情勢の特徴 - 2013年11月後半
●「来春の消費増税をにらんだ駆け込み需要後も首都圏のマンション販売が堅調だ。不動産経済研究所(東京・新宿)が18日発表した10月の首都圏の新築マンション発売戸数は前年同月比21.4%増加した。9月(77.3%)に比べ伸び率は鈍化したが6ヵ月連続で前年実績を上回った。消費者が住宅ローン減税の効果を見極め購入するケースも多い。近畿では33.4%減と反動減が目立った。」(『日本経済新聞』2013.11.19)
●「ゼネコンの民間受注額の3分の1を占める、不動産業の設備投資意欲回復が鮮明になりつつある。日銀が19日公表した。9月末の貸出先別貸出金調査で、不動産業の設備投資を目的にした新規借入額は2兆5785億円とリーマン・ショック前の水準を超えた。製造業など各業種別の設備投資向け新規融資合計額も同ショック以前の水準である10兆円台を確保した。デフレ脱却と日本経済再生へ、まず公共投資がけん引し内需が拡大するという景気回復に向けた好循環の兆しが、資金調達の側面からも浮き彫りになった格好だ。」(『建設通信新聞』2013.11.20)
●「国土交通省は、14年4月1日に税率が引き上げられる消費税の転嫁が適正に進むよう、消費税転嫁対策特別措置法(10月1日施行)の順守徹底を求める通知を18日付で建設業100団体に出した。特措法が禁じる『減額』『買いたたき』『商品購入、役務利用、利益提供の要請』などを建設事業に照らして列挙。傘下企業への周知を促した。特措法違反ではないものの、建設業法上問題となる行為も併せて提示し、法令順守を求めた。」(『建設工業新聞』2013.11.20)
●「中古マンションの販売価格の上昇傾向が続いている。民間調査会社の東京カンテイ(東京・品川)のまとめでは、10月の首都圏の平均価格(70平方メートル換算)は前年同月比0.2%上昇し10か月ぶりの高水準となった。来春の消費増税をにらんだ新築の駆け込み需要が一巡した後でも、マンションの売り手は買い手の購入意欲が衰えないとみて強気の価格提示をしている。」(『日本経済新聞』2013.11.22)
●「政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)が20日開かれ、今後の社会資本整備に当たっては財政再建の観点の元、民間活力の最大限の活用を大原則とすべきとの意見が民間議員から出された。PPP・PFIの大胆な活用を求めており、取り組みが比較的進んでいる公営住宅分野では導入可能性調査を原則化する『ユニバーサル・テスティング』の採用を提案した。合わせて、2014年度当初の公共事業関係予算の抑制も促した。社会資本整備について民間議員は、シナジー創出効果を含めた費用対効果の重視、当初から長寿命化や維持管理・更新コストの削減を考慮した設計などがかぎになるとしたほか、人口減少・高齢化のもとではすべてを維持管理・更新する必要はないと提言した。…予算面では全体マイナスにする必要がある中、社会資本整備も例外ではないとし、実質的に削減を求めた。」(『建設通信新聞』2013.11.22)
●「建設投資の先行指標となる工場立地や不動産取得などに明るさが見えてきた。建設投資が長く縮小し続けてきたため、いまだ建設業は不安感が払しょくできず、先行き積極姿勢を躊躇する声が多いものの、先行指標からは全国的な工事準備物件が積み上がっていることが見て取れる。北海道建設業信用保証と東日本建設業保証、西日本建設業保証が毎月発表している公共工事事前払金保証統計によると、10月の請負金額は3.5%増、4月からの累計は20.4%増と堅調な増加が見られた。…公共だけでなく、民間からの受注も堅調だ。日本建設業連合会が毎月発表している会員98社の受注額でも、4−9月の累計民間受注額は43.1%増と着実に増加している。9月に消費増税前の駆け込みがあった影響はあるものの、2013年度累計がリーマン・ショックで激減した08年度を5年ぶりに上回るのは確実な情勢だ。