情勢の特徴 - 2013年8月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は2014年にも港湾の運営会社に出資する検討に入った。港湾法を改正したうえで、ハブ港と位置づける京浜と阪神港に出資する。海運会社への補助金制度や荷主企業への優遇税制も拡大し、韓国などに出遅れていた大都市港湾の集荷力を高める。港湾の国際競争力回復に向け、地方自治体にゆだねていた日本の港湾行政は国主導へと転機を迎える。」(『日本経済新聞』2013.08.17)
●「環太平洋経済連携協定(TPP)のうち、公平な企業活動を促す競争政策分野で交渉が進展した。交渉に参加する全12カ国がまとめた合意文書案によると、国有企業の優遇措置を廃止するまでに3〜5年の経過措置を設け、その間にベトナムなどの新興国に市場開放を促す。これまで米国と新興国が激しく対立していた競争政策分野で合意が近づけば、交渉全体に弾みがつきそうだ。…合意文事案では、国有企業は国内企業と外国企業に差別を設けないことを明記。国有企業が外国企業を排除し、自国の企業と優先的に商取引することを禁じた。ほかの民間企業に課している税金の免除を禁じるほか、モノやサービスの価格を著しく下げることも規制する。合意文事案は米国の提案を軸にオーストラリアの案を組み合わせた内容になっている。国有企業の定義は『政府が議決権の50%超を保有する』案が有力。日本では日本郵政が規定の対象になる可能性がある。その場合、郵便局舎の税制優遇措置などは撤廃を迫られそうだ。国有企業を多く抱えるベトナムやシンガポールはTPPによって急に国有企業の活動に制限が出るのを避けたい。一方、米国はこれらの国に国有企業改革を迫り、市場開放を求めている。最長5年の経過期間をとることで、内外無差別のルールを作る時間を用意し、市場開放の影響を緩やかにする狙いがある。米が年内の交渉妥結を優先し、ベトナムなどに妥協したとの見方もある。無差別待遇に違反した場合は国連の仲裁機関を通じて訴えることができる。ただこの分野では民間企業が国を訴える『ISDS条項』は適用せず、国同士の訴訟しか認めないことが固まった。新興国が米企業による訴訟の乱発を懸念していたためで、米政府はこれを受け入れた。」(『日本経済新聞』2013.08.21)
●「先行きの工事発注量の目安となる設計、調査、測量の請負金額が3月以降、増加を続けている。北海道建設業信用保証、東日本建設業保証、西日本建設業保証がまとめている公共工事前払金保証統計によると、設計の7月単月請負金額増加率が前年同月比で20%を超え、4月からの累計でも22.0%増となった。東日本大震災以前の2010年と比べると、7月単月で72.0%増、累計で95.8%増となる。設計、調査、測量が発注されれば、それに応じた工事発注がその先に見込まれることから、相当程度工事発注できる案件が積み上がっていることになる。」(『建設通信新聞』2013.08.21)
●「政府・与党は21日、今秋まとめる成長戦略第2弾に盛り込む設備投資促進策の議論を始めた。大規模ビルなどの耐震改修や省エネ化を促す減税と規制強化が柱となる。減税と規制を組み合わせて企業が投資を前倒しするよう求め、2014年4月に予定する消費増税による景気の腰折れを防ぐ狙いだ。ただ各省庁や経済界の思惑も絡み、具体策の詰めは難航も予想される。国土交通、経済産業、環境、消防の各省庁が21日、自民党税制調査会幹部会で設備投資促進策の案を示した。国交省が示したのは大規模な商業ビルや病院、ホテルなど人が多く集まる施設の耐震化を促す税制措置だ。11月までに施行する改正耐震改修促進法で企業が耐震性を高める投資を急ぐよう背中を押す。床面積5000平方メートル以上の建物に耐震診断の実施を義務付け、結果の公表も求める。今後は耐震工事をする企業などに固定資産税や法人税などを一定期間、減税する税制措置を議論する。期限内に基準を満たさない場合、より重い税を課すことも検討する。建物の省エネ化でも同様の措置を検討する。」(『日本経済新聞』2013.08.22)
●「政府は日本企業の海外事業支援に向け、円借款の運用方針を転換する。日本企業が受注を狙う案件を優先して規模を拡大し、途上国向けの金利も従来の半分に引き下げるなど条件を緩和する。事業が採算に乗るまで相手国に返済を猶予する新制度を導入し、医療機器や防災システムも支援の対象に加える。中国や韓国企業との競争で苦境にある日本企業の受注増を後押しする。」(『日本経済新聞』2013.08.22)
