情勢の特徴 - 2013年7月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●日本の大企業は、活動の軸足を急速に国内から海外に移している。そのもとで、財界は、国民経済への責任を投げ捨て、“国を選ぶ”多国籍企業のための税財政・規制緩和策を求めている。日本経済を代表する自動車産業は、関連する産業が広く、「産業の山脈」とも呼ばれている。しかし近年、自動車生産は海外へ軸足を移している。…国内の製造業の事業所数と従業者数の減少にも歯止めがかからない。2011年の国内製造業(従業者10人以上)の事業所数は、前年比3.2%減の12万586事業所と4年連続で減少した。一方、日本企業の海外現地法人における製造業の従業員数が急増している。11年度末における海外現地法人の従業者数は523万人と、過去最大の規模だった。そのうち8割近い411万人が製造業で、今回はじめて400万人台を超えた。1992年の112万人と比較すると、20年間で3.67倍に急増したことになる。一方で、国内の製造業は減少が続く。92年に1569万人いた国内製造業従業員は、20年間で3分の2近くまで急減した。大手銀行の貸し出しにも大きな変化が出ている。三大銀行グループの海外貸出金は「3メガ」発足以来、2倍以上に増えている。その一方、中小企業等貸し出しは減っている。(『しんぶん赤旗』2013.07.16より抜粋。)
●「公共工事前払金保証事業会社3社(東日本、西日本、北海道)がまとめた13年度第1四半期(4〜6月)の保証実績によると、保証を扱った工事などは計6万1399件(前年同期比19.8%増)で、総請負金額は4兆0700億円(25.2%増)、総保証金額は1兆5384億円(27.8%増)とすべて2桁の増加となった。工事場所別でも全ブロックが前年実績を上回った。」(『建設工業新聞』2013.07.17)
●「新興国企業の設備増強による供給過剰が、日本の輸出回復の壁になり始めている。鉄鋼、化学、造船などの主要産業で競争が激化。価格下落を嫌った日本企業が円安にもかかわらず輸出を抑制するケースも出ている。拡大が続く日本の貿易赤字。原発停止に伴う燃料輸入が目立つが、輸出伸び悩みも赤字増の一因だ。内閣府が試算した5月時点の輸出数量指数は約92で1ドル=78円台の円高水準だった1年前(約99)より低い。一般的に円安になると、まずは輸入物価の上昇で貿易収支が悪化。その後、半年から1年程度の時間を置いて、輸出数量が増加して収支が改善する『Jカーブ効果』が現れる。だが今回の円安局面では『輸出回復が遅れている』(日銀幹部)。背景にあるのが、アジアを中心とした供給過剰だ。」(『日本経済新聞』2013.07.19)
●「政府は発展途上国の災害復旧に活用できる新たな円借款の枠組みをつくる。第1弾としてフィリピン向けに融資枠を設ける。災害が起きた後に道路や港湾などをすばやく再建するための資金を提供し、復旧を後押しする。インフラの建設に偏っていた円借款の使い道を広げて新興国のニーズに応えるとともに、現地の日本企業の市場拡大にもつなげる。…災害復旧に特化した新型の円借款では、フィリピンなど相手国があらかじめインフラ復旧の計画をつくっておく。その計画に基づいて支援を要請した場合に、日本政府がすぐに必要なお金を貸し出す仕組みだ。発展途上国で地震など自然災害が起きた場合、政府はまず緊急の人道支援を実施している。その後の復旧の過程でもスムーズに資金面で支援できれば、地震や台風が多い日本の技術やノウハウを括用できる余地が広がる。現地に進出する日本企業が復旧事業を請け負うなどビジネスの拡大につながる可能性もある。」(『日本経済新聞』2013.07.23)
●「日本政府は23日午後、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に正式参加した。日米両国を軸とする巨大な貿易圏作りが動き出し、アジア太平洋を巡る経済や安全保障の枠組みに大きな影響を与える。参加国は詰めの交渉を急ぐが、当初は年末を目指していた妥結は越年の公算が大きくなっている。出遅れた日本にも巻き返しの余地があり、知的財産の保護や投資の分野で主導権の確保を目指す。」(『日本経済新聞』2013.07.24)
