情勢の特徴 - 2014年3月前半
●「財務省が3日発表した2013年10〜12月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は9兆4393億円と前年同期に比べて4.0%増えた。増加は3四半期連続。自動車をはじめとする製造業の投資が5四半期ぶりに増加に転じた。円安による輸出採算の好転や底堅い消費を追い風に、企業の収益も改善が続いている。製造業の設備投資は前年同期比0.7%増えた。増加への貢献が最も大きかった業種は自動車などの輸送用機械業で、同17.3%増だった。…非製造業は同5.7%増。円安を背景に外国人観光客が増えたことを映し、ホテルの改修などが多かったようだ。一方で卸売・小売業は同6.4%減。13年に入ってからは今年4月の消費増税に備えた投資の動きが目立っていたが、足元では一服感が出ている。」(『日本経済新聞』2014.03.03)
●「都内の中小企業の約4割が消費増税に伴う価格転嫁を懸念――。東京商工会議所が会員企業向けに実施した経営課題に関するアンケート調査でこんな結果が明らかになった。特に消費者向けにビジネスを展開する飲食業や小売業で不安な声が目立つ。原材料価格の上昇などに直面する中小が多い中、円滑に価格転嫁ができるかどうかは今後の収益を左右しそうだ。…消費増税に伴う価格転嫁の見込みについて聞いたところ、『全て転嫁できる』と答えたのは59.2%。一方、『一部しか転嫁できない』、『ほとんど転嫁できない』、『わからない』との回答を合わせると約4割の企業が懸念を示した。飲食業や小売業、個人向けサービス業では『一部しか転嫁できない』との回答の割合が製造業など他業種に比べ比較的高い。」(『日本経済新聞』2014.03.05)
●東証1部に上場する2014年3月期(今期)決算企業の配当総額は前期比9%増の6兆4400億円と、リーマン・ショック前の08年3月期を上回って過去最高になる見込みであることが明らかになった。円安・株高などで業績が改善した企業が、株主還元を強化している姿勢が浮き彫りになった。(『しんぶん赤旗』2014.03.05より抜粋。)
●「全国民を対象にした公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は世界銀行と組み、途上国のインフラや未上場会社などに投資する方向で調整に入った。地域はアフリカや東南アジアが有力。これまでの運用資産よりもリスクは高いものの、高い利回りが期待できる。収益を増やし、厳しい年金財政を潤すねらいだ。GPIFは国民年金と厚生年金を運用し、その金額は約130兆円と世界最大規模の機関投資家だ。途上国への投資はGPIFが世界銀行グループの国際金融公社(IFC)と日本政策投資銀行(DBJ)と共同で、早ければ年内に始める。…GPIFの投資額は数百億円から最大数千億円になる見通しだ。投資が失敗して損失を抱え込むリスクは、国内外の株式や債券で運用している今より高まるものの、案件によっては年10%台後半の利回りが見込める。インフラでは、電力や水道、港湾の関連企業を想定している。大型事業への融資(プロジェクトファイナンス)にも参加する。GPIFが本格的に途上国での高リスク・高リターン投資をするのは初めて。」(『日本経済新聞』2014.03.09)
●「財務省が10日発表した1月の国際収支速報によると、日本が海外とのモノやサービス、配当など総合的な取引でどれだけ稼いだかを表す経常収支は1兆5890億円の赤字になった。比較可能な1985年以降、1カ月間の赤字では過去最大で、赤字が4カ月続くのも初めてとなる。アベノミクスによる円安の進行で輸入価格が膨らむ一方、輸出が伸び悩んで貿易赤字が続いており、経常赤字と財政赤字との『双子の赤字』を懸念する声も出ている。」(『日本経済新聞』2014.03.10)
