遣事業と判断される』との考えを示した。」(『建設通信新聞』2013.07.09)
●「国土交通省は、技能労働者の社会保険への加入に積極的な企業を優良事業者として認証する制度の創設に向け具体的な検討を行う。国交省が作成する認証要綱に基づき、制度を自主的に運営する専門工事業団体を大臣告示などで指定することを想定している。本年度は、3〜l0団体程度で認証を試行しながら、14年度の制度化を視野に入れたロードマップを作る。優良事業者を総合評価方式の入札で加点評価したり、元請企業による下請業者の選別に役立てたりできるようにする考えだ。」(『建設工業新聞』2013.07.10)
●「国土交通省は、公共工事設計労務単価の設定手法や技能労働者の賃金水準を把握する手法の検討を始める。設定手法の検討では、東日本大震災で労務費の急騰が続き入札不調の要因の一つとなっていたことを踏まえ、簡易な調査や経済指標の活用などで迅速な設定ができる方法を探る。賃金水準の把握に向けては、民間工事に従事する労働者や一人親方などの賃金水準の把握も目指す。検討に当たっては、外部の有識者を交えた検討会の設置も視野に入れて調整する予定だ。」(『建設通信新聞』2013.07.11)
●「国土交通省は、技能労働者の技能の『見える化』のシステム構築へ、必要となる情報の精査や既存システム・制度との連携に向けた調査に入る。これまでの議論で挙げられた項目のほかにシステムで必要となる情報を洗い出すほか、就労管理や資格管理に関する既存システムと連携できる可能性を探り、その手法も検討する。情報は、建設企業やシステムを所有する機関、技能労働者へのヒアリングなどを通じ把握していく考え。検討内容は、システム運用に向けた基本方針などを示す基本構想の策定に反映させる。『見える化』は、昨年度に『技能労働者の技能の「見える化」ワーキンググループ(WG)』を設置し、システムに掲載する技能者の情報などを議論している。3月にまとめた中間取りまとめでは、作業員名簿に記載している情報をベースにし、技能労働者の工事履歴や資格、研修受講履歴、保険加入状況の4点を軸にする方針が示されている。今回の検討では、さらに必要とされる項目やシステムを構築していく上で必要となる情報がないか探る。また、就労管理や資格管理などでほかの制度やシステムと連携できないか調査する。…WGでも、建設業退職金共済制度と連携し、見える化システムでの労働者の就労日数の把握により共済証紙の正確な交付に生かすことなどが例示されている。…こうした調査を踏まえ、システムの基本的な運用方針や運用体制などをまとめたシステム運用基本構想を今年度末にも策定する予定。その上で、システムの運営やコストに関する検討を深めるほか、システムの設計やセキュリティー対策などを検討する場も2014年度以降に設け、システム案をまとめる。」(『建設通信新聞』2013.07.12)
●「パートやアルバイトなど非正規社員として働く人が増えている。総務省が12日発表した就業構造基本調査では、役員を除く雇用者のうち非正規社員は全体で約2043万人となり、初めて2000万人を突破した。比率も38.2%と過去最大を更新した。産業構造がパート比率の高いサービス業に転換していることなどが背景にある。…正社員だった人が転職の時に非正規になる流れも強まっている。過去5年の間に転職した人を見ると、転職前に正社員だった人のうち40.3%が非正規になった。…逆に非正規社員が転職するケースでは、正社員になったのは4人に1人にあたる24.2%にとどまる。」(『日本経済新聞』2013.07.13)

建設産業・経営

●「国土交通省は、6月28日に開いた建設資材需要連絡会合同会議で、2013年度の主要建設資材需要見通しを示した。公共事業における『15カ月予算』の執行や民間投資の回復基調を背景に、建設投資全体の増加が見込まれる中、建設資材の需要も大幅に伸びると予測している。主要6資材それぞれが10%前後の伸び率となる模様で、すべての資材が増加するのは1989年度以来、約四半世紀ぶりという。併せて、これまで東北地方で顕著だった資材調達の困難度も、全国的に高まっていく見通しだ。」(『建設通信新聞』2013.07.01)
