情勢の特徴 - 2014年9月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土強靭化の施策について国土交通省など関係12府省庁がまとめた15年度予算概算要求が8月29日、明らかになった。要求総額は前年度予算比25.8%増の4兆5415億円。公共事業関係費は20.7%増の3兆7007億円となった。6月に閣議決定された国士強靭化基本計画で重点施策に位置付けられた東京の密集市街地に広がる建物の耐震化や太平洋側にある海岸堤防の整備、山地の土砂災害対策などを推進し、大規模地震や全国各地で相次ぐ豪雨災害に備える。関係府省庁のうち、最大の3.2兆円超を要求した国交省は、自治体向けの防災・安全交付金に1兆2647億円を計上。首都直下地震対策として東京区部に広がる木造住宅密集(木密)地域にある住宅や建築物の耐震化や不燃化を促進する。南海トラフ地震対策で大津波が懸念される千葉以西の太平洋側の海岸堤防整備にも注力する。 国交省は、激甚化する豪雨災害や土砂災害に備える治水・浸水対策として、河川堤防の整備や山地の深層崩壊対策に2932億円を要求。大規模災害後の代替路線になる高規格幹線道路など未整備区間の整備には5569億円を求めた。」(『建設工業新聞』2014.09.01)
●「経済産業省中小企業庁は1日、小規模企業振興基本法に基づく『小規模企業振興基本計画』案をまとめた。新陳代謝の促進や地域経済に役立つ事業活動推進など4つの目標を揚げ、目標の実現に向けて事業承継・円滑な事業廃止、人材の確保・育成、地域コミュニティーを支える事業の推進など10の重点施策に取り組む。また、改正小規模企業支援法に基づく基本指針の改正案も作成。基本計画の4つの目標を踏まえ、小規模事業者の経営状況分析や需要を見据えた事業計画策定・実施にかかわる伴走型の指導・助言などを内容とする『経営発達支援事業』を、特に重点的に実施する事業に位置付けた。基本計画は9月下旬にも閣議決定する。改正基本指針は、改正支援法を施行する26日に公表する。」(『建設通信新聞』2014.09.02)
●内閣府が8日発表した4〜6月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.8%減、年率換算で7.1%減となった。速報値(前期比1.7%減、年率6.8%減)から下方修正された。東日本大震災の影響で6.9%減となった2011年1〜3月期を超え、リーマン・ショック後の09年1〜3月期(年率15.0%減)以来のマイナス幅になった。速報値からの下方修正は、最新のデータを反映した結果、多くの項目でマイナス幅が拡大したため。企業の設備投資は先月の速報段階での前期比2.5%減から、5.1%減に修正され大幅な落ち込みとなった。…GDPの約6割を占める「個人消費」は5.0%減から5.1%減に下方修正された。年率換算では、19.0%減だった。前回の消費税増税直後(1997年4〜6月、13.2%減)を超え、過去20年間で最大の落ち込みとなった。実質雇用者報酬は、前年同期比で1.9%減少した。収入の目減りが消費の冷え込みの原因となっている。このほか主な項目では、「住宅投資」が前期比10.4%減、「輸出」は0.5%減に、それぞれ下方修正された。(『しんぶん赤旗』2014.09.09より抜粋。)
●「財務省は物価変動に応じて元本が変わる物価連動国債を追加発行する方針だ。10月の入札で発行予定額を1000億円増やし5000億円とする。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)はインフレに備えた分散投資を進めており、物価連動債の購入額を大幅に引き上げる見通しだ。来年1月には個人投資家も買えるようになるため一段の需要増に対応する。」(『日本経済新聞』2014.09.11)
●「大企業の会社員らが入る健康保険組合の財政が悪化している。健康保険組合連合会が11日発表した2013年度の決算は、全体の3分の2が赤字となった。高齢者医療を支えるため拠出するお金が、過去最大の3兆2000億円まで増えていることが要因だ。企業や会社員が支払う保険料の率は平均8.674%となり、14年度もさらに上がる。保険料負担が重くなれば、回復がもたつく個人消費にも影響が出かねない。」(『日本経済新聞』2014.09.12)
