情勢の特徴 - 2013年12月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「財務省が2日発表した2013年7〜9月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比1.5%増の8兆9424億円となった。2四半期連続で増えたが、前期比ではわずかに減少した。建設業などの非製造業の新規投資が伸びた半面、製造業は電気機械や情報通信機械などで不採算部門への投資を控える動きが根強かった。」(『日本経済新聞』2013.12.02)
●「内閣府は、PFIを推進する上で事業の手続きの簡素化や、VFM(バリュー・フォー・マネー)の評価手法、収益施設を併用する際のリスクのあり方などに関する議論に着手する。PFI推進委員会に3つのワーキンググループ(WG)を新設し、論点整理や関係者からのヒアリングなどを進める。手続き簡素化に向けては、新たなガイドラインの策定も視野に検討。このほかのテーマでは既存のガイドラインの見直しを目指す。来夏をめどに順次とりまとめていく。」(『建設通信新聞』2013.12.02)
●「復興庁は11月29日、復興交付金として59市町村に合計で国費1832億円を配分すると発表した。事業費ベースでは約2338億円となる。災害公営住宅整備事業や防災集団移転促進事業といった住宅建設だけでなく、産業の再生支援となる防災集団移転跡地の活用事業や、津波復興拠点整備事業、震災遺構の保存費用なども配分対象に盛り込んだ。交付金の配分額決定は7回目となる。」(『建設工業新聞』2013.12.02)
●「政府が5日にまとめる予定の5兆円超の経済対策の素案が明らかになった。来年4月の消費増税に備えるため、公共事業を1兆円程度積み増し、2020年の東京五輪開催をにらんだ首都圏の環状道路整備などを前倒しする。医療・介護施設の不動産投資悟託(REIT)上場推進など、中長期の経済活性化策も盛り込んでいる。…五輪に向けたインフラ整備は、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)、東京外郭環状道路(外環道)、首都高中央環状線の3つの環状道路の工期を短縮する。羽田空港の24時間運営を進める方針も改めて盛り込んだ。京浜・阪神港にある国際コンテナ戦略港湾の機能を拡充して物流網を整えるほか、電子輸出入申告の24時間化を急ぎ首都圏へのヒト・モノの集約をはかる。政府・与党内で原発事故処理の議論が進んできたことを受けて、関連費用を積み増したのも今回の特徴だ。 福島第1原子力発電所の汚染水対策に数百億円を追加で計上。原発事故で避難している福島県住民の帰還を支援する約500億円の『福島再生加速化交付金』も新たにつくる。被曝(ひばく)線量を測る線量計による健康管理対策や公営住宅整備も支援する。被災地の港湾や道路などの復旧事業なども合わせ、約1.1兆円を復興と原発対策に充てる。建設業の現場では、人手や資材の不足を懸念する声が強い。対策は、労賃の引き上げや、発注量の拡大による採算性向上に留意するよう求めた。中期的な経済活性化をにらんだ政策も盛り込んだ。有料老人ホームなどに投資するヘルスケア専門のREITの上場推進も明記した。大手銀行などがヘルスケア専門のREITの立ち上げ準備を進めているのに対応。来年に創設を解禁する方針だ。」(『日本経済新聞』2013.12.03)
●「政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)は、14年度予算編成で今月中旬に決定する基本方針の骨格をまとめた。民間議員から財政健全化に向けた公共事業費の削減が提案されている中、社会資本整備予算の重点化・効率化を推進ことを打ち出した。長期的に持続可能な経済社会基盤を確保するため、国土強執(きょうじん)化や防災・減災、民間活力が最大限発揮されるような環境整備やインフラ技術の海外進出支援も盛り込んだ。 重点課題として▽予算の重点化・効率化の推進▽強い日本、強い経済、豊かで安全・安心な生活の実現―の二つを設定し、それぞれ基本方針に盛り込む事項案を提示した。」(『建設工業新聞』2013.12.03)
●「企業再編や設備投資を促すための税制優遇などを盛った産業競争力強化法案が4日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立する。安倍政権が6月にまとめた成長戦略を具体化するもので、デフレ脱却に向けて供給過剰を是正し、規制緩和を通じて新たな需要を生み出す狙いだ。2017年度までの5年間を集中改革期間と位置づけて対策を進める。柱の1つが企業の過剰設備の是正に向けた法人税の優遇制度だ。現行税制は同業他社との統合のために不採算部門を切り出すと、赤字額が減るため法人税の課税対象の所得が増える仕組み。新制度は、新会社への出融資額の最大70%を損金に算入できるようにし、法人税負担を増えにくくした。…もう1つの柱は規制緩和で、企業の活力を生かす新たな枠組みを取り入れた。企業が国の法改正を待たずに規制緩和を特例的に実現できる『企業特区』は、企業の申請に応じて政府が規制緩和の認可を出す。」(『日本経済新聞』2013.12.04)
