情勢の特徴 - 2015年2月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●内閣府が16日発表した2014年の国内総生産(GDP、速報値)で、14年の年間を通した実質GDP成長率は0.0%となり、経済成長が止まった。…安倍政権は14年4月、国民の多数の反対を押し切って、消費税率の8%への引き上げを強行した。この消費税増税が庶民の所得を奪い続けている。日銀による金融緩和は、物価上昇をもたらし、原材料高騰を価格に転嫁できない中小企業の営業を直撃し、庶民の生活を圧迫している。…14年の実質GDP成長率の内訳を見ると、金融緩和を引き金とした円安で輸出(8.2%増)は拡大したものの、個人消費はマイナス1.2%となり、全体を押し下げた。消費の落ち込みの背景には、賃金の上昇が物価の上昇に追いついていない実態がある。毎月勤労統計調査(速報)によると、14年の実質賃金指数は前年比2.5%減で、3年連続の減少。減少幅はこの3年間で最大を記録した。同年12月単月では前年同月比1.4%減となり、18ヵ月連続マイナスだった。この結果、14年の実質雇用者報酬は、前年比で1%減、金額にして約2兆6000億円減少したことになる。(『しんぶん赤旗』2015.02.17より抜粋。)
●「地方自治体全体の通常収支分と東日本大震災分を合わせた2015年度投資的経費の総額が、前年度比1.7%増の12兆7806億円と見積もられたことが、17日明らかとなった。公共施設などの維持補修費は12.0%増の1兆1601億円と見積もっている。」(『建設通信新聞』2015.02.18)
●「総務省は資本金1億円超の企業を対象に2015年度から2年間実施する給与総額などにかける外形標準課税の強化によって、企業の税負担がどう変わるかを試算した。赤字企業は年間の法人事業税の支払いが平均1600万円増える。外形課税を強めるかわりに利益への課税を減らすため、黒字企業は支払いが平均700万円減る。」(『日本経済新聞』2015.02.19)
●「都道府県の15年度予算案が出そろった。一般会計の総額は前年度比1.7%増の51兆5849億6100万円と微増になったが、投資的経費は骨格予算を編成した7県を含めて27府県で前年度を下回り、2.1%減の7兆1836億2700万円となった。2020年東京五輪の開催に備えた関連施設整備や国の経済対策と連動した企業誘致に取り組む自治体が目立つ。」(『建設工業新聞』2015.02.23)
●「建設物価調査会が24日発表した1−3月期の民間企業設備投資動向調査によると、全産業の設備投資総額は前年同月比9.8%増となる見込みだ。このうち建設投資は7.2%増となっている。なかでも、土地購入費が204.4%増と大幅な伸びを示した。購入費ベースで約3.6倍となった不動産業が全体を大きくけん引した形で、今後オフィスや賃貸住宅などの建設需要に結びつく可能性がある。建設投資を区分別にみると、非住宅建築が30.4%増と大きく伸びる。耐震化を目的とした既存施設の改修や建て替えなども目立つという。内訳は事務所・店舗等が26.2%増、工場・倉庫等が25.6%増、その他建築物が45.3%増といずれもプラスとなっている。一方、住宅(賃貸住宅・社宅等)は14.2%減。電気・ガス業や運輸業などが投資元の中心となる土木は9.8%減となる見通しだ。」(『建設通信新聞』2015.02.25)

行政・公共事業・民営化

●「4月1日から運用開始される改正公共工事品質確保促進法(品確法)に基づく発注関係事務の共通ルール『運用指針』に、発注者である多くの自治体が強い関心を寄せている。視線の先にあるのは、実際に指針に沿った事務を行っていけるのかという不安だ。予算上の制約やマンパワー不足など、それぞれの自治体がそれぞれに課題を抱える中、指針を実際に運用する自治体側のリアルな本音が漏れ聞こえ始めている。…基礎自治体からは契約部門の職員らが多数参加し、説明に当たった関東地整の職員に運用段階で想定される現場の率直な疑問や不安を質問としてぶつけた。改正品確法の趣旨を実現していく上で、間違いなくキーポイントとなる自治体の真剣度がうかがえる説明会となった。『改正品確法の趣旨は十分に理解しているものの、各自治体とも職員のマンパワー上の制約は大きく、実際に事務を行う現場では不安が大きい』『予算上・財源上の制約もあるため、人事面や財政面で国の支援がなければ、結局のところ、地方自治法上の原則である、従来の「最低価格自動落札方式」に引き戻されてしまうのではないか』という現場の本音も出た。改正品確法の趣旨には賛同しながらも事務負担の大きさに多くの自治体が不安を抱えている現状が浮き彫りになったともいえる。」(『建設通信新聞』2015.02.17)
