情勢の特徴 - 2013年11月前半
●「政府は日本企業の鉄道や空港などのインフラ輸出を後押しする会社を2014年度に新設する。新会社は海外の鉄道会社などに日本企業と共同で出資し、インフラの運営と整備を一体で受注する『パッケージ型輸出』を目指す。14年度の投融資枠は2000億円に達する可能性がある。アジアの市場の拡大を見込み、公的な資金を活用して受注増を狙う。」(『日本経済新聞』2013.11.01)
●「安倍政権の積極的な財政出動による景気押し上げ効果が一巡しつつある。公共工事の先行指標となる建設会社の請負金額は7〜9月に前年同期比で21%増えたが、前の四半期からはほぼ横ばい。年明けには息切れするとの見方が多い。政府は来春の消費増税も見据えて再び財政出動に動く構えだが、建設業の人手不足や財政再建の問題もあり、景気をどの程度下支えできるかは不透明だ。」(『日本経済新聞』2013.11.05)
●「国土交通省は1日、首都圏空港の機能拡充策を話し合う有識者委員会を発足させ、技術的方策の検討に着手した。国内航空需要の3分の2が集中する成田、羽田両空港で今後予測される需要増に備えるのが狙い。羽田での滑走路増設や成田と羽田に次ぐ第3の空港建設、米軍横田基地の民間利用などを俎上(そじょう)に載せ、技術面から課題を検討。まず東京五輪が開かれる2020年を照準に対策を洗い出す。」(『建設工業新聞』2013.11.05)
●「政府は5日の閣議で、大胆な規制緩和で世界一ビジネスをしやすい都市づくりを誘導する国家戦略特区法案を決定した。今臨時国会に提出し、成立を目指す。東京などの都心部で大規模業務ビルや国際会議場・展示場、マンションの開発を促す都市計画の特例措置を導入。本来は自治体が行う都市計画の許認可を省略して都市計画手続きにかかる手間をなくすほか、都心部でのマンション開発では容積率を緩和して高層化しやすくする。…法案によると、政府はデベロッパーなどが都心部で国内外のビジネスマンが働きやすい施設を整備しやすくするため、都市計画法などの特例措置を講じて自治体による許認可手続きを省略。国と自治体、民間事業者で策定する特区内での開発計画が政府に認定された時点で都市計画も許認可されたとみなす。都心に職住近接環境を整えるため、デベロッパーがマンションを建設する場合に従来の容積率を緩和して高層化しやすくするとともに、用途制度の緩和に必要な建築基準法に基づく大臣手続きも省く。街中ににぎわいを創出するため、道路上にオープンカフェや店舗を設置しやすくするよう道路法上の設置要件を大幅に緩和。現在は沿道などの道路敷地外に余った土地がない場合に限って道路上へのオープンカフェなどの設置が認められるが、この条件をなくす。このほかの規制緩和事項として、世界最高水準の医療サービスを提供できる病院の開設・増床時に基準数以上の病床を設置できるようにすることや、公立学校運営の民間委託なども盛り込まれている。」(『建設工業新聞』2013.11.06)
●「内閣府がまとめた報告書『地域の経済2013』によると、被災3県の津波被害甚大地域にあった約5000社のうち、約4分の1の企業が事業を再開できず、休廃業に至っていることが分かった。…業種別の事業再開状況をみると、建設業は67.7%が12年中に再開し、13年は2.6%となっている。休廃業は28.5%と小売業に次いで2番目に多い。一方、新たに設立された法人数は3県とも震災以降、増加傾向にある。岩手と宮城は11、12年ともほぼすべての業種が前年比増に寄与。特に建設業とサービス業等が増えている。被災3県では事業所数が大きく減少する一方、新設法人件数が大幅に増加していることから、震災前後で産業別の就業構造が変化していると見られている。」(『建設通信新聞』2013.11.07)
●「東京都は7日、2014年度予算の各局の要求状況を公表した。20年夏季五輪の準備費は103億円が盛り込まれた。海外向けの観光PRや外国人対応の医療環境整備など、五輪をにらんだ国際都市づくりを進める。ただ都税の一部を地方に配分する税制改正を国が検討しており、税収の見通しは不透明。昨年末に就任した猪瀬直樹知事が主導する初の予算編成への逆風となる。一般会計の総額は13年度当初予算比2.7%増の6兆4308億円。年 新規事業の要求では中小企業の設備投資を支援する基金の設置(200億円)などが目玉。既存事業では、中央卸売市場の築地市場の移転先となる豊洲新市場の建設工事も本格化し、新市場整備費用は約100億円の大幅増となる366億円を求める。幹線道路沿いのビルの耐震改修促進事業費は1.8倍の296億円としている。『五輪推進費』103億円の内訳は、大会組織委員会への出資金57億円、水泳会場をはじめ都が新設する競技場の一部の基本設計費20億円、大会開催計画の策定費13億円など。」(『日本経済新聞』2013.11.08)
