情勢の特徴 - 2014年8月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は特定の産業・企業を税優遇で支援する政策減税のうち2014年度末に期限が来る措置を原則、廃止・縮小する検討に入った。中小企業の税負担を軽くしている特例措置や、一部の設備投資減税など見直しの対象になる21の政策減税による税収減は約2500億円。法人実効税率の引き下げの財源を確保する狙いがある。対象措置の恩恵を受けてきた企業には負担になりそうだ。…廃止・縮小の検討対象には、中小企業の税負担を軽くしてきた特例措置(税収の減少額は961億円)がある。中小企業の法人税率(国税)は年800万円以内の所得には19%と、大企業(25.5%)より低い税率が適用されていた。リーマン・ショック後の景気低迷を背景に、今はさらに低い15%の税率を適用しており、19%に戻すことを検討する。企業の設備投資減税も一部は見直す。設備投資を前年度より一定程度増やした場合に税優遇する設備投資減税(同1050億円)が対象。13年度に導入した措置だ。廃止すれば、設備投資が多い自動車や機械工業などは税負担が増える可能性がある。一方、温存する設備投資減税もある。生産性を高める先端設備を導入した企業向けに投資額の最大10%を法人税から差し引ける措置(同2990億円)は17年3月が期限で、見直しの対象外だ。…政府が政策減税の廃止を検討するのは現在、約35%の法人実効税率を数年で20%台に引き下げるためだ。代わりに必要な財源は1%の税率引き下げで約5000億円、6%で約3兆円になる。法人税関連の政策減税は約90種類あり、全体の減収額は約1兆円、土のうち14年度末に期限が来る21の政策減税による減収額は約2500億円だ。」(『日本経済新聞』2014.08.02)
●「政府は荒廃した空き家の撤去を促すため、住宅が建つ土地の固定資産税を軽減する措置を見直す検討に入った。屋根が飛ぶなど近隣の住民に迷惑がかかる空き家を減税の対象から外すことを検討する。2015年度税制改正での実現をめざす。土地の固定資産税は住宅が建っていれば本来の6分の1に軽減される。高度成長期の1973年に農地などの宅地化を進めるために導入された。空き家でも軽減されるため、いつまでも荒廃したまま取り壊さずに放っておく原因になっている。13年時点で全国の空き家は過去最高の820万戸に達し、住宅全体の13.5%を占めた。火災が起きたり犯罪の温床になったりする恐れもあるため、政府は撤去を促す対策が必要と判断した。」(『日本経済新聞』2014.08.02)
●「国土交通省は、日本のゼネコンや不動産企業が海外でPPP事業に参入する上での戦略をまとめた。昨年度作成した戦略を改定し、特に都市開発事業への参入を強く打ち出している。日本の強みを生かした都市像を相手国に提示するには、建設企業と不動産企業が共同で参入し、第三国とも連携しながら展開することを提起している。」(『建設通信新聞』2014.08.04)
●「復興庁は、東日本大震災で被災した若手、宮城両県で16年度末までに工事が完了する災害公営住宅が2万戸で、整備目標の9割以上が完成する見通しであることを初めて明らかにした。一方、集中復興期間の最終年度である15年度までの整備率は両県とも7割台にとどまる。災害公営住宅の建設費は集中期間を対象に、国が地方自治体に交付する復興交付金で大半を賄っており、集中期間以降の財政支援の必要性もあらためて浮き彫りになった。15年度の災害公営住宅の整備率は、岩手県で73%(4348戸)、宮城県で75%(1万1589戸)。集中復興期間終了後の16年度には岩手県で95%(5667戸)、宮城県で94%(1万4518戸)まで上昇するものの、全面完了にはわずかに及ばない見通しだ。福島県の整備率は最終的な整備目標が確定していないため計算していない。」(『建設工業新聞』2014.08.05)