●「災害対策基本法に基づき、都道府県から『指定地方公共機関』に指定される建設業協会が増加している。東日本大震災以降、北海道建設業協会や栃木、静岡、高知、長崎、佐賀、熊本の7県の建設業協会が新たに指定され、大震災以前から指定されている岐阜、長野の2県の建設業協会とあわせて9道県の建設業協会が指定された。これまでも地域の建設業者は協定などに基づき災害時に活動しているものの、法に基づいた機関として災害時に公共的役割を負うことが認められることで、建設業が地域の安心・安全を担っていることの広範な理解促進につながると期待されている。災害対策基本法は、東日本大震災を踏まえ、大規模広域災害への即応力の強化や被災者対応の改善などを目的に2012年に改正された。これにあわせて、各都道府県では『地域防災計画』の修正を順次進めており、その中で都道府県の建設業協会が指定地方公共機関に指定されるケースが増加している。 建協が担う業務としては、公共施設の応急対策などが多く、緊急輸送道路確保や被害調査も含まれるケースが出ている。…全国建設業協会では、指定地方公共機関への指定が広がっていることについて『地域の建設業者が、普段から担っている地域の安全・安心という役割が自治体に認められてきた』との認識を示し、『地域の状況に応じた取り組みが重要だが、災害時の活動が法的位置付けの役割となることは望ましい』とさらなる広がりに期待を寄せる。また、『指定地方公共機関に指定されれば県の防災会議にも参加できるため、防災計画の策定などに意見を提示することで、より良い準備ができるのではないか』とする声もある。」(『建設通信新聞』2013.07.08)
●「ミャンマーの2大空港建設プロジェクトの事業者が今夏にも決定する。事業規模が1000億円を超えるともいわれる『ハンタワディ国際空港新築プロジェクト』と、旅客ターミナルビルの拡張を中心とした『ヤンゴン国際空港拡張事業』で、いずれにもゼネコンを含む日本勢が入札に参加している。発注者のミャンマー運輸省航空局はBOT(建設・運営・譲渡)方式を採用。完成後30年間は民間事業者が施設を運営するコンセッション方式を取り入れているのが特徴だ。…海外の空港プロジェクトは建設・運営一体発注の形態が主流になっている。日本勢は建設単体の受注実績は数多くあるが、一体事業の受注では海外勢に後れを取っている。ミャンマーの案件は、空港インフラの海外輸出を軌道に乗せる政府の成長戦略上も重要度が高い。空港の計画、整備、運営が一体となった総合プロジェクト受注を目指して官民でスクラムを組む体制づくりも進んでいる。国土交通省は4月、空港を中心とした海外航空インフラプロジェクトの獲得に向けて、ゼネコン10社を含む民間企業60社が参画する『航空インフラ国際展開協議会』(会長・今井敬新日鉄住金名誉会長)を発足させた。ミャンマーの入札は協議会設置後の『初戦』に当たる。」(『建設工業新聞』2013.07.08)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国税庁が1日公表した2013年分の路線価からは、東日本大震災の被災地で住まいの再建に向かう被災者の姿が浮かび上がる。津波で被災した沿岸部からの移転先として内陸部の宅地は人気が高く、『手が出ない』と浸水区域で土地を探す動きも。原発事故に伴う避難者の多い福島県いわき市では、上昇率が9%を超えた住宅地もある。」(『日本経済新聞』2013.07.01)
●「国土交通省は2日、2012年度の国土交通白書を発表した。40歳未満の若者の持ち家比率が1983年から08年の25年間で42.2%から28.4%へと約14ポイント低下した。賃金伸び悩みで、民間の賃貸住宅に住む傾向が強まった。持ち家取得や質の高い賃貸住宅の供給を支援する必要があるとしている。」(『日本経済新聞』2013.07.02)
●「日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会の関係が『3極構造』などと揶揄されてきたのに代表されるように、建築関係団体は、お互いの主義・主張をぶつけ合うだけの関係が続いた。ところが近年、それが変わりつつある。それぞれがそれぞれに掲げる錦の御旗や存在価値(レゾンデートル)と考えることは変わらないものの、それだけ前面に押し立てるのではなく、同じ土俵・テーブルに着いて議論可能なものは議論しようという機運、傾向が強まってきた。地域レベルでは、本部・連合会以上に協働の流れが加速、さまざまなかたちでの活動が展開されている。…現在、日本建築士会連合会(三井所清典会長)、日本建築士事務所協会連合会(三栖邦博会長)、日本建築家協会(JIA、芦原太郎会長)による『3会意見交換会』が動いている。日事連が、制定を目指す仮称・建築士事務所法を巡る協議を要請。そこに建築士の『なりすまし問題』が重なり、士会連合会は対策のための建築士法改正を発意する。こうした背景のもとで、3月26日に第l回の会合が持たれ、これまでは、日事連からの建築士事務所法の提案項目について協議しているところだ。