●「上場企業が株主に払う配当を増やしている。2014年4〜9月期の配当は、前年より1割多い3兆1700億円と2年連続で過去最高を更新しそうだ。…3月期決算の上場企業で08年3月期から続けて比較できる2262社を対象に集計した。中間配当の総額は前年より約3000億円増える。4〜9月期の純利益の総額は前年同期に比べ約1割減の11兆円強の見通しだが15年3月期通期では増益が見込まれ、収益力に自信を持ち積極的な配当姿勢の企業が増えている。4〜9月期の利益のうちどの程度を配当に振り向けたかを示す配当性向は27%と4ポイント上昇する。」(『日本経済新聞』2014.09.15)
●「総務省が14日、敬老の日に合わせてまとめた15日時点の推計人口によると、65歳以上の高齢者人口は3296万人で過去最多だった。1947〜49年生まれの『団塊の世代』のうち、49年生まれが新たに65歳に達し、年内には同世代の全てが65歳以上となる。8人に1人は75歳以上の後期高齢者で、高齢化社会が急速に進んでいる実態が浮き彫りになった。」(『日本経済新聞』2014.09.15)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、局所的集中豪雨など、都市型水害への対応を目的に河川と下水道を一体的に運用できる仕組みを構築する。既存の交付金制度(防災・安全交付金)を拡充。これまで“グレーゾーン”になっていた、調節池などの河川管理施設と、雨水貯留管といった下水道施設をつなぐ連結部分を交付金の対象に組み込む。地方自治体に河川と下水道の相互融通を促すなど、既存インフラを『賢く使う』取り組みが新たな展開を見せ始めた。」(『建設通信新聞』2014.09.01)
●「国土交通省は土砂災害防止法を改正する。広島市北部の大規模土砂災害で人的被害が拡大したのを受け、住民の避難行動を自治体がより迅速に誘導できるようにする。同法に基づいて都道府県が『警戒区域』を指定する際の基礎調査で災害リスクが高い個所を把捉した場合、その結果を公表することを新たに義務付け、全国で遅れている警戒区域の指定を促す。都道府県には土砂災害警戒情報を市町村に伝達することも新たに義務付け、市町村による避難勧告を後押しする。…今秋の臨時国会に改正法案を提出し、改正法の成立を目指す。全国には土砂災害危険区域が約53万カ所あるが、現行法に基づいて都道府県が行う住民の避難態勢を整備する『土砂災害警戒区域』と、住宅宅地分譲などの開発を規制する『土砂災害特別警戒区域』の両方を合わせた指定数は約35万力所程度にとどまっている。うち広島県は土砂災害危険個所が全国最多の約3万力所あるが、これらの区域指定は3分の1程度にとどまっている。そこで国交省は、自治体による避難行動の誘導が遅れた広島市の土砂災害を教訓に現行法を改正する方針。都道府県向けに土砂災害リスクが高い個所の公表や、原則的に気象庁と共同発表する土砂災害警報情報を市町村に提供することを義務付ける。都道府県による警戒区域の指定を促すと同時に、市町村による住民への避難勧告を出しやすくするのが狙いだ。」(『建設工業新聞』2014.09.01)
●「国土交通省が地区単位で進める発注見通しの統合・公表が5日までに完了した。全国を北海道から沖縄まで計10ブロックに分け、各地方整備局などが運営するホームページ(HP)から管内の自治体や国の発注機関のHPにリンクを張り、発注見通しを一元的に閲覧できるようにした。各発注機関がそれぞれ個別に発注見通しを公表しているが、これらを一元的に閲覧できるようになれば、工事を受注する建設業者が技術者を計画的に配置したり、資機材を円滑に調達したりするのに役立つとみられている。」(『建設工業新聞』2014.09.08)