…民間投資の先行きに一定の底堅さが感じられるのとあわせて、公共投資でも工事発注可能物件が積み上がっている。3保証会社の公共工事前払金保証統計によると設計・調査・測量の請負金額が3月以降に急増しており、特に設計と調査については4月から7ヵ月連続で前年同月比増を確保。測量も7月から4ヵ月連続の前年同月比増となっている。これまで公共工事の予算が確保されても『設計などが進んでおらず、工事発注できる案件がない』と言われることが多く、確実な工事発注につながらなかったことがあった。しかし、設計、調査、測量済み案件が積み上がっており、予算され確保できれば、すぐにでも工事発注できる案件の準備が進んでいる。」(『建設通信新聞』2013.11.25)
●「国土交通省は22日、14年夏に策定する下水道の中長期政策指針『下水道ビジョン2100(仮称)』に盛り込む長期目標の案をまとめた。今後30~50年程度かけて下水道事業を展開する民間企業の活用・成長を促進。PPP・PFIで公営下水道事業運営全般に民間企業が参画できる仕組みを構築する。日本の民間企業が世界の水事業シェアの大半を占める欧州企業群『水メジャー』の事業規模に追いつけるような環境整備も進める。…案によると、長期目標は▽水・資源・エネルギー循環のみちの構築(水・資源・エネルギーの一体マネジメントによる最適化)▽持続可能性の追求(人・モノ・カネの持続可能な一体管理)▽新たな価値共創(多様な主体・分野との連携による貢献分野の拡大)――の三つの重点課題に分けて設定した。三つの課題で共通して力を入れるのが、民間企業の活用と成長の促進。PPP・PFIによる官民連携の事業手法などを積極的に活用し、コンセッション(運営権売却)などの手法で民間企業が公営下水道の事業運営全般に参画できる仕組みを構築する。下水道施設と民間収益施設を併設する手法なども活用。都市ガスや電力に再利用できる下水汚泥のバイオ燃料化施設もすべての処理場(現行設置率は半分以下)に普及させる考えだ。日本の民間企業の海外進出支援にも一段と力を入れる。年内にも発行される下水道アセットマネジメントシステムの新たな国際規格『ISO55001』に日本の企業が適応しやすくする独自の認証指針を整備。海外市場で活用できる人材の発掘・育成も支援し、日本の企業の事業規模を欧州の水メジャーと並ぶまでに成長させたい考えだ。」(『建設工業新聞』2013.11.25)
●「日本スポーツ振興センター(JSC)は、2020年東京五輪のメーン会場となる国立競技場(東京都新宿区)の改築に向けた基本設計条件をまとめた。建築家や市民団体から課題と指摘された規模は、国際コンペで採用された英国在住の建築家ザハ・ハディド氏による流線形のデザインを残したまま、全長を縮小し、延べ床面積を29万平方メートルから約22万平方メートルまで削減。既存施設の解体費や周辺整備費を含む総工費は1852億円と試算した。…基本設計条件では、アーチの部分などを簡素化し、全体を南北に長い楕円系から円形に近い形に変更。これにより施設の全長が縮小するため、競技場の建設予定地となっていた南側の敷地は都立明治公園として整備する。」(『建設工業新聞』2013.11.27)
●「来春の消費増税に向けて政府が検討する経済対策の大枠が固まった。インフラ設備の防災・減災のための公共事業を1兆円程度積み増すほか、低所得者向など家庭への現金給付を5千億円規模計上するのが柱。女性や若者の雇用促進策も盛り込み、来年度前半の景気の落ち込みを和らげる。…対策の柱が約1兆円の公共事業だ。首都圏の3つの環状道路の整備や公共施設の耐震化を進めるほか、台風災害の復旧に取り組み。全国の学校の耐震化事業も補正予算で前倒し計上する方針。景気押上げの即効性が高い公共事業に対策全体の5分の1を充てる考え。」(『日本経済新聞』2013.11.28)
