情勢の特徴 - 2013年12月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は、総額5兆4654億円の2013年度補正予算案を閣議決定した。14年4月の消費増税に備えた経済対策(国費は5兆4956億円)が柱で、東京五輪開催に向けたインフラ整備や、復奥、防災・安全対策などを進める。補正予算案は、14年度予算案と合わせた『15カ月予算』として編成され、14年の通常国会に提出する。補正後の13年度一般会計予算総額は、過去4番目に大きい98兆0770億円になる。補正予算案は、東京五輪のメーン会場となる国立競技場の改築関連費213億円など『競争力強化策』に1兆3980億円を計上。『女性・若者・高齢者・障害者向け施策』に3005億円、学校の耐震化など『防災・安全対策』にも1兆1958億円の予算を確保した。東日本大震災被災地の復旧・復興経費は、復興特別法人税の1年前倒し廃止に伴う8000億円の財源補填を含め1兆9308億円となった。」(『建設通信新聞』2013.12.16)
●「2020年の東京五輪の開催決定を受け、東京商工リサーチが10月下旬に全国の経営者を対象に行った意識調査では、約9割が五輪開催による景気へのプラス効果を期待すると回答した。金融・保険業の9割が五輪関連施設や都市インフラの整備による資金需要の拡大に期待を膨らませている一方で、建設業や不動産業の経営者の1割は自社の業績に悪影響が出ると回答し、資材費や労務費の高騰による建設コストの増大が収益を圧迫するとの見方を強めている。…五輪開催までの景気予想では、アベノミクス効果で景気が回復局面に入り、今後の景気へのプラス効果を期待する経営者が約9割(良くなる=35.6%、やや良くなる=54.0%)を占めた。…一方で、大半の経営者は自社の事業拡大に慎重な姿勢をみせている。…全体的には好感を持って受け止められている五輪開催だが、消費増税後の市場動向や実体経済の先行きに不透明さが残り、五輪開催が新規投資などに踏み切る判断材料にはなっていない。…建設業界では、資材の高騰や人材不足による職人の賃金上昇などで建設コストが跳ね上がり、受注工事の利益確保が難しくなっている。今後進められる五輪関連の競技施設やインフラ整備などによって建設需要が増大し、コスト上昇リスクが一段と高まると予想する経営者も少なくない。」(『建設工業新聞』2013.12.16)
●「国土交通省は中古住宅の質を高める改修工事を国費で支援する方針だ。耐震性や省エネの性能を強めるなど一定の基準を満たす住宅に100万〜200万円を補助する。欧米よりも見劣りしている中古住宅市場の育成を狙う。補助対象は戸建てや分譲マンションなど全国に約5700万戸ある中古住宅のうち改修工事を実施する物件だ。バリアフリー、劣化対策なども含めた基準を設け、改修後に合格した住宅に補助金を出す。…国交省などによると、一般的な住宅の改修には数百万円かかる。今回の支援策を通じて住宅業者と保有者の双方を、質の高い中古住宅に誘導できると期待している。新制度は改修費の3分の1を補助し、100万円が主軸となる。新築並みの高性能の住宅には200万円を出す方針だ。財源は今年度補正予算で20億円を確保し、来年度当初予算でも数十億円が計上される見通しだ。」(『日本経済新聞』2013.12.17)
●「政府は18日、2014年度予算案の公共事業費を13年度予算(5兆2853億円)に比べ実質2%程度増やし、5.4兆円程度にする方向で最終調整に入った。整備新幹線関連の予算を9年ぶりに増額。防災関連の予算も増やす。景気対策を重視しているが、経済効果の見込みにくい事業が増える可能性もある。」(『日本経済新聞』2013.12.19)
●「静岡県焼津市は、関方地内の交差点を対象とした円形交差点(ラウンドアバウト)の社会実験を14年1月から2月にかけて行う。試験的に導入し、車両の流れや通行速度などを計測しラウンドアバウトの効果を検証する。ラウンドアバウトは、道路交差部の中央に円形の中央島を設けた形状の交差点。車両は中央島の周りの環状道路を時計回り(右回り)の一方通行で走行する。交差点への進入車両は交差点を直進できないため侵入速度が抑制され、重大事故の削減に効果があるとされている。信号機がないため円滑に通行できるなどのメリットがある。」(『建設工業新聞』2013.12.19)