●「国土交通省は、市町村道の修繕・更新費に特化した補助制度を15年度に創設する。今年7月から全国にあるすべての橋梁とトンネルに点検が義務付けられたのに伴い、事故のリスクが高く緊急・長期的な対策が必要な個所を対象に修繕・更新費の半額を補助する。現行の防災・安全交付金と併せ、新たな補助制度によって市町村への支援を手厚くし、老朽化対策を促す。…新たな補助制度は、道路の老朽化対策に十分な予算を確保できない市町村を対象に、複数年かかる修繕・更新工事の費用の半額を国が補助する仕組みを想定している。補助対象には、高速道路などをまたぐ跨(こ)道橋などが多くなるとみている。跨道橋は市町村が管理しているケースが多い上、老朽化を放置すると重大な事故につながる懸念があるためだ。国交省は、現在も交付金で自治体による道路の修繕に関する計画策定や工事にかかる費用の半額以上を支援している。ただ、交付金の使い道は限定されていないため、市町村に道路の老朽化対策を集中的に進めてもらうには、個別補助制度が必要と判断した。」(『建設工業新聞』2014.09.09)
●「国土交通省が10日開いた中央建設業審議会で、改正公共工事品質確保促進法(品確法)を踏まえた経営事項審査の改正案が明らかになった。将来の担い手となる若手の育成・確保に取り組む企業を評価するため、35歳未満の技術職員を一定比率以上雇用している場合などに加点する。また、建設機械の保有状況の評価対象を拡大し、移動式クレーンなど3機種を追加する。新経審制度は2015年4月1日に運用開始する見通し。」(『建設通信新聞』2014.09.11)
●「国土交通省は、これまで事業費の増額変更が認められていなかった災害復旧助成事業に『増額変更』のための枠組みを設ける。2015年度の導入を目指す『再調査制度』がそれだ。近年の公共事業における労務単価の上昇や資材価格の高騰など、事業採択後の“やむを得ない”理由で生じる事業費の変更に対応することが狙い。実現すれば、実施主体となる地方自治体だけでなく、工事を請け負う建設産業にとっても大きなメリットとなりそうだ。」(『建設通信新聞』2014.09.12)

労働・福祉

●「『男社会』のイメージ払拭へ――。国土交通省と日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会、全国建設産業団体連合会の建設業5団体は、『もっと女性が活躍できる建設業行動計画』を策定し、官民挙げたアクションをスタートさせた。政府全体の方針として、女性の活躍機会の拡大が推進されているが、省庁とその所管業界がタッグを組み、こういったプランを作るのは珍しい。人口減少・超高齢化社会の到来で、産業間の人材獲得競争が熱を帯びていく中、先駆的な取り組みとして今後の成果に注目が集まる。計画策定前には太田昭宏国交相自らが、女性が活躍する建設現場を視察。女性技術者と本書の意見交換を行うなど、国交省としての本気度を対外的に発信した。」(『建設通信新聞』2014.09.01)
●「防衛省は、退職予定の自衛官を対象とする職業訓練について、建設業関連の資格取得の定員を拡大する方針だ。被災地の復旧・復興や建設投資の増加で建設業の技能労働者が不足していることを踏まえた措置。15年度予算の概算要求で、550人分の訓練費用の増額を要求した。非常勤の『予備自衛官』を雇用した企業の法人税を控除する税制改正も要望。建設現場に即した技能を持つ退職自衛官を増やすとともに、企業が予備自衛官を受け入れやすくすることで、建設業の人材と予備自衛官の確保を同時に目指す。」(『建設工業新聞』2014.09.01)
●「国土交通省は、2015年4月からスタートする『外国人建設就労者受入事業』の円滑な実施を図るため、15年度から建設分野における外国人材活用の適正化事業を始める。『制度推進事業実施機関』を公募・選定し、監理団体や受入企業の巡回指導などを展開。就労管理システムを構築して受入状況をリアルタイムに把握し、関係者間で共有する。また、賃金支払いの実態を含めたアンケート形式の調査も実施する。さらに、外国人が日本の建設業に従事できる期間が、最長5−6年になることを踏まえ、現地送り出し国で行う先導的な事前訓練をモデル事業として支援する。」(『建設通信新聞』2014.09.03)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、植村芳輝議長)は2日、6月14日に実施した作業所の『統一土曜閉所運動』の結果を発表した。計5430カ所の作業所のうち、当日に閉所された『完全閉所率』は36.3%。前年同月に比べ1.0ポイント改善したが、ほかの土曜または平日に運動日を替えた閉所(読み替え閉所)を行った作業所を含めた『閉所率』は52.7%(前年同月比1.1ポイント低下)に悪化。閉所率は最も高かった09年6月(63.1%)以降で最も低くなった。…日建協は『技術職員や技能労働者の不足などで作業所の環境が改善されず、閉所率の低下に歯止めが掛からない』と分析している。」(『建設工業新聞』2014.09.03)