●「政府が12月上旬にまとめる5兆円規模の新たな経済対策に向けて国土交通省が検討中の主要項目が27日、明らかになった。『競争力強化策』『高齢者・女性・若者向け施策』『復興、防災・安全対策の加速』を柱に、物流ネットワーク強化につながる都市部の環状道路整備や国際コンテナ戦略港湾、首都圏空港の機能強化などを盛り込む。経済対策の裏付けとなる13年度補正予算で実施する公共工事の円滑施工を確保できるようにする方策も検討中だ。経済対策は、来年4月1日に消費税率が現行の5%から8%に引き上げられる影響を緩和。経済の底上げによる成長軌道への早期復帰を目的にまとめる。…国交省の主要項目では、国際競争力の強化につながる交通・物流ネットワークの整備に加え、地域を活性化させる各種施策も準備する。具体的には『道の駅』に多様な機能を持たせる取り組みや、公共交通のバリアフリー化のほか、社会資本整備総合交付金を活用して地域の成長力底上げを図る社会資本の総合的な整備を盛り込む。東日本大震災など被災地のインフラ復旧を加速するなど復興対策も検討。自然災害に対する事前防災やインフラ老朽化対策にも集中的な支援を講じるとしている。…建設現場の人手不足が深刻化する中、大幅に引き上げられた13年度公共工事設計労務単価を適用した契約や、発注ロットの大型化などによる技術者・技能者の効率活用、入札契約手続きの効率化などを徹底。経済対策の効果を早期に発揮できるようにする。公共工事を発注する自治体にも円滑施工対策を要請することを想定している。」(『建設工業新聞』2013.11.28)
●「2014年度予算編成と新経済対策(今年度補正予算)の行方を、建設業界は固唾をのんで見守っている。財政当局が公共事業費など裁量的経費削減によって来年度当初予算額を抑制し、4兆円程度のプライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)改善を最大目標に、各省庁の来年度予算要求に厳しい査定姿勢を示しているとの見方が、与党内でも広がっていることが理由だ。ただ建設産業界にとって来年度は、国土強靭化基本法案成立による、新たな国づくりの初年度でもあり、計画的・安定的な投資の原資の発射台ともなる来年度当初予算の行方に従前以上に強い関心が集まっている。」(『建設通信新聞』2013.11.29)
●国土交通省は15日、「発注者責任を果たすための建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」の初会合を開いた。計画から調査・設計、施工、維持管理までを包括した建設生産・管理システムとしてとらえ、その中で現在懸念される課題への対応策として、民間の技術力を生かす方式や若手技術者の配置を促す入札契約方式などの具体的な方向性を議論する。座長には小澤一雅東大大学院工学系研究科教授が就いた。12月下旬にも次回会合を開き、年内をめどに中間とりまとめを作成。年度末には、来年度の取り組みに向けた方向性をとりまとめる。(『建設通信新聞』2013.11.18)
●「国や地方自治体などが発注する官公庁施設の改修工事で、受注者が決まらない入札不調・不落が増えている。建築物の小規模な改修工事の入札に手を挙げる業者はもともと少なく、そこに安倍政権の経済対策などで官民ともに工事が増加。入札参加者がさらに減る傾向が出ている。急速な市場の変化に対策は打ち出せていない。」(『建設工業新聞』2013.11.19)
●「東京電力は福島第1原子力発電所の5、6号機を廃炉にする方針を固めた。月内にも地元自治体に伝え、同意を得た上で12月中に正式決定する。東電は1〜4号機の廃炉のための研究・訓練施設として転用する考え。福島第1原発は発電施設としての役割を終えることになる。…5、6号機は事故を起こしていいないため、廃炉にしても完全に施設を撤去せずに活用する。施設を分解したり、溶けた燃料を取りだしたりする研究や訓練に役立てる。」(『日本経済新聞』2013.11.20)