●甘利明経済財政担当相は、23日の閣議に大企業の競争力静化への課題などを分析した2013年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。白書は日本経済の「持続的な成長」のためには民間企業の「競争力」を高めていく必要があると指摘。大企業支援策が盛り込まれた「成長戦略」について「速やかに実行に移していかなければならない」と強調した。そして「企業が活動しやすいビジネス環境を整備し、内外の『企業に選ばれる国』になることが重要だ」として、「高度人材の流動性」の促進や規制緩和などの環境整備が必要だとしている。白書は、14年4月に予定されている消費税増税問題で欧州諸国が近年実施した「付加価値税」(日本の消費税に相当)の税率引き上げの影響を分析。「付加価値税率の引き上げ前後にマイナス成長が続いた国も見られる」としながらも「必ずしもマイナス成長に陥るわけではない」として消費税の増税を後押しした。しかし、日本で1997年に強行された消費税の5%への増税の影響についての分析はなく、増税が当時、回復の途上にあった日本の景気をどん底に突き落とし、財政破たんをさらにひどくしたことにはまったく触れなかった。(『しんぶん赤旗』2013.07.24より抜粋。)
●「建設経済研究所と経済調査会は24日、2013・14年度の建設投資見通し(名目)を公表した。13年度は前年度比7.9%増の48兆4600億円、14年度は7.1%減の45兆0400億円と予測。13年度は12年度補正予算が順調に執行されるほか、民間建設投資の回復基調が続くとする一方、14年度は政府建設投資で補正予算の執行が終わる反動などがあり、減少と分析した。ただ、14年度の減少は、同年度予算の動向が見通せないため前年度並みと想定して算出した結果で、『適切な予算が配分されないと、東日本大震災の復興やインフラの老朽化対策が停滞することになる』と指摘している。」(『建設通信新聞』2013.07.25)
●全国中小企業団体中央会が22日発表した6月の中小企業月次景況調査によると、中小企業の収益状況DIは前月比0.6ポイント悪化し、マイナス28.6だった。また、資金繰りDIも同0.3ポイント悪化のマイナス17.5だった。DIは前年同月比で景況などが『好転』などと回答した企業の割合から『悪化』などとする割合を差し引いた指数。売上高や販売額などその他の6指標はわずかながら上昇。景況は0.7ポイント上昇のマイナス22.9だった。8指標すべてのDIが0を下回った。業種別にみると、製造業では12業種中8業種で悪化。特に、電気機器はマイナス7.7と大幅な悪化だった。非製造業では7業種中4業種が下落。建設業でプラス10.4と大幅に上昇したものの、卸売業ではマイナス5.7と大幅に悪化した。(『しんぶん赤旗』2013.07.26より抜粋。)
●「安倍晋三首相が来年4月に予定する消費増税による景気や物価への影響を再検証するよう指示したことが26日明らかになった。政府は法律で定めた通り消費税率を現行の5%から10%に2段階で引き上げる場合を含め、増税の開始時期や引き上げ幅を変える複数案を検討する。デフレ脱却を重視し、増税が来春以降の景気腰折れを招かないよう、追加的な景気対策の実施も視野に万全の準備で臨む構えだ。首相は消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に上げる場合だけでなく、増税が与える影響を幅広く検討するよう周辺に指示した。首相周辺は@消費税率を予定通り2段階で引き上げるA最初に2%上げ、その後1%ずつ引き上げるB5年間で毎年1%ずつ引き上げるC増税を当面見送る――の4案の影響を検証する作業に着手。現在の政府経済見通しには2段階増税の影響が織り込まれているが、最終判断にはさらなる検証が必要と判断した。首相官邸は同時に、消費税率を予定通り上げた場合、必要となる対策を財務省や経済産業省などに検討するよう指示。予定通り実施する場合と見直す場合の両にらみで検討を進める方針だ。」(『日本経済新聞』2013.07.27)
●「政府は消費増税による住宅購入者の負担増を軽減するため、住宅ローン減税を拡充する。14年4月から17年12月に入居する場合の減税枠を現在の2倍にする。最大4000万円までの住宅ローン残高の1%を税額控除する仕組み。減税額は年間最大40万円、期間10年で400万円になる。年収510万円以下の中低所得層向けには、現金給付もする。住宅ローン減税の拡充と現金給付で住宅購入時に自分の税負担にどんな影響があるのか、分かりにくい。みずほ総合研究所は年収400万円、500万円、600万円、800万円、1000万円で、消費増税前後の税負担の差を試算した。…消費増税による負担増加額と、購入支援策による負担減額の差を計算すると、消費税率が8%に上がった時点では、年収500万円以外は税負担が増税前より減る。…年収が多いほど、恩恵が大きくなる傾向にあることも分かった。…低所得者向けの現金給付は住宅購入時の1度だけで、住宅ローンの減税は10年間続き、ローンを多く組むほど減税の効果が大きくなるためだ。」(『日本経済新聞』2013.07.29)
