情勢の特徴 - 2014年7月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「厚生労働省が15日まとめた国民生活基礎調査で、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子供の割合を示す『子供の貧困率』が、2012年に16.3%と過去最悪を更新したことが分かった。前回調査の09年から0.6ポイント悪化した。同省は『当時はデフレ下の経済状況で、子育て世帯の所得が減ったことが原因』としている。大人も含めた所得の低い人の割合を示す『相対的貧困率』も前回調査から0.1ポイント悪化して16.1%だったが、1985年の統計開始以来、初めて子供の貧困率が上回った。」(『日本経済新聞』2014.07.16)
●信用金庫中央金庫は15日、4〜6月の中小企業景況レポートを発表し、業況判断DI(指数)はマイナス11.7と前期比8.9ポイント減の大幅な水準低下となった。収益面では前年同期比売上額および収益の判断DIがそれぞれマイナス1.6、マイナス8.0と低下した。製造業、卸売業など6業種すべてで業況判断DIが低下。北海道、東北、近畿など11地域すべてで低下した。(『しんぶん赤旗』2014.07.18より抜粋。)
●「企業などの不動産取引が一段と拡大しているか2014年1〜6月の不動産取引額は約2兆5000億円と前年同期比6%増え、金融危機後で最高となった。地価の上昇期待や低金利を追い風に、外資マネーや国内の金融法人、建設会社などが購入を増やした。都心部を中心に不動産市況の回復を後押ししそうだ。」(『日本経済新聞』2014.07.21)
●「消費増税後の景気回復に閲し政府の強気姿勢が目立ってきた。22日の経済財政諮問会議で内閣府が示した見通しによると、2014年度の実質国内総生産(GDP)成長率は1.2%。0.8%強を予想する民間機関より高い。個人消費は0.3%増と前年より増えると見通しており、前年度割れを予測する民間との差が目立つ。賃金や物価の上昇が消費にどう影響するかの見方が割れているためだ…最も違いが出ているのがGDPの6割弱を占める個人消費。政府の見通しは前年度比0.3%増とプラスだ。4〜6月期こそ落ち込むものの、夏場以降、ボーナス増などで所得環境が好転。物価上昇や増税の影響はある程度吸収し消費も回復するとのシナリオを描く。一方で民間は平均で前年比0.64%減とマイナス成長を予想する。前年度末、消費増税を前に自動車や家電の駆け込み需要が大きく膨らんだため、14年度はその反動が強まり、マイナスに陥る。」(『日本経済新聞』2014.07.23)
●「甘利明経済財政・再生相は23日、都内で講演し、来年10月に消費税率を予定通り8%から10%に引き上げるかどうかに関し『7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値が11月17日に出る。12月1日に7〜9月期の法人企業統計が出る。各方面の英知を集めて判断材料をそろえて最終的に安倍晋三首相が判断する』と述べた。首相が各種の経済指標を見たうえで12月初めにも最終判断するとの見通しを示した。」(『日本経済新聞』2014.07.24)
●「政府は25日の閣議で、各省庁が2015年度の予算を要求する際のルールとなる概算要求基準を了解した。安倍晋三首相が力を入れる地方活性化などに予算を重点配分する特別要望枠を設け、各省庁から約4兆円分の事業を募る。来年度予算は経済成長と財政赤字の縮小の両方をめざし、法人減税と消費増税の行方が定まらない手探りの編成となる。…財務省は概算要求基準で、各省庁に公共事業や文教科学などの裁量的経費を14年度当初予算(14.7兆円)から一律10%カットすることを求めている。今年度予算額の90%までしか予算要求を認めない。一方で、特別枠を設けて追加の要望を受けるため、要求額自体は今年度より17%、約2.5兆円増まで膨らむ。6月にまとめた成長戦略や骨太方針にかかげた事業を具体化するために必要な予算を要望できる。首相は地方活性化や人口減対策を重視しており、各省庁から関連する事業が集まる見通しだ。…特別枠に集まる4兆円規模の事業を最終的にどこまで採用するかは、15年度の税収動向などを見極めて判断する。来年度に着手する法人実効税率の引き下げや、来年10月に予定する10%への消費増税の最終判断などに左右される。」(『日本経済新聞』2014.07.25)