●「国土交通省関東地方整備局は、『技術者育成型』と呼ぶ総合評価方式の入札を新たに試行する。施工技術に関する社内研修や講習会などに参加した実績を持つ配置予定技術者を起用する企業に加点を行う。併せて月に1回以上、現場代理人や主任・監理技術者、担当技術者の実務指導に当たる熟練技術者を現場に派遣する企業にも評価点を与える。17日に初めての試行案件となる一般土木工事(予定価格3億円未満)3件の一般競争入札を公告する。」(『建設工業新聞』2015.02.17)
●「国土交通、総務両省は、実勢を反映した予定価格の設定や施工時期の平準化など、公共事業の円滑な施工を確保するための重点対策をまとめ、地方自治体に文書で取り組みを要請した。予定価格では、今月引き上げた設計労務単価の適用や歩切りの根絶を求めたほか、公共建築工事で現場の実態を反映する『営繕積算方式』の活用を促した。平準化に向けては、債務負担行為の積極活用、労働者確保のための余裕期間の設定などを具体策として挙げた。要請文書は6日付。政府の緊急経済対策の裏付けとなる14年度補正予算の成立を受けて都道府県と政令市に出した。都道府県を介して市町村にも周知し、建設業団体にも送付した。対策の柱は、▽適正な価格による契約▽技術者・技能者の効率的活用▽施工時期の平準化▽入札契約手続きの効率化▽地域の建設業者の受注機会の確保▽建設業者の資金調達円滑化▽就労環境の改善―の7点。」(『建設工業新聞』2015.02.18)
●「国土交通省は2015年度、市町村のインフラメンテナンス体制の強化に向け、『共同処理体制の促進』『技術者派遣の仕組み構築』『民間事業者への包括的委託の活用』という3つの観点から、実際の市町村業務におけるモデル事業実施に乗り出す。それぞれ2、3件程度の先駆的な取り組みを支援する考え。そこで得られた成果をガイドラインや手引きといった形にまとめ、16年度以降に全国レベルでの水平展開を目指す。」(『建設通信新聞』2015.02.20)
●「自民党が今国会への提出を目指す官民連携事業推進基本法案の概要が19日、明らかになった。官民連携で公共施設の建設や改修、維持管理、運営を手掛けるPPPの基本理念を定め、計画的に推進できるようにする。既存のPFI法の『親法』と位置付け、国、地方自治体、民間事業者などの責務と相互連携を示すとともに、事業を進める上で必要な各種規定を設ける。地域に密着した事業促進の観点から、自治体職員を民間事業者に派遣する場合の必要な措置などを明記する。」(『建設工業新聞』2015.02.20)
●「昨年の衆院解散で廃案になった議員提案の『地元建設業者受注確保法案』が再提出される動きが表面化し、地域建設業界に不安が広がっている。同法案は、国などが発注する1億円以下の公共工事で地元業者の受注機会を増やすよう配慮するのが趣旨で、『国直轄の道路や河川がないエリアの業者の仕事がなくなる』(業界団体幹部)と懸念する声が上がっている。…国や独立行政法人などが発注する予定価格1億円以下の工事を対象に、施工場所の市町村内に本店がある業者の受注機会増大に配慮することが法案の柱。元請受注者が地元業者との下請契約や地元業者からの資機材購入に努めることも定める。受注者を特定地域に限ることにつながりかねないこうした規定が全国一律で運用されれば、どこに本店があるかで仕事の量に大きな差が出てしまうと懸念する声が多い。」(『建設工業新聞』2015.02.20)
●「下水道や病院など全国の地方公営企業でPFIが導入された事業が2013年度までの5年間で15件にとどまることが、総務省の調査で分かった。1999年度の制度導入以降の総数は59件。導入検討中の事業も44件あったが、最近は年間3件程度で導入スピードは鈍化気味になっている。政府はPPP・PFIの普及を目指しており、導入促進策が求められそうだ。」(『建設工業新聞』2015.02.26)