…意見交換会の場を設けるに当たって士会連合会とJIAからは、『最初から建築士事務所法ありきでは協議には乗れない』ということで、現在の設計監理の現実・実態を踏まえ、現行建築士法・制度のどこをどう変えていくべきかという議論が行われている。これまでなら、別法としての建築士事務所法か、建築士法改正かという“入り口”のところで衝突、意見交換会が持たれる可能性は非常に低い状況にあった。それを乗り越え、建築士制度や建築士事務所の業務の具体的な問題をテーマに3会が同じテーブルに着いて協議が進められているという状況は、ある意味“事件”に近いできごとと言ってよい。」(『建設通信新聞』2013.07.04)
●「国土交通省は、東日本大震災の復旧・復興に向けた取り組みと今後の課題を、12年度版国土交通白書の中でまとめた。道路や港湾など基幹インフラの復旧が本格化し、順調に推移している一方、津波被災地域の高台移転や災害公営住宅の整備といったまちづくり・住宅再建はさらなる加速化が必要だと指摘。3月に策定した『住宅再建・復興まちづくりの加速化に向けた施策パッケージ』で示した災害公営住宅と民間住宅用地の整備の工程表に基づき、事業のスピードアップを図ることを打ち出した。東日本大震災からの復興の加速は、同省が最優先課題として取り組む施策の一つ。このうち道路や港湾などの基幹インフラの応急復旧は、津波で家屋などが流失した地域や福島第1原発事故の避難指示区域などの一部を除き、速やかに完了。その後の本格復旧も順調に進んでいるという。…事業の加速化が必要とされたまちづくり・住宅再建について同省は、『施策パッケージ』の中で各市町村の地区・年度単位での供給戸数を明示した。3月末時点で、高台移転などの防災集団移転促進事業の実施が想定される328地区のうち325地区が集団移転促進事業計画の大臣同意に至っている。土地区画整理事業が想定される59地区のうち、現地区は都市計画決定が済んだ。被災地の復旧・復興事業では、労務不足などの影響で入札不調案件が増加。円滑な施工の確保が課題となった。このため同省は、11年12月に『復旧・復興の施工確保に関する連絡協議会』、今年3月に『復興加速化会議』を開催。国、被災地の地方自治体など関係者の情報交換や意見交換を行い、不足する人材や資材を確保するための取り組みや、入札の予定価格を実態を反映した適切な水準に設定するなどの取り組みを進めている。復興まちづくり事業のスピードアップを図る方策として、民間の技術やノウハウを生かすコンストラクション・マネジメント(CM)方式を導入したり、被災地で不足する技術者などを広域的な観点から機動的に確保する方策として復興JV制度の導入を進めたりしている。」(『建設工業新聞』2013.07.10)
●「国土交通省は戸建て中古住宅の適正な価格を算定するため、新しい評価基準をつくる。現在は築後20年程度で建物部分を『価値ゼロ』と見なしているが、改修による耐用年数の向上を評価し、一部の住宅は40〜50年後も価値が残るよう改める方向だ。住宅の価値が高く評価されれば、売却して住み替えることが容易になる。住宅の転売事業の税負担も軽減し、中古住宅の流通拡大に弾みをつける。…新基準では、建物の骨組みといった主要建材を現時点で購入した場合の単価を精密に計算して足し上げるほか、改修投資に伴う耐用年数の向上も正確に評価する方向だ。新基準を適用すれば、建物が減価するペースが緩やかになったり、改修後に価値が上がったりする可能性が高い。…持ち家の資産価値が高まれば、その売却資金を元手に新しい住宅を購入することが可能になる。退職した高齢者が自宅を売ってサービス付き高齢者向け住宅に住み替えるといった動きも出てきそうだ。…国交省によると、1969年以降の日本の住宅への累積投資額は860兆円に達する一方、現在の資産額は半分以下の340兆円にとどまる。改修を適切に評価する米国では累積投資額と資産額がほぼ14兆ドル(約1400兆円)で並んでおり、日本でも新たな評価基準が定着すれば、資産額が増える可能性がある。」(『日本経済新聞』2013.07.07)
●「東京都は11日、全国木造建設事業協会と災害協定を締結した。震災時などに家屋が被災した居住者向けに整備する応急仮設住宅について、プレハブ建築を基本としている現在の供給体制に加え、木造の応急仮設住宅を整備できる体制を構築する。供給体制を重層化することで、より大規模な地震などの災害に対する備えを強化する。…都では、既に協定を締結している東京建設業協会やプレハブ建築協会に加えて、全国木造建設事業協会との協定により複合的な供給体制を構築。被災住宅の応急処理などと合わせて、災害対応力の強化を図る。今回の協定締結先となる全国木造建設事業協会は、工務店サポートセンターと全国建設労働組合総連合が災害時の復旧・復興や応急仮設木造住宅の建設などを目的に設立した団体。東日本大震災の被災地で約1000戸の供給実績を持つ。」(『建設通信新聞』2013.07.12)