●日本銀行が6月に発表した1〜3月期の資金循環統計によれば、日銀が保有する国債の残高は200兆円を超え、保険会社を抜いて初めて最大の国債保有者となった。これは、昨年4月から開始した異次元金融緩和を通じて、日銀が金融機関から大量の国債を購入しているため。このことから、日銀は「財政ファイナンス」の領域に足を踏み入れているのではないかとの懸念の声も聞かれる。「財政ファイナンス」とは、政府の財政赤字を日銀が事実上、尻ぬぐいする政策のことです。結論的に言えば、日銀はすでに「財政ファイナンス」の分野に手を染めつつあると考えてよい。その理由は第一に、異次元金融緩和が、日銀の長期国債の保有残高を年間約50兆円の規模で増加させる旨を公約していることだ。これは、今年度当初の国債発行予定額の約41兆円を大きく上回る。第二は、日銀による金融機関からの国債買いオペ(オペレーション=公開市場操作)の現状は、いまや限りなく、財政法が禁じた「国債直接引き受け」に近い内容になっていることである。(『しんぶん赤旗日曜版』2014.07.27より抜粋。)
●「長引く金融緩和で膨張した投資マネーが、世界中の高利回り商品に順繰りに向かっている。米では返済能力が低いローンで作る証券化商品の発行が増え、南欧やアフリカといった低格付け国債も人気を集める。先進国の長期金利は歴史的な低水準が続き、少しでも高い収益を求めて運用先を広げる動きだ。『実態とかけ離れた値上がり』との警戒感も浮上している。」(『日本経済新聞』2014.07.29)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、首都直下地震発災時の初動対応策として、主要8方位の道路啓開を同時進行させる方針を打ち出した。17日に開いた南海トラフ巨大地震・首都直下地震対策本部(本部長・太田昭宏国交相)の会合で明らかにした。密集市街地の解消を始めとする事前防災に加え、発災後の初動対応で焦点となる『道路啓開』の基本スタンスを固めた形だ。今後、早急に基本ベースとなる『道路啓開計画』を策定する。」(『建設通信新聞』2014.07.18)
●「国土交通省が、2050年に照準を置いた新たな国土のグランドデザインを策定した。総 人口が1億人を下回るなど人口減少が進行。さらに南海トラフ地震や首都直下地震など 大規模災害の切迫性が高まっていることなども前提として、災害に強く持続的に成長・発展できる国土造りの姿を描いた。同省は、グランドデザインに沿って国土形成計画を6年ぶりに見直す検討を今秋に始める。…グランドデザインで最優先課題に位置付けられた施策の一つが、『高次地方都市連合』と呼ぶ新たな都市圏の形成だ。複数の地方都市が官民のサービス機能を分担して提供する人口30万人以上の都市圏をイメージしている。国交省は、このイメージに合う都市圏が、3大都市圏(東京、名古屋、大阪)以外では現在、全国に61カ所あるとみている。しかし、現在より人口が大幅に減る2050年には、全国の居住地域の6割以上の地点で人口が半減し、うち2割の地域には誰も住まなくなると推計。これに伴い、3大都市圏を除く人口30万人以上の都市圏も現在の61カ所から43カ所に減ると予測する。…グランドデザインで国交省は、人口30万人以上の地方都市圏を現在と同程度の60〜70カ所維持する目標を掲げた。そのための具体策が高次地方都市連合となる。…中でも最優先で取り組む施策として打ち出したのが、街づくりと一体になった高速交通ネットワークの形成だ。既存の行政区域や県境などの垣根を越えて経済性の高い都市圏を形成するため、一つの都市圏内を1時間程度で往来できるようにする高速道路を新設したり、既存の高速道路を『賢く使う』ための改修に力を入れたりする。