情勢の特徴 - 2015年1月前半
●「日本の不動産市場に投資マネーが流入している。投資家から資金を集めてビルなどに投資する不動産投資信託(REIT)の時価総額が10兆円を超え、世界2位のオーストラリアに並んだ。脱デフレへの期待から日本の不動産市場に投資家の関心が向かっている。日銀の追加緩和も支えとなり、2015年もREIT相場は底堅く推移するとの見方が多い。…日本のREITは1年前に比べて時価総額が4割近く増えた。流入する投資マネーを活用して資金を調達し、保有物件を増やしているためだ。…REITは賃料収入を原資に株式における配当に当たる分配金を投資家に支払う。REITの年間利回りは平均3%程度あり、高い利回りを求める個人や外国人投資家からの人気を集めている。日銀が追加緩和でREITの年間買い入れ枠を3倍の900億円に増やしたことも買い安心感につながった。」(『日本経済新聞』2015.01.06)
●「2014年の企業倒産件数が24年ぶりに1万件を割り込んだもようだ。日銀の大規模緩和などで金利が低下して企業の資金練りに余裕が出ていることや、業績が回復した銀行が中小企業への貸し出しを増やしていることなどが背景にある。ただ後継者難などで倒産する前に休廃業に踏み切る企業も増えており、中小・零細を中心に企業経営は二極化している。東京商工リサーチによると14年1〜11月の倒産件数は9045件だった。12月分は集計途中だが同社は「700件前後にとどまる」としており、14年の倒産件数は一昨年の1万855件に比べて約1割減少し、1990年の6468件以来、24年ぶりに1万件を割り込んだようだ。」(『日本経済新聞』2015.01.06)
●「2015年度予算編成で、防衛関係費が過去最高の4兆9800億円程度になる見通しになった。離島防衛や日米の防衛協力の拡大をにらんだ装備品を増強し、14年度から約2%増えるもよう。沖縄県の米軍普天間基地の名護市辺野古への秒設工事の本格化や、政府専用機の購入に約500億円を充てることも全体を押し上げる。」(『日本経済新聞』2015.01.06)
●「国土交通省は、民間プロジェクトの円滑な事業化を目的に『行政』『地域金融機関』『民間企業』の三位一体の連携体制を構築する。行政、金融機関、民間企業の一層の連携強化で民間資金を呼び込みやすい環境をつくるのが狙い。民間プロジェクトの事業化を強力に後押しするため、プロジェクトの実施主体となる民間企業への金融支援を行政と地域の金融機関とが連動して行う『プラットフォーム』の構築を目指す。特に念頭に置いているのは、採算性の問題などを背景にプロジェクトの実施主体となる民間企業が開発資金を思うように調達できないケースがある地方部のプロジェクト。関係者が一丸となったプラットフォームの構築で、それぞれの強みを生かした知恵を出し合い、プロジェクトを事業化へつなげていく。プロジェクトの円滑な事業化を目的に、行政と金融機関が連動して支援策を練り上げていくことで、より民間資金を呼び込みやすい環境をつくる。開発意欲が高い都心部だけでなく、地方部の開発を促進していく観点で言えば、国家的な政策課題である『地方創生』にも直結する取り組みと言えそうだ。」(『建設通信新聞』2015.01.08)
●民間信用調査会社の帝国データバンクが7日発表した調査結果によると、2014年1~12月の円安関連倒産(負債1000万円以上、法的整理のみ)の合計は345件にのぼり、前年(130件)に比べ2.7倍に急増した。産業別では運輸・通信業が96件(全体の27.8%)で最多。卸売業80件(23.2%)、製造業66件(19.1%)、建設業45件(13.0%)となっている。前年比では建設業が9倍、小売業の6.5倍と2業種の増加が突出している。(『しんぶん赤旗』2015.01.08より抜粋。)
●「『地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策』の裏付けとして、政府が9日に閣議決定する2014年度補正予算案のうち、国土交通省関係分が8日分かった。国費ベースの総額は5451億円で、豪雨・台風などによる大規模災害からの復旧や、自然災害リスクが高い地域の緊急防災など、災害・危機対応には2700億円程度を充てる。また、公共事業の発注平準化措置として、当該年度の支出がゼロでも年度内に発注・契約できる『ゼロ国債』に2523億円(事業費ベース)を設定する。一般的に閑散期と言われている4−6月に一定の工事量を確保することで、受注側の年間稼働率アップなどが期待される。」(『建設通信新聞』2015.01.09)