労働・福祉

●「賃金引き上げや労働条件向上などを求め、『2・13建設労働者春闘決起集会』が13日、東京・日比谷公園の日比谷野外音楽堂で開かれた。窪田直彦実行委員長は、『業界、各自治体、−般市民に対して、建設労働者がこれだけの賃金をもらっても当たり前だという運動を大きく前進させないといけない。この集会を期に、ことしは大きなうねりを首都圏から日本全国に広げる一歩にしたい』とあいさつした。来賓で出席した韓国のオ・ヒテク全国建設産業労働組合連盟事務局長は、法律で建設労働者の賃金が決められ、賃金がアップしたので若者の入職が増えたと説明、『若い人がどんどん入ってくる建設産業にしよう』と呼び掛けた。全建総連・岩手県建設労働組合連合会が被災地の復興状況を報告した。」(『建設通信新聞』2015.02.16)
●「2014年(1−12月)の建設業での休業4日以上の死傷者数が、前年同期比(前年同時点比)0.1%減(20人滅)の1万6582人と、4年ぶりに減っていることが、厚生労働省が16日にまとめた14年の労働災害発生状況(速報、2月7日時点)で分かった。1月7日時点(速報)の0.2%増から減少に転じた。同省が業界団体に対して14年8月に緊急要請した労災防止対策の取り組みの成果が現れているといえる。一方、死亡者数は9.3%増(31人増)の366人と、2年ぶりに増えることが確定的だ。…事故別では、『墜落・転落』が前年同期比9人減となったものの、死亡者の39.8%を占める146人と最も多い。『はさまれ・巻き込まれ』は前年同期比17人増の36人、交通事故(道路)が44人で前年同期比12人増だった。」(『建設通信新聞』2015.02.17)
●「国土交通省は、4月に始まる外国人建設就労者受け入れ事業で、受け入れ企業への訪問指導などを行う第1号の特定監理団体を認定した。大臣告示に基づく認定を16日付で取得したのは、全国鉄筋工事業協会(全鉄筋、内山聖会長)とエコ・プロジェクト協同組合(岐阜市、小田切昇代表理事)の2団体。今後、傘下の受け入れ企業と共同で適正監理計画を作って国交相の認定を受けた上で、法務省から在留資格認定証明書が交付されると実際の受け入れができるようになる。…外国人建設就労者受け入れ事業は、日本で3年間の技能実習を終えた外国人に2または3年の在留資格を与え、建設現場で作業に従事してもらう。2020年東京五輪に向けた一時的な建設需要の増大に対応する時限措置として実施される。」(『建設工業新聞』2015.02.18)
●「外国人建設就労者受け入れ事業が4月に始まるのを前に、事業が適正に推進されるよう企業への指導・助言を行う組織『国際建設技能振興機構(FITS=フィッツ)』を大手ゼネコン5社などが共同で設立した。具体的な活動の第1弾として、3月10日に新事業の監理団体や実際に外国人を受け入れる企業を対象にしたセミナーを東京都内で開く。設立は1月15日付。設立者には、光陽ホールディングス(東京都中央区)、大林組、鹿島、清水建設、大成建設、竹中工務店、東日本建設業保証、西日本建設業保証、北海道建設業信用保証の9社が名を連ね、真砂靖・元財務事務次官が理事長に就任した。業務内容は、外国人就労者の▽適正な送り出し・受け入れに関する情報収集・提供と支援▽受け入れ事業の適正な推進に関する指導・助言▽受け入れ・育成に関する研修・セミナーなどの開催▽海外での研修と技能審査などの実施―などを想定している。」(『建設工業新聞』2015.02.19)
●「日本建設業連合会の中村満義会長と山内隆司副会長・建築本部長、宮本洋一副会長・土木本部長は19日、理事会後に会見し、1月にまとめた『社会保険加入促進要綱』などについて所見を述べた。今後の一層の加入促進に向け、労働者一人ひとりの加入有無などを確認できるシステムが必要との見解を示した。社会保険加入促進要綱は、会員による下請企業の社会保険加入指導を一層前進させるため、公共、民間の工事を問わず、会員企業の現場が足並みをそろえて取り組む内容を1月にまとめた。…要綱では、行政への要請事項として、企業と労働者の社会保険加入の実態を確認できる『就労管理システム(仮称)』を早急に構築することを盛り込んでいる。」(『建設通信新聞』2015.02.20)