…グランドデザインでは、一極集中が続く東京から地方都市への人口移動を促す施策も打ち出した。…国交省によると、日本の総人口に占める首都圏人口の割合は、2010年時点で約3割に上る。こうした首都圏への急速な人口の一極集中は世界的に見ても例が少なく、日本と同様にハイペースの一極集中が続いている国は海外では韓国以外にないという。国交省は、このまま東京への一極集中が進めば、結果的に国全体の人口減少を加速させると同時に、東京で大規模な災害が起きた場合の被害が拡大することにもつながると予測。この流れから脱却する必要があるとして、地方への移転に対する支援を打ち出した。」(『建設工業新聞』2014.07.24)
●「地方都市の活性化を軸に国土交通省を挙げた取り組みが始動する。国交省は29日、政府方針に呼応して、太田昭宏国交相を本部長とする『まち・ひと・しごと創生対策準備本部』を設置、初会合を開いた。同日の会議では、取り組みの方向性が『大臣指示』として明らかになったほか、公の場では初めて『国土形成計画』の見直しに着手することが示された。…太田国交相は『介護医療、交通、産業を含めた地方創生に国交省が果たすべき役割は大きい』と述べ、人口減や高齢化など、地方都市が抱える課題の克服へ、関連施策を強力かつ総合的に推進する姿勢を強調。“大臣指示”という形で副本部長を務める政務二役、本部員となる事務次官以下全局長に取り組み方針を伝達した。大臣指示は、▽人口急減・少子高齢化の下、各地域がいかに生き抜いていくか、国交省の施策と組織を総動員して取り組むこと▽『国土のグランドデザイン2050』を具体化するため、国土の地域の構造的な問題として中長期的視野を持って取り組むこと▽政府の『まち・ひと・しごと創生本部』準備室と連携を密にし、従来の発想にとらわれない構造的アプローチを持った施策パッケージをとりまとめること――の3点。」(『建設通信新聞』2014.07.30)
●「4月以降の公共事業の進捗状況について、都道府県・政令市の大半で前年同期より執行率が上昇していることが、内閣府のアンケート(6月実施)で分かった。集計結果によると、32都道府県・12市は『昨年同時期よりも進んでいる』、4県・3市が『同水準』と回答。『進捗が遅れている』は1県・1市のみだった。」(『建設通信新聞』2014.07.31)

労働・福祉

●「厚生労働省が2014年度補正予算に盛り込んだ『地域人づくり事業』が全国各地で本格的に始まっている。鹿児島県が既に鹿児島県建設業協会に委託して建設労働者の入職・定着のための現場見学会や職場内・外訓練などを始めたほか、和歌山県も『建設業若年者等入職促進・人材育成事業』の実施事業者の募集を始めた。建設業団体にとっては、助成金を活用して会員が一体となった若年技能労働者の確保・育成事業に取り組める仕組みで、今後もさらに拡大するとみられる。…国土交通省は、6月末現在における『地域人づくり事業』の活用状況をまとめた。失業者(無業者)の就職を支援する『雇用拡大プロセス』については、調査に対する回答があった41都道府県のうち、38団体が建設分野での事業を実施または実施予定だった。建設業に特化したものは58事業あり、このうちの52事業は雇い入れ有り。雇用予定人数は1315人となっている。」(『建設通信新聞』2014.07.16)
●「東京都産業労働局は、技能者不足などに悩む中小建設業への支援を本格化させる。都の職業能力開発センターでは5月、特に不足しているとされる『型枠工』と『鉄筋工』を育成するための短期育成コースを新設した。若手技能者などの技能向上を目的に、建設会社などが企画する競技大会への開催奨励金の支給も開始する。今後予定される東京五輪施設の整備、インフラの老朽化対策などの建設需要の増加を見据え、中小建設業での技能者の確保・育成を急ぐ。」(『建設工業新聞』2014.07.17)