●「国土交通省は11日、人口減少と高齢化に対応した今後の都市政策を議論してきた有識者会議『都市再構築戦略検討委員会』(委員長・奥野信宏中京大理事)の第7回会合に、都市リノベーションプラン(再構築戦略)の中間取りまとめ案を示した。地方都市でコンパクトシティー化を推進するために、『居住の集積』と『都市機能の集約』を地方自治体に強く促す内容。そのための誘導策として、税制優遇や金融支援の必要性を挙げている。…中間取りまとめ案は、人口増に伴う新規開発をコントロールすることに主眼を置いた従来の都市政策を転換。今後は人口減少を前提とした都市政策に重心を移すことを明確に打ち出しているのが大きな特徴だ。」(『建設工業新聞』2013.07.12)
●極端に狭いスペースに違法に人を住まわせている「違法貸しルーム」(脱法ハウス)の疑いのある物件が東京都内だけで少なくとも96棟あることが11日分かった。住まいの貧困に取り組むネットワーク、国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)の調査によるもので、同会が記者会見で明らかにした。…住まい連の坂庭国晴代表幹事は「調査は一部。全国的には数万人が居住しているのでは」と指摘。居住者の多くは貧困でやむなく居住しており「本来は住宅セーフティネット法で住宅が確保される人たちだ」として、早急な対応とともに、住宅政策の抜本改善が必要だと述べた。(『しんぶん赤旗』2013.07.12より抜粋。)

その他

●「米景気に好循環の兆しが出てきた。住宅市況の底入れを起点に、株価上昇もあって個人消費が堅調に推移。米量的緩和縮小のカギを握る雇用情勢も改善傾向がはっきりしてきた。2008年秋のリーマン・ショック後、一時10%に達した失業率が7%程度まで下がる見通しが確実になれば、米連邦準備理事会(FRB)は緩和縮小に踏み出すとの見方が有力だ。米労働省が5日発表した6月の雇用統計は、市場関係者が注目する非農業部門の新規雇用者数が前月比で20万人近い伸びを確保。…13年1〜3月期の米実質国内総生産(GDP)は前期比年率で1.8%増(確定値)。設備投資の伸びが鈍る一方、個人消費と在庫投資の拡大が寄与した。4〜6月期もおおむね1%台後半から2%台前半のプラス成長を維持するとの予測が出ている。製造業の景況感の改善ペースがやや緩むなど、足元では景気回復にもたつきもみられる。だが、住宅市況の底入れがGDPの7割を占める消費を刺激する好循環は簡単に衰えそうにない。春先から住宅着工件数は伸びが鈍ったが、着工認可件数は依然として堅綱だ。…住宅に連動して新車販売も上向いている。…景気の先行指標となる5月の耐久財受注額は市場予測平均を上回り、2カ月連続でプラスとなった。…こうした経済見通しを前提に、バーナンキFRB議長は年内に量的緩和の段階的な縮小に踏み出す可能性に言及した。最終判断を左右するのは、雇用や景気回復の息切れリスクが後退したかどうかだ。」(『日本経済新聞』2013.07.06)
●「中国の広東省江門市政府は13日、核燃料工場の建設計画を撤回すると発表した。12日に建設を取りやめるよう求める住民らの大規模デモが発生し、建設の中止に追い込まれた。中国の国家プロジェクトが住民の反対で頓挫するのは極めて異例なことだ。中国では環境汚染問題などに不満が高まっており、中止決定は各地で頻発する抗議活動にも影響しそうだ。…中国は1994年、初めて原発を稼働した。建設中も含めて45基の原発を抱えるが、さらに20年までに日本の原発総数に相当する50基以上を各地に新設する計画だ。深刻な大気汚染の慢性化や電力需給の逼迫もあり、原発建設を加速してきた。中国では政府側の情報開示が少なく、建設予定地の住民の同意を得ないで推進するケースがほとんど。今まで『国家プロジェクト』を名目に各地で建設を強行してきた。だが、豊かになった住民は生活を脅かす環境問題へ敏感になり、インターネットの普及でデモなどの情報も瞬時に拡散する。…最近は、中国各地で環境汚染などへの抗議活動が続発している。今回は国策の核施設にも住民の抗議活動が及んだ格好。中国政府が今後どんな姿勢で臨むか、ネット上では様々な臆測が飛び交っている。」(『日本経済新聞』2013.07.14)