●正社員が2014年平均で前年より16万人減って3278万人になる一方、非正規雇用の労働者は56万人増えて1962万人と過去最高になった。全労働者に占める非正規の比率は37.4%とやはり最高を更新した。正社員が減って非正規が増えるのは5年連続。17日、総務省が発表した「労働力調査(詳細集計)2014年平均」でわかった。…安倍政権下で正社員は13年に前年比46万人減、14年に16万人減。合わせて62万人が減った。その一方、非正規は13年に93万人増。14年に56万人増。正社員を非正規雇用で置き換える動きが止まらない。(『しんぶん赤旗』2015.02.21より抜粋。)
●「国家公務員の年金資産を運用する国家公務員共済組合連合会は25日、資産構成の目安を見直して、国内株式の比率を8%から25%と3倍に増やすと発表した。国内債券は74%から35%に下げる。同日から適用した。会社員の厚生年金との一元化を10月に控え、130兆円の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と同じ資産構成にする。」(『日本経済新聞』2015.02.26)
●「国土交通省は、社会保険未加入対策を加速させるため、公共工事標準請負契約約款の改正を検討する。1次下請けを加入業者に限定する規定を約款に盛り込むことについて今夏にも検討に入る。2月12日に開いた第9回建設産業活性化会議で提示した第2弾工程表に、新たな検討事項として位置付けた。直轄工事では2014年8月から始めた元請けと1次下請けを加入企業に限定する措置を地方公共団体など他の発注機関にも同様の取り組みを要請しており、その普及状況を見ながら、公共約款を通じた未加入業者排除措置のスタンダード化を模索する。」(『建設通信新聞』2015.02.26)
●「財務省は26日、国民所得に占める税と社会保障負担の割合を示す国民負担率が2015年度に過去最高の43.4%になるとの試算を公表した。6年連続の増加で、14年度に比べて0.8ポイント上昇する。高齢化で医療や年金といった社会保障費は膨らみ続け、経費をまかなうための消費増税や保険料率の引き上げなどが響く見通しだ。負担率の内訳は、消費税など国と地方あわせた税負担が25.6%で、14年度より0.6ポイント増える。昨年4月の8%への消費税率引き上げがきいてくる。厚生年金の保険料率上げがあり、社会保障負担は17.8%で同0.1ポイント増える。」(『日本経済新聞』2015.02.27)

建設産業・経営

●「大手・準大手ゼネコン24社の2015年3月期第3四半期決算が出そろった。2014年4−12月累計の単体売上高は19社が前年同期を上回り、工事採算の改善に伴って営業利益も20社が増加し、本業の回復傾向が鮮明となった。業績の先行指標となる受注高は、東京外かく環状道路など官公庁工事の大型案件に加え、民間設備投資の改善により、17社が前年同期を上回った。ただ、技能労働者の不足、資材価格の上昇などを背景に『予断を許さない経営環境が続いている』というのが各社の共通認識だ。受注高を土木、建築別に見ると、土木は21社が前年同期の実績を上回る一方、建築は消費増税に伴う反動減で10社の増加にとどまった。その傾向は大手に顕著に表れており、大手の平均伸び率は土木39.1%増に対し、建築15.6%減、準大手平均は土木39.5%増、建築1.2%増だった。主戦場である民間建築工事では、各社いずれも採算重視の受注を徹底しており、通期でも、建築は大半が前期実績を下回る抑えめの見通しを立てている。量よりも質を重視する受注展開は、不採算工事の消化と相まって完成工事総利益(工事粗利)率に成果として表れてきており、建築の工事粗利率は19社が前年同期を上回った。改善幅にはバラツキがあるものの、大手に比べて大規模工事が少なく、身軽な準大手で改善の進捗が早く、前年同期に比べて大手平均が1.1ポイント増の4.5%に対して、準大手平均は1.5ポイント増の5.5%だった。」(『建設通信新聞』2015.02.16)