●「地方銀行の本業の収益悪化が進んでいる。2013年4〜12月期の貸出金から得られる利息収入は平均で4%減った。海外融資を増やすなどした3メガ銀で2.4%増えたのとは対照的で、国内頼みの地銀各行の収益の厳しさが改めて浮き彫りになった。人口減少の進展に伴う経営環境の悪化が避けられず、再編も含めた新たなビジネスモデル作りが急務だ。…資金需要の弱さを補おうと県境をまたぐ『越境融資』を手がける地銀が増えた結果、金利競争に拍車がかかっている。中京圏がその典型だ。…地銀・第二地銀84行・グループの昨年末の貸出残高は208兆円で、1年前と比べ3%増えた。現時点では貸出の『量』は増えているものの利回りが示す『質』は悪化している。人口減少が進めば残高減少が追い打ちをかける。…金融庁は地域によって10年後の地元の市場規模が1〜3割程度縮小するとの試算を地銀・第二地銀に対して提示。縮む地域経済を前提に『将来像が描けるのか』として再編を迫っている。」(『日本経済新聞』2014.03.11)
●内閣府が10日発表した2013年10〜12月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、物価変動の影響を除いた実質が前期比0.2%増、年率換算で0.7%増となり、速報値(前期比0.3%増、年率1.0%増)から下方修正された。新たに公表された統計を基に推計し直した結果、個人消費や設備投資などの伸びが縮小した。5四半期連続のプラス成長だが、今回下方修正された7〜9月期(前期比0.2%、年率0.9%)に続き0%台の成長にとどまった。4月の消費税増税をにらんだ駆け込み需要による押し上げ効果があるにもかかわらず、景気回復力の弱さが再確認された。物価の影響を反映した名目は前期比0.3%増(速報値0.4%増)、年率換算1.2%増(1.6%増)だった。(『しんぶん赤旗』2014.03.11より抜粋。)
●「低金利を追い風に、不動産投資信託(REIT)による債券発行を通じた資金調達が急増している。投資法人債の発行額は1〜3月、同期間として過去最高となった。REITは金利負担を減らして利益を増やせる効果がある一方、投資家にとっては受け取る分配金の増加につながる。REITは投資家から集めたお金で不動産を買い、賃料収入などを分配する。資金は株式にあたる投資口の発行(資本)や、銀行融資、債券(負債)などで集める。足元で目立つのは投資法人債の発行による資金調達。…金融情報会社のアイ・エヌ情報センターによると、1〜3月の投資法人債の発行額(予定含む)は635億円と前年同期の約4倍。3カ月で昨年1年間(1083億円)の6割に達した。増資による1〜2月の調達規模が前年同期の半分以下にとどまるのと対照的だ。背景にあるのは金利の低下。不動産市況の復調も支え、REITはより低い金利で債券を発行できるようになった。」(『日本経済新聞』2014.03.12)
●「(株)東京商工リサーチがこのほどまとめた2013年『休廃業・解散企業動向』調査によると、13年の休廃業・解散件数は2万8943件で、過去10年で最多を記録した。倒産は5年連続で前年を下回り、22年ぶりに1万1000件を割り込んだが、休廃業・解散は年々増加。休廃業・解散の産業別では、建設業が最も多くおよそ3割を占める。同社は、『公共投資が拡大し、民需も住宅需要などで活況を取り戻すなか、長引いた業績低迷で体力が脆弱化したところに、昨今の人手不足、労務費や資材高騰が重なり、先行きの見通し難から事業継続を断念したケースが増えた』とみている。」(『日本住宅新聞』2014.03.15)
●「『(欧米では)国土交通省のようにほぼ全ての事業を一般競争で行うような国はみられない』――。国土技術政策総合研究所は、欧米の建設事業での公共調達に関する実態調査の結果を公開した。欧米諸国と欧州連合(EU)共通で実施される方式と日本の直轄工事での方式を比較し、欧州諸国では日本の指名競争入札に当たる制限手続きの適用が進んでいるとするケースを紹介。総合評価についても、価格と品質の重み付けを事業に応じて柔軟に対応している。国交省でも多様な入札契約方式の導入に向けた検討が進む中、こうした事例は制度見直しの参考になりそうだ。」(『建設通信新聞』2014.03.05)