●「経済成長著しい新興国を中心に伸び続けるインフラ需要。これに対応するには民間資金の活用が不可欠というのが各国政府などの共通認識だ。経済協力開発機構(OECD)の推計では、2010年から30年までの間に必要なインフラ投資額は世界全体で71.2兆ドル。途上国の自己資金や政府開発援助(ODA)ですべてを賄うのは不可能で、PPPなど民間活用への期待が高まっている。…世界全体を見渡すと、インフラPPPが最も浸透している地域は中南米・カリブ諸国だ。過去20年の間、地域別で常に最大の投資額を記録。12年の投資額は前年比50%増の870億ドルに上った。2番目に多い南アジアは20%減って351憶ドルだったが、02年からの平均増加率13.8%は、地域の国内総生産(GDP)成長率(6.5%)を上回る。欧州・中央アジアは225億ドル(前年比48%減)で、トルコが最も多い投資額(97億ドル)を記録した。東アジア・太平洋は19%増えて172億ドル。エネルギー分野への投資の件数が最も多く、これに上下水道が続く。中でもマレーシア(51億ドル)の投資額が最も多く、インドネシア(35億ドル)、タイ(27億ドル)などと続いている。ただ、8.9%という地域のGDP成長率に比べると民間投資額の増加率は低く、12年の民間投資額のGDP比もわずか0.2%にとどまる。経済成長率が高い割にはインフラ分野への民間参加が進んでいないことが分かる。」(『建設工業新聞』2013.12.19)
●「政府の中央防災会議は19日、首都直下地震の被害想定と被害軽減に必要な対策を発表した。都区部直下を震源とするマグニチュード(M)7クラスの地震が発生すると、最悪の場合、建物倒壊と火災により東京、埼玉、神奈川、千葉の1都3県で2万3000人が死亡すると試算。生産やサービスの低下などを含めた経済損失は最大95兆円に上ると予測した。建物の耐震化や火災対策などの事前防災と中枢機能の確保などを急ぐよう求めている。…被害想定は、▽冬の深夜▽夏の昼間▽冬の夕方―の3パターンで実施。最大の被害が出るのは冬の午後6時ごろに毎秒8メートルの風が吹いているケースで、17万5000棟の建物が全壊、出火・延焼で41万2000棟が焼失すると予測した。…事前防災として、首都としての中枢機能の確保や、建築物・施設の耐震化、火災対策(感震ブレーカーの設置促進、延焼防止対策)に加え、2020年東京五輪開催で増加が見込まれる外国人への防災情報伝達などを求めた。地震後の対応として、発生から▽おおむね10時間▽100時間▽初期対応以降―の3段階で行うべきメニューも示した。併せて、首都の住民向けに、住宅の耐震化や家具の固定、市街地火災からの早期避難、自動車利用の自粛、企業には『通勤困難』を想定した企業活動の回復・維持の検討などを呼び掛けている。同会議が04年にまとめた前回の被害想定では、死者数は最大1万2000人、建物の倒壊.火災焼失約85万棟、経済被害約112兆円などとしていた。」(『建設工業新聞』2013.12.20)
●「建設用鋼材の取引価格が上昇している。東北の復興や消費増税前の駆け込み需要を背景に、建築向けを中心に引き合いが伸びているためだ。足元の取引価格は棒鋼やH形鋼など主要品種で月初に比べて3〜5%高い。ただ、原料の鉄スクラップは価格上昇が一服しており、一部の品目で相場の頭を押さえる可能性もある。マンションの鉄筋に使う異形棒鋼の大口需要家渡し価格は現在、指標品種で1トン6万8千〜6万9千円で月初と比べて5%上昇した。ビル建築用のH形鋼も問屋仲間相場は東京で1トン8万〜8万2千円と3%高い。建設のほか建機の部品に使う熱延鋼板(3.2ミリ)も、問屋仲間相場が1トン6万3千〜6万5千円と3%高い。年初からの上昇率は棒鋼で28%、H形鋼で17%に達した。公共事業向けやマンシヨンやビルなど民間建築向けで鋼材需要が好調。特にH形鋼の品薄感が強い。…日本鉄鋼連盟によると、今年4〜10月の建設用の普通鋼鋼材の受注量は約700万トンと前年同期比10%増加した。」(『日本経済新聞』2013.12.21)
●「国土交通省は、14年4月1日に消費税率が5%から8%に引き上げられるのに伴って懸念される建設業者の転嫁拒否に対する監視体制を強化する。年明け以降に実施する建設業法に基づく立ち入り検査で、見積書や見積依頼書などから転嫁拒否の実態があるかどうかを確認する作業や、情報収集を目的としたヒアリングを実施する。また、建設産業専門団体連合会(建専連)が1月から全国10カ所で開催する研修会の中で、転嫁拒否に関する出張相談も実施する。」(『建設工業新聞』2013.12.24)