●「道路舗装上場8社の2015年3月期第3四半期決算が13日に出そろった。連結ベースでは不採算工事の排除や業務の効率化などにより、NIPPOなど5社が営業利益を伸ばした。うち前田道路、日本道路、大林道路、三井住建道路は2桁増加している。単体受注高は、東亜道路工業、佐藤渡辺が減少。工事受注高は6社が増加したものの、製品は『前年同期が良すぎた』(日本道路)など、反動減によって各社とも落ち込んでいる。」(『建設通信新聞』2015.02.16)
●「新潟県建設専門工事業団体連合会(阪田忠勇会長)は、会員企業を対象とした2014年度実態調査をまとめた。それによると、社会保険未加入対策、設計労務単価の引き上げに対し、その効果を『実感できない』経営者が全体の約5割に上ることが分かった。積極的な政策展開により業界の潮流が大きく変わりつつある中、一部で“よどみ”が生じているようだ。今回の調査は14年10月に500社に対して実施し、このうち306社から回答を得た(回答率61.2%)。社会保険未加入対策は、内容などについて『だいたい知っている』(30.7%)との回答が前回から若干減少したが、『知っている』(28.1%)『よく知らない』(20.6%)『知らない』(8.2%)とも横ばいだった。…この1年間で何らかの社会保険に新規加入したのは17事業所。加入率は健康保険、厚生年金の双方が75.5%、雇用保険が90.8%でともに若干改善している。標準見積書の提出は、公共工事が44.7%なのに対し、民間工事は31.7%。未提出はいずれも30%程度で推移している。提出しない理由として、『元請けに理解されない』『元請けが受け付けない、聞き入れない』『法定福利費が定まらない』『工事金額小額のため』などの意見が上がっている。…社会保険未加入対策、設計労務単価の引き上げについては、効果を『実感している』が13.7%、『実感できない』が49.3%に達している。(『建設通信新聞』2015.02.17)
●「中小建設業で、休業や廃業・解散に踏み切るケースが依然として高水準となっている。債務超過によって倒産に追い込まれる前に、余力を持ちながら建設市場から退場する構図だ。これまで2008年のリーマン・ショック後、市場低迷と受注単価下落に嫌気をさして、倒産する前に廃業に踏み切る企業が相次いだことが、現在の専門工事業の供給力不足につながっていると指摘されていた。ただ、公共事業増を下支えに景気回復基調が続く中でも、廃業する建設業が倒産件数の3.8倍という高い水準が続いており、倒産統計に現れない静かな市場退場企業が後を絶たないことを浮き彫りにした格好だ。」(『建設通信新聞』2015.02.19)
●「全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)は20日、担い手の確保・育成に向けた行動指針を決めた。処遇改善、将来の担い手づくり、多様な人材の活躍、戦略的広報の4点が柱。下請の社会保険加入の確認・指導を徹底したり、就業環境の整備として週休2日の実現を目指したりすることなどを規定。公共工事だけでなく民間建築工事でも法定福利費が確実に確保されるよう努めることも盛り込んだ。全建が民間工事にまで踏み込んだ指針を策定したのは初めて。20日に東京都内で開いた理事会で、『将来の地域建設産業の担い手確保・育成のための行動指針』として決定した。…指針は、『技能労働者が増加傾向にある流れを確実なものにする』(全建幹部)ために、会員各社が元請として取り組むべき複数の事項を列記した。傘下の各都道府県建設業協会に周知し、担い手の確保・育成に向けた活動の強化を促す。具体的には、技能労働者の処遇改善のために、下請企業に適切な賃金を支払うよう要請・指導し、法定福利莫が明示された標準見積書を活用することで法定福利費を技能労働者に確実に行き渡らせるとした。民間建築工事でも法定福利費の確保、再下請企業の社会保険加入状況の確認に努める。標準見積書は、国土交通省の『社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン』に沿って対応する。週休2日については、適正な労務単価の確保、適正工期の設定、工程管理の徹底によって『実現を目指す』と明記した。処遇改善は適正な利潤が前提となることから、下請の行き過ぎた重層化とダンピング受注を行わず、適正な賃金水準を確保できる請負契約の締結に努めるとした。」(『建設工業新聞』2015.02.23)