●「政府は来年度から受け入れを拡大する建設業の外国人労働者について、同じ技能を持つ日本人と同等以上の給与を支払うよう受け入れ企業に義務付ける方針を固めた。外国人が給与水準など就労条件のより良い企業に転職することも認める。いずれも技能実習期間の3年間を超えて働く人が対象になる。外国人が働きやすい環境を整え、『安価な労働力確保』という批判をかわす。…国土交通省は特定活動の資格で働く外国人の受け入れについて、建設会社などに順守を求めるルールをまとめ、8月上旬にも公表する。柱となるのが、外国人への適正な給与の支払いだ。…実習を終えた特定活動の外国人の給与まで低く抑えるべきではないと考えている。外国人の受け入れ窓口を担う監理団体が主導し、特定活動の外国人の受け取る給与が同等の技能を持つ日本人従業員と同水準か確認する体制をつくる。」(『日本経済新聞』2014.07.25)
●「専門工事業界が、国土交通省や日本建設業連合会など元請団体と一体となって取り組む『社会保険加入促進活動』が、本格始動から1年経過した。その先頭を走る首都圏の鉄筋業界の活動は早くも第2段階に入りつつある。下請けが保険加入負担分を元請けから受け取るため、標準見積書をベースに、より簡素化した見積書と契約書の導入を元請けに働き掛けるという動きだ。既に複数の大手ゼネコンは土木工事での下請けの保険加入負担を認めていることも、こうした動きの追い風となっている。」(『建設通信新聞』2014.07.25)
●「厚生労働省は24日、14年上半期(1〜6月)の労働災害発生状況(速報値)をまとめた。建設業の死傷災害(死亡・休業4日以上)の被災者数は前年同期比4.0%増の6922人。うち死亡者は28.2%(35人)増えて159人となった。死亡災害は1〜3月に集中。4月の消費税率引き上げを控え、3月までに竣工・引き渡しを行うため工事が重なったり、工程が過密になったりしたことが増加要因とみられる。」(『建設工業新聞』2014.07.25)
●「政府は29日、すべての企業が従業員に払う最低限の時給を定める2014年度の最低賃金を全国平均で780円と、前年度実績より16円上げると決めた。引き上げ幅は前年度を1円上回り4年ぶりの大きさ。過去20年でも2番目だ。非正規や中小企業で働く人の所得を押し上げ、景気を支える。」(『日本経済新聞』2014.07.30)

建設産業・経営

●「住宅や公共施設など建物の建設コストが上昇している。建設業の人手不足が続くなか、2020年の東京五輪対応など旺盛な建設需要が工事費を押し上げている。個人の住宅投資や企業の出店意欲に悪影響を及ぼし、経済成長の足かせになる懸念もある。建設費の高騰を如実に示しているのが、建築着工単価の動きだ。床面積1平方メートルあたりの工事費を示す建築着工単価は5月に前年同月比9%増の18万7000円と、16カ月連続で前年同月を上回った。単価の水準はバブル崩壊から間もない1993年1月以来約21年ぶりの高さだ。地域別の上昇率をみると、首都圏が11%、近畿圏が13%と高く、中部圏が2%、その他地域も9%と軒並み上がっている。…背景にあるのが、建設業界で急速に広がった『需給ギャップ』の影響だ。公共工事の中長期的な縮小傾向に伴い、鉄筋工や左官など建設業の技能労働者数も大幅に減少。13年には338万人と97年のピーク時から117万人(26%)減った。だが、11年3月に起きた東日本大震災の復興需要や道路などインフラの老朽化対策、東京五輪をにらんだ施設整備と、ここ数年で建設需要は急激に膨らんだ。結果として技能労働者の不足率が歴史的な高さになり、人件費も高騰している。…建設需要の拡大で資材価格も上がっている。…さらには大都市圏を中心に地価の回復傾向も鮮明になり、建設投資にかかるコストは右肩上がりになっている。」(『日本経済新聞』2014.07.16)
●「横浜建設業協会(土志田領司会長)は15日、横浜市中区の神奈川県建設会館で横浜市建設労働組合連絡会(勝俣時雄会長)との意見交換会を開いた。連絡会会員が横浜建協の会員企業の仕事に下請として参入できるような仕組みづくりを検討することで合意した。」(『建設工業新聞』2014.07.17)