●「国土交通省は、専門工事業者の繁閑調整手法の検討に乗り出す。まず職種ごとに、施工規模に応じた標準的な技能労働者数を算出できるプログラムを開発し、地域別や次数別の繁閑状況をグラフ化する。それらを重ね合わせて、時間軸に沿った繁閑の波のずれを把握。人手の余剰感、不足感がある地域や職種などを“見える化”する。厚生労働省の『建設業務労働者就業機会確保事業』を活用して合法的に技能労働者を融通し合い、人材の効率的な活用につなげる。実現すれば、仕事量の平準化や働き手の稼働日数増加などにより、給与上昇や常時雇用、保険加入の促進が期待できそうだ。」(『建設通信新聞』2014.09.04)
●「喫緊で中長期にも大きな課題である『担い手確保・育成』に対する取り組みが、建設産業界で広がっている。その1つが、元請企業で構成する労働組合団体による、大学生が現場の生産システムを実地で学ぶ実習に出向いて建設業をPRする出前講座だ。人口減少傾向が確実となったことで、人材確保の産業間競争がさらに激化する可能性は大きい。そのため今後さらに元請け、専門工事業、業界団体、企業内労働組合などそれぞれの立場で建設産業界の担い手確保・育成への取り組みが必要となりそうだ。」(『建設通信新聞』2014.09.08)
●「非正規社員から正社員への転換が進んでいる。転職や社内登用で正社員になった人が今年4〜6月期は前年同期比2割増え、ほぼ100万人となった。…総務省の労働力調査から、正社員として働き始めた人のうち前職が非正規だった人の数を調べた。4〜6月期に正社員となった人のうち、転職や自社登用で非正規から転換した人の数は99万人と前年同期に比べ22%増えた。リーマン・ショック後の雇い止めなどで非正規の転職が盛んだった2009年7〜9月期の104万人以来の水準だ。正社員に転換した99万人を年齢別にみると、15歳〜34歳が64万人と65%を占める。…30代の就職氷河期世代は新卒採用が少なく、非正規社員として働き続けてきた人も多い。こうした世代で正規雇用に移る動きが強まっているのが特徴だ。」(『日本経済新聞』2014.09.09)

建設産業・経営

●「建設関連業の受注が好調に推移している。上場企業を中心に期末・四半期決算を集計した結果、18社のうち13社で増加し、うち6社が2桁増だった。東日本大震災の復興需要、国土強靭化による事業量の増加、インフラ老朽化対策、アベノミクスによる積極的な公共投資などが追い風になり、各社とも受注額を伸ばした。一方、今期・通期は海外の大型受注の反動などから、慎重な姿勢を見せる企業が多い。」(『建設通信新聞』2014.09.02)
●「大和ハウス工業とフジタ、物流システム開発などを手掛けるフレームワークス(静岡市、秋葉淳一社長)は、物流拠点建設に最適な立地を提案するシミュレーションソフト『DFU−glas』(ディーエフツー・グラス)を共同開発した。入力した土地や施設の物件情報から、指定時間内に到達できる範囲を見える化する『到達圏検索』などにより、客観的データに基づくより効率的な最適立地の提案を可能にする。大和ハウス工業とフジタは、開発したソフトを営業ツールとして10月から本格的に導入し、各企業への物流拠点提案を迅速に展開することで、さらなる受注拡大を目指す。」(『建設通信新聞』2014.09.03)
●「日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)は、国土交通省に提出した改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針に関する意見を明らかにした。施工全般にわたって同省が行っている施策を『共通ルール』として、すべての発注者が取り組むよう要望。単独やコンサルタントとのJVで調査・設計段階から参加できる事業を増やすことや、入札時の過度な地域要件の是正、設計変更の上限ルールの柔軟な運用なども求めた。」(『建設工業新聞』2014.09.03)