●「大和ハウス工業の業績拡大が続く。連結営業利益は2015年3月期に前期比6%増の1730億円となり、16年3月期には2000億円前後とさらに16%伸びそう。5期連続での最高益となる公算が大きい。相続税対策を追い風に賃貸住宅の受注好調が続いている。不動産市況の回復で保有する物流施設などを不動産投資信託(REIT)に売却することも利益を押し上げる。」(『日本経済新聞』2015.02.24)
●「清水建設と協力会社組織の清水建設東京兼喜会(中橋博治会長)は、同社と直接取引する1次下請の協力会社について4月から、会社(事業所)と従業員が社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)に加入していることを原則にして工事請負契約を結ぶことで合意した。2次以降の下請業者が未加入の場合は加入指導を徹底することも要請する。」(『建設工業新聞』2015.02.24)
●「国土交通省は、建設発生土の有効利用を目的に官民の一体的なマッチング強化に乗り出す。これまで公共機関のみで実施してきた発生土の工事間利用調整に民間分野を組み込む形で拡大。2015年度から民間プロジェクトを巻き込んで試行に踏み切る。本格的なインフラ更新時代の到来や東京五輪の開催に向けたインフラ関連工事の増大など今後、建設発生土の増大が見込まれる中、出す側と使う側の二−ズを集約。官民一体で建設発生土の有効利用を促進する。」(『建設通信新聞』2015.02.26)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は、建築本部委員会に参加する会員会社における設計施工率(建築工事受注額に占める設計施工一貫受注額の割合)の調査結果をまとめた。前年度より4.2ポイント上昇して40.8%となり、2009年度以来4年ぶりに40%台を回復した。調査は『建築設計部門に関する年次アンケート2014』で、14年7月1日時点の状況を調査した。この結果、13年度の国内建築工事総受注額8兆2299債1900万円に占める設計施工一貫受注額(有効回答54社)は3兆3643億4100万円だった。…建築工事総受注額が前年度比18.6%増となったことで設計施工受注額も増加したと見られる。さらに、もともと設計施工による受注率が高い生産・物流施設、物販施設の受注が増えたことや、労務環境の悪化や資材価格の高騰などを踏まえて調達・設計の工夫の余地が増える設計施工を発注者側が求める事例が増えていることも、設計施工率上昇に寄与したと見られる。」(『建設通信新聞』2015.02.27)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は17日、『独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案』を自民党・国土交通部会に報告した。現在地または隣地に限定していた都市再生機構(UR)賃貸住宅の建て替えを近隣地でも可能にする『UR法の一部改正』を盛り込んでいる。近隣にある公営住宅・公社住宅の一体的な建て替えを可能とすることで、団地の統廃合を加速させる方針だ。」(『建設通信新聞』2015.02.18)
●「政府は、昨年7月に施行された水循環基本法に基づいて初めて作る基本計画の原案をまとめた。都市部への人口集中や気候変動による浸水・渇水リスクの高まりに対応し、水の貯留機能を維持・向上させるインフラ整備に力を入れるのが柱。一斉に更新期を迎える上下水道などの戦略的な維持管理・更新も進める。7月ごろの閣議決定を目指す。」(『建設工業新聞』2015.02.18)