●「巨大災害に強くしなやかな国造りを目指す国土強執(きょうじん)化の推進方策を議論する政府の有識者懇談会が4日開かれ、強執化に向けた計画や施策の指針となる政策大綱素案が提示された。優先的に進める取り組みの一つにインフラの整備と老朽化対策を設定。PPP・PFIによる民間資金の活用とデータベース化による施設情報の集約・共有を図り、自治体や企業の取り組みを促す。20年東京五輪に向けた安全対策にも力を入れる。」(『建設工業新聞』2013.12.05)
●「政府・与党は古いマンションの売却と解体をしやすくする税優遇の検討に入った。耐震基準を強化した1981年より前に建てられたマンションを丸ごと売る場合、所有者の譲渡所得にかかる税率を20%から14%に下げる案が有力。部屋をいったん買い取る組合の不動産取得税なども免除する方向だ。防災を目的に建て替えを促すとともに、オフィスへの転用など再開発の道も開く。与党が今月半ばにまとめる2014年度の税制改正大綱に盛り込む。国土交通省と法務省はマンションを丸ごと売るのに必要な住民の合意を今の10割から8割に下げて条件を緩める方針で、来年の通常国会に必要な法案を出す考えだ。政府・与党は法整備と税制の見直しを同時に進める。」(『日本経済新聞』2013.12.06)
●安倍晋三政権は5日、経済対策を閣議決定した。来年4月に消費税率を8%に引き上げることを前提に、景気腰折れの回避を目的としている。国の財政支出は5.5兆円で、地方自治体や民間の負担を含む事業規模は18.6兆円です。経済対策は、@競争力強化策A女性・若者・高齢者向け施策B東日本大震災からの復興、防災・安全対策の加速C低所得者・子育て世帯への現金給付―を柱としています。競争力強化策には、2020年に開催予定の東京五輪を口実に、交通インフラ整備などの公共事業が盛り込まれている。住民税が非課税の低所得者には、1人当たり1万円を給付。年金受給者にはさらに5000円を上乗せする。また中底所得者に対しては、子ども1人当たり1万円を給付する子育て一時金も盛り込まれた。一方で、企業に課せられている復興特別法人税を1年前倒しで廃止するための財源を措置した。経済対策を裏付ける総額5.5兆円の13年度補正予算案は12日に決定。財源は、13年度の法人税収が当初見込みを上回る分などを活用し、新たな国債の発行はしない。(『しんぶん赤旗』2013.12.06より抜粋。)
●「金融庁はインフラ整備に個人マネーを活用できるよう投資信託の規制を緩める。太陽光や風力などの再生エネルギー施設や、インフラ施設の運営権に集中投資する金融商品をつくれるようにする。日本取引所グループが2015年度にも創設するインフラファンド市場を後押しする。東京五輪をにらみ、インフラの新設や更新に民間資金を活用しやすくする。現行制度で、投信や投資法人が資産の5割以上投資できる対象は、株式などの有価証券や不動産、商品などに限られる。金融庁は再生可能エネルギー施設や公共施設の運営権なども対象に加える方向で検討に入った。」(『日本経済新聞』2013.12.07)
●経済産業省は6日、中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の原案を、同省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(会長・三村明夫新日鉄住金名誉会長)に提出した。原案は、原子力発電を「重要なベース電源」と位置づけ、「原発ゼロ」目標を投げ捨てた。「ベース電源」は、一定量の電力を安定的に供給できる特長を表す専門用語。発電量が天候に左右される太陽光や風力発電との違いを強調する狙いがあるとみられる…原案は、原発について電力の安定供給や費用面で優れていると指摘。新増設にも含みを持たせた。核燃料サイクルの着実な推進、原発輸出の促進も盛り込んだ。年内に最終案を策定し、年明けに閣議決定する構え。(『しんぶん赤旗』2013.12.07より抜粋。)
●「内閣府が9日発表した2013年7〜9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算で1.1%増となった。11月公表の速報値(0.15%増、年率1.9%増)から小幅に下方修正した。民間在庫や設備投資が速報値を下回ったため。速報値で伸びていた設備投資は改定値で横ばいに転じた。一方、個人消費は速報値を上回った。改定値は、速報値の公表後に明らかになった法人企業統計などのデータを使って推計し直した。民間調査機関の平均値(年率1.6%増)を下回った。生活の実感に近い名目GDPは前期比0.3%増、年率1.0%増となった。速報値の0.4%増、年率1.6%増を下回った。」(『日本経済新聞』2013.12.09)
●「2013年はメンテナンス元年――。11月29日、中央道笹子トンネルの天井板落下事故から1年を前に、政府は『インフラ長寿命化基本計画』を策定した。土木構造物だけでなく、学校や病院などを含むすべてのインフラ施設を対象に、将来にわたって維持すべきものを明確にしながら、計画的な点検・診断の結果に基づき、最適な修繕・更新を行う『メンテナンスサイクル』を回す。…インフラ長寿命化基本計画は、国を挙げた今後のインフラメンテナンスの方向を示す大本だ。これに沿って、国の機関だけでなく、地方公共団体や高速道路会社、鉄道会社など、すべてのインフラ管理者に行動計画と個別施設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)の策定を求める。