●「国土交通省は日本企業による鉄道や空港などのインフラ輸出を後押しする新たな組織を来年度にも設立する方針を固めた。国が数百億円規模の資金を新組織に拠出し、海外のインフラ事業に民間企業と共同出資する仕組み。インフラ建設や設備の販売だけでなく、出資を通じて長期的な事業運営にも携われるようにするのが特徴だ。政府が成長戦略で掲げるインフラ輸出の拡大につなげる。…主な対象は鉄道や空港、港湾、道路など交通系のインフラ事業。海外案件の受注をめざす企業連合から出資要請を受け、事業リスクや支援の必要性を精査したうえで出資を決める。1件あたりの出資額は数十億円規模を見込み、上限は企業連合の出資額と同額にする。」(『日本経済新聞』2013.08.23)
●「日本が初めて参加した環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が閉幕した。米国が年内妥結へ強い意欲を示す一方、マレーシアが公然と慎重論を主張。米主導の交渉を警戒する新興国の姿を浮かび上がらせた。焦点の関税交渉でも重要品目など難題は解決できていない。年内妥結の実現に向けた課題は多い。…新興国には米主導への警戒が広がる。特に反発するのは国有企業に経済を依存するマレーシアとべトナムだ。TPP交渉では国有企業改革に3〜5年の猶予措置を設ける方向だが、『国有企業は重要だ』(ベトナム)と強硬な姿勢だ。知的財産権の保護強化、漁業権や森林伐採などを規制する『環境』、外資に市場を開放する『投資』でも米国と新興国との溝は埋まらない。閣僚会合後も30日まで事務レベルの交渉が続き、21の交渉分野のうち、関税や知財、国有企業改革など、各国の利害が対立する10分野に絞って集中的に話し合うが、焦点の関税分野では交渉方法すらいまだ決まらず、大幅に遅れている。日本がこれまで結んだ経済連携協定(EPA)での関税撤廃率は80%台半ばから後半どまり。コメなど農産品5品目の関税をすべて守ると撤廃率は93.5%となるが、米国が求める水準は95%を超える。内閣府幹部は「95%は最低の攻防ライン」と話す。5品目のうち何を守るかの線引きが今後、本格的に始まる。」(『日本経済新聞』2013.08.24)
●「ブルネイで開いている環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる交渉会合で、外国政府が公共事業を発注する際に日本などの外資系企業も入札しやすくするように、日本政府が手続きの整備を参加国に求めていることがわかった。建設大手など日本企業の海外での受注機会を増やすのがねらいだ。日本政府の念頭にあるのはマレーシアやベトナム、ブルネイ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国。世界貿易機関(WTO)の政府調達協定(GPA)では、政府が公共事業などを発注する場合の外国人と自国民に同じ待遇を求める『内国民待遇』や、入札手続きの透明化を定めているが、5カ国はいずれも協定に参加していない。 日本政府は参加国に公共事業を発注する場合の入札手続きの公開や入札資格者を限定する場合の要件の明示、落札者・落札価格の情報公開などを求めたもようだ。」(『日本経済新聞』2013.08.25)
●「政府は23日、大胆な規制緩和で都市開発などを支援する『国家戦略特区』の事業や規制緩和項目の提案募集に関する説明会を東京都内のホテルで開いた。建設業やデベロッパーなどの企業や自治体など250以上の機関が参加。1次募集として9月11日まで提案を受け付けて緩和項目などを決めた後、10月中旬に特区の初弾実施地区を決める。…国家戦略特区は『世界一ビジネスのしやすい都市環境づくり』をコンセプトに、大胆な規制緩和で国際競争力の強化につながる都市開発やインフラ整備などを後押しする。政府は成長戦略の柱と位置付けており、東京、大阪、名古屋の3大都市圏が指定されるとみられている。」(『建設工業新聞』2013.08.26)
●インドネシアのジャワ島中部で日本が官民一体で進める大型石炭火力発電所の建設計画に逆風が吹いている。用地買収をめぐり反対派住民との対立が先鋭化。インドネシア国家人権委員会も8月初め、「用地買収で警察や国軍、事業会社による脅迫や強権的手法がある」と企業側の手法を問題視する勧告書を同国政府などに提出した。反対派住民と警察の衝突で負傷者も出ており、事業の先行きは厳しくなっている。同事業は日本の電源開発(Jパワー)と伊藤忠商事、地元石炭大手の企業連合が設立した事業会社が、中ジャワ州バタンで合計出力200万キロワットの石炭火力発電所を建設する計画。総事業費約40億ドル(約3890億円)の大型事業で、2011年にインドネシア国営電力から受注した。日本政府も売り込みを支援しており、企業側は「日本政府の掲げる『パッケージ型インフラ海外展開』の事業」と強調していた。(『しんぶん赤旗』2013.08.26より抜粋。)