●「国土交通省は4日、PPP・PFI事業を普及させるため、調査支援の案件募集を始めた。募集するのは▽官民連携事業の推進に関する検討調査(国交省が直轄で調査)▽先導的官民連携支援事業(自治体など公的機関への調査補助)▽震災復興官民連携支援事業(同)―の3分野。特に防災・減災や公共施設の老朽化対策に役立つ計画を支援案件として選定する。いずれも応募は4月18日まで受け付け、6月にも支援先を決定する。」(『建設工業新聞』2014.03.05)
●「政府は水道やごみ処理といった都市インフラの整備に強みをもつ日本の地方自治体が、海外に進出するのを後押しする。事業ごとに異なる各府省の窓口を内閣官房にまとめ、海外展開をめざす民間企業と橋渡しする。政府開発援助(ODA)も使って新興国で事業を受注しやすい環境を整え、安倍政権が成長戦略の柱と位置づけるインフラ輸出の拡大につなげる。6日夕に開く経協インフラ戦略会議(議長・菅義偉官房長官)で自治体の海外展開を支援する方針を決める。」(『日本経済新聞』2014.03.06)
●「国土交通省は、2050年を視野に入れた中長期の将来像を描く『国土のグランドデザイン』の骨子試案を明らかにした。有史以来の急激な人口減少と“異次元の高齢化”の到来、切迫する巨大災害の発生、インフラの老朽化などを見据え、国土政策の視点から取り組むべき戦略テーマなどを整理した。リニア中央新幹線が形成する世界最大のメガリージョン(広域経済圏)の活用や多極ネットワーク型コンパクトシティーの実現、メンテナンスエンジニアリングの進化などを推進。国土を守る担い手として、建設産業の人材確保・育成にも言及している。日本が直面するさまざまな課題は、いずれ海外諸国にも及ぶことから、世界に先駆けた『課題解決先進国』の地位確立を目指す。骨子試案は5日開かれた新たな『国土のグランドデザイン』構築に関する有識者懇談会に提示した。次回会合で骨子の取りまとめに向けた議論を交わし、3月末に骨子を固める。その後、具体的な推進方策などを詰め、最終的に6月にはグランドデザインを策定する見通しだ。」(『建設通信新聞』2014.03.07)
●「国土交通省の建設コンサルタント業務委託で今後、プロポーザル方式が増加しそうだ。2012年度の入札契約実施状況をみると、件数ベースでは総合評価落札方式が初めて5割を超え、主流となりつつあるものの、業務の品質低下を懸念する声も寄せられている。これを受け、国交省では業務や提案を求める内容に応じて発注方式選択の考え方を明確にする方針を提示。技術点で1位を獲得しても価格競争が避けられない状況もあり、プロポーザルの増加に舵を切ることは確実とみられる。」(『建設通信新聞』2014.03.10)
●「政府は7日、『建設業法等の一部を改正する法律案』を閣議決定した。建設業法の改正により、建設企業や事業者団体、行政は建設工事の担い手の確保・育成を実施する責務がある点を明記した。また許可業種に解体工事を新設。『公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律』(入契法)の改正でダンピング受注の防止を明文化したほか、入札金額の内訳書の提出、下請契約を締結する際に施工体制台帳の作成・提出の義務付けなどを打ち出している。…建設業法では、建設業者団体などの責務として、業界団体が事業活動する際には担い手の確保・育成や施工技術の確保に向けた取り組みに努めなければならないと明記し、国土交通大臣は団体の取り組みの把握と取り組みが促進される措置を講じることとした。また建設企業にも団体と同様に取り組むことを求めた。…入契法では、適正な金額での契約の締結に向けた措置を新設。ダンピング防止に向けて『その請負代金の額によっては公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約の締結を防止』する文言を追加するとともに、提出書類の内容確認などを各省庁に求めた。また、適正化指針でもダンピング防止に向けて入札契約方式を改善する事項を定める。施工体制台帳の提出については、これまでの3000万円(建築一式工事は4500万円)以上の下請契約締結時に必要としていた要件を撤廃し、下請契約を結ぶ場合には提出するように改める。」(『建設通信新聞』2014.03.10)