●「政府は14日の閣議で2015年度予算案を決めた。国の予算の基本的な規模を示す一般会計の総額は過去最大の96兆3420億円。社会保障費の増大で14年度当初予算を4596億円(0.5%)上回った。消費再増税は延期するものの、企業収益の改善などで税収は24年ぶりの高水準になる見込みだ。当初予算では6年ぶりに新たな国債発行額が40兆円を下回るが、歳出の抑制には課題を残した。…この日の閣議では、10月に予定していた10%への消費税率引き上げを先送りする15年度税制改正大綱も決定した。企業収益の改善や賃上げを受け、15年度の税収は54兆5250億円とした。14年度当初を4.5兆円(9%)上回り、過去の実績に比べて24年ぶりの高水準だ。8%への消費増税も税収を押し上げる。…新規の国債発行は36兆8630億円と同4.4兆円(11%)減り、歳出入の総額に占める割合を示す国債依存度は同4.7ポイント低い38.2%に下がる。当初予算では6年ぶりに40%を下回るが、他の先進国に比べるとなお高い水準だ。」(『日本経済新聞』2015.01.14)
●「国土交通省の2015年度当初予算案は、一般会計が5兆7887億円となった。公共事業関係は、一般公共事業費に5兆1232億円、災害復旧等に534億円を計上。非公共事業のうち、官庁営繕とその他施設費には464億円を充てる。公共事業関係費は前年度比“0・0%増”としつつも、自然災害に対応する防災・減災対策やインフラ老朽化対策には重点投資の姿勢を明確にしている点が特徴だ。」(『建設通信新聞』2015.01.15)
●「国土交通省は1月から、東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)での災害公営住宅整備に適用する標準建設費を引き上げる。主体付帯工事費の上限をかさ上げできる特例措置について、かさ上げ率を現行の15%から22%へと見直す。被災地特有の事情で工事費が上昇した場合に適用する特例加算の上限額(14年度は1戸当たり286.8万円)も、事情に応じて国交相が現在の上限より多い額を別途設定できるようにする。」(『建設工業新聞』2015.01.05)
●「国土交通省は、道路分野における老朽化対策の本格実施に向けて、複数年にわたる大規模修繕・更新をターゲットにした補助制度を新設する。従来の交付金制度とは別に、地方自治体への新たな財政支援策を打ち出す。2015年度予算案に関連費用を盛り込んでいる。7月からスタートした『点検』『診断』での技術的な支援に加えて、修繕・更新といった『措置』段階での支援体制を強化することが狙い。昨年の道路法改正で、全道路管理者に5年に1回の点検を義務付け、今回の補助制度新設によって今後の道路メンテナンス市場を確実にした格好だ。」(『建設通信新聞』2015.01.09)
●「総務省は15年度から、建設費に対する国庫補助が少ない地方自治体の公共施設の集約・複合化を財政面から後押しする。道路や学校など国庫補助率が高いインフラの集約・複合化が進みやすいのに対し、文化会館や市民ホールなど自治体の負担が大きい施設は集約・複合化が後回しになる可能性があるためだ。自治体が策定する公共施設等総合管理計画に基づく事業を対象にすることで、総合管理計画の策定を促す狙いもある。施設の転用も支援対象にする。」(『建設工業新聞』2015.01.14)
●「厚生労働省は、運用の成果によって将来の年金額が変わる確定拠出年金で、加入年齢の上限を原則60歳から70歳に引き上げる検討に入った。60歳を過ぎても働くシニアが増えているため、企業に掛け金(保険料)を納めてもらい、将来受け取る金額を増やせるようにする。一時金としてもらう人が多いため、年金での受け取りも促す。」(『日本経済新聞』2015.01.05)
●「建設業における若年層の就業者が増加している。国土交通省の調査によると、2014年1−11月の建設業就業者の平均は503万人。このうち、15−29歳の若年者が占める割合は約11%の55万人と、13年度の51万人(10.2%)を大きく上回っている。特に20−24歳世代の増加傾向が顕著だ。就労環境の改善を始め、建設産業界が一丸となった『魅力ある建設業』への取り組みが、若者世代の入職促進という形となって着実に効果を発推していると言えそうだ。…特徴的なのは、建設業以外の他産業が逆の動きをしているということ。総務省の労働力調査によれば、他産業の29歳以下の就業者数は依然として減少傾向に歯止めがかかっていない。」(『建設通信新聞』2015.01.05)
●「厚生労働省は7日、働く時間ではなく成果で賃金を払う『ホワイトカラー・エグゼンプション』の制度案をまとめた。対象は年収1075万円以上の専門職に限り、週40時間を基本とする労働時間規制から外す。過労を防ぐために年104日の休日なども導入の条件にする。…同省は16日に開く労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会にこれらの労働時間規制の改革案を示す。今後、与党との調整を経て労働基準法改正案を閣議決定し、26日召集の通常国会での成立と16年春めどの施行を目指す。」(『日本経済新聞』2015.01.08)