●「全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)は5日、国土交通省に提出した改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針に対する意見を明らかにした。47都道府県協会からの回答を踏まえ、会員企業全般にわたる『全般』8項目と、『発注関係事務』として調査・設計から完成後までの各段階と発注・入札契約などに関する40件以上の提案・意見を提出。公共事業予算の拡大や、国による施工者の利益状況確認、予定価格や最低制限価格の事前公表全面廃止などを求めた。」(『建設工業新聞』2014.09.08)
●「『担い手3法』の主題の1つである適正利潤をいかに確保していくか――。その打開策として、群馬県建設業協会の青柳剛会長は10日、関東地方整備局との意見交換会の中で、予定価格の上限に『幅』を持たせ、実勢価格に柔軟に対応することを提案した。『思い切った施策を行わなければ、建築、土木ともに資材価格の上昇に追いつかない』と指摘し、経済情勢を踏まえた現実的な対応を整備局に提起した。青柳会長は、予定価格の上限拘束性を撤廃するのではなく、『予定価格を金額の“線”とせずに、基準となる金額に係数をかけることで幅を持たせる“帯”として設定してみてはどうか』と踏み込んだ。これに対し整備局は、改正公共工事品質確保促進法(品確法)の理念と会計法を引き合いに出した上で、『意見は本省に伝える』と答えた。」(『建設通信新聞』2014.09.12)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、2015年度の税制改正要望をまとめた。子育て世代などの住まいの充実を念頭に、高齢者層が保有する資産を少ない負担で現役世代に移転させるため『住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の延長・拡充(贈与税)』を要望する。適用期間の3年間の延長と、最大3000万円まで非課税枠の拡充を求める。背景には住宅取得環境の悪化がある。人生のステージで最初に住宅の取得する場合が多い30歳代の平均年収や平均貯蓄が低下傾向にある一方で、住宅価格は上昇傾向にあるなど住宅取得資金が大幅に不足している現状があるからだ。高齢者層が保有する資産を、子育て世代となる住宅取得者層に移転させる際の贈与税の負担を減らし、住宅取得に係る負担を軽減。直系尊属からの贈与により住宅を取得した場合、省エネ性または耐震性の高い住宅が1000万円、一般住宅が500万円となっている現行の非課税枠を最大3000万円まで拡充し、内需の柱である住宅投資を喚起する。また、全国的な増加が懸念されるなど、社会問題となっている空き家への対策では、除却・適正管理を促し、市町村による空き家対策を支援する観点から土地に係る固定資産税に関する措置を要望するほか、中古住宅流通・リフォーム市場の活性化を目的に、中古住宅を買い取り、住宅性能の一定の向上を図る改修工事を行った後、当該住宅の再販売する場合、買取再販事業者に課されている不動産取得税を非課税とする特例措置の創設も盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2014.09.01)
●「2020年東京五輪前の開業を目指し、JR東日本が山手線品川駅〜田町駅間(東京都港区)の車両基地跡地で計画している新駅の整備事業が動きだす。本年度から駅舎の設計に入り、16〜17年度に着工する。これを受け、新駅周辺では再開発計画も浮上。東京都は新駅の整備予定地に近接する都営浅草線泉岳寺駅の大規模改良に着手し、将来の混雑緩和に備える。2020年に品川〜田町間の街並みが様変わりしそうだ。…JR東日本は、東京五輪までに仮設の駅舎を開業し、その後5〜10年かけて本設の駅舎(2階建て)に更新する。1階に車が乗り入れる広場、2階に広場と改札を整備し、上部には大屋根を配置する。山手線と京浜東北線の島式ホーム2本を整備する。車両基地跡地での大規模開発の完了も、駅舎の本開業と同時期になる予定。東京都は7月、品川駅や田町駅周辺の将来像を描いた街づくりガイドライン改定案をまとめ、新駅周辺の開発の方向性を示した。」(『建設工業新聞』2014.09.01)