●「建設物価調査会は7日、民間企業設備投資動向調査(9月調査)の結果を発表した。10〜12月の建設投資計画を9月1日時点で聞いた調査で、投資額は前年同期に比べ12.2%増加する見込みだ。内訳は、製造業が58.6%増、非製造業が7.7%増となっている。景気回復傾向を背景に、企業の設備投資も増えてきたとみられる。製造業で投資額が増加するとしたのは、電気機器製造業や機械製造業、化学工業など。一方、非製造業で増加を見込むのは、鉄道業、建設業、不動産業など。非製造業のうち鉄道業では、地震などに備えた安全投資として行う土木工事や、駅周辺の開発などの投資計画が増えているという。」(『建設工業新聞』2013.11.08)
●「国土交通省がまとめた12年度下半期(12年10月〜13年3月)の建築物リフォーム・リニューアル調査結果によると、受注高は前年度同期比11.1%増の4兆7319億円だった。内訳は住宅が13.3%増の1兆8590億円、非住宅が9.8%増の2兆8729億円。工事内容で見ると、住宅、非住宅とも『劣化や壊れた部位の更新・修繕』と『省エネ対策にかかわる工事』の受注件数が多かった。工事の部位別では、住宅では防災関連設備(129.0%増)、非住宅では太陽光発電設備(345.4%増)の受注が特に大きく伸びた。」(『建設工業新聞』2013.11.08)
●「戸建て住宅大手の受注が減速している。現行の消費税率が適用される9月までに駆け込み需要が集中、その反動が出て10月は最大手の積水ハウスや住友林業などが前年同月比で2ケタの大幅減となった。来年度の受注にまで影響が長引くとの見方もあり、各社は新商品の投入や展示場の刷新など需要喚起の対策に乗り出している。…注文住宅は契約から引き渡しまで時間がかかるため、来春の消費増税に向け『経過措置』が設けられた。9月までに契約しておけば、来年4月以降に引き渡しても現行の5%の税率が適用される。このため、住宅各社の9月の受注は2〜7割増えていた。業界の予測では、今年度の住宅着工は9月までの好調が効いて、95万戸と前年度比で6%増える見通し。ただ、来年度以降は見通しにくい。消費税率が5%に上がった97年度は18%減と大きく落ちこんだ。」(『日本経済新聞』2013.11.09)
●「東京電力福島第1原子力発電所の事故後の対応で、原発周辺の土をはぎとる『除染』の費用を巡り国と東電による分担の議論が週明けから本格化する。与党の提言を受け政府は『東電の全額負担』の原則を見直す方針。ただ負担の割合や財源は詰めを残す。東電の再建計画の練り直しや予算編成は迫り、年内に一定の結論を出す必要がある。…提言の最大の柱は除染と、除染ではいだ土をためる『中間貯蔵施設』の費用の一部で国の負担を求めたことだ。いまは除染特措法で東電の全額負担が原則。しかし東電は賠償の支払いが3兆円を超え、廃炉や汚染水対策の費用もかさむ。東電に任せたままでは除染が進まず、福島の復興も遅れると判断した。提言は費用を3つに分けて@計画済みの除染は東電に請求A2度目の除染や健康診断など住民の帰還支援策は国が負担B中間貯蔵施設は国が負担――という案を示した。ただ主に3点で具体論に踏み込めていない。」(『日本経済新聞』2013.11.10)
●「海外建設協会(白石達会長)がまとめた会員48社の海外建設受注動向によると、2013年度上期の海外受注額は前年同期比33.5%増の7011億9400万円となった。アジアや中東、北米での大規模案件の受注が全体を押し上げた。…受注総額のうち、現地法人は26.2%増の4296億0900万円、本邦法人は46.7%増の2715億8500万円。…本邦法人では、アジアがインドネシアでの大型受注などによって58.3%増の2119億3800万円だった。現地法人では、北米が92.7%増の1509億8500万円と大きく伸びており、北米での建築需要を日本企業が取り込む活動が効を奏しているとみられる。このほか、中東は本邦、現法あわせて141.1%増の571億5500万円となった。大型の都市開発案件の受注が寄与し、『中東が再び増加基調にある』(海建協)とみている。」(『建設通信新聞』2013.11.11)