●「神奈川県は10日、県庁新庁舎で公契約に関する協議会(会長・小池治横浜国大教授)を開き、報告書案を議論した。同案では、最低制限価格率など入札制度の見直し、積算基準や設計単価のルール化などの検討とともに、引き続き公契約条例の必要性を検証するため、賃金実態調査の継続と他自治体の運用状況などの調査を求めた。今回が最後の協議会で、最終的な報告書は委員長に一任し、修正を加えた上で、年度内にまとめる予定だ。」(『建設通信新聞』2014.03.11)
●「東日本大震災で地盤の液状化現象が発生した千葉、茨城、埼玉県などの自治体で、事業計画が固まりながらも費用負担の大きさなどを理由に住民の合意形成が進まず、工事に着手できないところが出ている。対策を怠れば大規模地震発生時の再液状化の可能性も高く、国や県の支援策のさらなる検討が急がれる。」(『建設工業新聞』2014.03.11)
●「国土交通省は、今月中に策定する『下水道事業における公共施設等運営事業等の実施に関するガイドライン』の最終案をまとめた。下水道分野でPPP・PFI事業を行いやすくするための要点を整理。自治体が施設を所有したまま運営権を民間に委ねるコンセッション(公共施設等運営権)方式と、公共の下水道施設に民間の収益施設を併設する収益拡大型スキームの普及を後押しする。それぞれの手法ごとに民間事業者の最適な選定方法などを盛り込んだ。」(『建設工業新聞』2014.03.11)
●「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)の一部を改正する法律案が、12日の自民党国土交通部会で了承された。今後は、7日に閣議決定した建設業法と『公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律』(入契法)の改正案との3法を一括し、4月にも審議入りする見通し。部会に出席した野田毅衆院議員は『政府の2法案と一括で、参院先議で審議する方向だ』と表明した。国交省でも11本の法案が今通常国会に提出される中、参院先議により早期成立にこぎつける構えだ。」(『建設通信新聞』2014.03.13)
●「国土交通省の『技能労働者の技能の「見える化」ワーキンググループ』(座長・野城智也東大教授)は、技能労働者個人が持つ技能情報を一元的に管理・提供するシステムの基本計画書案をまとめた。専門工事業者が優秀な技能者を確保しやすくなったり、元請企業が作業員名簿や施工体制台帳を作成する際の業務を効率化できたりする効果が見込める。月内に成案をまとめ、システムの具体的な運営主体を想定した運営基本方針を14年度末に策定するための作業に入る。」(『建設工業新聞』2014.03.04)
●「『社会全体での人材最適配置・最大活用』『全員参加の社会』を軸とした雇用政策の在り方を検討してきた厚生労働省の雇用政策研究会(座長=樋口美雄・慶応大学教授)がこのほどまとめた報告書では、建設分野についても、『若年労働者の確保が課題』などと指摘している。産業別日銀短観によると、建設業の人員不足感が非常に強い。厚労省は昨年6月に国土交通省と連携した『当面の建設人材不足対策』を取りまとめているが、長い年月がかかる技能習得も踏まえた雇用対策が急務だ。報告書は建設分野について、『若年労働者の減少、高齢化の進展がみられ、人材確保や技能継承のために、若年労働者の確保が課題である』とした上で『建設分野の技能習得には10年、20年と長期の時間が必要であると言われており、長期的視点による人材育成が重要』と指摘。建設業界自身が、『新規学卒者をはじめ若い人に魅力を伝えるとともに、入職した者を将来の担い手として大事に育成していく取組を進める必要がある』と訴えた。」(『日本住宅新聞』2014.03.05)