●「大規模災害時に水や食料、衣類などの支援物資を被災者に円滑に届けるためのマニュアルが全国の自治体の9割で作成されていない事が21日までに、国土交通省の調査で分かった。4割の自治体は今後も策定する予定がないと回答。同省は『災害が発生してから考えるのでは遅い。物資の手配や供給体制を平時から検討する必要がある』と指摘している。」(『日本経済新聞』2013.11.21)
●「発生懸念が強まっている南海トラフ巨大地震と首都直下地震への対策を定めたそれぞれの特別措置法が、22日の参院本会議で可決、成立した。全国で防災・減災対策を強化するための国土強靭化基本法案は自民、公明両党提出の修正案が衆院災害対策特別委員会で賛成多数で同日可決された。今週には衆院を通過する見込み。これで『国土強靭化3法』が今国会ですべて成立する見通しとなった。」(『日本経済新聞』2013.11.25)
●「国土交通省は、市町村の工事発注に対する支援策を強化する。市町村では、人員削減などを背景に積算業務や工事監督業務などの能力が低下。適切な発注やインフラの維持管理に支障をきたすことが危惧されている。そのため、国や自治体による研修機能を強化するほか、各都道府県におかれる建設技術センターなど外部機関の活用、コンストラクションマネジメント(CM)方式を活用した発注者支援策の拡大に取り組む。これらを予定価格の適正な設定や『歩切り』の根絶などにつなげる。」(『日本経済新聞』2013.11.27)
●「東京都世田谷区は、『世田谷区の調達にかかわる契約における適正な労働環境の確保等に関する条例(素案)』をまとめた。労働環境確認シート(仮称)の導入や(新)契約適正化推進員会(仮称)設置などにより下請け、孫請けなどの労働者の労働環境適正化を目指す。議会での議論を経て早期の制定、施行を目指す。」(『建設通信新聞』2013.11.18)
●「神奈川県は、県土整備局発注工事を受注した元請企業とその1次、2次下請企業を対象に、8月に実施した賃金実態調査(工事)の結果を公表した。8月に支払った賃金を集計した結果、調査対象の13職種すべての建設技能者の賃金は時給換算で1000円以上あり、最低賃金(868円)以上が確保されていることが判明した。」(『建設工業新聞』2013.11.18)
●「3年間でほぼ半数が離職――。厚生労働省が発表している新規学卒者の入職後3年での離職率で、建設業における高卒入職者の高い離職率が浮き彫りになった。2010年3月高卒入職者のうち13年3月までに46.8%が離職した。前年よりも3.1ポイント増え、医療・福祉業を上回った。地域の建設会社などからは、『やりがいを感じられるよう現場を体験できる職業訓練の場が必要だ』といった教育施設の充実を求める声が高まっている。…10年3月の高卒入職者は、3年後の13年3月までに全産業で39.2%が離職した。前年に発表した09年3月卒の3年後離職率より3.5ポイント増えた。大卒者の3年後離職率も前年より2.2ポイント増えており、全体として3年以内の離職率が前年より高まっている。なかでも10年3月高卒の建設業入職者の離職率(46.8%)は、産業分類18種のうち、7番目に高く、重層構造など産業構造が似ていると言われる製造業(10年3月高卒離職率27.1%)より19.7ポイントも高かった。」(『建設通信新聞』2013.11.19)
●「厚生労働省は19日、足場からの墜落防止措置について、規制を一部強化する方向であることを明らかにした。足場の最上層での組み立て作業時などに、安全帯をより安全に使うための設備面での措置を労働安全衛生規則(安衛則)に明記することを想定している。また、足場組み立てなどの業務を危険業務に位置づけ、こうした業務に就く者を対象に特別教育の受講を義務付けることも打ち出した。一方で、仮設業界側が法制化を求めている足場組み立て・変更時の第三者による点検は、事業者による点検が義務化されていることから、規制強化の必要はないとの考えを示した。」(『建設通信新聞』2013.11.20)