●全商連付属・中小商工業研究所は1日、13年下期営業動向調査の結果をまとめ、発表した。仕入れ値の高騰に加え、消費税増税後の景気後退などを想定し、次期経営判断DIは前回調査に比べ8ポイントも悪化。また消費税が10%になった場合、70%を超える事業者が「価格に転嫁できない」と回答するなど、アベノミクス効果が中小業者に届いていないことが浮き彫りになるとともに、先行き不安が顕著に表れた結果となっている。今期は、前回に続き消費税増税が経営に与える影響の特別調査を実施した。消費税を売り上げ・単価に「完全に転嫁できていない」とした事業者は52.9%だが、消費税が10%になった場合の見通しでは、70.7%が「完全には転嫁できない」と回答。さらに10%になると、「利益が減る」(35.1%)、「売り上げが減る(30.5%)と答えた事業者はともに30%を超え、「廃業を考えざるを得ない」と答えた事業者は11.1%に上るなど、消費税増税が経営に与える深刻さを示している。「経営上困っていること」への回答でも、「消費税問題」は31%で「仕事・顧客減」(60.6%)に次いで2位。「経営の勉強の希望」でも「消費税対策」が24.9%で、同業種の交流、商売の工夫磨きに次いで、3位となっている。(『全国商工新聞』2013.11.11より抜粋。)
●「国土交通省は11日、2013年度上期(4−9月)の建設工事受注動態統計調査報告をまとめた。受注総額は前年同期比17.9%増の38兆5279億円。元請受注高は24.2%増の27兆0605億円で、うち公共機関からの受注工事は軍2%増の8兆0319億円、民間などからの受注工事は21.2%増の19兆0286億円と、いずれも大幅に増加した。前半は補正予算による公共工事がけん引し、後半は特に9月に顕著だった民間工事が寄与した。一方、下請受注高は11兆4673億円で5.1%増にとどまり、元請けの手持ちが多い中で下請けまで契約が進んでいない状況が浮き彫りになっている。」(『建設通信新聞』2013.11.12)
●「枠組み足場やパイプなど一部の仮設機材で供給不足が出ている。軽仮設リース業協会(関山正会長)によると、『消費増税前の駆け込み需要などで、全般的に需要が増加している』ため、リニューアル工事に多く使われる幅600ミリの狭い枠組み足場、損傷の頻度が高い足場板などで、在庫がなくなっているという。機材メーカーもフル生産のため、注文しても納期が遅れているのが現状だ。」(『建設工業新聞』2013.11.13)
●「国土交通省は13日、『下水道施設の運営におけるPPP/PFIの活用に関する検討会』(座長・滝沢智東大大学院教授)の第7回会合を開いた。民間活力活用の新たな手法として普及拡大が期待されているコンセッション(運営権付与)方式のスキーム構築に向け、事業者の選定プロセスなどを議論した。国交省は、要求水準書作成の前段などに行う競争的対話や多段階選抜による応募者の絞り込みが、民間能力の発揮や官民双方の負担軽減などに有効との考えを示した。」(『建設通信新聞』2013.11.14)
●内閣府が14日発表した2013年7〜9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.5%増、年率換算で1.9%増となった。4四半期連続のプラスになったが、年率で3.8%増だった前期に比べて伸び率は大きく鈍化した。雇用者報酬は0.6%減少し、「アベノミクス」による「景気回復」が掛け声倒れだということが改めて示された。(『しんぶん赤旗』2013.11.15より抜粋。)
●「国土交通省は、公共工事を発注する地方自治体のマンパワー不足を補うため、各都道府県が外郭団体として設けている建設技術センターの活用拡大を促す。同センターの受託業務は現在、都道府県の案件を対象にした発注者支援にとどまるケースが多いため、対象を市町村にまで広げ、予定価格の算出など積算業務を支援することを想定している。建設技術センターは、各都道府県が外郭団体として設置。各都道府県が行う土木関係の事業を主体に、計画立案から完成検査までの包括的な技術支援に加え、積算資料の作成や総合評価方式の入札など、各段階での部分的な支援を手掛けている。ただ、受託する業務が都道府県を対象にした発注者支援にとどまっているケースが多い。そこで国交省は、『管内市町村にまで業務範囲を拡充することができないか』(入札制度企画指導室)とみて、会議で活用拡大を提案し、都道府県と意見を交換することにした。」(『建設工業新聞』2013.11.01)
●「与党が議員立法で提出した『防災・減災等に資する国土強執化基本法案(国土強執化基本法案)』の審議が衆議院災害対策特別委員会で1日に始まった。法案が成立すれば、防災・減災に関する政策を重点化するために国や地方自治体それぞれの対策の見直しを促すことになり、将来的な施策や事業も見通せると期待されている。…同法案は、国と自治体それぞれの全体計画や施策などに防災・減災の取り組みを義務付けるもの。防災・減災の視点を取り入れた施策を重点化することで、平時からの国や地域の競争力を高める効果もある。1つの基本法の考え方が幅広い分野に関係することから、アンブレラ法と呼ばれる。基本法案が成立すると、政府が設置する国土強執化推進本部で、国の計画に防災・減災の視点を盛り込む上での指針となる『国土強執化基本計画』を作成する予定。これをもとに、都道府県や市町村にも施策に防災・減災の視点を打ち出す指針となる『国土強執化地域計画』の策定を義務付ける。」(『建設通信新聞』2013.11.05)