●「政府は東京電力福島第1原子力発電所で多発している汚染水の問題に危機感を強めている。東電に任せていては打開のめどが立たないだけでなく、ずさんな管理で問題が深刻化する悪循環も強まってきたためだ。原発事故への賠償が中心だった国の支援は、汚染水への緊急対策や廃炉への対応を理由に膨らむ見通しだ。」(『日本経済新聞』2013.08.27)
●「国土交通省は27日、14年度予算の概算要求を発表した。一般会計の総額(国費)は前年度比16.3%増の5兆8591億円で、うち公共事業費は16.6%増の5兆1986億円。大地震などに備えた防災・減災対策や、インフラ老朽化対策を推進。成長戦略を実現するための新たな基盤整備も展開する。政策課題に必要な公共事業予算を確保するため、『新しい日本のための優先課題推進枠』を最大限に活用した。一般会計とは別枠の東日本大震災復興特別会計には7087億円(復旧・復興6688億円、全国防災399億円)を計上した。」(『建設工業新聞』2013.08.28)
●「コンセッション(運営権付与)方式など新たなPFI事業拡大へ、各省庁は2014年度概算要求にさまざまな施策を盛り込んだ。10月にも発足予定の官民連携インフラファンド(民間資金等活用事業推進機構)への出資金を200億円積み増し300億円にするほか、官民ファンドへの民間融資に対する政府保証枠も、今年度の3000億円から1000億円増の4000億円まで拡大させる。各省庁はPFI適用可能な事業を、PFI関連支援措置として整理するなど、政府を挙げてPFI拡大に乗り出した格好だ。10月に発足する官民連携インフラファンドは、国と民間資金によって設立し、PFI事業に直接出資や融資をするほか民間インフラファンドへ出融資する。…コンセッションについては、昨年7月の関空・伊丹両空港の経営統合を受け発足した新関西国際空港(新関空)が、早ければ14年度にもコンセッション事業者に空港運営権を売却、運営収入料の一部をコンセッションフィーとして受け取り、関空債務の返済に充てるため、国土交通省が来年度税制改正要望として、コンセッション事業者の登録免許税非課税や、所得税・法人税の減額につながる特例措置を求めた。」(『建設通信新聞』2013.08.29)
●「国土交通省は、羽田空港(東京都大田区)の機能を強化するため、14年度にインフラ整備事業に重点投資する。14年度予算概算要求で前年度比10.2%増の292億円を計上。引き続きC滑走路の延伸工事を進めるほか、B滑走路の側方に計画しているエプロン建設工事や国際線地区側の護岸改良工事に着手する予定。A滑走路直下に建設する連絡トンネルの新規事業化に向け、来年度は基本設計に着手。15年度の実施設計を経て16〜19年度に建設工事を行う。連絡トンネルの整備には事業費で数百億円規模を見込んでいる。」(『建設工業新聞』2013.08.29)
●日本企業の海外展開は活発だ。海外での「競争」環境は激しさを増しているが、進出している日本企業の競争相手は、実は日本企業だ。日本貿易振興機構(ジェトロ)の「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(2012年度)によると、回答を寄せた2074社のうち、62.5%が、進出先の競争相手は日本企業だとしている(複数回答)。欧米企業は43.1%、中国企業は40.1%、韓国企業は22.2%となっている。…財界・大企業は、アジア地域では、日本よりも法人税率が低いことが日本企業の「競争力」を削いでいるとか、労働法制が「厳しい」などとして、日本政府に大企業奉仕の施策を求める。しかし、海外での最大のライバル企業が日本企業だということは、この言い分に根拠がないことを示している。さらに、海外で「事業規模の拡大を図る」と回答した企業にその理由を尋ねたところ、「海外での需要の増加」が74.0%で最も高くなっている。次いで「国内での需要の減少」が55.0%となっている。海外進出を進めるかどうか、企業にとって決め手になるのが「需要」であることを示している。(『しんぶん赤旗』2013.08.30より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県が、公共工事の入札改革などに乗り出す。宮城県は9月から工事の届け出手続きを簡素化するなど、業者が応札しやすい仕組みに切り替える。福島県は、工期に猶予期間を設けるなど柔軟運用を進める。復興予算の積み残しが問題となるなか、各県は事業の早期執行に向けた対応を急ぐ。人件費や資材価格の高騰で、全国的に公共工事の入札が不調に終わるケースが相次いでいる。中でも復興の加速が求められる被災地では入札制度の見直しは喫緊の課題で各県は国の行政指導などを待たず、独自の改革を進める方針だ。」(『日本経済新聞』2013.08.16)