●「全建総連東京都連(伊東昇委員長)は、建設技能労働者の14年度の要求賃金を決め、東京都や東京建設業協会に5日申し入れた。諸経費と法定福利費を除いた標準賃金を1日2万6000円と設定。標準賃金の支払いとともに、公共工事設計労務単価に基づく賃金の適正な支払いと、1日当たりの実勢賃金の3400円引き上げを求めた。都連は、毎年11月から翌年の2月にかけて新年度の要求賃金や労働条件に関する討議を行っている。標準賃金については、年収600万円の達成に必要な金額として従来の方針を踏襲した。実勢賃金3400円引き上げについては、『13年賃金調査』の結果や、東京都の公共工事設計労務単価の13年度と12年度の差(平均3267円)、月収約10万円の引き上げを望む回答が最も多かった会員アンケートを踏まえて決定した。」(『建設工業新聞』2014.03.06)
●大手機械メーカー『クボタ』の旧神崎工場(兵庫県尼崎市)周辺の住民が中皮腫で死亡したのは、同工場のアスベスト飛散が原因だとして2遺族が同社と国に損害賠償を求めていた兵庫尼崎アスベスト訴訟の控訴審判決が6日、大阪高裁(小島浩裁判長)であり、原告と被告クボタの控訴をいずれも棄却した。判決は、工場外にアスベストを飛散させたクボタの責任を認め、同社工場から50メートル南のヤンマー尼崎工場に勤め、亡くなった山内孝次即さん=当時(80)=の遺族への損害賠償を命じた。一方、近くに住み、胸膜申皮腫で亡くなった保井綾子さん=当時(85)=の遺族の請求は退け、アスベストの使用規制をしなかった国の責任は認めなかった。(『しんぶん赤旗』2014.03.07より抜粋。)
●11日、安倍内閣が閣議決定した労働者派遣法改悪法案は、派遣を無期限・無制限に拡大し、「生涯ハケン」の危険と「ハケンが当たり前」の社会にしかねない内容である。労働者派遣は、いつ「派遣切り」されるかわからない、極めて不安定な雇用である。また劣悪な低賃金を押し付けられる。このため派遣は、派遣先企業で働く正社員の代わりとしてはならないとする「常用代替防止」が原則で、派遣は「臨時的・一時的」に限るとされてきた。 この原則を保障する制度が、「専門26業務」を設けた業務区分と、「原則1年、最長3年」とした期間制限である。政府の改悪法案は、これらいずれも事実上撤廃するものである。(『しんぶん赤旗』2014.03.12より抜粋。)
●「内閣府は12日、2060年に向けた長期の労働力人口予測をまとめた。出生率が大幅に回復し、北欧並みに女性や高齢者の労働参加が進んでも約50年で1170万人、労働力人口が減るとの結果になった。女性活用などが進まない場合、減少幅は2782万人に拡大するという。中長期の日本経済の課題を議論する有識者委員会『選択する未来』に試算結果を出した。働く人と失業者を合計した労働力人口は、13年に6577万人と前年比22万人増えた。景気回復や共働き環境の整備で、女性などの労働参加が増えたのが要因だ。だが、中長期的には高齢化や人口減で働き手の減少は避けられない。」(『日本経済新聞』2014.03.13)
●「(一社)JBNは2月12日の理事会で、『大工育成基金(仮称)』を創設することを決議した。大工育成を主要な事業の一つに位置付けることを改めて確認。金額や基金の正式名称、寄付・募金の詳細については大工育成ワーキンググループで検討し、新年度早い段階に創設する考えだ。主な事業内容は@大工エキスパートJBNマスターズの定期開催A新卒者の募集、確保、育成のための広報活動B訓練プログラム・施設等の整備C訓練および能力評価のための基準等の策定D就労モデル、キャリアパスの確立、支援E関連業界との調整、連携――等としている。大工不足は深刻な状況となっているが、JBNは『業界自らが考え、取り組まねばならない喫緊の課題』と指摘。その上で『国からの助成に頼るのではなく、業界の主体性と自主財源のもとに進めるべき事業と位置付け、組織を挙げて取り組むことにした』という。」(『日本住宅新聞』2014.03.15)
●「大手建築設計事務所が、即戦力を期待できる中途採用を増やしている。日刊建設工業新聞社が20社を対象に行った人材採用に関するアンケートによると、13年度の中途採用は『未定』と答えた1社を除く19社合計で282人(12年度209人)と、前年度の実績を73人上回った。2020年東京五輪の関連施設整備や景気回復による建設需要の拡大に対応し、事務所間で優秀な人材の獲得競争が激化しそうだ。」(『建設工業新聞』2014.03.03)