●安倍晋三政権が4月に強行した消費税増税の個人消費への影響について、2014年度の年次経済財政報告(経済財政白書)は、駆け込み需要が前回の増税時(1997年4月)より大きめになったと分析している。前回の駆け込み規模が2兆円程度だったのに対し、今回(13年10月以降)は3兆程度、個人消費を0.8〜1.0%程度押し上げたと試算。家電や自動車など耐久消費財が4分の3を占めているとしている。消費税率の引き上げ幅が前回より大きかったことを理由に挙げます。駆け込みの反動による消費の減少も前回より大きくなっています。6月の家計調査によると、消費支出は前年比でマイナス3.0%と、3カ月連続で減少が続いている。(『しんぶん赤旗』2014.08.07より抜粋。)
●「公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、国内株式の保有上限を撤廃したことが分かった。5日に開いたGPIFの運用委員会で決めた。約130兆円ある全資産の18%までと定めていた上限を超えても買い増せるようになる。9月に新たな資産割合を決めるまでの暫定措置で、9月以降は国内株式の割合を20%台に増やす。国内株式の運用比率を1ポイント増やせば1兆円強の買いが発生する。仮に3月末実績の16%から20%に高めると、約5兆円の買いに相当する。上限の撤廃により、より円滑に目標に近づけられる。」(『日本経済新聞』2014.08.10)
●「内閣府が13日発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.7%減、年率換算で6.8%減となった。4月の消費増税に伴う駆け込み需要の反動が個人消費の減少に現れた。安倍晋三首相は同日、視察先の下関市内で『成長軌道に戻せるよう万全を期していきたい』と記者団に語った。マイナス成長は昨年10〜12月期以来、2四半期ぶり。今年1〜3月期は年率換算で6.1%増だったため、その反動が鮮明だ。落ち込み幅は東日本大震災が起きて6.9%減となった2011年1〜3月期以来の大きさだった。名目GDPは前期比0.1%減、年率で0.4%減だった。…GDPの6割近くを占める個人消費は、実質で前期比5.0%減と7四半期ぶりにマイナスになった。個人消費の落ち込み幅は97年4〜6月期の3.5%を上回り、同じ基準で統計を遡れる94年以降で最大になった。自動車、パソコンなどの耐久財や日用品の消費が低迷した。住宅投資も10.3%減だった。設備投資は2.5%減で5四半期ぶりにマイナスになった。…公共投資は前期比0.5%減った。政府は増税後の景気を下支えするため公共事業の前倒しを進める。『請負金額は前期比で増えており、7〜9月期以降増えていく』(内閣府)と見ている。」(『日本経済新聞』2014.08.13)

行政・公共事業・民営化

●「東日本大震災の被災自治体が2013年度に実施した工事入札のうち約3割が受注先が決まらない不調となっていたことがわかった。人手不足の解消や用地確保が進んでおらず、復興予算の執行が遅れる主因になっている。復興予算は旺盛だか、労働力など供給側の制約が復興に影を落としている。復興庁によると、当初計画の35.3%にあたる2兆6521億円を使い残した。使い残しのうち、13年度中に執行できずに翌年度予算に回したのは1兆9604億円。全体の26.1%を占め前年度に比べ3.5ポイント上がった。」(『日本経済新聞』2014.08.01)
●「東日本高速道路関東支社は、東京外かく環状道路(外環道)都内区間の関越道大泉ジャンクション側の発進立坑を構築する『東京外かく環状道路大泉ジャンクション立坑工事』の施工者を61億9500万円で清水建設・熊谷組JVに決めた。7月15日に一般競争入札(WTO対象)を行い、同者を含めた2者が入札に参加した。今回の施工者が決まったことで、本線のトンネル工事に必要な工区の入札がすべて終わり、着工に向けた施工者がすべてそろったことになる。…本線のトンネル工事は東日本・中日本両高速道路会社が3月の入札で鹿島、清水建設、大林組、大成建設の4社をそれぞれ代表企業とする4JVを施工者に決め、19年10月までの完成を目指す。」(『建設工業新聞』2014.08.01)