●「北海道建設部は、2013年度上期(4−9月)の入札における不調・不落工事の発生状況をまとめた。1563件の入札のうち、9.9%に当たる154件が不調・不落工事だった。前年同期に比べ発生件数は111件、発生割合は7ポイント増加している。同部では不調・不落となった工事については、工事内容の変更、入札参加要件の緩和、状況に応じた入札方式の活用などを行い、再度入札を実施する。再度入札しても、年度内に竣工できない工事や冬季の品質管理が困難な工事など、施工時期に制約がある工事は、可能な限り翌年度に予算を繰り越すなどの措置を講じる。13年度上期の不調・不落工事のうち、応札者がいない不調は96件で、全体の6.1%、応札者はいたものの入札額が予定価格を超過するなどした不落は58件、3.7%だった。…同部では発生理由として、請負工事業者が維持補修工事など敬遠、技術者や技能労働者の不足、資材の調達が困難といったことを挙げている。人材・資材不足の対応は、技術者不足に対して、発注ロットの拡大、余裕ある工期の設定、選択工期制度の活用などに取り組む。積算価格の適切な設定に向けては、生コンなどの主要資材単価の毎月の改定、最新単価を用いた予定価格の算定、仮設工の適切な計上、施工個所が点在する工事の間接費の積算、遠隔地からの建設資材調達にかかわる設計変更などを実施する。」(『建設通信新聞』2013.11.07)
●「自民党で、公共工事品質確保促進法(品確法)の改正法案作成に向けた議論が始まった。7日に開いた品確法改正検討プロジェクトチーム(PT)準備会ではPT座長として佐藤信秋参院議員を選出した。佐藤座長は会合後、『年内には改正法実の骨子は固めたい』との見通しを明らかにした。これまでの党内での議論を踏まえ7日の会合では、法目的や発注者責任から予定価格のあり方、発注者支援まで品確法全条文にわたる改正を行うことを確認した。実現すれば、設計・コンサル・工事に限定した公共調達基本法の位置付けになる。改正品確法案は、従来の法目的と発注者責任として打ち出した『品質確保』に、新たに建設産業界と発注者自身の『担い手確保』を加えるのが大きな特徴。その上で、インフラの品質確保と担い手確保という法目的を達成するための課題、例えば画一的な入札契約制度や市場変化に追いつかない官積算、予定価格のあり方などの対応を具体的に明記することで、国だけでなく地方自治体に対し、産業政策と入札契約制度改革を促す。」(『建設通信新聞』2013.11.11)
●「国土交通省は水資源開発基本計画を見直す。今年度内に基本的な方向性を詰め、2014年度から水系ごとに具体的な対策を検討する予定だ。現行計画の多くは15年度までが目標期間となっており、いずれも施設整備状況は高い水準にあるが、インフラの老朽化や大規模災害への対応、地球温暖化による気候変動の影響といった状況変化を踏まえ、新たに必要となるハード対策が盛り込まれる可能性は高い。」(『建設通信新聞』2013.11.12)
●「国土交通省は15日、多様な入札契約方式の導入を議論する『発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会』を立ち上げる。事業の特性に応じた入札契約方式を選択できるよう、発注者としての対応策を検討する場とする。今後、月1回ペースで会合を重ね、今年度末に一定の方向性を示したい考え。安全なインフラを持続的に提供するためのシステム構築を主眼に、公共工事の品質確保を促進する方式の活用を検討する」(『建設通信新聞』2013.11.14)
●「国土交通省は、1日以降に契約する直轄工事の現場を対象に、今年度から大幅に引き上げた設計労務単価を適用していることを明確にするためのポスターの掲示を始める。工事の受注者に対して掲示を要請するよう、10月31日付で各地方整備局や北海道開発局、沖縄総合事務局に通知したほか、都道府県や業界100団体にも周知している。ポスターの掲示は監督職員が確認するなどして実施を徹底させる方針。取り組みを認知させることで技能労働者の賃金水準の確保や社会保険への加入をより一層促す。」(『建設通信新聞』2013.11.05)