実行段階に移るに当たり、特に重要になるのが点検・診断の結果に基づき、必要な対策を適切な時期に施し、そこで得られた施設状態や対策履歴をデータベースに集約、次期の点検や修繕計画などの立案に役立てていくという『メンテナンスサイクル』の構築だ。管理者側には、その核となる個別施設計画の早期策定が求められている。同計画では道路や下水道などの事業系統、または橋梁やトンネルといった構造物単位で分類を設定し、その分類ごとに長寿命化計画を定めることになる。個別施設の劣化・損傷状態や果たしている役割、利用状況などを勘案しながら、対策の優先順位を明確化。計画期間中に要する概算費用も示す。修繕・更新時には、必要性が認められない施設は廃止・撤去を進める。必要な施設も更新を契機に、用途の見直しなどを行う。…基本計画では、担い手となる地域建設業が疲弊している現状にも触れ、発注方式や入札契約制度の改善を推進することも明記した。工種や施工条件に応じた積算基準の見直し、調査・設計・施工各段階が連携した発注方式、あらかじめ材料などの単価を契約で定める『単価・数量精算方式』の活用などを視野に入れており、施工力に関係する資格や研修履歴、工事経験などを管理・蓄積・活用する仕組みづくりも検討していく。」(『建設通信新聞』2013.12.09)
●「国土交通省が、不動産証券化市場の拡大に力を入れる。不動産会社などが複数の投資家から出資金を集めて不動産への投資を行う不動産特定共同事業に倒産隔離型のスキームを導入し、投資家が出資しやすい環境を整備。需要が拡大している高齢者向けサービス付き住宅などの『ヘルスケア施設』に特化した不動産投資信託(Jリート)の立ち上げを促すため、14年度に投資法人向けの購入・運用指針を設ける。証券化市場が活性化すれば建設業界への波及効果も大きくなりそうだ。」(『建設工業新聞』2013.12.09)
●「安倍普三首相は9日夕、臨時国会の閉幕を受け首相官邸で記者会見し、成長戦略の実行計画を来年初めに閣議決定する考えを表明した。産業競争力強化法などに盛り込んだ規制改革や減税策について、開始時期と担当閣僚を明記する方針。『成長戦略のさらなる進化を図るために、雇用・人材、農業、医療・介護といった構造改革に取り組んでいく』と訴えた。」(『日本経済新聞』2013.12.10)
●「安倍晋三首相は14日に都内で開く東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議で、防災分野に向けた政府開発援助(ODA)として約3000億円の支援を表明する。災害に強いインフラの整備を促し、日本企業の受注につなげる。11月にフィリピンを襲った台風が大きな被害をもたらしたことなどを踏まえ、日本の技術や経験を生かした支援を強化する。防災協力は、特別首脳会議でまとめる共同声明の目玉として合意する。円借款を利用して災害に強いダムの建設や河川を整備したり、加盟国間の災害情報をすばやく共有するためのシステムを構築したりする。地震や台風に備えたインフラ整備に強みを持つ日本の建設会社などには、案件を獲得できる機会となる。防災の専門家の育成でも協力する。日本に研修生を受け入れたり、ASEANに講師を派遣したりして、1000人規模の育成をめざす。日本政府はASEAN全体へのODAとは別に、2国間での会談でも災害対策やインフラ整備に円借款の供与を表明する。インドネシアには首都ジャカルタの地下鉄や送電線の整備に1400億円、ミャンマーにも鉄道や浄水場の整備に600億円超の供与を予定している。」(『日本経済新聞』2013.12.12)
●「国土交通省は12日、下水道分野でPPP・PFI事業を行いやすくするための要点を整理したガイドラインの素案をまとめた。自治体などが下水道施設を所有したまま運営権を民間に委ねるコンセッション(公共施設等運営権)方式と、公共の下水道施設に民間の収益施設を併設する収益拡大型スキームを普及させる狙い。これらの事業を行うメリットや課題をまとめ、民間事業者の選定方法なども盛り込んだ。正式なガイドラインは13年度末に策定する。」(『建設工業新聞』2013.12.13)
●「政府は12日の臨時閣議で、総額5兆4654億円の13年度補正予算案を決定した。14年4月の消費増税に備え景気の腰折れを防ぐ経済対策が柱となる。国土交通省分は、公共事業費が7481億円(事業費ベース1兆7303億円)、行政経費など含めた総額は1兆0151億円(2兆0500億円)となる。2020年東京五輪に向けた首都圏での交通網整備や、インフラの再構築などを推進するため、主に14年度予算の概算要求に盛り込んだ関連施策を前倒しする。国交省関係では、主に道路や空港などの機能強化を目的とした都市インフラ整備を推進する『競争力強化策』に2953億円(非公共事業費含む)、南海トラフ地震などの巨大災害に備えるインフラの防災・減災対策や老朽化対策を推進する『復興、防災・安全対策』に5598億円(同)を計上した。」(『建設工業新聞』2013.12.13)