●「国土交通省は1日、社会保険未加入業者を直轄工事から排除する対策を始める。同日、入札手続きが開始される工事は全国で六十数件。入札公告にそれぞれ、競争参加資格条件として『社会保険に加入していること』との文言を入れる。1次下請業者の扱いは契約書に明記。施工体制台帳の記載事項から未加入が発覚した場合、元・下請間の最終契約額の10%相当額を制裁金として元請に請求する。」(『建設工業新聞』2014.08.01)
●「総務省は1日、6月末時点における地方自治体の公共事業の執行状況を公表した。2013年度の繰り越し分と、14年度当初予算で計上した分とを合わせた総額22兆0021億円のうち、契約済み額は約4割に当たる8兆7482億円、支出済み額は1兆5246億円。契約率は前年同期値の36.5%から39.8%に増加した。総務省が四半期ベースで予算の執行状況を公表するのは初めて。早期執行を促すことで、4月の消費増税に伴う景気悪化を防ぐため、14年度から新たに四半期ごとに公表するとしていた。」(『建設通信新聞』2014.08.04)
●「公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)など担い手3法を受け、国土交通省による説明会や関係会合が開かれるなど施策の具体化に向けた動きが進んでいる。中長期的な担い手確保に向け、適正な利潤の確保などが発注者の責務として掲げられたこともあり、東北の建設業界からは強い期待感が示されている。年内には、発注者共通のルールである運用指針が策定され、調査・設計段階から工事段階、完成後に至るまで、発注関係事務を適切に実施していくことが、より明確化される。『ダンピング無しの業界にしなければ将来はない』(業界関係者の一人)との声もあり、踏み込んだ対応を図るよう業界の声が強まっていきそうだ。」(『建設工業新聞』2014.08.07)
●「国土交通省は、2015年度予算概算要求の基本方針に、東日本大震災からの復興の加速、地方創生と人口減少の克服、切迫する巨大地震への防災・減災対策、成長戦略の具体化などを掲げた。特に維持管理や災害対応でその重責を担う建設産業の“担い手”の確保に言及。『中長期的に建設投資の姿を見通すための予算確保』を明記した。」(『建設通信新聞』2014.08.08)
●「公共工事の予定価格の積算に用いる『公共工事設計労務単価』を決定するため、毎年10月に実施している公共事業労務費調査登別に、国土交通省は8日、建設業団体向けの説明会を開いた。労務費の上昇基調に伴い、業界からは設計労務単価のさらなる引き上げを求める声も上がるが、上昇している実態が数字として表れなければ、単価アップはできない。技能者の処遇改善の大きなポイントとなる賃金の上昇につなげるためにも、業界側からの正確なデータ提供が求められる。国交省では、賞与や退職金といった臨時の給与を含めた正確な賃金提示のほか、無効標本として棄却されないよう、必要な書類の準備を呼び掛けている。…労務費調査は一人親方を含め、原則として現場で働くすべての技能労働者が対象となる。国交省は、賃金台帳に記載されないケースのある退職金や賞与といった不定期の賃金についても、正確に記入するよう要請している。金額の大きな退職金などが含まれていなければ、調査結果から算出する賃金が実際より低くなってしまうため、注意が必要だ。また、全体の3割強に当たる無効標本の減少にも協力を依頼。相当の時間と労力を使って回答しても、不備などがあって棄却されてしまえば、そのデータは次年度の設計労務単価には生かされない。国交省によると主な棄却理由は、▽就業規則に定める所定労働時間が法定の週40時間以内であることが確認できない▽賃金台帳に賃金の受領を証明する押印・サインがない▽調査票記入事項の根拠となる資料がない――など。」(『建設通信新聞』2014.08.11)
●「地方自治体が維持運営する下水道事業には国の直轄事業がない。その事業構造ゆえに小規模自治体を中心に全国の『発注者』を技術的な側面からサポートする国土交通省の役割が大きい。下水道事業が従来の『普及重視』から『維持管理・更新』へと軸足が移りつつある中で、国交省はこれまでの新設をメーンとしたものとは異なる、『改築・更新』をターゲットにした独自の『歩掛り』設定も見据えている。」(『建設通信新聞』2014.08.12)

労働・福祉