●「東日本大震災後に造られたプレハブの仮設住宅で、建物の傷みが目立ち始めた。地盤が沈んで床が傾いたり、天井部分にカビが生えたりしている。プレハブ仮設には今も9万人以上が暮らすが、宅地造成の遅れなどで利用の長期化は避けられない。自治体は改修による延命に乗り出した。…震災後の2011年3月から12月にかけて建ったプレハブ仮設約5万3000戸の入居期間は原則2年。阪神大震災でも利用は最長5年だった。しかし、東日本大震災の被災地では、宅地造成や災害公営住宅の整備が遅れ、仮設暮らしが5年以上に及ぶのは避けられない。このため、各自治体はプレハブ仮設に修繕などを施すことで、利用の継続を図る動きを本格化させている。」(『日本経済新聞』2014.09.02)
●「東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う除染で出た汚染土壌などを一時保管する中間貯蔵施設を巡り、福島県の佐藤雄平知事は1日、首相官邸で安倍晋三首相と会い、建設を受け入れる意向を正式に伝えた。首相は『福島の復興に全力を尽くしたい』と述べた。中間貯蔵施設の建設で除染は加速するが、福島県の復興に向けては住民の生活再建支援や原発廃炉など課題は山積している。佐藤知事は『苦渋の決断をした。政府全体で復興の実現に取り組んでほしい』と要請した。住民が復興に希望を持てる将来像の提示と財政支援を求めた。中間貯蔵施設は福島第1原発周辺の双葉、大熊両町にまたがる16平方キロに1兆円規模を投じ建設する。汚染土を最大で東京ドーム18杯分(2200万立法メートル)搬入し、最長30年間保管する。政府は今秋の臨時国会に、使用開始後30年以内に県外で最終処分する方針などを盛り込んだ関連法案を提出する。年内には両町と搬入に関する安全協定も結ぶ。」(『日本経済新聞』2014.09.02)
●「国土交通省は1日、住宅リフォーム事業者団体登録制度を施行し、団体からの申請受付を開始した。登録要件は、複数の都道府県に拠点を持つおおむね100社以上が加盟する大規模な団体で、原則2年以上の業務実績があることなど。会員に対して研修などの人材育成プログラムを提供し、消費者の電話相談窓口を設置しているなど、一定条件を満たす団体を国が登録・公表する。団体活動を通じて、そこに加盟する会員の健全性などを広く発信し、消費者が安心してリフォームを行うことができる環境を整える。」(『建設通信新聞』2014.09.02)
●「国土交通省は、都市の防災・減災対策に向けて、密集市街地の早期改善に取り組む。焦点は公的不動産など大規模未利用地をターゲットにした『連鎖型再開発』の推進だ。権利者の合意形成や計画作成を担うコーディネート業務への支援体制(都市再開発支援事業)を拡充。公的不動産を種地とすることで事業全体のスピードアップと密集市街地の早期改善を強力に促す。」(『建設通信新聞』2014.09.03)
●「東京(品川)〜名古屋間を最短40分で結ぶリニア中央新幹線の建設が、いよいよ着工する。事業主体のJR東海が工事実施計画を国土交通省に先月提出。認可を得られれば、2027年の開業に向けて総工費5兆5235億円という巨大プロジェクトの工事が今秋にも始まる。…品川〜名古屋間は延長285.6キロ。線路と駅舎、車両基地などの関連施設が建設され、都市部や山地は地下を通すため全区間の8割超がトンネルになる。JR東海は長い工期が見込まれる個所から早期に発注手続きに入りたい考えだ。同社が今回算出した総工費は、09年12月の調査報告時点から935億円の増額となった。新技術の採用と労務単価の上昇が主な増額要因という。…電灯・電力線路や車両などを除き、トンネル・橋梁、駅など構造物を中心とした工事費は4兆0158億円。1キロ当たりの工事費は140.6億円となる。工事実施計画によると、橋梁78カ所(総延長1万1626メートル)、トンネル43カ所(同25万6550メートル、回送線含む)を整備。トンネル部分には非常口を16カ所設ける。橋長100メートル以上の長大橋は47カ所あり、最長は751メートルの『釜無川橋梁(仮称)』。延長1000メートル以上のトンネルは27カ所あり、最長は3万6924メートルの『第一首都圏隧道(同)』。20キロを超す長大トンネルは、両端の東京側と名古屋側の都市部を抜ける大深度地下区間、南アルプスと中央アルプスの山岳区間を横断する計4カ所となる。」(『建設工業新聞』2014.09.03)