●「国土交通省は、直轄事業の入札契約制度改革の参考にするため、欧米やアジア諸国で導入されている公共調達の仕組みの実態把握調査に乗り出す。調査対象は数カ国にのぼる見通し。鶴保庸介副大臣を議長とする省内検討会議が6月末に打ち出した多様な入札契約方式の導入に向けた方向性を踏まえ、直轄事業を対象に有識者懇談会で今後実施する具体化に向けた検討などに反映させる。文献収集を中心とする海外の実態調査結果は、本年度末にまとめる予定だ。」(『建設工業新聞』2013.08.19)
●「東日本大震災の復興事業を迅速かつ円滑化するために導入された事業促進PPPの道路分野での活用が全国に拡大してきている。国土交通省では東北に続いて四国、関東、中国の各整備局で事業者を選定し取り組みを具体化している。災害時に備え、リダンダンシー(代替性)の確保やミッシングリンク解消などのため高規格幹線道路の整備が急がれる中、今後さらなる活用の拡大が進む可能性もある。道路の早期整備に向け、発注者が担当していた地元協議や調査・設計などの業務で民間にも協力を仰ぎ、業務期間の短縮や効率化を進めようとする姿勢も拡大の背景にある。民間企業にとっては、保有するノウハウを活用する新たな市場となるほか、川上業務での実績を蓄積する場になる。」(『建設通信新聞』2013.08.20)
●「国土交通省は22日、南海トラフ地震に備える対策として、官民で重点的に取り組む10の計画をまとめた。津波による浸水被害が大きいと予測される太平洋沿岸部が主な対象。13年度中に紀伊半島などの主要道路の広域啓開計画を優先的に策定し、並行して道路の耐震補強や代替路線の整備も進める。港湾の耐震・耐水化や東海道新幹線の脱線対策も進め、被害の軽減や応急活動の迅速化につなげる。計画は14年度予算の概算要求に反映させる。」(『建設工業新聞』2013.08.23)
●「環境省は東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う除染と汚染土壌などの廃棄物処理を加速する。2014年度予算の概算要求で関連費用として、13年度並みの総額5000億円を要求、高い水準を維持する。事故後2年半近くたったが、福島県内の自治体との調整などに時間がかかり作業が遅れている。13年度に完了としてきた除染の見直しも進め、新たな計画を来週中に公表する。…国は福島第1原発の周辺11市町村を『除染特別地域』とし直轄で除染を進めているが、遅れが目立つ。6月末時点で住宅地の除染を終えたのは田村市と川内村のみ。双葉町など除染に着手できていない自治体もある。このため環境省は新たな除染計画を作る。9月にも汚染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の建設候補地となっている大熊町などに対し、施設の概要を示す。協議を進め、除染作業を早めたい考えだ。」(『日本経済新聞』2013.08.24)
●「国土交通省は、自治体が取り組む公共工事の入札契約方式の多様化を支援する。新たな方式の導入を目指す自治体からモデル事業を募集。優れた提案を行った自治体に入札契約問題に詳しい専門家を派遣して助言するなど実現を後押しする。モデル事業で得られた成果は、事業の特性に見合った方式を選択できるような発注者向けのマニュアルにまとめて普及を図る。…多様な方式の例として、地域のインフラの的確な維持管理や災害対応では、複数年契約、複数業務の一括発注、事業協同組合や地域JVを活用した共同受注方式を想定。技術的な難易度が高く、民間の知恵とノウハウを十分に生かす必要がある案件では、公募で最も優れた技術を持つ企業を選んだ上で、価格や工法の交渉を行って契約する方式の導入が考えられる。工事の規模や難易度に応じた体制を発注者が整備できないような場合には、東日本大震災の被災地での取り組みを踏まえたコンストラクション・マネジメント(CM)方式の導入が想定されている。」(『建設工業新聞』2013.08.26)
●「国土交通省は、14年春までに新たな『国土のグランドデザイン』を策定する。国土形成計画(全国計画)が08年7月に閣議決定されてから5年が経過し、国土を取り巻く状況が大きく変化していることから、2050年ごろまでの長期を見据え、持続的な成長を確信できる国土・地域づくりの理念・哲学を提示。14年度には、グランドデザインに基づく各種の課題に対応した具体的な戦略づくりを進める。…グランドデザインは、人口の減少・地域的偏在、高齢化、巨大災害の切迫、地球環境問題、エネルギー制約の高まりなど国土をめぐる長期的な変化と、グローバル化、国土の脆弱(ぜいじゃく)性、インフラの老朽化、国・地方の厳しい財政状況などを前提に策定。将来の不安感や危機感を払拭し、持続的な成長を実現するために、『どのような国土にしたいのか』という理念・哲学とその『目標』を示す。」(『建設工業新聞』2013.08.28)