●「建設工事現場での足場からの墜落・転落事故は近年、減少傾向だったが、2011年度は前年度から増加に転じた。足場からの墜落・転落による死亡災害30件のうち28件が建設業の事故で、休業4日以上の死傷災害871件のうち783件が建設業だった。建設業の死傷事故では、『木造家屋建築工事業(木造建築)』が209件にのぼる。厚生労働省は2009年に改正労働安全衛生規則を施行するなど、足場からの墜落防止対策を講じている。現在、検討会で墜落防止措置の効果検証・評価を進めているが、全国建設労働組合総連合(全建総連)は検討会で、『一人親方の災害を含めた検討・対策』求めた。全建総連によると過去9年間の組合員死亡者は369人。このうち、厚労省の死亡者統計に表記されていない、一人親方・事業主の死亡災害が51.2%(189人)を占めるという。全建総連は『小規模事業者への安全教育や安全確保の情報が少ないことで事故に遭遇していることが想定される』として、一人親方等が就労する場合の安全確保対策が『特別に必要』と訴える。建設就業者は減少傾向にある一方、一人親方等の労災特別加入者は増加している。全建総連は『経費削減の必要性から、労災元請責任まで回避したいとする元請けからの圧力』『事業者による消費税課税や社会保険加入負担の回避等』があると分析。さらに、実態は労働者だが『一人親方労災への加入が強要される』といった状況があるという。社会保険加入の問題でも、一人親方の働き方に応じた保険加入は重要な課題となっている。労働災害防止をはじめとした、一人親方への対策がますます重要になっている。」(『日本住宅新聞』2013.11.05)
●「熊本県は、新建設産業振興プランの後期アクションプランの素案をまとめた。計画期間は14年度からの2カ年。将来にわたり地域を支える足腰の強い建設産業を育てるため、若手技術者や技能労働者の確保・育成などに力を入れる。主な新規施策では県の補助金を受け工事を発注する事業者に県内企業への発注を要請。新規学卒者が一定期間在籍している場合の格付けでの加点措置や若手技術者の資格取得への支援などを検討する。登録基幹技能者の配置に対する評価も検討する。」(『建設工業新聞』2013.11.07)
●「国土交通省は、6月に開設した新労務単価フォローアップ相談ダイヤルの10月未段階の相談受け付け状況をまとめた。10月単月の受け付けは17件で、累計75件。10月は、下請建設業者からの相談が6件と最も多く、『現場の末端から賃金支払いに絡んだ生の声を拾い上げるという、相談ダイヤル本来の目的が浸透してきたようだ』(建設業課)としている。17件の相談者別内訳は、発注者1件、元請業者4件、下請業者6件、労働者1件、その他5件。寄せられた主な相談内容を見ると、社会保険未加入対策や大幅に引き上げた13年度公共工事設計労務単価の取り組みなどが民間工事の契約や支払いに反映されておらず、『元請業者が発注者に交捗もしてくれない』と現状を訴える声があった。…元請業者に対する相談内容では、『ゼネコンの現場社員が専門工事業者に比べ、労務単価引き上げに関して反応が鈍い』との指摘や、『落札率100%で請け負っているわけではないので、(技能労働者の)賃金も引き上げられないと言われる』と訴える声も聞かれた。」(『建設工業新聞』2013.11.12)
●「建設業振興基金が設置した『建設産業人材確保・育成方針策定会議』(第5回)が12日、静岡県富士宮市の富士教育訓練センターで開かれ、これまで議論を重ねてきた最終報告の骨子をまとめた。同センターを人材確保・育成の中核的センターと位置付け、ハード・ソフトにわたる機能の拡充策を提言。老朽化した教育訓練施設、宿泊施設の建て替えや、インターネット環境の整備、他の教育機関や地域の訓棟施設との連携スキームを構築・実施することなどを盛り込む。…骨子によると、若年就業者の減少と高齢化の進行など建設産業の人材を巡る課題に対して、OFF−JTを活用した人材育成や教育訓練体系の再構築、若年者が建設産業を体験実習できる機会の提供や仕組みづくり、さらに、建設産業の魅力や役割を伝える広報が必要だと指摘。これらの課題を解決するため、▽体系的な教育訓練の実施▽教育機関などとの連携強化▽社会や家庭、学生・生徒に向けた広報活動▽中核的なセンターの機能――の四つの項目で方向性を示した。中核的センターでは、建設産業の教育訓練体系を再構築するなどの課題に一体的に取り組むことを想定。富士教育訓練センターがその機能を担い、建設産業、教育機関、地域・企業の訓練施設が連携する際の核として、行政機関との連絡調整、教育プログラムやテキストの開発、指導者の養成、関連情報の蓄積と提供などの役割を果たすとした。」(『建設工業新聞』2013.11.13)