●「厚生労働省は、建築物の解体などを行う労働者の石綿暴露防止対策を強化するため、石綿障がい予防則(石綿則)を改正することを決めた。石綿除去作業時の石綿漏えいを防ぐため、▽集じん・排気装置の排気口で粉じん濃度を測定し、装置が粉じんを捕集していることの点検▽前室で負圧が担保され、粉じんの持ち出しを起こさないよう、負圧の維持を目視やマノメーター、スモークテスターで確認――を義務化する。また、石綿含有煙突(レベル2建材)の劣化や石綿使用の保湿剤、耐火被覆材などが損傷した際の対応策として、吹き付け石綿と同様、劣化・損傷した保湿剤や耐火被覆材の除去、封じ込め、囲い込みなどの措置を法制化する。」(『建設通信新聞』2013.11.20)
●「国土交通省は20日、富士教育訓練センターの充実強化の具体化に向けた検討委員会(委員長・大森文彦東洋大教授)を開き、委員会報告の骨子案をまとめた。基本的方向性として、ハード面では2014年度中に建て替え工事に着手すべきと明記。運営者や施設所有者を中心に協議組織を設けて整備主体の責任を明確化するとともに、具体的な計画策定や資金調達などの着工準備を進めることとした。年内には詳細を詰めた報告案をまとめる予定だ。」(『建設通信新聞』2013.11.21)
●「現場で働く作業員の社会保険料を内訳明示した標準見積書の活用が思うように進んでいないことが、東京都鉄筋業協同組合(東鉄協、館岡正一理事長)が会員企業を対象に行った標準見積書の活用状況調査で分かった。10月に会員各社が元請企業に提出した見積書のうち標準見積書が使われたのは全体の52%。提出された標準見積書を元請企業が受理したのは72%に上ったが、社会保険料の事業主負担分を認めてくれたのは2%にとどまった。元請・下請双方に戸惑いがあるようだ。」(『建設工業新聞』2013.11.21)
●「国土交通省は25日、建設技能労働者の社会保険未加入対策で、建設業許可部局による繰り返しの指導にもかかわらず、未加入状態を続けている業者を厚生労働省の保険担当部局に通報した件数が9月末までに1878件に達したとする集計結果を明らかにした。…9月末までの指導状況をみると、1回目指導が1万9574件、2回目指導がその37.4%に当たる7315件。これらの指導の結果、4430業者が指導に従って加入した。一方、指導に従わずに未加入を続けたことから厚労省に通報されたのは、指導総件数の9.6%に相当する1878件に上った。…通報された業者に対しては、厚労省の担当部局から加入に向けた指導や立ち入り検査が行われる。それでも加入しない場合には、建設業法に基づき営業停止などを含めた処分が行われることになっている。」(『建設工業新聞』2013.11.26)
●「第20回全国建設研究・交流集会は24日、福島市で2日間の日程で開幕した。全国から集まった建設関係の労働組合関係者や公務員、事業主ら約400人が建設産業の発展に向け意見を交わしている。前大会まで静岡県で開催していたが、震災からの復興を目指す本県の建設産業の現状を学ぼうと、福島市で初開催。テーマは『憲法を生かして大震災・原発災害から復興を』。初日は真木實彦福島大名誉教授が『原発災害
憲法を生かした復興への展望を』と題して記念講演し、政府や東京電力の福島第1原発事故の対応などを振り返ったうえで、原発周辺の自治体が連携を深めることが、今後さらなに重要になると主張した。また、現地報告として県労連労働相談センターの小川英雄所長らが除染作業員の労働実態、避難住民の生活状況などを説明した。」(『福島民友新聞』2013.11.24)