●「政府は24日の閣議で14年度予算案を決定した。一般会計の総額は95兆8823億円(前年度比3.5%増)と過去最大。公共事業要は5兆9685億円(12.9%増)で2年連続の増額となった。インフラ老朽化対策の加速と南海トラフ巨大地震などに備えた事前防災対策の強化、経済再生に向けた物流ネットワークの重点整備などに主眼を置いた。国土交通省分は総額5兆1616億円(2.4%増)。復興加速、安全・安心の確保、経済・地域の活性化の3分野を柱に編成した。…柱となる3分野のうち、被災者が実感できる復興の加速化では、道路、河川、港湾などインフラの復旧・整備に1554億円を計上。13年度補正と合わせて1579億円と前年度当初を上回る予算で各種事業を進める。安全.安心確保の観点では、公共施設の耐震化や津波対策などによる強執(きょうじん)化を進めるために1055億円、大規模水害・土砂災害などに備えた治水対策と渇水対策に2866億円を確保。社会資本の戦略的な維持管理・更新の推進には3199億円を充て、所管各分野での取り組みに加え、レーザースキャナーなど新たな観測技術を活用した効率的な点検も行えるようにする。事前防災・減災対策や老朽化対策を集中的に支榎する防災・安全交付金にはl兆0841億円を計上した。経済・地域の活性化では、首都圏空港の機能強化に136億円、整備新幹線の整備に720億円を配分。3大都市圏の環状道路や空港・港湾へのアクセス道路など効率的な物流網の強化に1681億円を計上し、切れ目のないネットワーク整備を重点的に進める。競争力強化を図る事業を支援する社会資本整備総合交付金には9124億円を確保。PPP・PFI手法を活用して民間の知恵や資金の積極的な活用も推進する。国交首は、既存施設の機能が効果的に発揮されるよう、計画的な整備を進めるために必要な公共事業予算を今後も安定的・持続的に確保するとの方針に沿って予算案を編成した。」(『建設工業新聞』2013.12.25)
●「安倍晋三首相は25日、日本経済新聞のインタビューで、雇用や農業、医療分野を柱とした新たな成長戦略を来年6月をめどにまとめる方針を表明した。今年6月に決めた日本再興戦略に盛り込めなかった規制緩和策や、産業の新陳代謝を促す企業支援などを打ち出す見通しだ。政府と日銀が政策目標や景気認識を共有していくため、黒田東彦日銀総裁と26日に会談するほか、定期的に協議する考えも明らかにした。…首相が新たな成長戦略を6月に打ち出すのは、内容を2015年度予算に反映させるためだ。政府は概算要求基準を固める夏以降に予算編成を本格化する。成長戦略で照準を合わせるのが女性。首相は『女性は日本に眠る最大の潜在力だ。女性の力を最大限引き出すため全力で取り組みたい』と強調した。このほか仕事内容や勤務地を限定する『限定正社員』の普及、労働時間規制の緩和、農協改革も主要テーマになるとみられる。」(『日本経済新聞』2013.12.26)
●「東京都は築地市場移転で工事予定価格を約6割、400億円引き上げるのに合わせて施設規模を約1割縮小する。11月の入札不調を受け、仕様を簡素化し入札参加者を増やすためで、施工実績を問う要件も緩和した。ただ、2015年度中の移転という当初の目標は維持する。江東区豊洲に開く新市場の中核である水産仲卸売場棟と水産卸売場棟、青果棟の延べ床面積を合計で約36万1000平方メートルに2万平方メートル以上縮小した。」(『日本経済新聞』2013.12.28)

行政・公共事業・民営化

●「政府は17日、国土強靭化推進本部(本部長・安倍晋三首相)を設置し、首相官邸で初会合を開いた。推進本部は、先の臨時国会で成立した国土強靭化基本法に基づく組織で、国土強靭化に向けた施策の推進や関係する国の計画などの指針となる政策大綱と、大規模な自然災害に対する国土の脆弱(ぜいじゃく)性を評価する指針を同日決定した。巨大地震などの大規模な自然災害に備え、壊滅的被害を回避するための国を挙げた施策が本格的に始まる。…決定した政策大綱は、大規模な自然災害が発生した場合でも国家や社会の重要な機能が損なわれないよう、基本的な考え方やプログラムの推進方針などを定めている。自然災害に対する国土の脆弱性を評価しながら、大綱に基づいてより詳細な『国土強靭化基本計画』を策定し、来年5月をめどに閣議決定する。政府が策定する基本計画とは別に、各地方自治体に対し国土強靭化地域計画の策定を要請し、国がそれを支援する。計画内容を国や自治体の長期計画などに反映させることで、強靭な国土づくりを目指す。」(『建設工業新聞』2013.12.18)