●「人事院は1日、2014年度の国家公務員一般職の月給とボーナス(期末・勤勉手当)の引き上げを内閣と国会に勧告する方針を固めた。プラス勧告は7年ぶり。景気回復で大手を中心に民間企業の賃金水準が改善していることを受けた。7日にも勧告する。今年の春季労使交渉では、大企業や中小企業の一部でも月例賃金の水準をあげるベースアップ(ベア)の動きが広がり、夏のボーナスも増額の傾向となった。人事院の民間給与実態調査でも、民間の給与が国家公務員を上回ったことを踏まえ、引き上げ勧告をすべきだと判断した。勧告には、地域間と世代間の給与配分を変更する『給与制度の総合的見直し』の内容も盛り込む。各地域で公務員と民間の給与水準の格差を縮小するため、基本給を2%程度引き下げる。一方、勤務地に応じて支給する地域手当を増額し、東京などに勤務する公務員の給与は現行水準を確保する。このほか55歳以上の職員の給与抑制も盛り込む方針だ。」(『日本経済新聞』2014.08.02)
●「東京地区の技術者と技能労働者(職人)のうち、特に躯体系職人の不足が続いている。企業の求人数が増加し続ける一方、求職者数は減少を続けていることが、求人倍率の続伸と、求人・求職のバランスシートを悪化させている構図だ。建設職種の求人倍率続伸は東京以外では岩手、宮城、福島の被災3県でも顕著。公的機関の仲介では人材が思ったように集まらないことから、個別企業の人材引き抜きが横行。全国ゼネコンだけでなく、隣接県などの地元建設業からの人材移動も目立ち始めた。ただ突然人材を引き抜かれた結果、思わぬ影響を受ける企業もいる。」(『建設通信新聞』2014.08.04)
●「国土交通省は、本年度に実施する『社会保険等への加入状況等に関する調査業務』を近く建設業振興基金に委託する。民間工事を中心に手掛ける建設会社の加入状況も把握し、加入を徹底する方策を検討するための基礎データを集める。法定福利費を内訳明示した標準見積書についても、活用状況をアンケートなどを通じて把握。さらなる活用徹底に向けた助言や指導を行えるようにする。…加入状況調査は、民間工事をベースにして元請業者と下請業者の社保加入状況を調査。建設産業専門団体連合会(建専連)など専門工事各団体や元請団体が行っている加入状況調査の結果も収集・整理し、今後の施策の検討データとする。」(『建設工業新聞』2014.08.04)
●「今年1〜6月に労災事故で死亡した人が前年同期比71人(19.4%)増の437人(速報値)だったことが5日、厚生労働省の調査で分かった。建設業や製造業での転落事故や機械に挟まれる事故が目立ち、同省は『景気回復による人手不足で、経験が足りない労働者が増えたことが影響した』と分析。業界団体に対し、事故防止に向けた取り組みを強化するよう求める。厚労省によると、死者数の業種別内訳は、建設業159人、飲食店など第3次産業92人、製造業82人、陸上貨物運送業55人の順。死因となった主な事故を見ると、建設業では屋根やはしごからの転落、第3次産業は交通事故、製造業では機械への挟まれ・巻き込まれ、運送業では交通事故や荷積み・荷下ろし時の転落が目立った。」(『日本経済新聞』2014.08.05)
●「今春に大学を卒業した学生約56万人のうち、69.8%の39万人余りが就職したことが7日、文部科学省の学校基本調査速報で分かった。前年より2.5ポイント上昇し、4年連続で改善。リーマン・ショック前の2008年春の水準(69.9%)まで回復した。…調査速報によると、卒業者全体のうち、正規雇用は65.9%(37万2662人)、非正規雇用は3.9%(2万2275人)だった。就職しなかった学生の内訳は、パート・アルバイトが卒業者全体の2.6%(1万4519人)、進学も就職もしていない人は同12.1%(6万8481人)でいずれも前年より減った。進学も就職もしていない人の中でいずれの準備もしておらず『ニート』とみられる人は2万7998人で、この調査項目を設けた12年以降で初めて3万人を切った。)(『日本経済新聞』2014.08.08)