●「NPO法人の建設政策研究所(理事長・松丸和夫中央大学教授)は、建設技能労働者の社会保険未加入対策で、『標準見積書方式による下請業者の法定福利費確保に関する見解と提言』をまとめた。社会保険加入に必要な法定福利費の確保について、『別枠支給・事後精算方式』を導入するよう提案している。…提言では、標準見積書方式について、見積書の提出を通じ業者間の対等・公正な取引ルールが確立される可能性があり、若年労働者の確保に向けた業界全体の取り組みにつながることなど評価すべき点が多いとした。一方で、▽重層下請構造の下では2次下請以下の業者に法定福利費が行き渡らない▽見積書により法定福利費を確保しても労務費など他の工事費が減額される▽重層下請構造の下では支払原資(法定福利費)が『中抜き』される恐れがある―などの懸念を挙げ、その解決策として別枠支給・事後精算方式を提案した。…韓国では、落札率が低いほど社会保険料の確保が難しくなる事情を考慮し、07年度から公共工事、08年度から民間工事でも国民年金と健康保険料を対象にこの方式が導入されているという。」(『建設工業新聞』2013.11.13)
●「国土交通省が10月31日発表した13年度上半期(4〜9月)の新設住宅着工戸数は49万9032戸と前年度同期を12.7%上回った。14年4月の消費増税を控え、10月1日以前に工事契約を結べば増税以降に物件を引き渡しても旧税率が適用される特例措置があるため、主に持ち家と貸家で駆け込み需要があり、全体を押し上げた。年度半期ベースで見ると、着工戸数はリーマンショック直前の08年度上期に次ぐ水準で、増加率は同様に消費増税を翌年に控えていた96年度上期に次ぐ高水準となった。」(『建設工業新聞』2013.11.01)
●「国土交通省が10月31日に発表した建設大手50社の受注動態統計調査によると、13年度上半期(4〜9月)の受注総額は前年度同期比34.9%増の6兆5983億円となった。12年度補正予算の繰り越しと東日本大震災の復興工事などが増加要因で、リーマンショック直前の08年度上期を上回る高水準。…国内受注高は33.7%増の6兆2870億円で、うち民間工事が39.2%増の4兆6303億円、公共工事が25.5%増の1兆4224億円。海外受注は66.8%増の3112億円だった。」(『建設工業新聞』2013.11.01)
●「積水ハウスは約600億円を投じ、米国で富裕層向け賃貸住宅事業に乗り出す。今後2年程度でシアトル、ロサンゼルスなどIT(情報技術)系企業が集積している都市に合計2300戸を建設する。米国の住宅市況は一段と回復すると判断。すでに同国で手がけている分譲住宅などと合わせて、2017年度に13年度比2倍の550億円の売上高を目指す。」(『日本経済新聞』2013.11.07)
●「主要ゼネコンの13年4〜9月期決算の発表が来週にかけて本格化するのを前に、売上高などを上方修正する動きが相次いでいる。7日午後4時までに業績予想の修正を上位25社のうち18社が発表。手持ち工事の進ちょくなどを主な理由に10社が売上高を上方修正した。売上高の増加は利益面にも影響。工事の採算性向上や一般管理費の削減などの対策も進み、業績予想を修正した社の大半は営業・経常利益も上方修正している。」(『建設工業新聞』2013.11.08)
●「大和ハウス工業は8日、2014年3月期の連結純利益が前期比33%増の880億円になりそうだと発表した。従来予想を150億円上回り、過去最高を更新する。消費増税前の駆け込み需要などを背景に、戸建てと賃貸住宅が伸びる。年配当は期初予想から5円上積みして43円(前期は35円)にする。売上高は従来予想を1500億円上回り、2兆5500億円と27%増える見通し。消費増税前の駆け込み需要で、主力の戸建て住宅は8%増の3800億円を見込む。金利の先高観もあり、遊休地に賃貸住宅を建設する動きも活発。賃貸住宅は14%増の6740億円に膨らむ。」(『日本経済新聞』2013.11.09)
●「不動産大手5社の2013年4〜9月期決算が8日、出そろった。景況感改善や不動産価格の先高観を受け、好調なマンション販売がけん引。連結経常利益は軒並み前年同期に比べて2ケタ増益になった。10月以降もマンション販売の好調が続き、14年3月期業績は上振れる公算が大きい。8日に決算発表した東急不動産ホールディングス(4〜9月期は東急不動産の実績)の連結経常利益は200億円と21%増えた。中古マンションや投資家向け物件の仲介事業が拡大した。三井不動産も仲介件数が上期では過去最高を更新し、増益の原動力になった。住友不動産は過去に開発した新築マンションの売れ行きが好調で、不動産販売事業の営業利益は266億円と81%増加した。三菱地所はロンドンや東京など、国内外のオフィスビルの売却が収益を押し上げた。」(『日本経済新聞』2013.11.09)
