情勢の特徴 - 2013年8月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「住宅市場の活況がピークに近づきつつある。国土交通省が31日発表した今年上期(1〜6月)の新設住宅着工戸数は前年同期比8.6%増の45万1063戸だった。上期としては5年ぶりの高水準。住宅ローン金利や住宅価格の先高観などが背景にある。来春の消費増税が予定通り決まるかをにらみつつ、駆け込み需要は年内にも息切れしそうだ。来年以降の反動減を懸念する声も広がってきた。…住宅取得を後押ししているのは、来年4月に予定される消費税率の8%への引き上げに備えた駆け込み需要と、金利や住宅価格の先高観だ。今年9月末までに住宅の工事契約を結べば、入居が来年4月以降でも消費税率は5%が適用される。政府・与党は消費増税に合わせ、住宅ローン減税の拡充や現金給付といった負担軽減策を用意するが、駆け込みを抑える効果は限定的だ。」(『日本経済新聞』2013.08.01)
●「内閣府の経済財政に関する中長期試算が1日、明らかになった。2020年度の国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字は、名目国内総生産(GDP)比で1%台前半。消費税率を予定通り引き上げても、20年度にPBを黒字化するという政府目標の達成は難しいという内容だ。中長期の財政再建には一段の増税か歳出削減を迫られる。来週の経済財政諮問会議に提示する。政府は15年度までに国と地方を合わせたPBの赤字をGDP比で10年度から半減し、20年度までに黒字化を目指す財政健全化目標を掲げている。…円安・株高に伴う景気の持ち直しで足元の税収は回復しているが、20年度までの中期で見ると財政の改善への効果は限られる。財政収支の改善には一段の厳しい取り組みが求められる。」(『日本経済新聞』2013.08.01)
●「政府が来春予定の消費増税に合わせて実施する東日本大震災の被災地の住宅購入者向け給付制度で、1世帯あたりの給付額を最大90万円とすることが31日わかった。給付対象は数万世帯になる見通し。手厚い給付措置を用意し、被災地の住宅再建を急ぐ考え。 政府・与党は被災地向け給付制度の設計で詰めの作業を進めており、白民党と公明党が8月上旬にも最終合意する。震災で住宅が壊れたり、福島第1原子力発電所事故で避難を余嵐なくされたりした人が対象になる。全国の住宅購入者向け給付制度のような所得制限などは設けない。」(『日本経済新聞』2013.08.01)
●「日本が初参加した7月の環太平洋経済連携協定(TPP)マレーシア交渉会合(15〜25日)に向け、国内の業界団体から政府に寄せられた意見の一部が2日、明らかになった。交渉21分野のうち、岳共工事などの『政府調達』分野では、世界貿易機関(WTO)政府調達協定(GPA)適用基準額の水準を堅持し、内外無差別とする案件の範囲を広げないよう求める声が上がった。一方で、海外進出促進の観点から、国内産業優先の保護主義的措置を取る国に市場解放を求めるべきだとの意見も出た。…政府調達に関しては、海外進出を推進する立場から『国内産業優先の保護主義的な措置を取る国に対し、当該措置の適用除外規定が必要』『GPAに加盟していない国にはGPAと同水準の措置を規定するとともに、GPA加盟国でもすべての地方政府にGPAを適用』といった要望が上がった。一方で『中央政府機関・地方政府機関ともに現行のGPAの水準を堅持』するよう求める意見もあった。現行のGPAでは、建設サービスへの適用基準額は中央政府機関が450万SDR(現在の邦貨換算額は5億80百万円)以上、都道府県や政令市など地方政府機関が1500万SDR(同19億40百万円)以上の案件となっている。現状の堅持を求める意見の背景には、国内工事の対外開放がこれ以上進むと地域建設業者の経営に大きな悪影響が及びかねないとの懸念がある。」(『建設工業新聞』2013.08.05)