●「中小企業の会社員とその家族が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)は、2018年度までの収支見通しを試算した。保険料を現状の10%で固定した場合、賃金が上昇しなければ支払いのための準備金(積立金)が18年度に枯渇する可能性があるとした。準備金は13年度末で6921億円ある。試算では3つの経済前提を置いた。準備金が枯渇するのは、賃金上昇率が過去10年間の平均であるマイナス0.4%の時だ。賃金上昇率が0%以上になれば、準備金は残る。」(『日本経済新聞』2014.08.12)
●「外国人技能実習制度を使っている建設関連の監理団体の8割近くが、2015年4月から始まる『建設分野の外国人材活用に関する緊急措置』の利用を希望していることが、国土交通省のアンケートで分かった。回答団体の受け入れ希望人数を集計したところ、技能実習修了者を活用したいとの二−ズが、毎年6000人程度あることも明らかになった。国籍別の人数は、ベトナムが最多になる見通しだ。」(『建設通信新聞』2014.08.12)

建設産業・経営

●「建設現場の人手不足を打開しようと、ゼネコン各社が生産体制を担う協力会社と連携して人材の確保・育成に力を入れていることが、日刊建設工業新聞社の調査で明らかになった。独自の教育訓練校を開校したり、協力会社の採用活動を支援したりするなどの施策を相次いで打ち出している。優秀な職長の賃金を上乗せする制度を導入し、後に続く若手の奮起を促す取り組みも広がりつつある。バブル崩壊以降の建設投資の縮小に伴い、技能労働者は1997年度の455万人をピークに減少。12年度は約7割の335万人まで落ち込んでいる。建設業の就労者のうち55歳以上が約3割を占めるのに対し、29歳以下は約1割と高齢化も進行している。2020年東京五輪関連の需要も追い風に受注環境が好転する中、ゼネコン各社は協力会社の若手育成に力を注ぐ。」(『建設工業新聞』2014.08.05)
●「国土交通省は7日、建設産業活性化会議(座長・高木毅副大臣)の第8回会合を開き、6月26日の中間とりまとめに盛り込んだ施策群について、実施する主体や内容、時期を具体的に示した『工程表』を策定した。若年技術者・技能労働者の育成・確保状況や建設機械の保有状況を、2015年度から経営事項審査の評価に反映させることを目指し、秋ごろまでに結論を得ると明記。今秋以降には歩切りの実態調査に乗り出し、疑わしい地方公共団体は個別に聞き取りを行う。今回作成した工程表は第1弾との位置付けで、年内にも、内容をさらに拡充した第2弾をまとめる予定だ。」(『建設通信新聞』2014.08.08)
●「上場大手ゼネコン4社の2015年3月期第1四半期(4−6月)決算が7日、出そろった。東京外かく環状道路(外環道)や除染関連などの大型土木工事が貢献し、各社とも単体受注高登別年同期比3割近く増やす好調なスタートダッシュとなった。大成建設は、土木の達成率が6割を超えている。一方、利益面でも回復の兆しが見られる。清水建設は、建築の完成工事利益率(工事粗利)を改善させ6%台に乗せた。連結営業利益は、大成建設を除く3社で大幅に増加している。4社による受注の合計は29.9%増の1兆2397億円で、このうち土木は125.4%増の5063億円、建築が2.1%増の7042億円。4社ともに受注を増やしたのは、外環道の影響が大きい。このほか、除染や地方の高速道路などの大型案件も受注を押し上げた。期初に公表した通期個別受注予想に対する達成率は、清水建設が30%を超えたほか、各社とも20%台後半となっている。」(『建設通信新聞』2014.08.08)
●「セメント大手4社の第1四半期(4−6月)決算によると、セメント事業の増収増益は太平洋セメントと宇部興産の2社にとどまった。製造設備の維持修繕コストなども含めた変動費の上昇懸念が高まる中で、海外事業や輸出の採算改善が明暗を分けた。国内セメント需要は高止まりの様相を呈しており、各社の国内販売数畳も前期並みに推移するものの、増加となったのは住友大阪セメントだけだった。」(『建設通信新聞』2014.08.11)