●「自民党の公共工事品質確保に関する議員連盟公共工事契約適正化委員会(野田毅委員長)は19日、東京・永田町の党本部内で会合を開き、公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の改正について、法制化ワーキングチーム(PT)がまとめた素案を佐藤信秋座長が報告した。法改正によって、中長期的な担い手の確保やダンピング防止、インフラの維持管理などの課題に対応した入札契約の改善を推進。公共工事に参加する建設業者が適正な利潤を確保できるようにする。」(『建設工業新聞』2013.12.20)
●「国土交通省は、都道府県と政令市にインフラ長寿命化行動計画の策定を要請した。政府が11月29日に策定した基本計画に基づき、国の各機関や自治体が行動計画と個別施設ごとの対応方針を定めた計画を作ることになっている。…同省が本年度中に策定する行動計画や道路、河川、空港・港湾、下水道などの個別施設計画を参考に各自治体で策定作業を進めてもらう。技術的な相談には、各地方整備局に設けた相談窓口で応じる。」(『建設工業新聞』2013.12.24)
●「全国の自治体が発注する公共工事の入札で、不調・不落の増加傾向が鮮明になっている。日刊建設工業新聞社が都道府県・政令指定都市を対象に行ったアンケートを基に直近3カ年の不調・不落発生率を集計した結果、全国平均は11年度の3.7%から12年度は5.2%、13年度(速報値)は6.0%と上昇していた。労務・資材費の高騰による予定価格と実勢価格のかい離が発生率上昇の主因とみる自治体が多い。…13年度(8〜11月末時点)の不調・不落発生率を見ると、12年度を上回っている自治体は48団体。その半数近くの22団体が12年度に比べ2ポイント以上の上昇となり、28団体は11年度から上昇傾向が続いている。地域ブロック別に見ても傾向に大きな違いはなく、不調・不落発生率の上昇はおおむね全国的な傾向になっていることがうかがえる。そうした中でも東日本大震災の復興事業が本格化している地域では事業の急増に伴う資機材や人材の不足などから、特に不調・不落の発生率が高い。加えて、東北の震災被災地域周辺の秋田県や山形県、北海道などでは発生率が前年度に比べ2〜6ポイントの幅で上がっている。」(『建設工業新聞』2013.12.27)
●「環境省は26日、福島第1原発事故に伴い、周辺の福島県内11市町村で国が行っている放射性物質の除染事業の完了時期を、最大で3年延長する新たな計画を発表した。11市町村のうち、作業が遅れている南相馬市や双葉町など7市町村では、当初計画の13年度内の完了が困難と判断。計画の見直し作業を進めていた。新計画には、住民帰還の前提となる宅地や、上下水道、道路といったインフラ周辺の除染を先行実施することを盛り込んだ。計画の見直し対象に含まれなかった楢葉、川内、大熊の3町村は当初目標通り13年度中に除染が完了する見込みで、田村市は既に完了済み。残る7市町村では、宅地やその近隣の除染を優先的に進め、飯舘、川俣、葛尾の3町村は14年度内、南相馬、浪江、富岡の3市町では15年度内に宅地の除染を完了させる。宅地に続いて、住民帰還に必要な上下水道や主要道路などのインフラ復旧工事に遅れが生じないよう、これら施設の除染も先行的に実施。工事との一体的施工で早期化を図る。宅地以外の除染は川俣、葛尾が15年度内、南相馬、飯舘、浪江、富岡が16年度内の完了を目指す。」(『建設工業新聞』2013.12.27)

労働・福祉