●自民・公明両党が12日決定した2014年度「税制改正」大綱は、生活苦にあえぐ庶民に消費税増税を押し付ける一方で、一握りの業界と大企業を優遇するものだ。この「税制改正」は貧困と格差をますます深刻にする。今回の「税制改正」では、消費税に「軽減税率」を設けることを明記。…5日に決定した経済対策では、「簡素な給付」として、住民税非課税世帯を対象に1人1万〜1万5000円を支給することが盛り込まれた。「簡素な給付」を受けられない世帯のうち、児童手当受給世帯には子ども1人当たり1万円上乗せする。しかし、これらは消費税増税が前提です。…消費税の増税によって低所得者ほど負担は重くなる。消費税率が10%になった場合、年収1500万円以上の世帯では消費税負担が年収の3.4%にとどまるのに対し、年収200万以上250万円未満の世帯では年収の9.5%にものぼる。この耐え難い負担と逆進性により、貧困と格差はますます広がる。大企業には減税を行う。東日本大震災からの復興財源を目的に企業から徴収している復興特別法人税を今年度限りで廃止する。これによって、企業の税負担は約8000億円減少する。(『しんぶん赤旗』2013.12.13より抜粋。)
●「政府は2014年度予算の国の一般会計の歳出を96兆円前後とする方向で本格調整に入った。消費増税や法人税収の増加で国の税収は7年ぶりに50兆円程度となる見込みで、歳出規模は当初予算としては過去最大を更新する。足元では公共事業や防衛、診療報酬を中心に歳出の膨張圧力が高まっており、財務省と与党・各省庁との攻防は大詰めを迎えている。…財務省は特別会計の影響や国債の元利払いを除いた政策経費を今年度と同水準に抑え、72兆円程度にする計画を立てている。だが、首相官邸や与党の意向を映し、防衛や公共事業予算は増額がほぼ固まりつつある。防衛予算では、米軍再編の関連経費や、公務員給与の削減終了に伴う人件費増を含め、今年度比2.8%増の4兆8870億円と、2年連続で増やすことで決着した。公共事業でも今年度の5.3兆円に対して、消費増税による資材の値上がり分を含め1千億円程度を加味する方向で、特会廃止分も入れると6兆円規模になる。」(『日本経済新聞』2013.12.14)
●「日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議では、域内の統合を促す国際インフラ綱の整備や防災対策など、日本が強みを持つ分野で経済支援を加速することでも合意した。これまでの規模重視の経済支援から具体的なプロジェクトに焦点を絞った戦略に転換。域内の成長力底上げに貢献しつつ、日本企業の進出を後押しする。…背景には日本と東南アジアとの関係の変化がある。高い成長をとげる東南アジアに対し、日本の経済は停滞。厳しい財政事情もあり、日本の政府開発援助(ODA)は予算ベースで14年連続で減っている。すでに東・南西アジア向けODAは約1兆1500億円(供与額ベース)と全体の75%を占めるが、より効果の高い分野に重点配分し、成長を取り込む狙いだ。今後5年間で2兆円規模のODAを投じるうち、目玉の一つが、2015年のASEAN統合をにらんだ域内のインフラ整備支援だ。日本はメコン川地域に対して総額2千億円規模の支援を表明。今後、域内の経済連携強化につながる約70のプロジェクトを支援する。」(『日本経済新聞』2013.12.15)

行政・公共事業・民営化

●「政府は11月29日、『インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議』を開き、インフラ長寿命化基本計画を決定した。政府として、インフラの維持管理に特化した全体方針を作るのは初めて。国の機関だけでなく、すべての地方公共団体や高速道路、鉄道などのインフラ関連企業にも、行動計画と個別施設ごとの長寿命化計画の策定を求める。公共事業関係予算の縮減などにより、維持管理の担い手となる地域建設業が疲弊している現状にも言及し、発注方式や入札契約制度の改善を推進することも明文化した。」(『建設通信新聞』2013.12.02)
●「札幌建設業協会の土木委員会は、北海道開発局札幌開発建設部および北海道札幌建設管理部から2012年度に工事を受注した企業を対象として、公共土木工事に関するアンケートを実施した。建設工事の生産性(収益性)を阻害する要因は、『頻繁に発生する』『時々発生する』を合わせた回答が、札幌開建発注工事で70.5%、札幌建管発注工事で『時々発生する』が61.1%と、いずれも半数以上を占めた。前年度よりも札幌開建は11.7ポイント、札幌建管は11.1ポイントそれぞれ上回っている。発注者側に起因する発生理由(複数回答)をみると、札幌開建は『設計の不備』(14.1%)、『積算の不備』(12.7%)など、札幌建管は『発注時期が不適切』(18.0%)、『積算の不備(現場施工条件とかい離)』(13.1%)、『設計の不備』(同)、『関係機関との調整遅延』(同)が多く挙がっている。」(『建設通信新聞』2013.12.04)
●「参院の災害対策特別委員会(竹谷とし子委員長)は3日、『強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強執(きょうじん)化基本法案』を与党の賛成多数で可決した。4日の参院本会議で可決・成立する見通し。東日本大震災の教訓を踏まえ、事前防災・減災、迅速な復旧・復興につながる施策を展開し、大規模自然災害から国民を守る。公布と同日に施行する。同法案では、施行後に『国土強執化大綱』『国土強執化基本計画』を策定することを政府に義務付けている。都道府県・市町村にも、国の計画と調和した『国土強靭化地域計画』の策定を求め、大規模な自然災害などから国民を守る施策を実施してもらう。その際、既存の社会資本の有効活用や、施設・設備の効率的な維持管理、自然との共生などに配慮するとともに、民間資金の積極的な活用や、研究開発の推進、その成果の普及に努めることも盛り込んだ。公共工事予算のばらまきにつながるとの懸念があることを踏まえ、財政資金の効率的な使用もうたった。」(『建設工業新聞』2013.12.04)