●「『業績を悪化させるような受注はもうしない』というゼネコンの決意が、建設産業界のこれまでの、川上から川下へ流れる力関係を逆流させようとしている。公共工事はくじ引き、民間工事では白紙委任にテナント保証、と発注者の低価格要求に進んで答えてきたゼネコンも、その体力勝負の果てに『現場で何とかする』という神通力を失い、技能労働者や資機材の調達力も低下、供給力を衰弱させている。国土交通省が設計労務単価を15%引き上げ、社会保険加入促進に乗り出し、加えて建設市場が活況を呈する中で、市場の力学は『買い手』から『売り手』へ変化しようとしている。…就業者のうち55歳以上の割合が約3割に対して29歳以下は約1割。高卒新規入職者のうちほぼ半数は3年で退職―。他産業以上の高齢化と担い手減少という人材のアンバランスに直面する建設産業界。一方で、大規模災害への備えとして防災・減災、既存インフラの更新、日本経済再生を実現するための新規インフラ整備や民間設備投資に対応する重要な役割を担っている。担い手確保問題の解決に向け国土交通省が旗振り役となった、公共工事設計労務単価の大幅な引き上げと社会保険加入促進は、建設市場の拡大を追い風に、建設産業界に新たな動きをもたらした。今月14日、不動産協会の木村惠司理事長(三菱地所会長)は、建築費高騰をテーマに大手ゼネコンなどが加盟する日本建設業連合会と会合を開いたことについて、『われわれが建設計画を立ててもゼネコンに造ってもらわなければできない。その意味でゼネコンは事業パートナー』と、日建連にエールを送った。大手民間発注者が加盟する不動産協会と、受注者側の施行企業が加盟する日建連のトップ同時による異例の会合が実現したのは、官民発注者・設計事務所・元請け・下請け・技能労働者という、建設計画・建設資産システムに携わるすべての関係者が、建設産業界で様々な大きな変化が起きていることを感じ始めていることにほかならない。大きな変化をもたらした経路は2つ。1つは生産システムを担う専門工事業・技能労働者の疲弊と先行きに対する危機意識、その対応策について専門工事業者だけでなく、国土交通省や元請けが供給したことだ。もう1つは、長期にわたるデフレ脱却へ向けた安倍政権による経済政策、いわゆるアベノミクスによる切れ目のない公共投資拡大と、円安・株高による企業業績および民間設備投資意欲の回復が、震災復興需要に加算される形で建設市場が全国的に拡大したことがある。この2つの経路が相乗効果となって、下請単価と技能労働者賃金のアップや社会保険加入促進を含む処遇改善の動きを後押しする一方、建設業のデフレ要因ともなったダンピング(過度な安値受注)抑制へ個別企業が自制心を働かせる動きが、全国的に広がった。需給関係で決まるさまざまな建設関連価格がたちまち高騰し、計画段階や設計段階の積算価格と応札する元請けの実勢単価が大幅にかけ離れ、結果的に建設工事で入札不調・不落が多発するのは当然の帰結だった。」(『建設通信新聞』2013.11.25)
●「大和ハウス工業は、病院施設に特化して新築や建て替え資金を供給するためのファンドを設立する。資金不足によって新築や建て替えができない病院に対し、ファンドから資金を提供することで支援する。資金は、建物の賃貸収入で回収する仕組みだ。ファンドの規模は60億円を想定。自社で30億円を出資し、残りは民間のリース会社などから拠出する。設置時期は未定だが、中期経営計画(13〜15年度)期間内に設立する。ファンドが資金供給の対象とする病院は、診療所など小規模なものではなく、総合病院などある程度の病床数を持つ物件にする。1案件当たり20億円前後の資金供給を想定している。厚生労働省が国内の8574病院に行った調査によると、耐震性が完全でない、もしくは不明と回答した病院が、全体の38.4%に当たる3298病院に上った。耐震性を確保するための工事には多額の費用がかかり、資金力のない病院は工事にまで手が回らないのが現状だ。同社は、地震や台風など、災害発生時に病院が果たす役割が大きいことを考慮。新築や建て替えを促進するためにファンドを設立することにした。…同社の13年度の売上高見込みは2兆5500億円で、うち病院建築を含む事業施設セグメント全体の売上高は5260億円。これを15年度には6000億円まで拡大する方針だ。」(『建設工業新聞』2013.11.25)