●「建設産業専門団体連合会(建専連、才賀清二郎会長)は、若年者の入職を促進するため、工業高校教諭との意見交換を実施する。毎年度開催する『建設専門業の経営革新支援研修会』のテーマの一つとして企画。14年1月20日の関東を皮切りに全国10地区で開催する本年度の研修会のうち、工業高校からの参加が見込める関東、沖縄、中部、中国の4地区で行う。教育界と連携するきっかけにし、継続的な担い手確保につなげる。経営革新支援研修会は、加盟各社の経営層を主な対象として開催する。各地区建専連が主催し、地域社会の維持、法令順守、若年者の入職促進を図る方策への認識を深めてもらうのが目的だ。…12年度の研修会では、工業高校や専門学校の教諭を講師に迎え、教育現場の実態について講演を行ってもらった。本年度はこれを発展させ、工業高校数諭と業界が率直に意見を交わす場にする。意見交換では、工業高校の現状について説明してもらった上で、業界側から、求められる人物や求人・採用の状況、新規入職者の離職の状況に加え、建設業の体験学習、現場実習、インターンシップの受け入れ状況など、工業高校生が建設業に進もうとする際に必要な情報を伝える予定だ。」(『建設工業新聞』2013.12.16)
●厚生労働省は17日、「ブラック企業調査」(若者の「使い捨て」が疑われる企業等への重点監督の実施状況、9月実施)で対象となった5111事業所のうち、82%にあたる4189事業所で労働基準関係法令の違反が見つかり、是正勧告を行ったと発表した。是正しない事業所については公表し、書類送検も視野に入れて対応するとしている。厚労省による「ブラック企業」に焦点をあてたとりくみは初めて。法令違反があった4189事業所のうち、「違法な残業(時間外労働)があった」事業所が43.8%、「賃金不払い残業(サービス残業)があった」事業所が23.9%、「労働条件の明示がなされていない、抜けがあった」事業所は19.4%だった。法令違反が最も多かった業種は、製造業(1222事業所)だった。1カ月の残業時間・休日労働時間が80時間超という「過労死ライン」の労働者がいる事業所は24.1%、100時間超は14.3%だった。(『しんぶん赤旗』2013.12.18より抜粋。)
●「厚生労働省の『足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会』(座長・小林謙二関東学院大教授)で、論点の1つである足場の組み立て・変更時の第三者による点検について、仮設業界側と建設業界などのユーザー側の考えがおおむね合意した。『第三者』の定義が、『(直接)足場を組み立てた者以外』との認識でほぼまとまり、現行法令の事業者による点検義務化の枠内で対応する方向となった。」(『建設通信新聞』2013.12.19)
●「国土交通省は、社会保険未加入対策で9月末に一斉活用が始まった標準見積書の普及と促進に向けた対応策をまとめ、20日に開いた社会保険未加入対策推進協議会ワーキンググループ(WG)に提示した。各建設業界団体に標準見積書の取り組み加速を促す通知を出すほか、下請企業向けに法定福利費を内訳明示した見積書作成のポイントを示す資料を作成し、周知を図る。社会保険加入に関する下請指導ガイドラインに榛準見積書関連の内容を追加することも予定している。WGでは、全国の建設会社や建設現場を対象に一斉活用開始後の状況を把握する目的で行ったアンケートの結果を報告。標準見積書を提出した場合、法定福利費の全額が支払われたとする下請企業が30%に上るなど、一定の成果が認められた。一方で、専門工事業団体からの周知不足で未作成・未利用という下請企業が多く存在することも判明した。元請企業による下請企業への提出指導も25%にとどまっており、一斉活用開始後の取り組みがまだ不十分である現状が明らかになった。」(『建設工業新聞』2013.12.24)
●「国土交通省は、建設産業の担い手確保・育成に向けた新たな検討組織を年明けに発足させる。高木毅副大臣が座長を務め、将来の担い手となる若い人材を確保・育成するために、短期と中長期的でそれぞれどのような施策を講じることができるかを探る。…国交省は、若年入職者の減少などで地域の建設業者が疲弊している現状を打開しようと、12年2月に『担い手確保・育成検討会』を設置。専門工事業者の評価や技能労働者の技能の『見える化』、戦略的広報、教育訓練の拠点となる富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)の建て替えも視野に入れた機能拡充策など、個別テーマに対応したワーキンググループや検討組織を設けて議論を進めている。新たな検討組織は、既設の検討会を中心とした活動とは別に、担い手育成に向けた施策の方向性を探っていくことを目的に新設する。」(『建設工業新聞』2013.12.24)