●「大手・準大手ゼネコン24社の2015年3月期第l四半期(4−6月)決算が11日に出そろった。単体受注高は24社中21社が前年同期実績を上回った。東京外かく環状道路(外環)本体工事など大型土木工事の受注が大きく寄与したほか、建築も国内民間が堅調に推移し、全体的に好調な滑り出しとなった。利益面では、不採算な手持ち工事の減少などで完成工事利益(工事粗利)率が改善した結果、連結営業利益は黒字転換した8社を含む18社が増加した。24社の受注高合計は、前年同期比46.4%増の2兆5901億円。うち土木は114.4%増の1兆0980億円、建築は12.5%増の1兆4542億円となった。土木は、大手4社の合計が125.4%増、準大手20社の合計が105.8%増とともに“外環効果”で大きく伸びた一方、建築は大手が2.1%増ととどまったのに対し、準大手は24.4%増と好調だった。」(『建設通信新聞』2014.08.12)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「東京都豊島区は建物内の抜本改装をさす『リノベーション』によるまちづくりを進める。民間から提案を募集。区内に2万戸以上ある空き家を若者らが共同で住む『シェア居住』や改修可能な『カスタマイズ賃貸住宅』などニーズの高い住宅に転換する。魅力的な住宅により人を呼び込む。区内の空き家の大半は共同住宅のため、施策の焦点を共同住宅オーナーにあてる。池袋を中心とした利便性の高い地区に居住を希望する若者や子育て世代は多く、空室となっている共同住宅を入居希望者のニーズに沿った物件に改修するのを後押しする。具体的な手法としては商店街活性化などの民間提案をコンペ方式で受け付ける『リノベーションスクール』を空き家対策にも導入する。年内にも区内で開催する計画で、都内初の導入例という。」(『日本経済新聞』2014.08.02)
●「東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設を巡り、宮城県は4日、県内候補地の栗原市、加美町、大和町で、国による詳細調査を受け入れる方針を決めた。同日の市町村長会議で村井嘉浩知事が意見集約を主導し、おおむね賛同を得た。ただ、加美町は調査実施に反対し、他の2市町は調査を受け入れるが、建設には反対している。…国は宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の5県で指定廃棄物の最終処分場を建設する方針で、候補地の詳細調査の受け入れを表明したのは宮城県が初めて。」(『日本経済新聞』2014.08.05)
●「住宅用の木材が下落している。住宅に使う柱や梁(はり)、床や壁の下地に使う木材製品の取引価格は消費増税前の3月と比べて1割前後安く、一部の品目では前年の同じ時期の水準まで下がってきた。増税による住宅需要の反動減から住宅着工は減少傾向で、木材の需要も弱まっている。合板や集成材などのメーカーは需給を引き締めようと減産に動いている。」(『日本経済新聞』2014.08.05)
●「東京都は2020年五輪に向け開発が進む江東区有明地区について土地利用計画を見直した。一部の区域で容積率の制限を緩和したほか、住民増に備えて小中学校を優先的に建設できるようにした。まちづくりが円滑に進むように後押しする。20年五輪のメーンプレスセンターが設置される予定の東京ビッグサイトがある南側の区域の容積率は、従来の80%から110%に変更した。大会終了後も展示施設として有効活用するため、拡張できるようにする。住宅利用が進む北側の区域では住宅・商業の複合用地の一部を公共公益用地に改めた。競技施設建設が障害なく進むようにする。住宅用地の一部も小中学校の開発を許す区域に改め、子育て需要の高まりに応えられるようにする。」(『日本経済新聞』2014.08.05)
●「東京電力福島第一原子力発電所事故の除染をめぐり、環境省と福島、郡山、相馬、伊達の福島県内4市は1日、多くの自治体が目指している空間放射線量『毎時0.23マイクロシーベルト』は除染目標ではないと強調した上で、空間線量に基づくこれまでの除染から、個人の被ばく線量を重視した除染に方針転換すべきだとする中間報告をまとめた。同時に、除染の目安として、空間線量が毎時0.3−0.6マイクロシーベルト程度であれば、政府が長期目標として掲げる個人の追加被ばく線量『年間1ミリシーベルト以下』をおおむね達成できるとの調査結果も示した。」(『建設通信新聞』2014.08.05)