●「総務省は、政府が11月29日に決定した『インフラ長寿命化基本計画』の内容を地方自治体に周知し、これに基づく行動計画を策定するよう要請した。基本計画では、各省庁や自治体、所管法人などがそれぞれ管理するインフラを対象にした行動計画を策定するとしており、要請はその一環。行動計画の中で、維持管理・更新などを着実に推進するために中長期的な取り組みを提示することを求めた。…自治体の役割について基本計画では『国とも連携しながらインフラの安全や必要な機能を確保する』と規定。過去に整備したインフラの状態、配置、利用の状況、人口動態、市町村合併の状況、財政状況などを含めた総合的な観点から、維持管理・更新を行うことが重要だとしている。…要請文書では、行動計画の策定に加え、各自治体が所有する全施設を対象に更新、統廃合、長寿命化などを計画的に行いながら財政負担を軽減・平準化することを目的にした『公共施設等総合管理計画』の策定を別途要請することも伝えた。」(『建設工業新聞』2013.12.05)
●「東京都は、2020年東京五輪に向けて新築する一部の競技施設整備に、設計・施工一括発注方式や異業種JVなどの手法を導入する方針を明らかにした。民間の技術力を積極的に生かした効率的な手法を採用することで、五輪前に施設を確実に完成させるのが狙い。…都財務局によると、設計・施工一括発注方式や異業種JVを導入する対象には、特に大規模な競技施設を想定している。『大規模な競技施設』の具体的な定義は明らかにしていない。五輪の立候補ファイルによると、これから設計に入る競技場で最も事業費が高額な施設は『夢の島ユースプラザアリーナA、B』(江東区、364億円)、次いで『オリンピックアクアティクスセンター』(同、事業費321億円)などとなっている。ほかの施設と比べて工期が長い大規模な競技場に設計・施工一括方式などを導入し、工事の円滑化を図る。」(『建設工業新聞』2013.12.06)
●「建設業界の人手不足や資材高騰が続き、保育所や高齢者施設といった生活に身近な施設の整備に影響が広がっている。予算内で工事を請け負う建設会社が見つからない入札不調などを受けて、東京都内の自治体で事業を大幅に延期したり、計画自体を凍結したりするケースが出てきた。2020年の東京五輪の建設需要で、状況はさらに悪化する懸念もある。」(『日本経済新聞』2013.12.12)
●「公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の改正を目指す自民党の法制化プロジェクトチーム(PT、座長・佐藤信秋参院議員)は12日、改正法の素案をまとめた。法律の目的に中長期的な担い手確保を明記。ダンピング受注の防止や不調・不落への対応も条文に追加する。多様な入札契約方式として、『技術提案・交渉方式』の導入に加え、『段階選抜方式』の規定も設ける。…素案によると、法律の目的に中長期的な担い手の確保を明記することで、将来にわたる公共工事の品質確保を促進。品質確保の阻害要因にもなるダンピング受注を防止するため、『公共工事の適正な施工が通常見込まれない金額を請負代金とする契約の締結が防止されること』を条文に盛り込み、最低制限価格や低入札価格調査制度が的確に雇用されるようにする。…不調・不落への対応にも踏み込み、再度入札を行う際は入札参加者から見積もりを徴収することで適正な予定価格を定めるなど、発注者側の対応も明記する。多様な入札契約では、技術提案・交渉方式の導入に加え、競争参加者が多数見込まれる場合に一定の技術水準を持った業者を選抜する段階選抜方式の規定も設ける方針。」(『建設工業新聞』2013.12.13)

労働・福祉

●「『東日本大震災を契機に土木系学科への入学志願者が増えている』―。若者からの人気低迷が懸念されていた『土木』だが、ここにきて大学関係者からそうした声が聞かれるようになった。首都圏の6大学を取材すると、確かにここ数年は志願者数が増加傾向にあり、13年には一昨年と比べ4割近く増えた大学もある。だが、土木工学を学んだ学生が志望する就職分野は変わってきているという。各大学に共通しているのが『公務員』人気の高まりだ。」(『建設工業新聞』2013.12.02)
●「自前の歩掛りを専門工事業界でいち早く策定した東京都鉄筋業協同組合。11月19日に開いた定例会では、都内鉄筋工事業トップらの顔色には明るさの中に一抹の不安が一様に漂っていた。…今、首都圏の建築工事は、『土工事や鉄骨製作が遅れている。この遅れが後工程のわれわれにとって年明け以降、どのようなしわ寄せになるか分からない』『乗り込み時期の見極めが非常に難しい』。稼働率は100%ながら、直営やグループ、専属の2次下請けなどの親方(職長)を筆頭にした作業班の管理を行う1次下請けの経営者は、忙しさの中での一服感に不安を感じている。最悪の結果は、『今後予定している現場と、現在遅れている現場への乗り込み時期が重なる』ことだ。想定外の作業日程の重複は、職人の応援増員だけでなく、想定していた作業班の稼働率低下に伴う収益悪化を招く。建設生産システムで前工程であるはずの鉄筋工事も、各現場の作業開始見込み時期の見極めが難しい事態に直面している。