●「大阪府南部の泉南地域にあったアスベスト(石綿)関連工場の元従業員ら58人が石綿による健康被害を訴え、国に計約6億9700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。山下郁夫裁判長は『国の石綿対策の遅れがなければ健康被害は相当程度防げた』として、一審・大阪地裁判決に続き国の責任を認め、計約3億4000万円の支払いを命じた。石綿被害について国の責任が高裁段階で認められるのは初めて。一審は賠償について国の責任範囲を3分の1としたが、二審は2分の1に拡大した。今回は集団訴訟の第2陣の二審判決。第1陣は一審で勝訴したが、二審で逆転敗訴し、最高裁に上告中。国の責任をめぐって高裁段階で判断が分かれ、最高裁の判断が注目される。訴訟の主な争点は、国が石綿の危険性をいつ認識し、適切な規制を実施したかどうか。判決は、石綿の粉じんにさらされるとじん肺の一種『石綿肺』を発症する医学的知見は1958年に確立したと認定。『国が71年まで、事業者に排気装置設置を義務づけなかったのは違法』とした。さらに『石綿粉じん作業での防じんマスク使用を95年まで義務づけなかった』と不作為責任を認定した。」(『日本経済新聞』2013.12.26)
●厚生労働省が27日発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は、公共工事が多かった建設業などで求人が伸び、前月から0.02ポイント上昇し、1.00倍となった。1倍台に乗ったのは2007年10月以来、6年1カ月ぶり。一方、正社員の有効求人倍率は0.63倍と、依然として厳しい状況が続いている。…総務省が同日発表した労働力調査によると、11月の完全失業率(季節調整値)は4.0%で前月比横ばいだった。年齢別にみると、15〜24歳の若年層が前月比0.3ポイント悪化し、6.8%だった。25〜34歳は5.1%と、若い年齢層で高水準となっている。完全失業者数(同)は前月に比べ5万人減少し、261万人となった。就業者数(同)は23万人増加し、6350万人だった。役員を除く雇用者のうち、非正規雇用者数(原数値)は1964万人で、雇用者に占める非正規雇用者の割合は37.2%だった。(『しんぶん赤旗』2013.12.28より抜粋。)

建設産業・経営

●「フジタの上田卓司社長は17日、日刊建設工業新聞などのインタビューに応じ、海外展開の方向性などを明らかにした。大和ハウス工業グループ入りから約1年が経過し、さまざまな分野でシナジー(相乗効果)が具体化しているとして、『会社の力を高めるために、より収益に目を向け、こだわりを持って取り組みたい』との考えを表明。コア事業である国内での土木・建築工事の力を維持しながら海外展開などに一段と注力し、16年3月期には海外現地法人を含めた売上高で3000億円規模、売上高営業利益率で2%以上の達成を目指すとした。海外展開では中国やベトナム、インドネシアで大和ハウス工業との連携が具体化していることを挙げ、工業団地の開発で建屋の建築工事をフジタが担当するなど、コラボレーションの成果が出ているとした。大和ハウスグループは16年3月期までの3カ年経営計画で、新興国を中心に海外事業を拡大し、売上高を1000億円以上にする目標を設定している。」(『建設工業新聞』2013.12.18)
●「ゼネコン各社の工事採算が改善しつつある。13年4〜9月期に各社が売り上げ計上した工事の採算を示す完成工事総利益(粗利益)率(単体ベース)を日刊建設工業新聞社が集計した結果、数値を公表した売上高上位24社の単純平均は5.5%と前年同期より0.9ポイント上昇した。採算の審査を徹底した選別受注が奏功。工事原価が期初の想定を下回った社もあった。17社は14年3月期の粗利益率が前期を上回ると予想。不採算の手持ち工事の消化も進み、15年3月期にかけてさらに改善する社もありそうだ。13年4〜9月期の粗利益率は24社中12社が前年同期より上昇した。土木・建築別の単純平均値は、土木が8.5%と前年同期から1.3ポイント、建築は3.7%と1.2ポイントそれぞれ改善している。…14年3月期の土木・建築合わせた粗利益率見込みは単純平均で6.1%。前期からの改善幅は1.3ポイントになる見通し。労務・資材費の高騰を不安要因に挙げ、改善見込みを小幅にとどめる社も依然少なくない。」(『建設工業新聞』2013.12.20)