●「120兆円の年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2015年度をメドに海外の公共インフラへの投資を始める検討に入った。運用収益向上が狙いで、資金枠は数兆円まで増やす方向だ。信金中央金庫も三菱商事から手法を学び投融資を本格化する。欧米の大手機関投資家は財政難の各国政府を補う形で公共インフラに長期資金を供給しており、日本の機関投資家もこの流れに対応する。政府が立ち上げた有識者会議では、GPIFの運用対象を従来の債券や株式以外に広げる検討を進める。海外の道路や港湾などに投資するインフラファンドなどが新たな対象になる。投資規模は数千億円から始める。120兆円の運用資産の数%を海外インフラ投資に充てることも視野に入れる。」(『日本経済新聞』2013.07.30)
●政府に環太平洋連携協定(TPP)からの撤退を求める弁護士らが29日、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」を発足し、政府に要望書を提出した。TPP参加は国の主権をおびやかし、憲法違反だと指摘している。ネットワークは共同代表に宇都宮健児弁護士(日弁連前会長)、岩月浩二弁護士、井沢正之弁護士の3氏、事務局長に中野和子弁護士(日弁連消費者問題対策委員会副会長)が就任。現在、弁護士318人が賛同する。同日、東京都内で開いた会見で、宇都宮氏は、TPPに盛り込まれようとしているISD(企業と国家の紛争処理)条項について「国民を守る国内債や規制が、一企業や投資家の金もうけのために問題にされて改廃されかねない」と指摘。TPPの危険性は農業の関税撤廃にとどまらず、国民生活のあらゆる分野に及ぶと強調した。岩月氏は、「TPP参加は憲法問題だと知ってほしい」と提起。…国民生活への影響や人権制約の懸念について、中野氏は食品安全規制の緩和や公共事業の国外企業への発注などが危険性として十分考えられると例示。宇都宮氏は、国民が運動で勝ちとった規制や立法までもがTPPの標的になりかねないと、貧困や多重債務問題に取り組んで貸金業の高利規制を実現した経験から語った。(『しんぶん赤旗』2013.07.30より抜粋。)
●「発電した電気を一定の価格で買い取る制度を追い風に普及が進む太陽光発電で、耐用年数を過ぎたパネルが新たな環境汚染を引き起こす恐れが出てきた。パネルには鉛などの有害物質も含まれているが、廃棄方法に関するルールはないためだ。環境省は今後予想される大量処分に備えて、撤去や廃棄の方法を定めたガイドライン(指針)作りに乗り出す。」(『日本経済新聞』2013.07.31)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は16日、インフラの老朽化問題で地方自治体を支援する一環として、全国の各地方整備局に相談窓口を開設した。これまでも道路、河川、港湾など個別分野ごとに相談に応じる体制を整えてきたが、分野横断的な体制を各整備局の企画部に設けた。相談受け付けのワンストップ化を図るのが狙いだ。」(『建設工業新聞』2013.07.17)
●「神奈川県は17日、学識経験者、建設業団体代表、労働者団体代表でつくる『公契約に関する協議会』の初会合を開いた。公契約(県が発注する契約業務)に従事する労働者に一定以上の賃金を支払いを義務付ける公契約条例を制定する際の課題などで意見を求める。14年1月末に開催予定の第5回会合をめどに意見をとりまとめたい考えだ。県は協議会の意見と合わせ、賃金調査の結果や公契約条例を制定した先行自治体の運用実態、条例制定に伴う行政側のコスト増の試算結果などを参考に条例制定の可否などを検討する方針。」(『建設工業新聞』2013.07.18)
●「参院選の与党圧勝で安定政権が確立された。中長期的視野に立った政策運営が期待される中、建設業にとって腰を据えた議論が求められる分野の一つが公共調達だ。昨年末の政権交代後、国土交通省や自民党内では抜本的な見直し議論もスタート。近く中央建設業審議会と社会資本整備審議会(ともに国交相の諮問機関)合同の基本問題小委員会も再始動する。公共調達の見直しをどう進めていくべきか、さまざまな問題点や改善の方向性が指摘されている。」(『建設工業新聞』2013.07.24)