●「北陸新幹線の融雪設備工事を巡る談合事件で、談合に関する匿名の通報が発注元の独立行政法人『鉄道建設・運輸施設整備支援機構』にあった後、設備工事会社側が既に決めていた落札順を入れ替えていたことが4日、関係者の話で分かった。企業側が談合の発覚を免れようと、隠蔽工作をしたとみられる。東京地検特捜部は同日、企業側に予定価格を示唆したとして、鉄道機構東京支社の松岡賢作設備部長(57)を官製談合防止法違反罪で在宅起訴したほか、機構の男性職員1人を同罪で略式起訴。設備工事会社8杜と各社の担当者8人を独占禁止法違反(不当な取引制限)罪でそれぞれ起訴、在宅起訴した。…起訴状によると、松岡被告は2012年10〜11月、機構発注の融雪設備工事2件に関し、2社の担当者に予定価格に近い金額を示唆。各社の担当者は11〜12年にかけて、東京都内の飲食店で受注調整目的の会議を開いて落札予定企業を決めるなどしたとされる。」(『日本経済新聞』2014.03.05)
●「自民党建築設計議員連盟で議論が進められていた建築士法の大幅な改正が決定的となった。『書面による業務契約の締結を義務化』『一括再委託の禁止』など建築3会(日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会)が要望していた内容のほか、建築設備士の文言を法律上明記することを新たに盛り込む。議員立法となる改正案の具体的な内容については3月下旬の建築設計議連の総会で掲示する。」(『建設通信新聞』2014.03.06)
●「小売り・外食企業が2014年度の出店計画を見直す。建築資材の値上がりに建設技能者の不足が重なり、商業施設の建設費は5割近くも上昇。イオンは大型ショッピングセンターの出店数を従来計画より2〜3割抑え、セブン&アイ・ホールディングス傘下のスーパー、ヨークベニマルは半分にする。入札の不調が相次ぐ公共工事に続き、民間企業にも建設費高騰の影響が広がってきた。」(『日本経済新聞』2014.03.09)
●「大手住宅メーカーの2月の受注速報(金額ベース)が10日、出そろった。最大手の積水ハウスが前年同月比32%減になったのをはじめ、各社とも2ケタの減少になった。消費増税前の駆け込み需要の反動が続き、受注回復には時間がかかりそう。好調だったリフォームや分譲住宅も駆け込み需要が間もなく終わるが、回復に向けた有効な施策を見つけられていない。積水ハウスは1月より下げ幅を7ポイント広げた。大和ハウス工業は10%減、住友林業、バナホームもそれぞれ16%減、19%減と減少幅が広がった。ミサワホームも棟数ベースで26%減と各社とも反動減に苦しんでいる。3月末までに完成すれば消費税率が現行の5%で済むリフォームは、ほぼ駆け込み需要が終わった。分譲住宅も現行税率の適用は3月末までに引き渡された物件に限られる。これまで注文住宅の不調を補っていたリフォーム、分譲も反動減に苦しむ可能性がある。」(『日本経済新聞』2014.03.11)
●「不動産協会の木村惠司理事長(三菱地所会長)は13日、建築工事費の上昇について、『まだ上がっているのは間違いない』とした上で、『(建設業界は人材確保を)中長期の取り組みと言うが、われわれはもう待てない』と工事費上昇に強い懸念を示した。同日開いた理事会後の会見で述べた。木村理事長は昨年11月、日本建設業連合会の中村満義会長と、建築費高騰をテーマに会談、事業パートナーとしてそれぞれの立場で自助努力を進めることで認識が一致していた。ただその後も建築費上昇が続いていることに今回、懸念を表明した格好だ。木村理事長は、『ウイン・ウインの関係になるためには、こちら(民間発注者のディベロッパー)のことも考えてほしい』とした上で、『人手が足りないなら、当面は外国人技能実習制度を使って対応、その間に若い職人を育てる体制を構築してほしい』と建設業界に早急な人手不足への対応を求めた。」(『建設通信新聞』2014.03.14)
●「建設経済研究所は13日、主要建設会社39社を対象にした13年4〜12月期の決算分析をまとめた。単体の受注高は、景況感の改善に伴う民間建築工事の増加と消費増税前の駆け込み需要などを背景に、前年度を32.4%上回った。営業利益は準大手(9社)、中堅(26社)が大幅に増加する一方、大手(4社)では、不採算工事の影響を受けて売上総利益が減少した影響で悪化した。」(『建設工業新聞』2014.03.14)