●「国土交通省と総務省は荒れはてた空き家の撤去を促すための指針案をまとめた。空き家かどうかを判定する目安として、建物が1年間にわたって使われていないことを挙げた。空き家は全国で800万戸を超えており、火災や犯罪の温床となる恐れが指摘されている。両省は指針をつくり、市町村が対策に乗り出せるよう後押しする。空き家対策の推進を盛り込んだ特別措置法は昨年11月に成立したが、市町村が空き家を判定するための基準は盛り込まれていなかった。今回の基本指針を受け、市町村は空き家の撤去を進めるための実施計画をつくる。指針案は人の出入りの有無や電気、ガス、水道の使用実績をふまえ、年間を通じて建物が使われていないことを基準として例示した。処分に悩む所有者からの相談や、近隣住民の苦情に応えられるしくみを整えることも提案した。同法は市町村が空き家の実態をつかむための立ち入り調査や、目的外の利用ができない課税台帳の閲覧を認めている。さらに、倒壊の恐れや景観を著しく損なう場合は『特定空き家』と認定。市町村が所有者に除却や修繕を指導や勧告、命令ができるようにしている。」(『日本経済新聞』2015.02.19)
●「関東地方整備局は20日、首都直下地震を想定した首都圏の道路啓開計画を公表した。東京23区で震度6弱以上の揺れを観測し、車両の放置や建物、電柱の倒壊によって道路がふさがった場合、郊外から都心に向かって障害物の撤去を進め、緊急通行車両の走行ルートを確保する。道路啓開は東西南北の8方向から同時に開始。48時間以内の作業完了を目指す。」(『建設工業新聞』2015.02.23)
●「東京都は23日、築地市場(東京・中央)の移転先である豊洲新市場(同・江東)の場外施設の整備事業を一部凍結すると発表した。商業施設を整備する予定だった大和ハウス工業が辞退したため。同社は現在の設計案では、施設の搬入車両と来場客の車両を安全に仕分けられないと判断した。大和ハウスは豊洲新市場で青果棟を建設している区域内の敷地約6000平方メートルに、調理器具などを販売する商業施設を整備する計画だった。 当初の設計案では施設の搬入車両と青果棟の車両が出入り口で交錯する懸念が市場関係者の間で浮上。このため、商業施設の搬入車両と来場客の車両が近接する変更案を検討したが、大和ハウスは『来場客の安全を確保できない』とし、整備計画から手を引くことにした。都は用途が白紙になった敷地について、2020年の東京五輪に向け、にぎわいを創出できる施設の建設案を募集する方向で検討する。」(『日本経済新聞』2015.02.24)
●「欧州連合(EU)は世界全体の温暖化ガスの排出量を『2050年までに10年比で少なくとも60%減らす』との新たな長期目標をまとめた。二大排出国である中国や米国のほか、日本を含む中・高所得国に今年3月末までに削減目標を提出するよう促す。高い目標を掲げ、国際的な議論の主導権を握る構えだ。」(『日本経済新聞』2015.02.25)
●「再生可能エネルギーの固定買い取り価格を検討してきた経済産業省資源エネルギー庁の『調達価格等算定委員会』(委員長・植田和弘京大大学院教授)は、15年度の買い取り価格案をまとめた。主に企業向けの事業用太陽光(出力10キロワット以上)は現在の1キロワット時当たり32円を今年7月から27円に引き下げる。過去最大の下げ幅で、制度開始直後の40円の3分の2にまで下落する。…事業用太陽光の買い取り価格引き下げは3年連続。過去2回は4円ずつ引き下げられていた。今年6月までは事業者の利益に配慮する優遇期間であるため、4〜6月の3カ月間は2円高い29円で買い取る。…住宅用の太陽光(出力10キロワット未満)も現在の37円から33円に引き下げる。」(『建設工業新聞』2015.02.25)
●「東京都心部で、庁舎や学校などの公共施設の整備と、市街地再開発事業を一体的に行う開発事例が目立ってきた。老朽化した公共施設の更新に頭を悩ます自治体にとっては、民間主導で実施される再開発事業を通じて、公共施設の再整備を行うことで費用の圧縮が期待できる。3月には豊島区で、区庁舎とマンションを合築した再開発ビルが竣工する予定。中央、港などの都心区でも、区が地権者として参加する再開発事業が始動し、公共施設が入る再開発ビルの具体化を検討する。都心部に立つ公共施設の更新対応が課題となる中、官民連携の再開発案件が今後増えてきそうだ。」(『建設工業新聞』2015.02.27)

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