●「国土交通省は26日、国交相の諮問機関である中央建設業審議会(中建番)と社会資本整備審議会(社整審)合同の基本問題小委員会(大森文彦座長)を省内で開く。多様な入札契約制度の導入に向けた議論を開始するのをはじめ、建設業許可業種区分の見直し、監理技術者資格の受験資格要件緩和、技能労働者の社会保険未加入問題を議題に上げる。入札契約制度については、年末から年明けにかけて法体系の拡充も視野に入れて何らかの結論を出すとみられる。」(『建設工業新聞』2013.07.25)
●「国土交通省は26日、中央建設業審議会(中建審)と社会資本整備審議会(社整審)合同の基本問題小委員会(大森文彦委員長)を同省で開き、公共工事に導入する多様な入札契約方式の制度設計に向けた議論を始めた。会合前の閣議後の記者会見で太田昭宏国交相は、『年内に一定の結論を得る』と明言した。並行して同省は、コンストラクション・マネジメント(CM)方式のような新方式を広げていくために、モデル的な取り組みを行う自治体を支援する検討にも入った。今回の制度改革の議論は、これまでの画一的な入札契約方式を改め、事業の特性に応じてさまざまな方式を選択できるようにすることが狙い。会合で同省は、▽公募で優れた技術を持つ企業を選定して価格や工法などの交渉を行った上で契約する方式▽地域のインフラの維持管理に適した方式▽総合評価方式の施工能力評価型と技術提案評価型への二極化や段階選抜▽ダンピングや下請・職人へのしわ寄せを防止する仕組み▽CM方式の拡大―などの論点を列挙した。今後小委で具体的な検討を進めていく。」(『建設工業新聞』2013.07.29)
●「復興庁は31日、政府が予算計上した東日本大震災の復旧・復興関係経費の執行率が3月末時点で64.8%になったと発表した。前年比で4ポイントの上昇にとどまった。被災地では高台移転などで自治体と住民の合意形成が進まず、道路工事や除染作業が遅れている。人手や資材の不足に伴う公共工事の入札不調も目立ち、政府が掲げる復興の加速化に向けた課題は多い。…2012年度は予算額が9兆7402億円だったのに対し、支出額は6兆3131億円どまりだった。事業を計画通りにできず予算執行をあきらめる『不用額』は1兆2240億円になり、全体に占める比率は12.6%と前年比5ポイント上昇。13年度への繰越額も2兆2030億円と高水準が続いた。」(『日本経済新聞』2013.07.31)

労働・福祉

●「国土交通省は、建設会社が途上国から受け入れる技能実習生の技能習得レベルを評価する手法の検討に乗りだす。3年の実習期間に技能検定(随時3級、基礎1級・2級)で取得する資格に加え、安全への配慮やチームを束ねる力など現場の職長として備えるべき能力を何らかの形で評価する。実習生に帰国後、日本のゼネコンによる海外工事の現場で活躍してもらえるようにする環境整備の一環となる。日本式の施工方法を熟知する技能者を増やす目的で設置した『ベトナム建設人材育成推進協議会』(会長・尾形悟大成建設副社長)などに利用されることを想定している。…評価手法については、労働衛生管理や健康管理、安全施工サイクルの仕組みなどを熟知した現場での活動や他職種の職長と連携した活動など、単なる技能にとどまらない能力を評価することを想定している。」(『建設通信新聞』2013.07.16)
●「2012年度補正予算と13年度当初予算の執行が本格化する中で、全国の都道府県や政令市・市区町村における土木部門職員の不足が深刻さを増している。総務省の調査によると、12年の都道府県の土木部門の職員は05年と比べ19.3%減、市区町村で16.3%減。東日本大震災の被災地だけでなく、構造物の総点検が始まっている市町村でも技術者の確保に苦慮しており、支援策を打ち出す県も出始めている。建設会社でも人手不足と公務員への人材流出が深刻な問題となっており、安全な構造物を守り続けるための技術系人材の絶対数の確保が求められている。…土木部門職員が足りなければ、円滑な執行や設計変更の円滑な実施に支障を来しかねず、建設業界にとっても深刻な問題となる。…一方で、建設会社にからは『せっかく育てた若手技術者が公務員になってしまう』という声も多く聞かれるほど公務員への人材流出が深刻な課題で、建設会社と自治体で少ないパイを奪い合っている状態だ。技術系職員・社員の減少に歯止めをかけ、いかに必要数を確保するか、受発注者含めた建設界全体の取り組みが問われている。」(『建設通信新聞』2013.07.17)