●「関東地方整備局は14年度、八ツ場ダム(群馬県長野原町)の本体工事に着手する。国土交通省が27日に公表した14年度予算概算要求でダム本体工や周辺住民の生活再建事業の費用などとして99億3100万円(国費50億5100万円)を盛り込んだ。完成時期は19年度の予定。09年度の事業中断から約5年の歳月を経て事業が再開する。」(『建設工業新聞』2013.08.28)

労働・福祉

●「上場建設企業138社の2013年平均年間給与が、前年比0.12%増の642万7000円とわずかながらも増加していることが、東京商工リサーチの『上場企業2375社の平均年間給与調査(13年3月期決算)』で分かった。ただ建設業は増加した7業種中、最小の増加率にとどまったほか、建設業の年間給与額トップ10位のうち上位5社はプラント、設備、建築会社が占め、ゼネコンと呼ばれる総合建設業は6位以下に大手が3社入った。…民間建築工事で発注者の大手ディベロッパーは財務体質がさらに強化され、平均年間給与額が全業種ランキングで上位に入る中、工事の施工を担うゼネコン社員の給与には波及していないことを示した格好だ。全産業平均598万1000円は上回った。」(『建設通信新聞』2013.08.20)
●安倍政権の「成長戦略」実現に“不可欠”とされる労働分野の規制緩和。その中心である労働者派遣法について、改悪への大転換の方向が明らかになった。同法改定にむけ、議論していた厚生労働省「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が6日提出した素案で示したもの。20日に報告書をまとめ、ただちに労働政策審議会で検討し年内に答申、政府は来年早々に法案を提出する見通し。素案は、派遣は「臨時的、一時的」な仕事に限る「常用代替防止」という現行制度の考え方について、「根本から再検討することが必要」とのべ、制度発足以来の全面的見直しを提起している。常用代替防止は、派遣という働き方があくまで例外的な制度のため、軸にすえられたもの。雇用責任を負わずに労働者を使えるなど、使用者企業(派遣先)にとってあまりに都合がよく、労働者にとっては無権利で不安定となる働き方だ。戦後は禁止された働かせ方である。そのため、派遣法は、派遣が広がることを防止し、さまざまな規制を設けている。これを「根本から」変えるとは、派遣を恒常的な働き方にするということになる。(『しんぶん赤旗』2013.08.20より抜粋。)
●「国土交通省は、静岡県富士宮市にある建設技能者などの教育訓棟施設『富士教育訓練センター』の建て替えを視野に入れた検討組織の初会合を27日に開く。ゼネコンや専門工事業者の教育訓練に対するニーズを把握。ハード・ソフト両面からセンターのあり方を探り、検討成果を年内に基本構想としてまとめる。検討を通じて老朽化したセンターの建て替えに向けた業界全体の機運を高める考えで、14年度中の着工を目指す。」(『建設工業新聞』2013.08.22)
●「厚生労働省は22日、2013年の労働安全衛生対策の目標を決めた。労働災害による死亡者数、休業4日以上の死傷者数とも、前年比5%減とする。人数ベースでは死亡者数が1038人、死傷者数が11万3597となる。労災死傷者数の削減目標は、08年の11万9026人を基準とし、『20年までに08年比3割削減』を目指している。また、13年度から始まった第12次労災防止計画では、17年度の目標を全作業共通で死亡者数、死傷者数とも12年比15%削減に設定した。12次防の重点業種に位置付けられる建設業は、12年と比較して17年までに労災死亡者数を20%以上減少させるとの目標が掲げられている。今回決めた労災死傷者数などの削減目標には、業種別の目標はない。ただ、建設業の12年の労災は、死亡者数が7.3%増(25人増)の367人と、6年ぶりに前年と比べ増加に転じ、死傷者数も、1.8%増の1万7073人となったことから、12年と比べ13年の労災発生を大きく減らす必要がある。」(『建設通信新聞』2013.08.23)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は22日、労働委員会(委員長・今井雅則戸田建設社長)の会合を開き、2009年4月にまとめた『建設技能者の人材確保・育成に関する提言』とその基本方針の改定作業に着手した。社会保険の加入促進や新たな重層下請構造改善の目標などを盛り込む。13年度末をめどに新たな5カ年計画を策定する。…日建連が今回、技能労働者の人材確保・育成に関する提言の改定作業に着手した背景には、7月18日に日建連が『労務賃金等改善推進要綱』を決定したことがある。