●「日本は戦後の復興にあたり、持ち家政策を推進してきた。特徴的なのはその対象を中間層に設定した点で、夫婦と子ども2人の『標準家庭』が住宅を取得しやすいように様々な補助が行われてきた。就職して寮に入り、結婚して社宅に移り、そこから賃貸の民間のアパートやマンションに引っ越し、やがてローンを組んで住宅を取得する。こうした“住宅すごろく”を形成してきたのは、各種の減税や補助金などの政策だった。なぜ中間層だったのか。戦後の復興=経済復興を成し遂げるためには、安定的な労働力の確保が必要になる。労働者は年功序列と終身雇用によって、まじめに働けば年々給与が上がる生活が保障され、企業も安定的な労働力を背景に業績を伸ばし、日本は高度経済成長を実現した。安定した労働力は労働者の生活の安定から。そのために中間層の住宅取得を容易にする政策がとられた。つまり、戦後の住宅政策は経済政策だったということができる(裏返すと、住宅ローンを組んでしまえば転職などのリスクのある選択が困難になり、結果、労働力が安定するということでもある)。しかし、高度経済成長もずいぶん前に終わり、バブルも30年も前のことだ。『標準家庭』が標準でなくなり、企業に就職しても年功序列も終身雇用も保障されず、給与も上がらないまま。非正規雇用は労働者の4割近く、労働者の4人に1人が年収200万円以下――。そもそも、すでに中間層が崩壊し始めており、“住宅すごろく”のサイコロを振る人も減り続けているのが、日本の現状だ。にも関わらず、『年間の新設住宅着工数が90万戸を超えた』『来年は80万戸台では』と、一喜一憂することにいか程の意味があるのか――。日本の住宅業界は、いまだ戦後政策から抜け出せないままでいる。それでも新築住宅の需要が無くなるわけではないだろう。だが、非正規雇用4割、労働者の4人に1人が年収200万円以下という現状を冷静に見つめれば、安定した職を得た比較的恵まれた生活環境の層にしか新築住宅のニーズは生まれないということは容易に想像できる。注文住宅を柱にした地場工務店にとっては、さらに上の富裕層を狙うしか生き残りの道は無いのかもしれない。だが、富裕層としか商売をしない会社に、地域での居場所が果たしてあるだろうか。リフォーム、中古住宅、賃貸住宅、高齢者住宅……。地域の住まいを支える商売は多様ではあるが、同時に、ビジネスとして成立させるためには選択肢は限られている。生き残るためには背に腹は代えられないか、それとも新たなビジネスを模索するか。『何のために家を造り続けるのか?』――敗戦後69回目の夏、地場工務店には、その哲学が問われている。}(『日本住宅新聞』2014.08.05・15)
●「東京都心部の空室率が一段と低下した。オフィス仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が7日発表した東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の7月末の空室率は前月比0.25ポイント下がり6.20%と5年4カ月ぶりの低水準。前月比では13カ月連続で低下した。引き続き移転が活発で、新築・既存ビルの空室が減った。」(『日本経済新聞』2014.08.08)
●「大和ハウス工業が8日発表した2014年4〜6月期の連結業績は純利益が前年同期比65%増の306億円だった。同期として過去最高益を更新した。来年1月の相続税の増税を控え、節税対策として賃貸住宅が伸びている。企業年金制度の変更などに伴う特別利益の発生も、純利益の押し上げ要因となった。売上高は5%増の6048億円だった。けん引役は賃貸住宅で1758億円と18%増えた。相続税の算出に際し評価額を割り引くことができるため、節税対策として需要が増えている。事業施設も8%伸びた。インターネットを使った通信販売などが定着し、全国的に物流施設の建設需要が広がっている。一方、戸建て住宅は8%減の754億円となった。昨年9月までに契約すれば5%の消費税率が適用されたため、昨年半ばにかけて受注が急増しており、その反動で昨年後半から受注の落ち込みが続いている。…4〜6月期は売上高、純利益ともに同期として最高を更新したが、15年3月期通期の業績見通しは据え置いた。戸建てを中心に月次受注の前年割れが続いており、『足元の低調な受注が下期に響く可能性もある』(小川哲司副社長)とみている。売上高は4%増の2兆8000億円、純利益は3%増の1050億円を見込んでいる。」(『日本経済新聞』2014.08.09)