●上場ゼネコン大手4社の13年4〜9月期連結決算が12日出そろった。公共投資の増加と景気回復傾向に消費増税前の駆け込み需要も加わり、業績の先行指標となる単体受注高が27%〜82%の幅で増えた。手持ち工事の消化で全社が増収となったが、労務費高騰の影響で主力の建築の採算が悪化。完成工事総利益率(粗利益率、単体ベース)は4社とも前年同期を下回った。…国内の工事需要は全般的に旺盛で、海外の大型工事を受注した社もあり、4〜9月期の単体受注高が好調に推移。…建築の単体粗利益率は1.1〜7.8%にとどまった。生コンや鋼材の価格が上昇傾向にある上、労務費は『東北は東日本大震災前の2倍になった』との声も出ている。資材費や労務費の上昇を想定していなかった東日本大震災の前後に受注した工事の採算が厳しくなったり、工程を順守するための出費が増えていたりするケースもあり、4社とも『労務を含む適切な施工体制の確保』を経営課題に挙げる。…各社とも『利益は今期が底』(経理担当者)とみて、収益改善の取り組みに力を入れる考え。単体受注の通期予想を前期並みとした背景には利益改善の意向があり、採算をより重視した受注活動が活発化しそうだ。(『建設工業新聞』2013.11.13)
●「太平洋セメント、住友大阪セメント、三菱マテリアル、宇部興産のセメント大手4社の13年4〜9月期連結決算が12日までに出そろった。東日本大震災の復興工事の本格化に加え、首都圏での旺盛な再開発事業、大型台風による災害復旧事業などで全国的に需要が増え、全社が増収、営業増益となった。4〜9月の国内セメント需要(販売と輸入の合計)は、セメント協会(矢尾宏会長)の集計では前年同期比7.3%増の2290.5万トン。地区別に見ると、東北地区が復興需要の本格化で25.6%増、九州地区が大型台風被害に伴う復旧工事などで16.1%増となった。セメント専業2社の国内販売量は、太平洋が67.7万ドル増の804.2万トン(受託販売分含む)、住友大阪が8.9万トン増の453.7万トンだった。」(『建設工業新聞』2013.11.13)
●「東日本建設業保証は13日、建設業の財務統計指標『2012年度決算分析』を発表した。調査対象企業平均の総資本経常利益率(ROA)は、前年度の0.00%から、1.92%に上昇し、現在の分析となった06年度決算以降初のプラスとなった。受注量の増加に伴って、利益率のほか、自己資本比率、1人当たりの付加価値も改善した。生産性の代表指標である1人当たりの付加価値では、06年度決算以降初めて東京が1位の座を譲り、宮城県が最も高くなった。…利益率が改善し、これまでの蓄積である自己資本比率も、0.83ポイント上昇して22.30%となった。業種別では、電気が36.27%と最も高く、土木が17.00%と最も低い。業種別では、総資本経常利益率でも電気が2.96%と最も高く、土木が1.57%と最も低かった。」(『建設通信新聞』2013.11.14)
●「不動産協会の木村惠司理事長(三菱地所会長)は14日、技能労働者の処遇改善や資材価格上昇を受けた建築費高騰をテーマに、日本建設業連合会の中村満義会長と12日に行った会合について『相手(施工者側)の構造問題を含め、われわれから提案できることはある。互いに問題を持ち寄って深掘りしたい』と、今後のトップ会談にも前向きな姿勢を示した。また2020年東京五輪で整備する選手村の利活用についても『東京都の方針が明確ではない』としつつ『個社としても、できれば何らかの形で事業に参画したい』との考えを表明した。不動産協会と日建連のトップ会談は日建連が技能労働者の処遇改善の取り組みを民間発注者にも理解してもらう目的で不動産協会に要請し実現した。建築費上昇を理由に、民間発注者団体と受注者団体のトップが会談するのは異例。木村理事長は14日の会見で、『われわれ(民間発注者)の感覚で建築費は2、3割既に上昇している。われわれも努力するが、日建連に対しては重層化解消を建設産業の自助努力として取り組んでほしいと要請した』ことを明らかにした…労務・資材価格上昇による建築費高騰への民間発注者としての具体的対応については、『建築費の2割上昇分をエンドユーザーに価格転嫁する場合、1割の転嫁もユーザー数が最も多いボリュームゾーン(販売価格3000万円から8000万円)では難しい』とマンション販売価格に転嫁することができないとの見方も示した。」(『建設通信新聞』2013.11.15)
●「主要ゼネコン26社の13年4〜9月期決算が13日までに出そろった。合併前の前年同期との比較ができない安藤ハザマを除く25社のうち、24社の受注高が前年同期の実績を上回った。手持ち工事が進ちょくしたことなどから21社は増収を達成。本業のもうけを示す営業損益は、増収が大きく寄与して20社が黒字を確保した。14年3月期は16社が増収・営業増益を見込んでいる。」(『建設工業新聞』2013.11.15)