●「重層構造や従来の商慣習が変わる――。年金・医療・雇用の3保険からなる社会保険加入の取り組みが、これまで動きが鈍いと見られてきた地方建設業にも広がり始めた。地方建設業を動かし始めたのは、強い指導力を行使する大手ゼネコンの存在だ。保険加入を進めることで今後も大手ゼネコンの下請けとして受注を維持するか、取り引き停止となるかの二者択一の選択を、都道府県建設業協会加盟企業も迫られ始めている。…専門工事業界全体では重層構造が拡大したことで、正社員、非正社員、直用、常用、準常用などの名称を書類提出先やケースによって使い分け、契約形態と実態が異なるなどあいまいな関係が払しょくできないことと、保険加入の原資である法定福利費を元請けから確保することが進んでおらず、保険加入取り組みは大きく進展していないのが実情だ。ただ一部大手ゼネコンを筆頭にした協力企業への指導の結果、『保険加入に一番理解がないのが地方建協』 (ある専門工事業団体トップ)と指摘されていた地方建設業でも保険未加入問題への関心が広がりつつある。」(『建設通信新聞』2014.07.18)
●「建設産業専門団体連合会(建専連、才賀清二郎会長)が会員企業などを対象に行った社会保険加入状況の実態調査結果がまとまった。加入の費用負担が最も重い厚生年金に加入している人の割合は全体で88.5%。会員企業の社員に限ると96.5%に上ったが、常用や準直用といった形態で会員企業の仕事に従事する技能工など『社員外』の加入率は44.7%とほぼ半分にとどまった。会員の下請企業でも社員と社員外で加入率に同様の格差が生じている。」(『建設工業新聞』2014.07.18)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は18日、総合企画委員会を開き、20210年夏季東京五輪後も見据えた中長期ビジョンの作成に向けた検討をスタートした。20年までの集中対策期間を含む25年までの『中長期』、25年から50年までの『超長期』における建設産業の役割とあるべき姿、実現のための道筋を提示する。総合企画委員会を中心に全委員会による『全員参加型』で検討を進め、14年内に中間まとめを作成し、15年度定時総会で最終まとめを報告する。…中長期ビジョンでは、東京五輪後を含む25年までの国内建設市場を予測した上で、技能労働者数や若年入職者数、女性技能労働者数のそれぞれの目標を設定する。建設市場予測では、市場の変化なども踏まえて需要動向を見込むことになるとみられる。あわせて、目標数を確保するための担い手確保・育成策も提示する。国土交通省建設産業活性化会議の中間報告で示された内容を反映する見込み。人手不足感の緩和につながる建設生産システムの合理化の必要性も提示する見通しだ。…25年から50年までの超長期では、国交省がまとめた『国土のグランドデザイン』を参考にしつつ、人口減少社会や高齢化、グローバリゼーションの拡大、巨大災害発生の懸念など今後の経済社会のトレンドをとらえ、そうした経済社会で必要とされる建設需要の方向性を提示する。」(『建設通信新聞』2014.07.22)
●「国土交通省は18日、14年度の下請取引等実態調査を始めた。全国の建設業者約1万4000社を対象に下請取引の実態などを把握し、建設業法令に違反している業者の指導につなげる。本年度は元請・下請間の取引状況などを聞く従来の質問に加え、消費税率の引き上げの影響を調べる質問と、社会保険加入に必要な法定福利費が内訳明示された見積書(標準見積書)の活用状況などを調べる質問を新設した。賃金に関する質問はより詳細にした。」(『建設工業新聞』2014.07.22)
●「日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)は、会員企業139社を対象にした決算状況をまとめた。13年度中に行われた会員の本決算の結果を集計。売上高の合計は14兆4670億円(前年度比6.8%増)、完成工事高は13兆6490億円(6.8%増)となった。完成工事総利益(粗利益)は8290億円(26.1%増)と大幅に増加、完成工事総利益率(粗利益率)は6.1%(0.9ポイント上昇)に改善したが、『依然として水準は高くない』と分析している。」(『建設工業新聞』2014.07.23)