●「政府税制調査会(首相の諮問機関)は5日に開いた総会で、来年4月の消費税率引き上げについて議論した。ほとんどの委員は『予定通り消費増税を実施すべきだ』と述べ、政府内で浮上する増税見直し論をけん制した。ただ安倍晋三首相は週内に、増税に慎重な有識者も加えた消費増税の検証の場を設けるよう指示する見通し。現時点では増税見直しを排除しておらず、議論の行方は波乱含みだ。…慎重論の最大の根拠は1997年4月に消費税率を3%から現行の5%に上げた経緯だ。この時の国民負担増は社会保険料増もあわせ約9兆円。増税の翌年の98年以降、日本の消費者物価が本格的な下落に転じ、現在に至る15年デフレの導火線となったとの見方が根強く残る…増税論議の行方は混沌としている。政府税調は安倍首相の諮問機関だが実際の会議は財務省内で開く。消費増税を予定通り実施したい財務省と密接な関係がある。一方、安倍首相は8日、政府税調とは別に、消費税増税の最終判断に向けた検証の場を設けるよう指示する見通し。…法律通りに税率を上げるケースに限定せず増税の影響を幅広く検証する。5日の政府税調総会と異なり、予定通り増税を実施するかを巡り賛否が割れる公算だ。」(『日本経済新聞』2013.08.06)
●「国土交通省は公共工事の発注先を決める入札制度をアジアに輸出する。来年度にミャンマーとベトナムに制度づくりに詳しい専門家を派遣し、技術力や維持管理コストを考慮する日本型の制度導入を促す。土地収用を円滑にする制度設計でも協力。インフラ需要が急拡大するアジアで日本型の入札制度を広げ、日本企業の受注を後押しする。」(『日本経済新聞』2013.08.06)
●「国土交通省がまとめた2013年度第1四半期の建設工事受注動態統計調査報告(大手50社)によると、受注総額は前年同期比17.0%増の2兆4908億円となった。民間、公共ともに4−6月まで3カ月連続増加している。総受注額のうち、民間からの受注は前年同期比13.5%増の1兆7158億円、公共機関からの受注が18.7%増の5309億円となった。特に、公共機関のうちの国の機関が57.6%増の3532億円と大幅な伸びを示している。地方の機関は20.4%減の1777億円と減少したものの、前年に廃棄物処理の関連工事で大型案件があったことによる反動とみられる。海外工事は、6月単月が512.8%増の911億円と大きく増加し、第1四半期でも117.0%増の1276億円だった。」(『建設通信新聞』2013.08.06)
●「政府は8日の閣議で、財政健全化の道筋を示す中期財政計画と、2014年度予算の概算要求基準を了解した。中期計画は国・地方の基礎的財政収支の赤字を半減する目標を掲げるが、国の歳出に上限を設けていない。概算基準は成長戦略の分野など予算の重点配分を狙って『優先課題推進枠』を設置。各省庁からの要望は総額3兆円を超える見通しだ。 中期計画は15年度までに国・地方の基礎的財政収支の赤字を13年度の34兆円から、17兆円まで圧縮すると明記。国際公約でもある財政健全化目標を維持した。国の一般会計ベースでは、15年度までの2年間で8兆円の赤字削減に取り組む。新規国債発行額には歯止めを設け、14、15年度に前年度(13年度は42.9兆円)を上回らないよう『最大限努力』するとした。」(『日本経済新聞』2013.08.08)
●「政府は、2014年度予算概算要求で公共事業関係費を含む裁量的経費が削減されても、その後の要望で今年度予算に対し最大1.17倍(17%増)まで要求できる方針を固めた。裁量的経費は10%削減される方向だが、『優先課題の推進』に関する要望で削減された裁量的経費から1.3倍(30%増)まで要求できる見込み。裁量的経費は実質、今年度当初予算比約2兆円増となる。状況によっては13年度予算でのl.05倍を上回る予算確保も可能になる。国土交通省では、インフラの老朽化対策や東日本大震災の復興加速といった対応に迫られており、要望に盛り込む優先課題でも打ち出される模様。ただ、各省からも要求や要望が寄せられる中で、どれだけ公共事業費が確保できるかが今後の焦点になる。…成長戦略や骨太の方針でも、国土強靭化や防災・減災への取り組みのほか、国際競争力強化に向けた空港や港湾など産業インフラの整備、PPP・PFIの推進、インフラシステム輸出といった取り組みが盛り込まれており、国交省ではこうした方針に沿った要求や要望となる模様だ。国土強執化に向けては、地震・津波対策や土砂災害などへの対応に加え、老朽建築物の建て替え、社会資本の維持管理・更新などがテーマとなる見込み。東日本大震災からの復興に向けた体制確保への施策も求められる。一方、要望は各省から提出されるため、その中で公共事業関係費をどれだけ確保できるかが焦点になる。また、税収の動向を踏まえて「優先課題の推進」枠の措置を決めるとしており、消費増税の動きも関係してくるとみられる。」(『建設通信新聞』2013.08.08)