●「東日本大震災で大きな被害に遭った岩手、宮城、福島3県のプレハブ仮設住宅の平均空室率が7月にいずれも約2割に達したことが9日、分かった。地震発生から約3年5カ月がたち、建て直した自宅や災害公営住宅に移り住む人が徐々に増えてきたためだ。建設直後の入居が始まった時期を除いて、3県全てが約2割になるのは初めて。一方で、移転先の宅地造成や災害公営住宅の整備は遅れ、今なお3県で約9万人がプレハブ仮設住宅に暮らす。」(『日本経済新聞』2014.08.10)
●「政府は中古住宅を購入しやすくするため、低利融資と税制の優遇措置を拡大する方針だ。中古住宅を取得した際、個人には内装などの改修費を低利融資する新制度をつくる。耐震工事などを施せば住宅事業者も税減免する方向で検討する。割安な中古住宅を求める消費者は多いが、地震対策やバリアフリー化など改修が必要なケースが大半だ。資金支援を拡充して、増える空き家の解消にもつなげる。政府が検討するのは、住宅金融支援機構が民間金融機関と組んで貸し出す35年の長期住宅ローン『フラット35』の拡充だ。現在は最低金利が年1.69%と民間金融機関に比べて低い。これまでも新築だけでなく中古住宅の購入時に利用できたが、来年度には中古物件の取得時の改修費用にも充てられるようにする。…新制度では個人が中古住宅を買ってリフォームする場合、購入費と改修費をフラット35で一括借り入れできるようにする。一体型ローンを提供するために国土交通省が年度内にも政令を改正する。フラット35の利用が増えると見込まれるため、国交省は2015年度予算の概算要求に機構への出資金の積み増しを盛り込む方針だ。」(『日本経済新聞』2014.08.12)
●「相続時に登記手続きがされず、国や自治体が所有者を把握できなくなる森林や農地が2050年までに最大で57万ヘクタールとなることが13日、国土交通省の試算で分かった。東京都の面積の2.6倍に当たる。農林業の効率化を目指した土地集約だけでなく、東日本大震災の被災地復興に悪影響が出る懸念があり、早急な対策が求められる。国交省が森林や農地の所有者へのアンケート調査や今後の死亡率などをもとに初めて試算した。試算によると、所有者が不明になる土地は20年までに8万6000ヘクタール。その後は30年までに21万2000ヘクタール、40年までに37万8000ヘクタールと増加する。50年時点の推計57万ヘクタールの内訳は森林が47万ヘクタール、農地が10万ヘクタール。日本の総森林面積の1.9%、総農地面積の2%程度だが、国交省は『所有者不明の土地は虫食い状に発生するため、土地集約に与える影響は広範囲にわたる』としている。」(『日本経済新聞』2014.08.14)
●「首都圏のファミリー向け分譲マンションで、面積の狭い物件が出始めた。子ども部屋を確保できる3LDKの標準的な広さは70平方メートルといわれるが、50〜60平方メートル台に抑えた物件を開発業者が相次ぎ発売。建築費や地価が上昇するなか、面積を絞って販売価格を抑える苦肉の策といえる。2020年五輪に向けた開発ラッシュの影響が及んでいる。」(『日本経済新聞』2014.08.15)
●「内閣府の有識者会議は14日、災害で住宅を失った被災者の住まい確保のため、民間賃貸住宅を『みなし仮設住宅』として積極的に活用し、被災者に家賃分の現金を直接給付することを検討するよう求める中間報告をまとめた。首都直下地震や南海トラフ地震では甚大な家屋被害が想定され、自治体が建設する仮設住宅だけでは対応に限界があると指摘。内閣府は来年度以降の災害救助法改正も検討する。」(『日本経済新聞』2014.08.15)

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