●「建設経済研究所と経済調査会は24日、2015年度の建設投資見通し(名目)を発表した。建設投資全体は、前年度比3.8%減の46兆0200億円と予測している。政府建設投資は、15年度予算の全体像が現時点で不明なため、国の当初予算と地方単独事業費を14年度並みと仮定して事業費を推計。その結果、12.2%の大幅な減少が見込まれ、17兆円台前半まで落ち込む。…15年度の政府建設投資見通しは、前年度比12.2%減の17兆1600億円。内訳は、土木投資が11.3%減の15兆0800億円、建築投資が17.8%減の2兆0800億円となっている。…一方、民間部門は堅調に推移するとみられている。15年度の民間住宅投資は、前年度比1.8%増の15兆5800億円と見通す。15年10月の再度の消費増税を織り込んでいるが、増税時期が年度の中心になるため、駆け込み・反動減の影響は14年度に比べて少ないと予想する。」(『建設通信新聞』2014.07.25)
●「国土交通省や各都道府県が建設業許可や経営事項審査(経審)の申請時などに行っている建設業者の社会保険加入確認・指導で、法人化した専門工事業者が社会保険に加入できず、法人を廃業した上で、一人親方に戻っている例が増えつつある。建設技能者の処遇改善が社会保険への加入促進の目的だが、『行政機関による急激な締め付けは逆効果』との意見も業界内から出始めている。」(『建設工業新聞』2014.07.25)
●「6月12日の九州地区から全国で開催してきた国土交通省と建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)の意見交換会は30日、東京・霞が関の東海大交友会館で本省との定例意見交換会を開き、幕を閉じた。登録基幹技能者の活用・評価、専門工事業者による管理業務の増加、社会保険加入促進などについて活発に意見を交わした。…建専連側は、要望事項に▽ダンピングの起きにくい競争環境整備と担い手の確保・育成▽元下業務の明確化など――の2点を挙げ、ダンピング対策では適正工期・価格での発注、登録基幹技能者の活用・評価、社会保険料など未加入企業の排除、労務賃金の引き上げ、現場管理費・一般管理費の改善を求めた。」(『建設通信新聞』2014.07.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「8月1日から施行されることになる改正都市再生特別措置法。居住者の生活を支える住宅、医療、福祉、商業などの都市機能を集約する『多極ネットワーク型コンパクトシティー化』の取り組みがスタートを切る。焦点は市町村が作成する『立地適正化計画』だ。国土交通省は作成主体となる地方公共団体を支援する体制として省内に支援チームを構築。市町村の計画づくりを全面的にサポートする。改正都市再生特別措置法は、立地適正化計画の作成が最大のポイントとなる。市町村が作成する同計画は、住宅および医療、福祉、商業など居住に関連する施設の立地適正化を図るため、これらの施設の立地を一定の区域に誘導することを目的にしたもの。同計画に記載された居住に関連する『誘導すべき施設』には容積率や用途規制の緩和といった特例措置を講じる。民間の都市機能への投資や居住を効果的に誘導、都市全体の観点から均整のとれた都市機能の立地を促す。」(『建設通信新聞』2014.07.16)
●不動産経済研究所が15日発表した2014年1〜6月(上期)の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県)の新築マンション発売戸数は、前年同期比20.2%減の1万9394戸で、3年ぶりに2万戸を下回った。13年上期に価格や金利の先高観、消費税増税前の駆け込み購入から発売戸数が大幅に増えた反動が出た。(『しんぶん赤旗』2014.07.16より抜粋。)