●「国土交通省は、自治体が発注する工事のダンピング対策を強化する目的で、実態を把握するための調査に乗りだす。都道府県・政令市をはじめとする全自治体を対象に調査票を近く発送。同省直轄工事で5月に導入した新たな低入札価格調査基準価格の算定式(中央公契連モデル)の採用状況や調査基準価格の公表時期などを聞く。調査基準価格や最低制限価格を事前に公表していることで、それらの価格付近に応札価格が集中し、くじ引きで落札者を決めているような現状があるかどうかも聞く。」(『建設工業新聞』2013.08.09)
●「国土交通省は、防災インフラ技術の輸出を促進するため、今秋に産学官の検討会を発足させる。東南アジア地像を中心に防災上の課題や解決策を探り、大型の防災インフラ整備案件の形成と日本企業の事業参画を目指すほか、災害発生時に復旧・復興に迅速に対応できる態勢を整える。建設業からは日本建設業連合会(日建連)の会員企業などが参加する予定だ。…検討会では、産学官の組織がそれぞれの得意分野を集め、官が持つ情報収集力や相手国政府との交渉力、企業が持つ技術力、学識者が持つ学術的な知見や人脈を共有。相手国の産学官の各機関と連絡を取り合い、防災インフラ分野に関するニーズや課題を把握する。これを基に、ダムの開発や河川の洪水対策、建築物などの耐震化といった大型案件の形成や受注を目指すほか、災害が発生した場合には、日本企業が建設資機材の輸送や道路啓開などに迅速に対応できるようにする。」(『建設工業新聞』2013.08.09)
●財務省が8日発表した2013年上期(1〜6月)の国際収支速報によると、海外とのモノやサービスの取引状況を示す経常収支の黒字額は、前年同期比0.6%増の3兆2114億円だった。上期としては3年ぶりの前年比プラスだが、増加額は193億円だけで、上期の黒字額としては比較可能な1985年以降で12年上期に次ぐ2番目に低い水準となった。火力発電用の液化天然ガス(LNG)などの輸入額増加で貿易赤字が膨らむ一方、海外子会社などからの受け取り収益は円安で円換算額が押し上げられ、辛うじて前年同期を上回る経常黒字を確保した形だ。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4兆2382億円の赤字と、半期ベースで過去最大。輸入はLNGや原油のほか、スマートフォン(多機能携帯電話)などの通信機が大幅に伸びた上、円安による円建て価格上昇も影響し、輸入総額は8.6%増加した。輸出は米国向けが好調だったが、欧州連合(EU)向けが振るわず、3.5%の増加にとどまった。…一方、海外子会社や証券投資からの配当・利子収入を示す所得収支の黒字額は19.3%増の8兆6783億円となり、半期ベースで最大を記録した。(『しんぶん赤旗』2013.08.09より抜粋。)
●「財務省は9日、国債や借入金、政府短期証券をあわせた『国の借金』の残高が、2013年6月末時点で1000兆円を突破したと発表した。前年同月末に比べて32兆円超増えた。7月1日時点の総務省の人口推計(1億2735万人)をもとに単純計算すると、国民1人あたり約792万円の借金を抱えていることになる。」(『日本経済新聞』2013.08.10)
●「内閣府が12日発表した2013年4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.6%増、年率換算で2.6%増となった。高額品や衣料品など個人消費が伸びたほか、輸出も好調で、3四半期連続のプラスだった。甘利明経済財政・再生相は同日の記者会見で消費増税について、『判断材料の一つとして良い数字が出ている』と述べた。…実質GDPの前期比の増加にどれだけ貢献したかを示す寄与度は、社会保障給付や公共投資を合わせた公的需要が0.3%分と最も大きかった。民間需要は個人消費が伸びたが在庫の増加が押し下げ要因となり0.2%分、輸出から輸入を差し引いた外需は0.2%分だった。」(『日本経済新聞』2013.08.12)