会員企業は決定された要綱に基づき、今年度公共工事設計労務単価引き上げの根拠となった、技能労働者の社会保険加入の個人負担分や、技能労働者の賃金アップを、元請けとして行うための具体的対応をしていく。ただ日建連が決定した労務賃金改善等推進要綱で最終的に目指す、技能労働者の環境改善や人材確保を実現するためには、労務賃金引き上げや社会保険加入促進だけでなく、人材育成支援を含む総合的で具体的な対応策が必要だ。そのため今後、日建連労働委員会が見直す新5カ年計画では、技能労働者の環境改善につながる、『就労履歴管理システム』の建設現場への全面導入が一つの焦点になる可能性は高い。技能労働者一人ひとりのさまざまな情報を1枚のカードに集約する仕組みが業界全体へ拡大すれば、社会保険加入状況だけでなく建設現場の入退場管理や資格、健康管理までを含め元請けや下請けが把握しやすくなるとともに、建設業退職金共済制度に基づく退職金の支払いも確実に担保されるメリットがある。」(『建設通信新聞』2013.08.26)
●「厚生労働省は23日、建築物の解体作業を行う労働者などへの石綿ばく露防止対策の充実策について検討に着手した。石綿除去作業時の石綿漏えい常時監視のあり方や石綿含有煙突(レベル2建材)が劣化した際の対応策を探る。また、建築物解体作業でなく、電気設備工事・点検など、石綿使用建築物内で作業をする労働者のばく露防止対策も議論する。」(『建設通信新聞』2013.08.26)
●「国土交通省は、建設業で優秀な技術者を確保・育成するための検討に乗りだす。建設業に就職した技術者が3年以内に離職する割合が高卒で4割以上、大卒でも3割近くに上るとされる中、新規就業者の増加につながる方策を打ち出せるようにする。14年度は検討材料を収集する目的で若手技術者や学生を対象にした詳細な実態調査を実施。それを踏まえた建設技術者へのキャリアパスのあり方を模索する。」(『建設工業新聞』2013.08.29)
●厚生労働省は27日、2014年度予算の概算要求を公表した。一般会計の要求額は、13年度当初予算額を3.8%上回る過去最大の30兆5620億円になった。年金・医療などの自然増額は9700億円。安倍政権の成長戦略に基づいて「全員参加の社会」「健康長寿社会の実現」を推進するとし、特別枠で1617億円を計上。「多様な正社員」モデルの普及への調査費などとして1.6億円を初めて盛り込み、解雇自由な正社員づくりを促進しようとしている。労働分野では、若者の使い捨てで問題になっている「ブラック企業」対策の相談体制強化に18億円(13年度16億円)、フリーターなどの正規雇用化に89億円(同20億円)を要求する一方、リストラを支援する労働移動支擾助成金を301億円(同2億円)と約150倍に増額。一方、雇用を守る企業を支援する雇用調整助成金は545億円とし、13年度比でほぼ半減させている。(『しんぶん赤旗』2013.08.29より抜粋。)
●総務省が30日発表した労働力調査によると、7月の完全失業率(季節調整値)は3.8%と前月に比べ0.1ポイント低下した。低下は2カ月連続。完全失業率を男女別にみると、男性が前月比0.1ポイント悪化し、4.2%となった。女性は同0.2ポイント低下し3.3%だった。1997年9月以来15年10カ月ぶりの低水準となった。女性は医療・福祉分野などで就業が進んだ。…完全失業者数(同)は前月に比べ3万人減少し、251万人となった。就業者数(同)は1万人増加し6303万人。就業者数(原数値)を産業別にみると、建設業が前年同月比31万人減の472万人、運輸業・郵便業が11万人減の322万人だった。医療・福祉が23万人増の741万人となった。役員を除く雇用者のうち、非正規雇用者は1879万人で、雇用者に占める非正規雇用者の割合は36.2%だった。(『しんぶん赤旗』2013.08.31より抜粋。)

建設産業・経営

●「道路舗装上場大手6社の13年4〜6月期連結決算は、減収が2社にとどまり、4社が営業増益・営業黒字となった。期初の手持ち工事が豊富だった社が多く、工事の進ちょくに伴い、固定費の吸収が進んだ。国土交通省直轄工事の発注が続く中、高速道路会社から大型受注を獲得した社もあり、受注高(単体ベース)は全社が前年同期を上回った。…4〜9月期以降は、工事量、合材製造量とも前年並みかそれ以上の水準で推移すると見る社が多い。ただ、業績予想を上方修正した社でも『原料高や労務不足の影響が懸念される』(日本道路)として、通期業績の予想は据え置いており、工事量がある中での利益確保の対応が注目される。」(『建設工業新聞』2013.08.19)