●「国土交通省は16日、13年度下請取引等実態調査を始めた。全国の建設業者約1万6000社を対象に下請取引などの実態を把握。建設業法令に違反している業者への指導などにつなげる。本年度の調査では、通常の元・下請取引に関する質問に加え、技能労働者の賃金水準確保や社会保険への加入状況などについても聞く。来年4月に予定されている消費税率引き上げを見越し、法律で禁じられている請負代金への転嫁拒否などの実情も把握する。」(『建設工業新聞』2013.07.17)
●「日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)は18日、技能労働者の処遇改善に向けた対応方針『労務賃金改善等推進要綱』をまとめた。工事の元請企業は、現場の技能労働者に適正水準の賃金が支払われるよう要請する文言を契約書の特記事項に記載して1次下請企業と契約。2次以下の下請に対しても、元請企業名の協力要請文書を行き届かせ、賃金の適正支払いを求める。社会保険加入に必要な法定福利費の全額を1次下請に支払うことも盛り込んだ。…要綱では、設計労務単価の引き上げについて、『労務費の高騰に苦しむ元請企業や下請企業の救済策と安易に受け止めてはならない』とした上で、『建設業の将来を取り戻すラストチャンスと捉え、業界を挙げて技能労働者の処遇を改善せねばならない』と強い決意を表明した。」(『建設工業新聞』2013.07.19)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は、2009年にまとめた『建設技能者の人材確保・育成に関する提言の実施における基本方針』の見直し作業を、8月の労働委員会(委員長・今井雅則戸田建設社長)から本格化する。社会保険加入促進や重層下請化の改善などについて、『労務賃金改善等推進要綱』を踏まえた内容に修正する考え。14年4月ごろには新しい基本方針を取りまとめる見込み。…現在は基幹技能者の職長の中から、会員企業が特に優秀と認めた技能者を優良技能者と認定、『標準目標年収が600万円以上』という目標を設定している。見直しでは、今回の公共工事設計労務単価の引き上げが優良技能者だけでなく、一般の技能者にも波及することを踏まえた検討が必要になるとみられる。…社会保険加入は、現在の基本方針に盛り込まれていないため、新規に追加する。企業・個人の法定福利費や加入有無の確認などについての基本方針を検討する見込み。」(『建設通信新聞』2013.07.23)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は、社会保険加入促進のかぎを握る下請けとの契約における法定福利費(事業主負担分)の内訳明示で、会員企業の取り組むべき事項を『法定福利費を内訳明示した見積書の活用のマニュアル』にまとめた。1次下請けが法定福利費を明示した見積書提出後の協議の手順などを示した。作業員の保険加入率を下請けと協議する中で、現時点では未加入であっても今後、加入予定であれば『加入』として算出するのが特徴だ。法定福利費の内訳明示のための見積書については、現在、標準見積書の9月からの一斉活用に向け、各専門工事業団体が精度向上のための作業を進めている。今回、日建連が示したマニュアルは、1次下請けが標準見積書に従った見積書を元請けに提出してきた際の対応を示した。」(『建設通信新聞』2013.07.24)
●「政府は残業や解雇などの雇用条件を柔軟に設定できる規制緩和を、地域限定で検討する。安倍晋三首相の主導で決める国家戦略特区を活用し、成長産業への労働移動など人材の流動化を進め、日本経済の活力を高める。参院選前は世論の反発を招きかねない労働改革に踏み込まなかったが、特区に絞って抜本的に規制を改革する。」(『日本経済新聞』2013.07.26)
●「全国建設業協会の淺沼健一会長は26日、理事会後に会見し、適正な賃金水準の確保や社会保険加入促進のための取り組み強化に向け、キャンペーンを展開することを明らかにした。1次下請けとの契約時での適切な賃金支払いや、1次下請けからの2次以下への要請などといった取り組みを各都道府県協会に周知徹底する。淺沼会長は『当たり前のことを当たり前に行動する。いま、そういう方向に進まなければ自ら誇りに思える建設業界は二度と実現できないかもしれないという認識を持つよう要請する』と取り組みの強化を理事に強く求めた。日本建設業連合会とともに全建が取り組み強化を表明したことで、建設産業界挙げた取り組みが一層加速することになる。」(『建設通信新聞』2013.07.29)