●「政府は15日公表した8月の月例経済報告で、物価の基調判断を『デフレ状況ではなくなりつつある』とし7月よりも脱デフレの動きが進んでいるとの認識を示した。エネルギーを除く消費者物価指数(CPI)が前月比で横ばい圏で推移するようになり、物価の持続的な下落が止まりつつあると分析した。一方、景気の基調を表す総括判断は前月から据え置いた。…内閣府はエネルギー価格上昇などの影響を差し引いた指数を独自に算出。同指数が前月比で5カ月連続横ばい圏となっており、物価の基調判断を『デフレ状況ではなくなりつつある』に修正した。ただ、政府が目指すデフレ脱却への道筋はまだ不透明だ。食料やエネルギーを除いたベース(コアコア)のCPIは、前年同月比で見ると0.2%下落している。足元の物価上昇は電気代やガソリン代などのエネルギー価格や、円安を起点とした輸入物価の上昇がけん引した。物価上昇が消費を冷やす面もあり、内閣府はデフレから脱却したと判断するには『再びデフレ状況に戻らないか見極める必要がある』としている。」(『日本経済新聞』2013.08.15)

行政・公共事業・民営化

●「復興庁は7月31日、2012年度の東日本大震災復旧・復興関係経費の執行状況を公表した。歳出予算現額9兆7402億円に対し、支出済みの歳出額は6兆3131億円で、執行率は64.8%となった。翌年度への繰越額は2兆2030億円で、不用額は1兆2240億円。インフラ復旧やまちづくりに関する予算の執行率は全体より低い56.1%で、このうち公共事業の災害復旧は35.8%、学校や福祉施設などの災害復旧は42.5%となっている。」(『建設通信新聞』2013.08.01)
●「政府は1日、2014年度予算の概算要求基準を固めた。成長戦略など重点政策に予算を要求できる3兆円超の特別枠を設ける。安倍晋三首相は今秋に消費増税を最終判断する意向で、現時点では14年度の税収は見通せない。年末までに要望枠を絞り込み、首相特別枠は最終的に1兆円規模にする方向で調整する。…概算要求基準では、国の政策経費のうち公共事業などの裁量的経費を13年度予算(13.2兆円)に比べて1割程度カットするよう求める。高齢化による医療、介護、年金など社会保障費の自然増加額、約1兆円をまかなうためだ。予算編成の過程では、人件費など義務的経費(12.3兆円)や地方交付税(16.4兆円)なども制度の見直しなどで削減する。各省庁は10%カット後の裁量的経費を基礎額として、基礎額の1.3倍まで重点分野として要望できる。この要望枠は総額で3兆円を超える見通し。予算編成が本格化する秋以降に精査し、一部を首相特別枠として打ち出す構想だ。」(『日本経済新聞』2013.08.02)
●「国土交通省と総務省は8月をメドに地方自治体による公共工事の発注の実態調査に乗り出す。すべての都道府県と市町村が対象で、工事の予定価格の公表時期や算出方法などを調べる。建設業界には、予定価格の入札前の公表や不当な引き下げが過当競争と経営悪化を招いているとの見方が根強い。両省は実態の把握を急ぎ、不適切な事例には改善を求める考えだ。月内にもアンケート用紙を送付。秋に回収し、回答結果を分析する。調査は工事の落札価格の上限になる予定価格に関する質問が中心になる。予定価格は資材の実勢価格や人件費など必要な経費を積算して求めるのが一般的だ。ただ自治体が予定価格を事前に公表すると、建設会社が十分な計算をしないまま低い価格での応札に動き、安値での受注競争を助長する懸念がある。このため各自治体の予定価格の公表時期を確認する。」(『日本経済新聞』2013.08.03)
●「文部科学省は7日、公立学校施設の耐震改修状況調査結果をまとめた。福島県の一部を除く施設が対象で、小中学校の校舎や体育館など12万0460棟の耐震化率は、4月1日現在で前年度比4.1ポイント増の88.9%、耐震診断実施率は0.3ポイント増の99.3%だった。耐震化率100%を達成しているのは、全国1782自治体(学校組合を一部含む)のうち51.2%に当たる912自治体となった。一方で、30自治体はいまだ耐震化率50%未満で、378自治体に耐震第2次診断未実施の施設がある。」(『建設工業新聞』2013.08.08)