●「全国建設業協会(淺沼健一会長)は27日、東京・大手町の経団連会館で全国会長会議を開き、10月の地域懇談会・ブロック会議を踏まえた意見書『社会資本整備の着実な推進について』をまとめた。淺沼会長は、不調・不落の増加を理由に公共事業予算の見直しを求める声が上がっていることについて、『誤った論調に対し、われわれが社会に異を唱えなければならない』と強調。来年度当初予算が削減されれば担い手確保への機運がしぼむとし、『好循環がすべて台無しとなる。将来の建設産業の担い手がいなくなると危惧している。社会資本整備の重要性に気付いた時、取り返しがつかなくなる』と強い口調で訴えた。意見書は、同日中に太田昭宏国土交通相や自民党幹部に直接提出した。…意見書では、中長期的な国土保全ビジョンの早期策定など計画的・安定的な公共事業予算の確保、2014年度の公共事業予算の確保、復興に必要な予算確保と首都直下・南海トラフ巨大地震に備える全国防災・減災予算枠の確保を要望。技術者・技能労働者不足、資機材不足、実態にあわない予定価格の積算、契約後の採算性悪化といった課題も指摘し、価格と品質に優れた公共調達が図られるよう上限拘束性の弊害をなくした多様な入札・契約制度の導入・活用を求めた。技能・技術の継承の問題では、社会保険加入の促進や適正賃金水準の確保、労働環境の改善とあわせ、富士教育訓練センターと三田建設技能研修センターなどの訓練施設の機能強化なども求めている。」(『建設通信新聞』2013.11.28)
●「大地震が起こった場合、揺れと並んで恐ろしいのが火災の発生。街全体が火災の被害にあうような事態を食い止めようと、東京都内の自治体が下町を中心に残る木造住宅密集地域(木密地域)の不燃化対策を急いでいる。建て替え時の補助率を引き上げたり、地権者に向けた相談を充実させたりしながら、住宅の不燃化や道路の拡幅を進める。都では木密地域の建物の建て替えを支援する『不燃化特区』について、最大45%としている建て替え時の設計費への補助率引き上げを検討する。現在はない工事費への補助金の創設も視野に入れる。詳細は地元の区と協議して詰める。現在12地区を指定している不燃化特区も、15年度までに約50地区に増やす。道路の拡幅や周辺の建築規制緩和も進める。都は火災の延焼を遮断する都市計画道路『特定整備路線』を整備する計画で、周辺地域では容積率の緩和や土地用途の柔軟な変更も検討する。高い建物を建てられるようにし、用地買収の対象となった地権者が住む共同住宅を整備しやすくする。」(『日本経済新聞』2013.11.20)
●「政府は東京電力福島第1原子力発電所の事故で避難した住民の移住支援に踏み込む。文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は22日に示した追加賠償指針の原案で、避難者が新しい家を買うときの補償額を積み増した。事故から2年半たっても帰還か移住かを選べない避難者に選択肢を示し、復興の加速につなげる。移住の後押しを求めた与党とも歩調を合わせる。政府と東電は被災者への賠償をこれまで早期の期間を前提にしてきた。新たな重点分野と位置づける移住も含め、文科省の審査会は年内をめどに追加賠償の指針を出す。…新指針の最大の柱は、避難者が新しい家を買いやすくしたことだ。従来の基準では賠償額が最も低い地区48年以上の木造住宅の場合、新築時の2割しか補償せず、古い家に住んでいた避難者から『家が買えない』との不満が出ていた。原案は新築時の6〜8割を賠償の最低水準と置き、住宅を購入しやすくする。土地への賠償も上積みする。宅地の事故前の価値の全額を補償していたが、所有地より地価が高い場所に引っ越したい避難者は土地が買いにくいという問題点があった。原案は福島県内の宅地の平均単価と所有地の事故前の時価の差額の50〜100%を目安に支払うとした。差額分の補償の割合は今後詰める。避難が6年以上に長引く住民には故郷を失うことへの慰謝料も新たに設け、移住の一助にもしてもらう考えだ。新指針により移住を選んだ避難者への賠償額は大幅に増える見通し。…移住が進むと、帰宅困難区域を中心に自治体やコミュニティーの機能が失われる可能性はある。政府・与党は移住先でもコミュニティーを形成できる支援を検討中だが、具体策は未定だ。」(『日本経済新聞』2013.11.22)