●「ゼネコン各社の受注高が増加傾向にある。主要25社の13年4〜6月期決算によると、合併前の前年同期と比較ができない安藤ハザマを除く24社のうち21社の受注高が前年同期を上回った。公共工事の発注が増えている上に、再開発、マンション、商業施設や倉庫・工場など経済状況に左右されやすい民間発注工事の受注も目立ってきており、ほとんどの社が国内民間工事の受注高を増やした。受注高が前年同期を下回ったのは、前年の反動減であったり、採算を重視して特に慎重な受注活動を進めたりしている3社にとどまった。 受注高は、16社で増加率が2桁以上になった。土木、建築とも国内工事の受注高を増やす社が多い中、三井住友建設のように海外の大型工事を獲得した社もあった。福島第1原発事故に伴う放射能除染工事を継続受注している社もある。…一方、損益は明暗が分かれた。激しい受注競争の中で獲得した低採算の工事も抱える中で、労務不足の影響が深刻化。首都圏では『労務単価が東日本大震災前の2倍を超えた工種がある』(大手経理担当者)のに加え、原油高の影響で資材費も上昇傾向にあり、営業減益または営業赤字が半数を超える12社に達した。同時に、円安の進行によって為替差益が発生したことや、株高で投資有価証券の評価損がなくなったこともあり、純損益は増加または黒字が13社となった。 業績の見通しについては、景気に持ち直しの兆しが出始めたのを受けて、『今期は後半ほど工事が出てくる』(別の大手経理担当者)とみる社が多く、受注増への期待は高い。ただ、『競争環境は緩んでいない』(同)のに加え、工事が増える分、労務不足が一段と深刻化する懸念もあり、生産性の確保が利益を左右する状況が続きそうだ。」(『建設工業新聞』2013.08.20)
●「日本建設業連合会がまとめた会員99社の7月の受注総額は、前年同月比17.0%増の9131億4700万円となった。民間、官公庁ともに増加したものの、前年度に国直轄の大型除染業務の発注などがあった反動で、国内受注は5.2%増にとどまった。受注総額のうち、国内受注額は8137億0800万円、海外(国内法人のみ)は1396.2%増の994億3900万円という大幅な増加になった。…国内受注のうち、民間からの受注は6.1%増の5720億2600万円となった。…官公庁については、4.0%増にとどまったものの、受注額2393億7400万円は、過去10年で7月として最も多く、水準としては高い。…ブロック別では、北海道が23.8%減、東北が12.8%減、関東が6.3%減と、それぞれ前年同月の反動で減少になった一方で、北陸が19.8%増、中部が26.3%増、近畿が35.9%増、中国が49.2%増、四国が32.4%増、九州が26.3%増となった。前年のこの時期は、東日本大震災からの復旧・復興工事の関係で、東日本と西日本での受注額の地域格差が表れていた。今回は東日本地域が落ち着きを見せる一方で、近畿での高速道路工事などの影響で西日本地域が高い増加率となって、地域差が縮まってきたとみることができる。」(『建設通信新聞』2013.08.28)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「首都圏で中古マンション売買の勢いが増している。成約件数は今年に入り昨年に比べて2ケタ増が続き、平均成約価格も上昇した。東京都心では分譲時を上回る価格で成約する住戸もある。株価上昇による資産効果で消費が上向くなか、住宅ローン金利や物件価格の先高観から、好立地や間取りの良い中古マンションは新築並みに人気が出ている。」(『日本経済新聞』2013.08.20)
●「国土交通省は、住宅性能表示制度で判断基準になっている評価項目を見直す。新築住宅で27項目ある現行の必須項目に選択制を導入し、建築主が特に求める性能だけでも評価しやすいように改正する方向を打ち出した。必須項目を減らすことで手続きの負担軽減などにつなげ、制度の活用拡大を狙う。共同住宅では、構造の安定や劣化軽減、温熱環境に関する3分野7項目を必須とし、残る項目を選択項目とする方針が提示された。今後、パブリックコメントや有識者との議論を経て告示を改正し、2015年4月の施行を目指す。…これまで制度の活用実績は2割程度にとどまっており、申請や評価に関する作業の合理化や選択自由度の向上により制度利用の間口を広げ、活用を促す。ここ数年で建築基準法や消防法の改正、長期優良住宅認定制度の運用などで住宅性能に関する仕組みや規制が充実してきたこともあり、見直しに乗り出す。」(『建設通信新聞』2013.08.21)