●「国土交通省は、地方公共団体が管理する公営住宅の点検や老朽化対策・補修の実施状況を調査し、将来を見据えた効率的で実効性のある方策を検討する。取り組みの進行度合いや自治体規模ごとに、計10程度の地方公共団体を抽出してヒアリングを実施。それぞれの地域が抱える課題点を整理した上で、管理者側の点検基準・マニュアルに記載すべき項目を洗い出す。国の長寿命化計画策定指針の改定も検討する。国交省によると、公営住宅は全国に約217万戸あり、このうち約80万戸は1965年以前に建設され、間もなく築後50年が経過する。今後も古い建物は増加し、適切なストックマネジメントが求められている。公営住宅は建築基準法に基づく法定点検のほか、地方公共団体独自の任意点検などが行われ、必要に応じて老朽化対策や補修が施されている。しかし、予算や技術者の不足といった問題から、地方公共団体ごとに点検や補修の実施状況に差が生じ、特に小規模な自治体ほど体制が不十分になっているという。」(『建設通信新聞』2013.11.07)
●「環境省は11日、南海トラフや首都直下の巨大地震に備えた廃棄物処理システムの強執化にかかわる総合的対策を検討する『巨大地震発生時における災害廃棄物対策検討委員会』(委員長・酒井伸一京大環境安全保健機構付属環境科学センター長)を開き、JAPIC(日本プロジェクト産業協議会)やJEFMA(日本環境衛生施設工業会)など関係5機関を対象にヒアリングを実施した。…JAPICによると、住宅密集地域は大規模公園などの面積が極めて少ないことから、がれきの仮置き場確保が困難になるという。また、がれきの輸送が道路に限定されるため、運搬ルートが寸断する可能性が高く、迅速な処理へのハードルが高いと指摘した。今後も検討を続け、仮置き場の必要数や設置場所、東日本大震災を踏まえたがれき輸送車両台数や重機台数などの必要台数を示す予定だ。JEFMAは、東日本大震災によるごみ焼却施設の被害状況をもとに、震度4以上で被災し、震度が大きくなるとともに施設の被災率が高くなったとし、施設の停止期間(復旧まで)が震度6弱で1カ月程度、震度6以上で最長4カ月程度とした。被災施設の早期復旧には、電源や水、燃料なとのユーティリティーと施設運転要員の確保が重要になるとした。…検討委は、次回会合でも関係機関からの聞き取りを実施する。その後、巨大地震への対応策と、廃棄物処理施設への防災用設備導入・機材備蓄、体制強化の取り組みの基本的方向を検討し、13年度末に中間報告をまとめる。」(『建設工業新聞』2013.11.13)
●「米政府は、2008年の金融危機後に米住宅金融2公社の救済で使った公的資金1874億ドル(約18兆4000億円)のほぼ全額を年内に回収する。米住宅市場の回復を支えに2公社の業績が好転。政府は2公社から巨額の配当を得た。公的資金の回収にメドがついたことで、2公社の事業縮小など住宅金融市場の改革議論が活発になりそうだ。」(『日本経済新聞』2013.11.08)
●「フィリピン中部のレイテ島などが猛烈な台風30号に襲われ、死者・行方不明者が1万人に達する恐れがある。強い竜巻並みの暴風雨に加え、津波のような高潮の発生で被害がさらに広がった。レイテ島は貧困層が多い地域であり、災害対策の甘さも指摘されている。…政府の11日夜の公式発表によれば台風30号の死者は1774人、行方不明者は82人。だがAP通信などは『死者は1万人に達する可能性がある』との地元警察の情報を伝えている。…台風30号が甚大な被害をもたらした理由の一つは強い竜巻並みの暴風雨だ。レイテ島の警察当局は、台風30号が通過した地域では全体の70〜80%の建物が破壊されたとの見方を示す。第2の理由は高潮の発生だ。台風30号は中心気圧が895号ヘクトパスカルと非常に低かった。中心気圧が低いほど海面が持ち上げられて高潮になりやすく、さらに強風が陸に向かって吹き寄せると、大きな高潮が発生する。被災者によると、暴風雨とともに数メートルの津波のような高潮が発生。海面が持ち上がって、押し寄せてくるような印象だった。海岸から70〜80メートルも離れた場所にある不二製油のレイテ島の工場にも高潮は及び、大人の胸の高さに達したという。台風への備えも弱かった。レイテ島の主要産業は農業や漁業で、マニラ首都圏に比べると所得水準は格段に低い。簡単な木造やトタン屋根などの家屋が少なくなく、日本大学の山川修治教授は『災害対策が遅れていたのではないか』とみる。」(『日本経済新聞』2013.11.12)