●「国土交通省は、工事現場の監理技術者になるための資格試験である1級施工管理技術検定の受検要件を緩和する。高校(指定学科)卒業後に建設会社に入った技術者が1級検定を受けるのに必要な実務経験年数を2年短縮。これにより高卒者も大学(指定学科)の卒業者と同様、最短26歳で受検できるようになる。若手技術者の減少に歯止めをかけ、将来を担う優秀な人材の確保につなげるのが狙い。14年度から実施する予定だ。」(『建設工業新聞』2013.07.29)
●総務省が30日発表した労働力調査によると、6月の完全失業率(季節調整値)は3.9%と前月に比べ0.2ポイント低下した。低下は3カ月ぶりで、2008年10月以来4年8カ月ぶりに3%台へ低下した。完全失業者数(同)は、前月に比べ16万人減少し254万人となった。ただ、新たに仕事を探し始めた人が3万人減少し、就業も求職活動もしていない非労働力人口が16万人増加するなど、就業をあきらめる動きがあることが失業率低下の一因となっている。(『しんぶん赤旗』2013.07.31より抜粋。)

建設産業・経営

●「東京商工リサーチがまとめた2012年年度の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年度比15.0%減の2867件となり、4年連続して減少した。1991年度の2474件以来、21年ぶりに3000件を下回った。『中小企業金融円滑化法』などの金融支援が効果を発揮した。地区別では、9地区すべてで前年度を下回った。負債総額は、22.1%減の3717億2300万円。90年度の2750億6100万円以来、22年ぶりに4000億円を下回った。負債1億円未満の構成比が67.8%を占め、小規模倒産が目立った。また『震災』関連倒産は55件、『金融円滑化法』関連倒産が71件となった。」(『建設通信新聞』2013.07.23)
●「日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)は、13年度第1四半期(4〜6月)の会員企業99社の受注実績を発表した。受注総額は2兆6210億円(前年同期比20.1%増)。過去10年では2番目に高い水準で、官公庁工事の受注額が過去10年で最も多かった。日建連は『会員企業の景気回復の実感は薄い』としているが、受注額は08年秋のリーマンショックで落ち込む前の水準に戻りつつあるという。…受注額の内訳は、国内分が2兆4910億円(18.1%増)、海外分が1310億円(77.0%増)。国内分のうち、民間からの受注は1兆8450億円(17.0%増)で、発注業種別内訳は製造業が2810億円(13.1%減)、非製造業が1兆5640億円(24.8%増)だった。学校や店舗、病院などの工事の受注が好調だった。…国の機関では、放射性物質の除染やCM関連案件など東日本大震災の復旧・復興事業が大きかった。地方機関は、前年に除染やがれき処理などの大型受注があった反動でマイナスになったものの、水準としては高いという。」(『建設工業新聞』2013.07.29)
●「建設産業専門団体連合会(建専連、才賀清二郎会長)が、『救急隊(仮称)』と呼ぶ社会貢献活動の具体化に向けて動きだした。各地区の専門工事会社に所属する職人が、インフラの整備に携わるプロの目から住みよいまち、国づくりを手助けする。傘下の地区建専連が地元自治体などと協定を結んで連携体制を構築し、公共構造物の診断などに取り組む。…『救助隊』の活動は、地域貢献活動の取り組みの第2弾。建設業が国土の保全、国民生活の安全・安心を守るための社会基盤整備に必要な産業であることや、その仕事内容への理解を深めてもらうのに役立てる。 具体的には、国、都道府県、市町村や関係機関と地区建専連が協定を締結。公共構造物などを対象に地滑り・崩壊・崩落、破損・亀裂、露出、剥離、紛失、腐食、劣化、中性化・塩害・凍害、変化、沈下、異常変位などを日常生活の中で点検し、変状が見られるような場合には担当部署などに連絡を取って知らせる。こうした活動を通じて、建設業が国民生活に欠かせない産業であることをアピール。人命にかかわるような危険な状況をいち早く知らせることで安全・安心に貢献する。」(『建設工業新聞』2013.07.