●「厚生労働省が検討している医療保険制度改革で、200万人が加入している建設業の国民健康保険組合(国保組合)が国庫補助削減の対象から外れることが確実な情勢となった。所得水準が高い国保組合の定率国庫補助は廃止されるが、比較的所得水準の低い建設業の国保組合は、医療給付費(窓口負担額を除く医療費)に対する原則32%の国庫補助が維持される。」(『建設工業新聞』2015.01.09)
●「建設現場で働く技能労働者の不足が改善してきた。国土交通省が毎月発表する建設労働需給調査によると、主要8職種の技能労働者の不足率は、直近の14年11月で4カ月連続して前年同月を下回った。調査時点から2カ月先の労働者確保を『困難』とみる比率も54カ月ぶりに前年同月の数値を割り込むなど変化の兆しが見えてきた。背景には『賃金の上昇で建設業の雇用が拡大していることがある』(第一生命研究所)との見方も出ている。」(『建設工業新聞』2015.01.13)
●「ゼネコントップに共通するのは、14年が業界と個社それぞれにとって『ターニングポイントの年』だったという認識だ。安倍政権が打ち出したアベノミクスの“2本目の矢”である大胆な財政出動は、これまで2年連続の『補正予算+当初予算』の15カ月予算執行によって公共事業市場を押し上げた。さらに、担い手確保・育成支援と需給バランス回復の結果、設計労務単価も回復基調にある。また、東北での震災復興工事に加え、首都圏の東京外環道路建設など大規模土木受注が大手・準大手を中心に15年3月期決算の受注高だけでなく、手持ち工事高の積み増しにも貢献。建設企業の担い手確保・育成を主眼に適正利潤確保と多様な入札制度の導入を明記した、改正公共工事品質確保促進法(品確法)など担い手3法の施行は、今後の公共工事発注に波及していく。地方でも、地方創生と防災・減災を柱とした新たな地域づくりのニーズが確実に生まれ始めている。一方、大手・準大手ゼネコンの売り上げの大半を占める民間建築工事も、数多くの大規模・中規模案件が東京を中心に控えている。こうした受注環境を受け、大手・準大手ゼネコンの15年3月期中間決算は大半が利益率・利益額を確実に拡大。…それにもかかわらず、大手・準大手ゼネコンの各トップに楽観の顔は見えない。なぜか。楽観論がゼネコン各社にないのは、『業界のみんなが繁栄する時代は終わった』(山内隆司大成建設社長)に代表される、20年東京五輪後の国内建設市場の不透明さへの認識がある。もう1つは、『必要なのは、そろばんより腕(技術)』(中村満義鹿島社長)という、現場力向上のための人材の能力アップ・確保への対応に直面している問題意識だ。その結果、『東京五輪後に内需が縮小する可能性もあり、海外展開する力を維持していかなければならない』(宮本洋一清水建設社長)ほか、大林組の白石達社長は『最終的には海外比率を30%、国内建設以外の比率を50%に引き上げる」展望を描く。…今後国内市場が縮小しても、多様な収益構造と生産システム改革で売上高と組織を維持するという大手5社トップの方針は、準大手企業にも波及している。…大手5社を筆頭にゼネコン各社は、建設市場を世界的視野で判断しながら、重点地域での土木・建築工事やエンジニアリング事業の受注を国内外で果たして、収益の多角化も図る。そのグローバル化とローカル化をミックスした建設業版『グローカル戦略』を進める先行きへの布石が、好転し始めた受注環境の下で進み始めた。」(『建設通信新聞』2015.01.06)
●「足場など軽仮設リース業の売上高が、2014年11月は現在の調査方法に変更して以来、過去最高を記録した。軽仮設リース業協会は、高水準な稼働率が続いている上、『首都圏だけでなく全国的に好調だ』と説明している。国土交通省がまとめた軽仮設リース業動態調査結果によると、軽仮設リース業の賃貸売上高は199億3700万円で、前年同月比15.3%増だった。」(『建設通信新聞』2015.01.09)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は、電子納品対象工事実施状況の2013年度調査結果をまとめた。発注者との事前協議段階では、電子だけの納品で良いとされていたものの、実際の納品時には紙と電子の二重納品を求められるケースが多く、特に提出量が膨大になる工事写真では約4割の現場で紙と電子で二重に納品していた。」(『建設通信新聞』2015.01.14)