●「会計検査院がまとめた報告書『東日本大震災からの復旧・復興事業における入札不調について』によると、被災3県で2011年10月から12年9月までに入札された復旧・復興事業等にかかる工事の入札不調の発生割合は、直轄事業と補助事業を合わせて件数で21.1%、金額で11.2%となった。3県の中では災害査定決定額が最も大きい宮城県での発生割合が高い。不調工事の入札状況では応札者がいないものが77.1%と大半を占め、特に予定価格を事前公表した工事での不調は応札者なしが95.7%だった。規模別では予定価格が少額になるほど発生率も高くなる傾向となっている。」(『建設通信新聞』2013.08.08)
●「内閣府は8日、中期財政計画を前提とした2023年度までの国の一般会計の試算を経済財政諮問会議に提出した。消費税率を予定どおり引き上げて経済成長も実現した場合、一般会計における歳出を14年度以降、毎年度3−5兆円増加させても、基礎的財政収支を改善する目標が達成できるとした。試算どおりに進めば、これまでの公共事業費削減圧力が解消されることになり、必要な社会資本を安定的に整備するという公共事業の本来の趣旨に立ち返ることができる見込みだ。」(『建設通信新聞』2013.08.09)
●「東日本大震災から2年5カ月が過ぎた。7月末時点の避難者数は全国で29万3782人に上り、特に被害が大きい宮城は約10万人、原発事故の影響を受ける福島は約9万人、若手でも3万8000人以上がいまだに仮設住宅で暮らす。復興庁がまとめた2012年度の復旧・復興関係経費の執行率は64.8%にとどまり、特にインフラやまちづくり関係は56.1%と低調で、手つかずの事業も多くある。同庁のデータをもとに被災地の復旧・復興状況をまとめた。仮設住宅の入居戸数は11万5663戸でピーク時(12年6月)の13万6057戸から約15%減少した。一方、この2年間の震災関連死は約2700人で、うち9割を66歳以上の高齢者が占めており、恒久的住宅への早期移転が求められている。…12年度中に完成したのは災害公営住宅が248戸、宅地は152戸。13年度末までの完成見込み数は、災害公営住宅が2797戸で計画全体の1割強、宅地は3352戸で約5%にとどまる。遅れの要因には、住民との調整や、執行段階での資材・人手不足などが挙げられている。整備時期が確定した民間住宅等用宅地は計画全体の2万4271戸に対し、2万2210戸(87%)になる。岩手は約600戸、宮城では約2500戸が供給時期のめどが立たないままだ。東日本大震災から間もなく2年半。住宅再建の道筋が見えず、現地での自力再建を断念するケースが増えるとともに、災害公営住宅への入居希望者が増加しており、将来のまちづくりや地域コミュニティーのあり方にも影響しそうだ。」(『建設通信新聞』2013.08.13)

労働・福祉

●「国土交通省は、静岡県富士宮市にある富士教育訓練センターの機能充実・拡充に向けた具体策の検討に入る。『担い手確保・育成検討会』の下に、有識者や建設業団体などの関係者で組織するワーキンググループを新たに設置する方針で、9月中にも立ち上げる見通しだ。…技能実習などを見学した太田国交相は『ここは貴重な場である。さらに機能を充実・拡充することが必要』と述べ、検討組織を新設することを表明した上で、『できればここ数カ月、少なくとも年内にはどのような方向で充実・拡充していくかという結論を出せるように指示する』と語った。センターは建設技術者や技能者を育成する全国最大規模の拠点だが、施設は築後50年を超え老朽化が著しくなっているほか、情報通信設備など時代に即した環境整備も求められている。6月に発表された建設業振興基金の『建設産業人材確保・育成方針策定会議』の中間報告は、技能者・技術者の教育訓練や教育機関が取り組む実習教育の支援、学生の保護者や学校への広報活動を一括して担う中核的センター機能の確立を提言。富士教育訓練センターをその拠点に位置付け、機能拡充を図る必要性を打ち出している。」(『建設通信新聞』2013.08.01)
●「技能労働者の社会保険未加入対策で鍵を握る法定福利費の確保で、元請企業が下請企業に対し、見積書に別途計上された法定福利費の支払いを認める動きが出始めた。国土交通省直轄工事の元請企業に対し、法定福利費を内訳明示した標準見積書を提出した専門工事業者が満額支払いの同意を得た。各専門職種の下請企業から元請企業に標準見積書を提出する活動が一斉に始まる9月を前にこうした実例が出てきたことで、対策推進に弾みがつきそうだ。」(『建設工業新聞』2013.08.02)