●「東京都は、東京五輪とその先を見据え、国際競争力の強化に向けた新たな交通政策の検討を開始する。舛添要一都知事が進める『有機的な交通政策』の実現に向けて、自転車や徒歩といった、これまであまり活用されていなかった移動手段について既存交通との連携を考えるほか、利用者の視点から外国人来訪者への対応やバリアフリー化、災害に強い交通など、広い視点での総合的な交通政策を検討する。」(『建設通信新聞』2014.07.17)
●「かつて社会問題となった悪質リフォームの被害が、東日本大震災後に住宅の耐震性への関心が高まったことなどを背景にじわりと増えている。消費者宅に押しかけた業者とのリフォーム契約について、全国の消費生活センターなどに寄せられた相談は2009年度から増え続け、13年度は7268件に上った。不要な工事で代金を請求されるケースなどが多く、問題に詳しい弁護士は『信頼できる専門家に相談して』としている。…国民生活センターによると、相談は05年度の9936件から一時減ったが、08年度の5318件を底に再び増加。14年度も13年度を上回るペースだ。認知症などで判断能力が下がった人のトラブルも毎年約300件に上る。…実際は問題がないのに不安をあおられ、契約を結ばされたケースもあったという。」(『日本経済新聞』2014.07.22)
●「台風8号と梅雨前線による豪雨に伴う長野県南木曽町の土石流は降り始めからわずか2時間で発生し、土砂災害対策の難しさが改めて浮き彫りになった。現在の気象庁のレーダー網では山間部の局地的な豪雨までは観測できず、沢などの上流部の前兆をつかむのも難しい。土石流の危険箇所は全国で18万を超すが、繰り返される被害を防ぐ決め手は見えていない。」(『日本経済新聞』2014.07.23)
●「中古マンションの内装や間取りを新しくしたリノベーション(再生)マンションを購入した人の約4割が30代であることがリノベーション事業を手掛けるインテリックス(東京都渋谷区、山本卓也社長)が行ったアンケートで明らかになった。40代、50代以上もそれぞれ2割を超えており、新築に比べて幅広い世代が購入していることも分かった。アンケートは、06年8月〜14年3月に首都圏で同社のマンションを購入した人を対象に実施。2282人(回収率25.6%)から回答を得た。リノベーションマンションを購入した年齢層は、20代が12.8%、30代が40.7%、40代が23.8%、50歳以上が22.6%。」(『建設工業新聞』2014.07.23)
●「復興庁は、福島第1原発事故で避難している住民向けに福島県内の14市町村が整備する復興公営住宅の進ちょく状況をまとめた。7月時点で着工済みは730戸と、計画戸数(4890戸)の15%だった。国が交付金を配分しているのは3931戸。用地は1723戸分が確保されているが、うち993戸が未着工となっている。本年度中に576戸で入居が始まる予定としている。市町村別に見ると、計画戸数が1760戸に上るいわき市では、250戸が着工済み、382戸分の用地も確保している。郡山市(計画戸数570戸)では314戸の工事が始まっている。南相馬市(同900戸)は264戸の用地を確保しているが、着工には至っていない。」(『建設工業新聞』2014.07.24)
●「インターネット通販の拡大を背景に、商品保管や仕分けなど多機能を備えた大型物流施設の需要好調が続いている。全国で開設が相次ぎ、2014年末の累計面積は前年より15%増える見込み。開設が相次ぐなかでも、首都圏や近畿圏の空室率は供給不足を示す10%未満を維持している。」(『日本経済新聞』2014.07.25)
●「政府の成長戦略の『日本再興戦略』改訂版では、目玉政策の陰に埋もれながらも『豊富な森林資源の循環利用』が打ち出された。戦後の植林材が伐採期を迎え、国産材の供給圧力が高まっている。外国材が中国の買いなどで値上がりし、国産材が世界一安くなる追い風も吹いている。木材業界は相次ぎ国産材の大型工場を建設。“眠れる資源”の活用に動き始めた。…今なぜ国産材なのか。戦後の植林材が伐採期に入り森林蓄積量(2012年)は49億立方メートルと半世紀で2.6倍に急増した。政府は木材自給率(13年は28.6%)を20年に50%にする目標だ。成長戦略の具体策でも板材を直交するように張り合わせたパネルなどの普及を促した。