●「東京商工リサーチが13日発表した2014年(1〜12月)の建設業の倒産(負債1000万円以上の企業倒産)は1965件(前年比18.8%減)と6年連続で前年を下回った。2000件を割り込んだのは1990年(1469件)以来24年ぶり。大規模倒産がなく、負債総額も2356億8200万円(70.8%減)と大幅に減少。平均負債額は1億1900万円(64.2%減)にとどまった。景気回復機運の高まりによる設備投資増加、震災復興工事の進展、消費税率引き上げ後の景気下支えで進められた公共事業の前倒し執行の効果などで倒産が減少したとみている。」(『建設工業新聞』2015.01.14)
●「地域住民の拠点として、学校の校舎を公民館や高齢者施設などの公共施設と一体化する動きが広がっている。学校を中心に幅広い年代の住民の交流が促され、子供たちの成長への好影響も期待できるという。人口減を見据えて公共施設の運営効率化も求められるなか、自治体が学校に様々な機能を集約する流れは加速しそうだ。」(『日本経済新聞』2015.01.03)
●「2014年には、長期優良住宅化リフォーム推進事業をはじめとして、新たなリフォーム関連施策がいくつか始まった。なかでも、国土交通省が9月から運用を開始した『住宅リフォーム事業者団体登録制度』は、業界への影響が非常に大きい施策だ。…しかし、同制度の登録要件では、一人親方が多く所属する労働組合や、1都道府県のみの事業者で構成されるローカル団体などは、登録の対象とならない。国交省は、あくまでこの制度は任意制度だと説明しているが、未登録団体の会員事業者が市場から排除されることを危惧する声も上がっている。特に、地域のリフォーム需要の担い手として重要な位置を占める一人親方は、情報発信力にも限度がある。登録制度の範疇外に置かれてしまうと、国のお墨付きもなく、消費者に対するPRも大々的に行えない状況に置かれてしまい、消費者の選択肢に入らなくなる可能性さえある。こうした状況に対応するため、新たに団体を立ち上げる動きも目立っている。東京土建一般労働組合はこのほど、(一社)リフォームパートナー協議会(通称:RECACO)を設立、12月15日に設立総会を開催した。1月から本格的に事業を開始し、16年1月以降の登録を目指す。一人親方は多いことを考慮し、建設業許可・建築士事務所登録・常勤の国家資格者がない事業者でも入会できるよう、基準を設けている。」(『日本住宅新聞』2015.01.05)
●「東京都が実施した『都政モニターアンケート』で、幹線道路で交通安全上必要だと思う整備を複数選択で尋ねたところ、『自転車走行空間の整備』が80.2%と最も多かった。都の担当者は『自転車の通行が増え、歩行者や自動車との交錯が危ないという意識が強まっているのではないか』と分析している。他には『歩道の整備』が60.4%。『電線類の地中化』(40・0%)や『バリアフリー化』(34.9%)を求める意見も多かった。」(『日本経済新聞』2015.01.06)
●「2015年から都心3区を中心に、多くのビッグプロジェクトが動き出す。日刊建設通信新聞社の調べによると今後、都心3区で着工するプロジェクトのうち、想定延べ床面積が明らかになったものだけでも合計で500万平方メートルを超す。このうち、半数以上が早ければ15年度末までに着工する予定だ。」(『建設通信新聞』2015.01.07)
●「建築工事費の高騰が多くの市街地再開発事業の進行に支障を来している問題で、国土交通省が、工事費増額分の一部に国が交付金を支給して支援する特例措置の期限を1年程度延長する方向で検討していることが分かった。政府が昨年末に決定した総額約3.5兆円の経済対策の一環。工事費の高騰を原因とする入札不調・不落や工事の遅延を防ぎ、都市の防災・減災や地方創生につながる市街地再開発の促進を図る狙いだ。」(『建設工業新聞』2015.01.07)
●「日本の人口の73.7%(9442万人)が洪水、土砂災害、地震、液状化、津波のいずれかで大きな被害を受ける危険のある地域に住んでいるとの推計を国土交通省が7日までにまとめた。危険地域は国土面積の34.8%(13万1400平方キロ)を占め、災害が起きやすい場所に人口が集中する現状が浮き彫りになった。…推計は全国的な傾向を大まかに把握するのが狙い。洪水領国や都道府県が想定する主な河川の浸水区域・土砂災害は土石流や崖崩れなどの危険箇所、地震の揺れは30年間で震度6弱以上になる確率が25%以上の地域。」(『日本経済新聞』2015.01.08)
●「建設技術研究所は、山口県下関市にある県営木屋川ダムで計画している堤体かさ上げ事業の本体設計業務を受注した。現在の堤体を約10メートルかさ上げし、治水機能を向上させるプロジェクト。同社がダム堤体のかさ上げで設計業務を受託したのは、兵庫県姫路市にある菅生ダムに続いて2件目。今回実施する概略設計を踏まえて実施設計や施工計画立案などが実施され、2030年ころに堤体のかさ上げが完成する見通しという。」(『建設工業新聞』2015.01.08)