●「既存の超高層マンションなどの長周期地震動対策を促すため、国土交通省が2014年度に創設する補助制度の内容が固まった。対策を講じる民間事業者などを対象に、制震改修工事費の最大5分の2を補助する。詳細診断と改修設計にかかる費用は、それぞれ国が半分を負担する。2018年度末までに事業着手することが条件となる。新たに立ち上げる補助制度は『長周期地震動対策緊急促進事業』。社会資本整備総合交付金などを活用した通常の支援制度に、補助率を上乗せする。詳細診断と改修設計の補助率は通常3分の1だが、2分の1と手厚くする。改修工事は3分の1(地方公共団体に補助制度がない場合は11.5%)が、5分の2(同3分の1)に増える。」(『建設通信新聞』2014.03.04)
●「国土交通省は、空き家として放置されているケースが多い個人住宅の賃貸流通を促すための指針案をまとめた。主に需要が少ない地方都市にある個人住宅の所有者を対象に、通常は貸し主が契約前に行う修繕などを借り主に行ってもらう代わりに家賃を安くする『借り主負担改修型』の賃貸借契約を推奨し、賃貸による空き家の解消を促す。今月中に指針を策定し、14年度から自治体などへの普及を図る。国交省によると、全国に約5700万戸あるすべての住宅ストックのうち空き家は約13%に当たる756万7900戸と、この20年間で倍増した。空き家の6割に当たる447万5600戸は賃貸または売却用として一時的な未利用となっているが、残る268万1100戸は放置されたままになっており、その大半を個人所有の一戸建て住宅が占める。国交省は、空き家が放置されたままの状態が続くと景観や治安などに悪影響を及ぼす可能性が高いとみて、放置された個人住宅の賃貸流通を活性化し、空き家の解消を図ることにした。」(『建設工業新聞』2014.03.04)
●「政府は『国家戦略特区』の地域を3月下旬に指定する。競争力のある拠点作りを目指す特区として、東京都と神奈川県を中心とした首都圏と、大阪府に京都市や神戸市を加えたエリアを指定する方針。容積率の緩和や外国人医師の診察解禁などを通じ、国際的なビジネスや医療の拠点をつくる。…首都圏では東京都を中心に広域特区をつくる。容積率の緩和を通じて都市部の高層マンションの整備を促し、職住近接の環境を整備する。公立学校運営を民間に開放し、グローバル人材の育成などを目指す。神奈川県でも川崎市や横浜市など京浜地域が同じ特区に含まれる見込みだ。首都圏の一部として国内外の企業誘致を進める。外国人医師による診察や医学部誘致などで国際的な医療拠点作りを目指す千葉県成田市も特区指定が有力だ。関西は大阪府を中心とした広域特区を指定する。健康保険の対象外となる技術を併用した混合診療などの特例を増やし、高度な医療技術の実証を進める。研究開発税制を活用し、先端技術分野に投資する企業を税制優遇で支える。特区の地域は研究拠点が集まる神戸市や先端企業が連なる京都市を含む見通し。」(『日本経済新聞』2014.03.06)
●中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の政府案が先月末、示された。原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、「再稼働を進める」と明記した。原発を将来まで使い続ける“原発恒久化宣言”だ。東京電力福島第1原発事故がなかったかのようである。…ベースロード電源について「コストが低廉で、昼夜を問わず安定的に稼働できる電源」と注釈まで付けていますが、これ自体が、福島第1原発が最悪の事故を起こしたことを無視するものだ。現に稼働原発はゼロであり、事故対策費や廃炉費用などを加えれば、究極の高コストである…原発の「安全性」について政府案が強調しているのは、「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準」だ。