●「2020年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場。流線形のアーチで覆われた複雑なデザインの巨大な競技場を工期内にいかに完成させるのか。その施工予定者を決める公募型プロポーザルの手続きに注目が集まっている。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が採用した選定方式は、実施設計の段階から施工予定者が関わり、工法や仕様を確定する『施工予定者技術協議方式』。施工予定者の決定は10月下旬。11月から実施設計者との調整が始まる。…JSCが採用した施工予定者技術協議方式は、『アーリー・コントラククー・インボルブメント(ECI)方式』とも呼ばれ、難易度の高い工事に採用されることが多い。実施設計図書を基に工事の予定価格を決めてから施工者を入札で選ぶ通常の方法とは異なり、あらかじめ『施工予定者』を決めて実施設計段階から参加させるのが大きな特色だ。工期短縮やコスト縮減につながる最適な工法や仕様を設計段階から取り入れられるのが大きなメリット。JSCは高い技術力を持つゼネコンのノウハウを最大限に生かし、コストの抑制、工期の短縮、施工品質の確保などの厳しい制約条件を乗り越える考えだ。建設費の見積もり合わせも同時に行うため、価格が折り合わずに施工者が決まらない入札不調・不落を防ぐことにもつながる。JSCが発注した既存競技場の解体工事の入札では、不落札による再発注や低入札価格調査などで、落札者が決まるまでに1回目の入札から約3カ月もかかり、当初の解体スケジュールに遅れが出ている。工事がこれ以上遅れないよう、新競技場では実施設計の期間を実質的に工事費用の擦り合わせ期間に使って見積金額が予定価格以下になるよう誘導し、施工者を確実に決めたい考えだ。」(『建設工業新聞』2014.09.08)
●「東日本大震災から11日で3年半。インフラの復旧や民間の被災施設の再開に比べて住宅再建が遅れている。岩手、宮城両県の沿岸26市町村で建設される災害公営住宅は7月末時点で計画戸数の10%にとどまる。民間の力を借りて建設を加速しており、日本経済新聞の調査では2014年度末までに3割が完成する見通しだ。被災地の生活と産業基盤の復興加速へ知恵を絞る時期に来ている。岩手、宮城両県は沿岸部に住む被災者向けに合計2万1000戸あまりの公営住宅を用意する計画。7月末時点の完成戸数は2194戸と計画数の10%にとどまるが、建設中の住宅が続々と建設を終え、14年度末には6708戸と32%が完成する見通しだ。福島県は全体計画が作れていない。遅れが目立つのは三陸沿岸。14年度末で石巻市は14%、気仙沼市は11%しか完成しない。村井嘉浩宮城県知事は『被災地の背後に十分な土地が無いことが遅れの原因だ』と分析する。人手不足や資材高騰による入札不調の発生も遅れの要因だ。」(『日本経済新聞』2014.09.11)
●「土木学会と地盤工学会による広島豪雨災害合同緊急調査団の団長を務めている土田孝広島大大学院工学研究院教授は10日、広島豪雨災害で波状的に複数回発生した土砂の氾らんが住宅街の被害を拡大したのではないかという見方を明らかにした。土石流が扇状に広がる『氾らん』の開始地点が複数回の土石流で、より下流に移動したとの見解で、今後、土砂災害の危険区域の設定などにおいて影響を与える可能性もある。土木学会全国大会の『2014年豪雨による水害・土砂災害緊急調査報告会』で明らかにした。…土石流が複数回起きたことで、氾らん開始地点が下流に移動し、被害が広がったとみている。…現在の土砂災害の危険区域などを設定するために採用されている被害範囲の推定方法では、氾らん開始地点を1カ所とし、そこから土砂が扇型に広がることしか想定していない。土田教授は、『災害前の地形図などで、被害範囲を従来どおりの方法で予測すれば、今回の被害範囲より狭い可能性がある』と指摘。仮に複数回の土石流で氾らん開始地点が下流に移動するとすれば、『危険区域の指定方法の考え方にも大きな影響を与えかねない。今後、今回の調査をどう予測に反映するかが課題だ』とした。」(『建設通信新聞』2014.09.11)

その他