●空き家などを改造し著しく狭い空間に違法に人を住まわせる「脱法ハウス」が首都圏を中心に広がっている。国土交通省が発表しただけで少なくとも約400件。背景に違法物件が受け皿にならざるを得ないほどの住宅の貧困(ハウジングプア)がある。…「住まいの貧困に取り組むネットワーク」が都内の脱法ハウスの居住者に行ったアンケートでは、1年半以上も継続して住んでいる人が2割弱いる。就業状況は、アルバイトなどの不安定就労が55%と最も多く、常勤、自営、生活保護の利用者もいる。入居理由(複数回答)は「家賃が安い」(64%)、「アパートを借りられなかった」(46%)など。借りられなかった理由は「保証人がいなかった」「初期費用が支払えなかった」(各80%)をあげている。「脱法ハウスの法規制は必要だが、それだけでは問題は解決しない。住宅政策の欠陥が貧困から抜け出させなくしている」というのは「住まいの貧困に取り組むネットワーク」世話人で「国民の住まいを守る全国連絡会」の坂庭園晴代表幹事。坂庭さんは、既存の居住施策は生活保護とセットのものや、失業者に限定したものなどで「働く貧困層などは救済できない」と指摘。「住居は基本的人権であり、社会的に保障すべきという考えが先進諸国では当たり前です。家賃補助や公的住宅の建設強化、公的保証人制度の創設などへの政策転換が不可欠」という。(『しんぶん赤旗』2013.08.21より抜粋。)
●「国土交通省は地方都市の街づくり政策を抜本的に見直す。病院や介護・商業施設などを誘導する街の中心部を法律で明確にするとともに、郊外からの移転を国が後押しする補助金や税制優遇策をつくる。少子高齢化や地方自治体の厳しい財政事情を踏まえ、郊外に広がった都市機能を中心部に集める『コンパクトシティー』を国主導で全国に広げる方針に転換する。戦後の日本の都市づくりは、人口の増大や自動車交通の発達により、中心部から郊外へと機能が拡張してきた歴史だ。だが、人口減や高齢化でこれまでの郊外拡張型の都市を維持するのが難しくなり、都市政策は大きな転機を迎える。2014年度からの実施をめざす。国交省が想定するのは、人口数万人規模の都市。年100市程度を対象に集約型都市づくりを支援する。」(『日本経済新聞』2013.08.25)
●「国土交通省は、住生活基本法に沿って全国の市町村が進める住生活基本計画の実態調査を行う。住生活基本計画は国と都道府県が策定すると同法で義務付けられているが、市町村による策定は任意。このため既存の住宅マスタープランを含めても策定は4割に満たないのが現状という。国交省は、計画づくりが進まない理由や、地域に密着した市町村が住宅行政を進める上で計画が果たす役割を整理し、計画づくりが進む手だてを検討する。 住生活基本法は、住宅政策の重点を、『量』の確保から住生活の『質』の向上へと転換する目的で06年6月に制定された。住生活基本計画は、同法に基づき、国が全体計画を作るとともに、都道府県にも策定が義務付けられている。…実態調査では、既に計画を策定している市町村での策定効果や活用事例などを把捉。計画づくりがなかなか進まない現状を打開できる施策の検討につなげる。…市町村計画の現状と課題の整理に加え、実態調査では深刻化している空き家問題も調べる。空き家や所有者の特定、劣化状況の把握などの先進的な取り組みを調べ、空き家調査マニュアルの作成に反映させる。最低居住水準などを踏まえた賃貸住宅の現状の整理・分析も行う予定だ。」(『建設工業新聞』2013.08.27)
●「復興庁の2014年度予算概算要求が29日、明らかになった。現時点の要求額は前年度比7.1%減の2兆6957億円だが、今後必要に応じて、中間貯蔵施設整備など原子力災害からの復興・再生に関する予算などを追加要求する。復興庁予算に、全国防災事業など各府省所管分を加えた東日本大震災復興特別会計(震災復興特別交付税は事項要求)は17.0%減の3兆6377億円となる。14年度は復興の進展に合わせて重点をシフト、がれき処理を終え、復興まちづくりを本格化する。福島に関しては、避難指示区域の見直し完了を踏まえ、避難者への支援や帰還の加速化を推進。」(『建設通信新聞』2013.08.30)
●福島県いわき市は東日本大震災の津波などで被災した市民向け災害公営住宅の家賃を3年間半額にする措置を決めた。家賃引き下げを願い署名運動に取り阻んだ被災者から「くらし再建の確かなステップアップになる」と喜びの声があがっている。同震災で被災した東北3県(岩手、宮城、福島)で3年間の家賃半額は同市が初めて。(『しんぶん赤旗』2013.08.30より抜粋。)

その他

●東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で貯留タンクから大量の高濃度放射能汚染水が漏れた問題で、漏れ始めた時期は、遅くとも7月上旬からの可能性があるとの見方が浮上した。また、タンクの汚染水漏れを監視するパトロールが大ざっぱで、水たまりや結露の情報も記録として残していなかったことが明らかになった。いずれも27日開かれた原子力規制委員会の汚染水対策検討会で東電が報告した。(『しんぶん赤旗』2013.08.29より抜粋。)