一方、職人が加盟する労働組合でも、厚生労働省が認可する『労働者供給事業』という伝家の宝刀を抜いた。全国建設労働組合総連合(全建総連)傘下の埼玉土建一般労働組合(埼玉土建)のことだ。…埼玉土建は1年前から供給事業を開始。現在、大工で500人が登録し、組合が供給契約を締結した埼玉県内の大手住宅メーカーなどで職人として作業に従事する。供給先企業、労働者、組合それぞれのメリットについて埼玉土建は、『企業にとっては請負いと違って職人の出来具合にダメ出しがしやすいことで質向上につながる一方、職人にとっては元請けの叩いてナンボの関係から脱却して赤字の不安がなくなる』ことを挙げる。企業との供給契約の交渉や、職人への仕事依頼などのシステム含めた費用はすべて負担し、無償で事業を行う組合に一見メリットはないように見えるが、『企業と締結する契約には、賃金と労働時間が含まれている。これは建設現場に労働協約が導入されたことに等しい』と強調する。」(『建設通信新聞』2013.12.05)
●「国土交通省は4日、本年度2回目となる技能労働者の技能の『見える化』ワーキンググループ(WG、座長・野城智也東大教授)を東京都内で開き、これまで議論してきた内容を踏まえ、システム開発に向けた工程を再整理した。本年度の検討では、技能労働者の本人情報や工事履歴、資格、研修履歴、社会保険加入状況を一元的に管理するシステムの基本計画を策定。14年度以降、システム開発に必要な手順を踏んで開発を行い、17年度から稼働できるようにする。…会合では、見える化システムのイメージもあらためて提示し、作業員名簿や施工体制台帳、再下請通知書などが出力可能な民間の既存システムとの関係について、相互に足りない機能を補完するとした。公的団体の運営を想定する見える化システムの特性から、技能労働者の情報が信頼性の高い客観情報として提示できることを強みとして運用する。システムが完成すれば、技能労働者は、技能に見合った適正な評価や処遇改善を受けられるようになり、企業は適材適所への労働力の投入が可能になる。履歴管理を的確に行うことで、労働需給の流動性を高めることにもつながりそうだ。」(『建設工業新聞』2013.12.05)
●「ベトナムの工事現場で、日本式の施工方法を理解した現地人材に活躍してもらうことなどを目的に、ゼネコンや専門工事業者などが2月に設立した『ベトナム建設人材育成推進協議会』が、具体的な活動をスタートさせる。協議会の会長会社である大成建設がモデル現場を提供、年明けにもベトナム人技能実習生が現場実習を始める見通しだ。既存の外国人技能実習制度を活用した取り組みだが、日・ベトナム間では1ランク上の技能労働者の育成を目指している。日本の建設会社がベトナムで工事を施工する際に、現場のリーダーとなり得る人材を育てるのが最終目標だ。日本式施工を知るローコストの技能者を獲得することで、海外展開時のコスト競争力を高め、ベトナム建設産業の強化にもつなげる。」(『建設通信新聞』2013.12.09)
●「国土交通省は9日、企業の資金需要が増す年末を控え、下請契約と下請代金支払いの適正化などを求める文書を建設業100団体に出した。9月に一斉に始まった法定福利費を内訳明示した標準見積書の活用・尊重による技能労働者の社会保険加入徹底をあらためて周知。元請に標準見積書を提出する下請にも、法定福利費の算定根拠を適切に説明し、外注先の技能労働者を含めて必要な社会保険に加入させるよう求めた。」(『建設工業新聞』2013.12.10)
●政府の産業競争力会議の分科会(主査・長谷川閑史経済同友会代表幹事)は10日、賃金と労働時間を切り離した雇用制度の創設を求める提言案をまとめた。これは、「残業代ゼロ」を合法化するとともに、いまでも長時間労働を強いられている労働者を無法状態におくもの。提言案は、「労使合意の下で」との条件を付けつつ「労働時間と賃金を完全に切り離した雇用契約を結ぶオプション(選択肢)を個人と企業に与える制度」を「創設すべきである」とした。新制度は、提言案が「日本型新裁量労働制」と呼ぶもの。当面は、年収1000万円を超える専門職で先行的な導入を提言した。(『しんぶん赤旗』2013.12.12より抜粋。)
●「建設業振興基金は12日、建設産業の人材確保・育成方策を検討するため、業界関係者や有識者らでつくった『建設産業人材確保・育成方針策定会議』の最終報告を発表した。若年者の確保と定着には教育訓練の充実が不可欠と指摘。建設産業界として、学校・教育訓練施設とネットワークを構築する上で中核的センターの確立が必要だと提言した。中核的センターの機能を富士教育訓棟センター(静岡県富士宮市)が担うことも提案。老朽化した施設の建て替えと機能拡充の必要性を訴えた。」(『建設工業新聞』2013.12.13)

建設産業・経営