●「厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は6日午前、2013年度の最低賃金の引き上げ目安を全国平均で14円とすることを決めた。目安の段階で引き上げ額が2桁となるのは10年度以来3年ぶり。早期のデフレ脱却には所得の底上げが欠かせないとの政府の意向を受け、大幅上げに踏み切った。最低賃金で働く人の手取りが生活保護の給付水準を下回る『逆転現象』は、13年度中に北海道を除いて解消する見通しだ。」(『日本経済新聞』2013.08.06)
●「国土交通省は5日、専門工事業者等評価制度ワーキングチーム(座長・高野伸栄北大公共政策大学院准教授)の第3回会合を開き、公共工事を請け負う1次下請企業を中心に、約1万社を対象に行う実態調査の内容を提示した。登録基幹技能者や若年労働者が、どの業種・請負階層で直接雇用されているかなどをアンケートで把握。一定数の個別ヒアリングを通じ、元請企業が下請企業を選定する際の視点や、下請企業が評価されたい項目なども整理する。秋をめどにとりまとめ、次回会合に結果を報告する見通しだ。同制度は発注者が、担い手確保などに積極的な下請企業を使っている元請企業を評価するもので、下請企業の評価軸としては、▽工事品質に大きな影響力を持つ技能労働者等の確保状況▽若年労働者の確保・育成状況▽技能・技術を習得しようとする若年労働者の育成に向けた取り組み――が項目として考えられている。」(『建設通信新聞』2013.08.06)
●政府の社会保障制度改革国民会議は5日、医療、介護、年金、保育の全分野で改悪を求める最終報告書をとりまとめた。…報告書は、介護保険で要支援者を保険給付の対象から外し、市町村任せの事業に段階的に移行していく方向を明記。利用料アップの方策も列挙した。医療分野では、70〜74歳の窓口負担倍増(1割→2割)の早期実施など、受診や入院を抑制して医療費を削る意図をあらわにした。年金では、徹底した支給額の削減と課税強化、支給開始年齢のさらなる引き上げの検討を打ち出した。(『しんぶん赤旗』2013.08.06より抜粋。)
●「国土交通、農林水産両省は8日、13年度公共事業労務費調査(10月調査)について、関係建設業界団体向けの説明会を東京・霞が関の国交省で開く。調査では、積算に使用する51職種の10月時点での賃金を、約20万人分のサンプルを集めて調べる。説明会では、技能労働者に定期的に支払われる賃金に加え、賞与や退職金など臨時の賃金も対象となることを周知。税務関係書類など実態を把握するための資料を提出してもらい、単価を構成する賃金として的確に反映できるようにする。…13年度の設計労務単価は、技能労働者の減少に伴う実勢価格の適正な反映や社会保険加入を徹底するための必要経費を確保する観点から、全職種単純平均で15.1%と過去最大の引き上げを実施。これらが実際の賃金に反映されているかどうか把握するため、国交省が別途、きめ細かな調査を7月から実施している。」(『建設工業新聞』2013.08.08)
●総務省が13日発表した4〜6月期平均の労働力調査詳細集計によると、役員を除く雇用者のうち、非正規雇用者数は前年同期に比べ106万人増加し、1881万人だった。2002年の調査開始以来最多となった。うち、男性は603万人、女性は1278万人だった。ともに調査開始以来最多。雇用者全体に占める非正規雇用者の割合は36.2%と、前年同期に比べ1.7ポイント上昇した。上昇は2期連続。年齢別にみると、15〜24歳の若年層は45.4%と、半数近くが非正規雇用となっている。25歳〜34歳は27.6%だった。正規雇用者は前年同期比53万人減少し、3317万人となった。2期連続で減少した。完全失業者のうち、失業期間が1年以上の長期失業者は104万人だった。うち、2年以上は58万人にのぼっている。(『しんぶん赤旗』2013.08.14より抜粋。)

建設産業・経営