「規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」と明記した。しかし、原発の規制基準で国民の安全が守れる保証はまったくない。…原発で事故が起き放射性物質が放出された場合、規制基準にあるのは、屋外に放水没備を備え、放出される放射性物質を大量の水をかけて沈降させる対策だ。実効性や効果に疑問符がつくだけではない。住民の被ばくが避けられないことが前提となっている。さらに、周辺住民の避難計画の実効性も審査・規制の対象になっていない。政府案は、「計画の充実化を支援」とあるだけで、自治体任せである。規制基準に「合格」した原発は「安全」だという「安全神話」を再び国民に押しつけようとしていることは明らかだ。(『しんぶん赤旗』2014.03.10より抜粋。)
●「中古マンションを購入する際に、間取りやキッチンなどの設備を大幅に変更する『リノベーション』が若い世代を中心に人気を集めている。自分好みの部屋をつくれるうえ、新築を購入するより2〜3割安い。若年層は中古への抵抗感も少なく、“新築信仰”が根強かった日本の住宅市場も変わりつつあるようだ。…リノベーションは通常築20年以上の物件が対象。狭い部局に分かれた4DKを広いリビングの2LDKにしたり、キッチンカウンターを長くしたりするケースが多い。ハンモックを天井からつるせる部屋などもある。一般的な改修費用は広さ60平方メートル台の部屋で800万円台前半。中古住宅の購入費を加えても新築より2〜3割安い。新築には手が届かないが、自分の趣味や家族のためにこだわった部屋を作りたいという人に人気だ。利用者の中心は30代のDINKS(子供のいない共働き世帯)や単身者。」(『日本経済新聞』2014.03.11)
●「次の住まいの見通しはたたず、仮設から出られない」―。多くの人々の命と生活の基盤を奪った東日本大震災から3年。避難者は全国で約26万7000人で、9万7000人の被災者がいまだに仮設住宅暮らしを余儀なくされている。本紙は岩手、宮城、福島の3県で「被災者300人実態調査」を行い、暮らしの状況や要望を聞いた。震災3カ月以来6回目となる調査だが、住まいや生業・雇用の再建はほとんど進まず、事態が悪化、深刻化している実態が浮かび上がった。実態調査は、記者が仮設住宅、借り上げ住宅、仮設商店街などを訪ね、被災者300人に直接聞き取りをした。内訳は岩手県98人、宮城県103人、福島県99人。8割以上の被災者が仮設を出る見通しが立たないことが明らかになった。…移れない理由は、公営住宅建設の遅れが37%、自宅再建資金の不足が14%など。…生業と雇用の再建も遅々として進んでいない。就労状況は「失業中」が依然として32%。生業再建は「めどがたたない」63%、「あまり進んでいない」15%で合わせて78%だった。(『しんぶん赤旗』2014.03.11より抜粋。)
●「福島第一原子力発電所事故に伴って長期避難を余儀なくされている被災者が避難先での生活拠点を築いていくための課題を検討してきた、建築専門家らでつくる『長期避難者の生活拠点に関する懇談会』は11日、自立再建用地の整備など4項目からなる提言『長期避難者向け生活拠点の整備の拡充』と、提言を実現するための課題を発表した。…提言は、現地調査による関係者との意見交換などを踏まえ、長期避難者の生活拠点の整備拡充の観点から必要とされる施策としてまとめた。具体的には、@復興公営住宅の隣接・近傍に自立再建住宅用地を整備するA復興公営住宅の整備に当たっては、木造復興住宅の拡大や診療所などを併設するB受入先において、避難元自治体が整備・運営する長期避難者向けの福祉、医療などの施設について、その整備・運営に関する支援を強化するC地縁性に配慮した良好なコミュニティーの形成のため、復興公営住宅と自立再建住宅への入居方式などを工夫する――の4項目。長期は、『10−20年かもしれないし、あるいは50年かもしれない』というスパンをイメージしている。一方で、提言を実現するための法的、制度的裏付けなどがないことから、@防災集団移転促進事業制度の創設A受入自治体のまちづくり政策との調整B事業主体の決定――を課題として挙げた。」(『建設通信新聞』2014.03.12)