●第20回全国建設研究・交流集会が11月24、25日、福島市で行われた。建設産業に携わる公務・民間労働者や研究者など370人が参加。「憲法を活かして大震災・原発災害からの復興を」をテーマに地域建設産業の発展に向けて活発な論議が行われた。真木實彦・福島大学名誉教授が「原発災害、憲法を活かした復興への希望を」と題して記念講演した。小川英雄・福島県労連・労働センター所長が「除染労働者の労働実態と改善に向けた取り組み」を報告。「7102億円余という巨額な資金が投入され、除染従事労働者の労務単価も上げられているはずなのになぜ効果的な除染がすすまないのか」と問題提起した。…除染従事労働者の労務単価は従来の1万1700円(日当)が1万5000円に引き上げられ、「除染手当」と合わせると2万5000円になったものの、これまで寄せられた相談では2万円を超えるものは1件もなく、逆に下がっていると指摘。「1万2000円の労賃から宿泊・食費、ガソリン代、税金、社会保険料が差し引かれると手元に残るのは8500円」、未払い賃金が1200万円などの事例や、暴力行為やパワハラ相談もあることを明らかにした。…実際、ゼネコンから末端業者に配られている「新規入場の皆様へ」という文書では、通常の賃金を「福島県の最低賃金(5400円)以上」としていることから、実際には最低賃金ぎりぎりの賃金で改善された兆候が全く見られない、これは県民が望む形の除染作業の進展に直結していないことと連動していると告発した。集会は○復興への展望、○仕事づくり、○賃金、○公契約法・条例などの分科会に分かれて論議。「住民生活の安全や地域経済を支える建設産業の発展のため全力でがんばろう」とするアピールを採択した。(『しんぶん赤旗』2013.12.02より抜粋。)
●「提携、買収、子会社設立、新事業――。東日本大震災の復興需要が最盛期を迎え、国土強執化による公共事業の増加に期待が高まっている中で、7年後には東京五輪の開催も決定、1年前と比べると先行きはかなり明るくなってきた。しかし、好調な環境がいつまでも続くと考えている企業は少なく、ポスト復興に備え建設関連業は各社とも新たな展開を目指しさまざまな手を打っている。11年後半から12年に掛けて、道路系や鉄道系に加え、民間企業の連携・単独による海外事業を専門に手掛ける建設コンサルタント会社の設立が相次いだ。…民主化が進み有望市場として注目を集めているミャンマーには、日本工営が現地法人を設置したほか、アジア航測は同社で初めてとなる海外法人を新設。オリエンタルコンサルタンツも設立準備を進めている。国内は人口減少などで、長期的には需要が下降線をたどると予想されるため、将来を考えて海外への取り組みに力を入れる企業は多い。」(『建設通信新聞』2013.12.03)
●「積水ハウスが5日発表した2013年2〜10月期の連結決算は純利益が508億円と前年同期比90%増えた。2〜10月期として過去最高。低金利や来春の消費増税前の駆け込み需要を背景に、価格の高い住宅が都市部を中心に好調だった。足元の受注には減速感が出ているが、稲垣士郎副社長は『消費税が10%に上がるのを見越した引き合いがこれから出て、来年3〜4月に受注は回復する』との見方を示した。売上高は10%増の1兆2580億円。主力の戸建て住宅事業の売上高は13%増の3714億円だった。土地の狭い都市部を中心に3、4階建て住宅の建設が増えた。太陽光発電装置などを搭載する環境配慮型住宅の販売も増え、1棟あたりの住宅価格は3415万円と2〜7月期に比べ50万円弱上昇した。賃貸住宅の売上高は18%増の2437億円となった。…賃貸でも高価格帯の住宅が増えており、1棟当たり価格は6331万円と400万円弱上昇した。マンションやリフォームも好調だったが、不動産投資信託(REIT)への売却が減った都市再開発事業は約3割の減益。」(『日本経済新聞』2013.12.06)
●「ヤマダ電機は来春から低価格の住宅を販売する。土地が付かない注文住宅で、価格は床面積3.3平方メートル当たり20万円台からと大手住宅メーカーの半額程度。同社は家電需要の掘り起こしにつながる住宅事業を育成している。従来よりも低い価格帯に広げることで多様な顧客を獲得する。事業を専門に手掛ける新会社、ヤマダ・ウッドハウス(群馬県高崎市)を設立した。住宅の企画や設計、工務店との連携、販売促進などをする。本社がある北開東地区に専門の店舗を出すほか、各地にある自社の家電販売店でも受注する。 現在、住宅子会社のヤマダ・エスバイエルホームで住宅を販売しており、注文住宅の価格は床面積3.3平方メートル当たりで40万円台から。新たに売り出す低価格の住宅は郊外の広めの土地に建てることを想定。総床面積が150〜200平方の2階建てが中心になり、1棟当たりの価格は1500万〜2000万円の見通しだ。初年度に150棟で約25億円、3年後には年800棟で約130億円まで受注を増やす計画。いる。柱や梁(はり)で支える『在来工法』で造る木造住宅が主体で、現場での建築作業を簡単にするためにあらかじめ工場で木材を加工したり、間取りや住宅設備の仕様を絞ったりすることで1000万円台半ばの価格を実現している。」(『日本経済新聞』2013.12.06)
●「住宅大手の注文住宅の受注減少が止まらない。消費税の現行税率5%が適用される9月までの駆け込み需要の反動で、11月の受注額(速報値)は積水ハウスなど大手4社のうち3社が10月に続き2ケタ減となった。住宅展示場の来場者数など一部に明るさもあるが、回復時期は不透明だ。最大手の積水ハウスは11月の受注額が32%減と、10月(16%減)からマイナス幅が拡大。4社の中で唯一10月がプラス(7%増)だった大和ハウス工業も11月は4%減。『減少に転じるのは予想したが、反動減の影響がどれほど続くか読めない』という。住友林業は11月もほぼ10月と同じ28%減。9月が65%増と駆け込みが顕著で、反動減が色濃く出ている。ミサワホームは22%減で『年内は減少を避けられない』 (竹中宣雄社長)とみる。各社とも新商品や新技術を訴えているが、現時点で需要喚起に至っていない。」(『日本経済新聞』2013.12.11)