●「国土交通省がまとめた建設大手50社の13年度第1四半期(4〜6月)の受注総額は前年同期比17%増の2兆4907億円となった。増加率は直前の12年度第4四半期(1〜3月)の1.2%増からさらに上向いた。国交省は『景気回復への期待感の現れ』(総合政策局)とみている。第1四半期の国内受注は2兆3631億円(前年度同期比14.2%増)。うち民間工事は1兆7158億円(13.5%増)で、製造業からの受注が3106億円(10.6%減)、非製造業からの受注が1兆4051億円(20.8%増)だった。住宅や店舗、病院、私立大学施設などの工事が堅調に推移した。公共工事は5309億円(18.7%増)で、うち国の機関からの受注が3531億円(57.6%増)と増えた一方、地方機関からの受注は1777億円(20.4%減)と減った。海外受注は1276億円(117%増)と堅調に推移している。」(『建設工業新聞』2013.08.05)
●「国土交通省が元請と下請の間での取引上のルールを示そうと07年6月に策定した『建設業法令順守ガイドライン』の再徹底を建設産業界に呼び掛けている。策定から既に6年が経過。法令違反行為の事例を明確にしたガイドラインが健全な競争を促進するという一定の役割を果たしている一方、いわゆる『赤伝処理』や『指し値発注』など不当な行為は依然あるとも指摘されている。同省は『ガイドラインの趣旨を風化させてはならない』(建設業課建設業適正取引推進指導室)として、必要に応じて再度周知する。」(『建設工業新聞』2013.08.08)
●「大手不動産の収益が上向いている。8日に住友不動産が発表した2013年4〜6月期連結決算はマンション販売の好調で4割近い営業増益となり、大手5社では4社が増益だった。各社とも14年3月期通期の予想を据え置いた。だが、マンション事業は通期の販売計画に対する6月末の契約率が目安の5割前後をいずれも上回っており、業績が上振れする企業も出てきそうだ。」(『日本経済新聞』2013.08.09)
●「上場大手ゼネコン4社の2013年度第1四半期(4−6月)決算が8日までに出そろった。単体の受注高は、大成建設を除く3社が前年同期実績を上回り、4社すべてが受注2000億円を超えた。4社の受注総額は前年同期比13.2%増の9545億円で、達成率の平均は23%と前年同期実績を4ポイント上回った。受注は好調なスタートを切ったが、東日本大震災後に受注した低採算工事などの影響で、清水建設を除く3社の営業利益は前年同期を下回った。ただ、連結では円安などによる為替差益で経常利益が大林組、大成建設ともに好転し、鹿島は減少幅が縮小した。」(『建設通信新聞』2013.08.09)
●「大手・準大手ゼネコン24社の2013年度第1四半期(4−6月)の単体受注高は、安藤ハザマを除く23社中21社が前年同期実績を上回った。土木、建築ともに増加傾向が鮮明で、24社の期初受注予想に対する達成率は23%(前年同期比4ポイント増)と全体的に好調な滑り出しだ。民間建築で受注を伸ばしたゼネコンも多く、『今後、景気回復に伴い民需が本格的に上向くのではないか』(準大手ゼネコン)と期待が高まっている。ただ、資機材価格や労務費の上昇など取り巻く環境は依然として厳しく、楽観は許されない状況にある。24社による受注高の合計は、前年同期比18.0%増加した。このうち土木は東日本大震災の復興関連工事に加え、鉄道や道路などの工事が増えて28.5%増、建築は民間工事の増加から13.6%増加している。通期受注見通しに対する達成率は20社が20%を超えた。大手4社のシェア(金額ベース)は、全体で52%。うち土木で44%、建築で53%。」(『建設通信新聞』2013.08.12)
●「海外建設協会(白石達会長)が会員企業を対象に調査した2013年度第1四半期(4−6月累計)の海外建設工事受注実績によると、受注総額は前年同期比29.0%増の3084億6200万円だった。これまで、国内受注が増加すると、海外受注が減少するという流れが通例だったものの、第1四半期時点では海外受注も堅調に推移している。受注総額のうち、現地法人は35.2%増の2213億2700万円で、昨年度の現地法人受注増の傾向が継続している。さらに、本邦法人も15.7%増の871億3500万円で堅調。」(『建設通信新聞』2013.08.12)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「都市再生機構の有識者検討会『超高齢社会における住まい・コミュニティのあり方検討会』(座長・辻哲夫東大特任教授)は6日、同機構が管理する賃貸住宅を自立型高齢者や要介護者向けに改修するための具体的施策を盛り込んだ中間まとめを公表した。