価格面での魅力も高まっている。中国の買い付けや円安・ドル高で外国産丸太価格が上昇し国産に割安感が強まっている。農林水産統計によると、製材用の6月の全国価格は米ツガ丸太で1立方メートル2万5100円だ。国産の杉丸太は1万4000円と44%安い。市場では国産材は『世界一安い』といわれている。外国材はロシア産や東南アジア産で輸出規制が強まるなど供給不安が起きやすい難点もある。ただ、価格が安すぎると弊害も出てくる。森林所有者で組織する全国森林組合連合会の肱黒直次代表理事専務は『丸太価格が上昇しないと間伐、林道整備など造林コストが賄えない』と訴える。売る側と買う側の双方が納得する価格形成への取り組みも欠かせない。今後の課題は需要の開拓だ。日本は人口減で住宅着工の減少が確実視されているだけに、需要を創出しないと製品がさばけない。…需要創出で最大のカギを握るのが輸出だ。すでに丸太輸出は昨年、前年比2.3倍の26万4700立方メートルと過去最高に達した。しかし、産業育成や雇用確保の観点から製材品の輸出をどう増やすかがポイントになる。」(『日本経済新聞』2014.07.26)
●「国内の住宅総数に占める空き家の割合が2013年10月時点で過去最高の13.5%になった。総務省が29日、発表した。人口減少が深刻な地方を中心に増え、戸数も最多の820万戸に上った。中古住宅の活用が進まないうえ、空き家を取り壊すと税負担が重くなる制度も空き家が増える原因だ。活用か撤去を促す政策への転換が急務となっている。5年に1度実施する住宅・土地統計調査の速報集計を発表した。空き家の数は08年より63万戸増え、全体に占める割合は0.4ポイント高まった。住宅総数も305万戸多い6063万戸となり、過去最多を更新した。空き家率が最も高かった都道府県は22.0%の山梨。東京などへの人口流出が影響している。19.8%の長野、18.1%の和歌山、17%台の四国4県などが続く。…国交省は築後20〜25年ほどで価値をゼロとみなす商慣行を見直し、補修すれば価値が高まる新たな評価指針を作り、関連業界への普及を進めているが道半ばだ。時代遅れの税制が撤去を阻む面もある。土地にかかる固定資産税は住宅が建っていれば本来の6分の1に軽減されるが、取り壊すと優遇が薄れ、支払う税の額が約4倍に跳ね上がる。持ち主にとっては空き家のまま放っておいた方が合理的なため、取り壊そうとしない。空き家対策の条例をつくり、撤去費の補助などを始めた自治体も多い。」(『日本経済新聞』2014.07.30)
●「福島第1原発事故に伴い福島県内の除染で発生した汚染土などを保管する中間貯蔵施設について、政府は地元要望への対応策を示した。地元側は『一歩前進』と評価したものの、受け入れ判断の重要な材料と位置付ける地域振興の交付金の規模が提示されておらず、『ボールは(まだ)国の方にある』(佐藤雄平福島県知事)との認識を示した。地元の理解を得られる交付金の金額を示せるかが今後の焦点となりそうだ。…ポイントは主に三つ。一つは施設用地の確保策。国への売却に難色を示す地権者に対し、土地を所有し続けることができる『地上権』の設定を選択肢として提示した。…二つ目が県外最終処分の法制化について手順を新たに示した点。…三つ目は大熊、双葉両町の復興に向けた『基本的な考え』(方向性)を復興庁が作成すること。両町の大半は帰還困難区域に指定されており、町の将来像はこれまで示されていなかった。復興拠点の整備などに向け、福島再生加速化交付金も拡充する。」(『建設工業新聞』2014.07.30)

その他

●「南米アルゼンチン政府と同国国債を保有する米ファンドとの債務返済条件を巡る交渉が30日、決裂した。同日は一部国債の利払いの猶予期限にあたり、同国は2001年以来、13年ぶりの債務不履行(デフォルト)が不可避な情勢になった。…交渉決裂が伝わった後も、金融市場には大きな混乱は起きていない。アルゼンチンペソは米ドルに対し小動きで推移した。アルゼンチンの国債は01年のデフォルト以来、活発に取引されていないため、市場では影響は限定的との見方が多い。」(『日本経済新聞』2014.07.31)