●「東日本大震災で被災した自治体で、整備が進みつつある災害公営住宅にグループでの入居を促す動きが広がっている。避難前に同じ地域に住んでいた人々や、仮設住宅で縁ができた人たちに隣り合って住んでもらうことで孤立を防ぐ狙い。抽選方法によっては公平性が保たれないとの指摘もあり、各自治体は対応を工夫している。…ペアやグループで災害公営住宅への入居を促す取り組みの背景には、阪神大震災で問題化した被災者の孤独死や自殺を防ぐ狙いがある。阪神大震災では仮設住宅への入居の抽選で公平性を重視したため、被災前の近隣住民が離れ離れに入居するケースが続出。コミュニティーが崩れ、孤独死につながったとされた。東日本大震災でも何度も転居を余儀なくされた人たちが多い。震災被災者の支援を続ける『阪神高齢者・障害者支援ネットワーク』(神戸市)の黒田裕子理事長は『グループ単位の入居は被災者の人間関係の維持に効果がある』と一定の評価をする。一方、グループなどで申し込めない被災者がいるとして『個人で入居した人をコミュニティーに受け入れる仕組みづくりのほか、入居者をも守る体制も重要だ』と指摘する。」(『日本経済新聞』2013.11.26)
●「国土交通省は、都市再生特別措置法を改正し、全国各地の自治体が都市機能や居住を再構築することを支援する方針を固めた。…これまでの都市再生特措法で民間事業者支援が弱かったことや、土地利用規制では、人口減少化で求められるコンパクトなまちづくりへの誘導が難しかったことを踏まえ、民間企業への支援も強化し、自治体のコンパクトシティーへの取り組み後押しを前面に打ち出すのが特徴。具体的には、@病院や介護施設、スーパーなどの都市機能を一定の区域に誘導する都市機能誘導区域A公営住宅建て替えなどで居住を誘導し人口密度を維持する居住誘導区域B都市機能誘導区域と居住誘導区域をつなぐ公共交通――の3つをつなぐコンパクトなまちづくりを行う、自治体や民間事業者を支援する。」(『建設通信新聞』2013.11.28)
●「日本建築士会連合会(三井所清典会長)は、建築施工分野が抱える課題を解決し『魅力ある建築産業界の再構築』に向けた取り組みを始めた。都道府県建築士会と専門工事業団体を対象にアンケートして建築業の問題を洗い出し、課題解決に向けた建築士会、建築士の活動の方向を打ち出したもので、副会長で建築技術委員長を務める金子宏氏は、『建築士会は、さまざまな分野で活躍している建築専門技術者が、所属する団体や企業の利害を離れ、資格者個人として集まっている団体。その立場で議論し、活動していきたい』としている。アンケートは、47都道府県建築士会会員と専門工事業団体(29団体から回答)を対象に実施した。その結果を踏まえ、若年層の確保のためには『魅力ある建築産業界の再構築』が必須条件であり、そのためには、@適正な工事費に基づく技能労働者の処遇改善により、建築に携わる若い人たちの入職率を高めるための諸施策の実施・実現A社会貢献する建築業の必要性や魅力を各方面から社会にアピール――が必要とした。…アンケートでは建築士会と専門工事業団体に共通する認識として専門工不足に対する危機感が強いことも明らかになった。その背景として各団体会員企業の減少、地方経済の衰退、建築業界の縮小、低賃金、元請けの過当競争などが挙げられており、関係団体などから指摘されている問題が改めて浮き彫りになった格好だ。」(『建設通信新聞』2013.11.21)
●「韓国政府は29日、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加に向け、関係国と協議に入る方針を明らかにした。12月初旬にインドネシア・バリで開く世界貿易機関(WTO)閣僚会議の場で交渉参加国と予備交渉に入る予定。韓国は2国間の自由貿易協定(FTA)交渉を重視してきたが、輸出市場で競合する日本のTPP参加を踏まえ戦略を転換する。」(『日本経済新聞』2013.11.30)