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、全国の公営住宅の維持管理・更新にPPPが波及するよう検討に乗り出す。新たな事業スキームの検討のほか、PFIによる自治体内にある複数の住宅団地の集約化や民間事業者による公営住宅の整備といった事業を整理し、それぞれの事業に関する手法やコスト、参画できる民間企業などを明確化する。老朽化が進む公営住宅の再整備の方策としてまとめ、地方の県庁所在都市を中心に提案していく。とりまとめに向けては、モデルとなる地方公共団体を5−10程度議定して事例を探るほか、ゼネコンなどの民間企業、地方自治体、日本政策投資銀行、都市再生機構などを交えた検討会も設置して具体化する。」(『建設通信新聞』2013.07.16)
●「マンション市場の好調が続いている。不動産経済研究所(東京・新宿)が16日発表した6月の首都圏の新築マンション発売戸数は前年同月比22%増えた。増加は2カ月連続。日銀の金融緩和を背景に消費者の間に住宅ローン金利とマンション価格への先高観が広がっており、ファミリー層の購入意欲を刺激している。中古物件への需要も旺盛でマンション市場全体が活気づきはじめた。」(『日本経済新聞』2013.07.17)
●「先の通常国会で改正された『建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)』で、旧耐震基準のすべての建築物を耐震診断・改修の“努力義務”の対象にする規制措置が盛り込まれた。耐震改修促進法は、阪神・淡路大震災を契機に制定されたが、今回の改正では、それまで特定建築物(多数の者が利用する建築物、危険物の貯蔵場等、避難路沿道建築物)に限っていた耐震診断と耐震改修の努力義務の対象を、住宅を含むすべての建築物に拡大した。国交省では、耐震診断を徹底することで耐震性の必要性の認識を高め、耐震改修の促進につなげたい考えだ。国交省は耐震改修が進まない要因として、@耐震化の費用負担が大きいA耐震性が不要と考えているB業者選定が困難C広報・費用・効果等が適切か判断が難しいD工事中の使用制約の懸念――と分類している。これら阻害要因に対する施策としては、『耐震性の必要性を認識させるための耐震診断の徹底』のほか、支援策の充実、信頼できる業者の育成、適切な工法・費用・効果等が判断可能な情報提供・相談体制の充実、新たな耐震改修工法の活用促進――等を挙げ、具体策を検討するという。…国交省によると、平成15年時点の住宅の耐震化率はおよそ75%で、平成20年には79%に向上している。ただし、耐震性がないとされる住宅は約1050万戸に及ぶ。関係者によると『耐震性がない古い住宅は、その多くが高齢者の住まいのため、これから高い金額を掛けて耐震改修をしようという気にならない場合が少なくない』という。地震に伴う住宅の倒壊は、その住人だけでなく周辺住民も危険にさらし、避難や緊急車両の通行を妨げることにもつながる。巨大地震の発生が懸念される中、耐震改修をさらに促進する施策が必要だ。」(『日本住宅新聞』2013.07.25)
●太田昭宏国土交通相は30日の閣議後の記者会見で、オフィスや倉庫で使うと称し極端に狭いスペースに人を居住させる「違法貸しルーム」(脱法ハウス)の疑いのある物件がこれまでに398件に上ることを明らかにした。うち32件で建築基準法違反を確認し、是正を指導したという。…国民の住まいを守る全国連絡会の坂庭園晴代表幹事は「行政の調査は始まったばかりで、実際はもっと多いと思う。是正指導はすべきだが、居住者への追い出し行為の禁止、転居先の確保など、居住者支援策も国交省の責任として取るべきだ」と話す。(『しんぶん赤旗』2013.07.31より抜粋。)

その他

●「世界的な自動車の街として知られる米ミシガン州デトロイト市が18日、米連邦破産法第9条を裁判所に申請し、財政破綻した。負債総額は180億ドル(約1兆8千億円)超で、米自治体の破綻としては過去最大。市内に本社を置く米ゼネラル・モーターズ(GM)は復活したが、生産の海外移転などにより大量の人口流出と雇用縮小は止まらず税収は落ち込んでいた。…デトロイトにはGMのほか、米フォード・モーター、米クライスラーも近郊に本社を置く。GMは09年の経営破綻から急ピッチで復活。クライスラーもデトロイト市内の工場で増産投資を計画するなど、自動車産業の回復が鮮明だ。だが、経営破綻に伴う税制優遇などもあり、デトロイト市の税収増加への寄与は大きくなかった」(『日本経済新聞』2013.07.19)