●「建設コンサルタンツ協会(建コン協、大島一哉会長)は26日、国土交通省で同省幹部と意見交換し、インフラの維持管理・更新で建設コンサルタントが関与する仕組みを提案した。補修設計などを独立して実施するのではなく、CMのような手法を導入して維持補修計画を作成する段階から関与する手法を例示した。同省の各地方整備局などとの意見交換に向けた要望・提案の素案も提示。調査業務の工期の年度末集中を緩和するよう発注の平準化を求めた。」(『建設工業新聞』2013.12.27)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京都は16日、伊豆大島の土石流災害で自宅に住めなくなった人を対象としたプレハブ仮設住宅の建設を始めた。場所は島内の廃校となった小学校のグラウンドで、38世帯、81人が入居を希望した。来年1月25日から入れる。35人が死亡、4人が行方不明となった10月16日の災害発生から2カ月。17日からは、がれきの島外搬出が始まる予定で、復旧・復興に向けた動きが加速する。」(『日本経済新聞』2013.12.16)
●「住宅市場の構造が変わってきた。今年に入って中古住宅の成約件数が全国的に上昇し、価格も首都圏ではバブル後以来の高値を記録した。消費増税の影響が出始めた新築に比べ、足元の伸び率は中古が上回る。景気回復や低金利に加え、割安さが人気の理由だ。中長期的に新築着工戸数の伸びが見込めないなか、景気下支え効果を期待する声も出てきた。…中古住宅を扱う東急リバブルによると、4〜9月の首都圏の中古マンションの売買件数は前年同期比で約3割増えた。東日本不動産流通機構(東京・千代田)の調べでも、首都圏の中古マンションの成約件数は11月まで前年比で15カ月連続の増加。足元の伸び率は新築を上回る。価格も上昇している。リクルート住まい研究所が算出する首都圏の中古マンション価格指数は11月に128.8と、バブル崩壊後の1995年5月以来18年半ぶりの高値圏となった。…買い手の主役は所得が比較的低い層だ。中古住宅の購入世帯で最も多いのは30代。特に中古一戸建ての所有層は30歳末満が多く、中古マンションは60代以上の高齢者層が好む傾向がある。賃貸住宅で暮らしている世帯の4割は平均年収が400万円未満(国土交通省調べ)。新築の分譲住宅は手が届かないが、中古物件なら価格は一般に4割安い。足元の景気回復や低金利を受けて、思い切って中古住宅購入に動く姿が浮かぶ。実際、家計調査によると、年収が平均で268万円の世帯の持ち家率は10月時点で81.3%と2年前に比べて10ポイント近く上がった。中古住宅がこうした低所得層の購入の受け皿になっている可能性は高い。…別の理由もある。来春に控える消費増税だ。業者が仲介しても、売り主と買い手が個人なら中古住宅の売買(建物部分)に消費税はかからない。仮に2千万円の新築物件なら、来春には160万円の消費税がかかることを考えれば大きい。景気下支え効果を指摘する向きもある。中古住宅を買う人が家具や家電などを100万円ずつ買えば、年間消費額は1700億円。…新築中心の今の住宅投資は約14兆円。国内総生産(GDP)の3%弱を占めるが、付加価値を生んでいないと定義される中古住宅はGDPに反映されない。中古住宅とリフォーム市場の規模は現在、約10兆円。政府は6月にまとめた成長戦略で、これを2020年までに倍の20兆円に増やす目標を掲げた。人口減で新築着工戸数の伸びが見込めないなか、新市場が順調に育てば、関連産業を通じて潜在的な景気下支え効果が期待できる。」(『日本経済新聞』2013.12.23)
●「復興庁は20日、福島第1原発事故の避難者向けの復興公営住宅の整備戸数を従来の3700戸から4890戸に増やす計画見直しを行った。8月と10月に避難住民を対象にした意向調査の結果を反映。従来の3700戸分は15年度までの入居を目指すが、増加分の1190戸は15年度以降の早期入居を目標に整備を進める。」(『建設工業新聞』2013.12.24)

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