国家的なモデルプロジェクトとして高齢者向けに改修する団地を全国で約100カ所選定し、20年度までの7年間で重点的に地域医療福祉拠点を創出するよう要請。自立高齢者向け住宅を約2万戸供給することも提案した。中間まとめでは、高齢者が住み慣れた地域で明るく暮らせる住まい・コミュニティーの創出に向け、都市機構が今後取り組むべき課題や施策などを明示した。具体的には、都市機構が国家的プロジェクトを通じて高齢者の新たなライフスタイルや、まちづくりのあり方を示す必要性を指摘。こうした取り組みの実践と情報発信の場として、都市機構の団地とその周辺地域を対象にモデル事業を実施することを求めた。」(『建設工業新聞』2013.08.07)
●「不動産大手が大型物流施設の開発に注力する。野村不動産ホールディングス(HD)は2008年の金融危機で中断していた開発を今年から再開、年200億〜300億円を投資する。三菱地所も開発ペースを2倍に速める方針だ。インターネット通販の普及を背景に首都圏中心に物流施設の需要が拡大している。各社とも物流事業を住宅やオフィスに次ぐ成長分野として強化する戦略だ。」(『日本経済新聞』2013.08.14)

その他

●東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で、放射性物質で汚染された地下水が海へ流出していることが明らかになった。以前から危険性を指摘されていたのに対策を取らないでいた東電はあわてて岸壁に水ガラスの遮水壁を設置する工事を始めた。しかし、それでは水の流れを食い止められないことがわかり、底なし沼に落ちたような状況だ。発端は、6月19日に東電が、1〜4号機タービン建屋東側の海に近い場所に設置した観測用井戸の地下水から国の濃度限度を大きく上回る放射性物質のストロンチウム90とトリチウム(3重水素)を検出したと発表したことだった。…さらに汚染された地下水が海へ流出しているとみられるデータも出るようになった。…東電は、記者会見で、「放射性物質が海に流出しているのではないか」と質問が相次いでも、「今はデータを蓄積する段階」などと流出を認めなかった。「海洋の研究者の多くでは、(放射性物質が)出続けているというのは共通見解だった」と話すのは、東京海洋大学の神田穣太教授。…東電が、放射性物質で汚染された地下水が海へ流出していることを認めたのは7月22日。地下水の水位が原発近くの海岸の潮位の干満や降水量に合わせて上下を繰り返していることから、地下水が海に通じていると判断したと説明した。しかし、水位の計測は今年1月から始まっていた。放射性物質で汚染された地下水が海へ流出していることはもっと早く確認できたはずだった。(『しんぶん赤旗』2013.08.10より抜粋。)
●「ユーロ圏が4〜6月期に7四半期ぶりのプラス成長に転じた。債務危機の影響を受けた景気後退期からようやく抜け出したが、構造改革が進んでいないこともあり回復は極めて緩やかなものにとどまるとの見方が大勢。失業率はまだ高水準で『雇用なき回復』の状態も続くことになりそうだ。…今回のGDPを押し上げたのは、ドイツとフランスというユーロ圏の『2トップ』。ドイツは低失業率の下で個人消費も底堅く推移している。…南欧ではイタリアやスペインがGDPのマイナス幅が縮小。ポルトガルが1.1%増と今回データが公表になった国の中で最も高い成長を記録した。一段の財政緊縮策が回避されていることや債務危機の沈静化で企業や個人の経済活動が安定しつつあることが背景にある可能性が高い。ただユーロ圏の構造改革は道半ばで、経済成長の基盤が強くなったわけではない。国際通貨基金(IMF)は7月に公表したユーロ圏に対する経済評価で『政策対応の不確実性が(域内の)需要を落としている』と指摘した。…今後特に懸念されるのが個人消費を支える雇用情勢。6月のユーロ圏の失業率は12.1%で単一通貨創設以来の最悪水準が続いた。同月は失業者が前月比2万4千人減と改善に転じるといった動きも出ているが、新規失業の発生が収まってきた程度の可能性もある。過去5年で増加した約780万人の失業者を職場に戻すのは容易でない。EUは深刻な若年雇用対策を急ぐが、現段階でどれくらい効果を上げるかは不透明な要素が大きい。」(『日本経済新聞』2013.08.15)