●「建設経済研究所は11日、主要建設会社40社の本年度上半期(13年4〜9月)の決算分析をまとめた。単体の受注総額は前年同期比42.7%増の6兆0882億円。12年度補正予算による公共工事の増加や景況感改善に伴う民間工事の増加を背景に受注が好調で、08年9月のリーマンショック前の水準(約5.8兆円)を上回った。収益性を示す連結の売上総利益率は、国内外の不採算工事の影響で大手が悪化する一方、不採算工事の解消が進んだ準大手、中堅は上昇に転じた。」(『建設工業新聞』2013.12.12)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●日本住宅会議は11月30日、2013年度総会とシンポジウムを都内で開き、現代の居住貧困と住宅支援について話し合った。「貧困の拡大と格差社会」として、後藤道夫・都留文科大学名誉教授が記念講演。生活保護基準を下回る低収入・無保障世帯が生保利用世帯の5.5倍にも増えていると指摘。一方で生活への公的保障は苦しく低く、居住に関する国の支出はGDP比0.16%であり「他の先進諸国の数分の一だ」とのべた。安倍政権がさらなる社会保障の削減に進むなかで居住保障を勝ち取るには「他分野のたたかいとつながることが大切だ」と話した。「新たな居住形態と居住支援のあり方」として4氏が報告。(『しんぶん赤旗』2013.12.02より抜粋。)
●「東日本大震災から4日で1000日目。岩手、宮城、福島の被災3県の復興事業はまだ道半ばだ。震災がれきの処理は宮城や岩手でめどがつきつつあるが、生活を支える住宅整備は遅れている。県別では、東京電力福島第1原子力発電所事故の影響が残る福島の遅れが鮮明になっている。震災がれきは3県で約2700万トンが発生した。約1800万トンのがれきがあった宮城では当初、沿岸部にうずたかく積まれた山が目立ったが、2012年春ごろから処理が進み出した。県は9カ所の処理場を新設。破砕や選別、焼却を進めた。…岩手県では宮古市に設置した焼却炉に加え、大船渡市にある太平洋セメントの工場なども活用して処分を進めた。釜石市のスポーツ拠点整備にコンクリートくずなど21万トンを使い、再利用にも積極的に取り組んだ。ただ福島県では処理が大幅に遅れている。原発事故の避難地域では仮置き場の確保などが難航し、当初は今年度中としていた目標時期が大幅にずれる。双葉、大熊、富岡の3町はほぼ手つかず。避難地域以外では337万トンのがれきがあるが処理は6割にとどまる。…一方、進まないのが住宅整備だ。復興庁によると被災者へ貸し出す『災害公営住宅』の必要戸数(福島を除く)は2万1421戸。9月末までに完成したのは2%で、4割は工事着工に至っていない。用地取得の遅れが 津波被害を受けた沿岸部の住宅地を高台や内陸部に移す『防災集団移転促進事業』。これも国の同意を得た全332地区のうち51%が造成工事に着手したが、完了は4%の13地区にとどまる。」(『日本経済新聞』2013.12.04)
●「国土交通省は来年から病院や介護施設の建て替えや新設を促す規制緩和に乗り出す。地方自治体が医療・福祉施設の大きさを制限する容積率を緩和することを認め、高齢者向けのマンション併設型の病院などの建設を容易にする。在宅で医療、看護、介護サービスを受けられる体制を整え、高齢化に対応した街づくりを後押しする。来年の通常国会に都市再生特別措置法や都市計画法など関連法の改正案を提出。来年中の実施を目指す。住宅の周辺に福祉・医療施設がないといった課題に対応する。…今回の規制緩和では、ベッド数20床以上の病院や介護施設に限って、容積率の上限を引き上げることを認める。近隣商業地域なら500%以上など、国の上限を超える容積率の設定を認めることも検討する。 低層部に病院、高層部にマンションが入る複合ビルの建設を想定している。現状でも併設は可能だが、容積率が壁となり、普及していない。国交省は三大都市圏や地方の中核都市でニーズがあるとみている。」(『日本経済新聞』2013.12.10)

その他

●「機密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法が6日深夜の参院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決、成立した。野党は審議続行を求めたが、与党が採決に踏み切った。機密漏洩の厳罰化を機に、政府は米国など他国と重要情報を共有、日本を取り巻く安全保障環境の変化に対応したい考えだ。2014年秋にも秘密指定を始める。…特定秘密は防衛と外交、スパイ活動、テロの4分野のうち、漏洩すれば日本の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあり、特に秘匿が必要な情報を絞り込み、閣僚ら『行政機関の長』が指定する。政府は年明けにも設置する有識者会議の意見を参考に、秘密を指定する統一基準をつくる。特定秘密を漏らした場合は最高10年の懲役を科す。米国から供与された軍事情報の保護を定めた日米相互防衛援助協定(MDA)秘密保護法に基づく『特別防衛秘密』の罰則と同じ水準だ。現行の国家公務員法の一般的な守秘義務違反の罰則は1年以下の懲役。自衛隊法の『防衛秘密』の罰則も5年以下の懲役で、従来より厳しくなる。」(『日本経済新聞』2013.12.07)