情勢の特徴 - 2015年3月前半
●「財務省が2日発表した2014年10〜12月期の法人企業統計によると、全産業(資本金1千万円以上、金融機関を除く)の経常利益は前年同期比11.6%増の18兆651億円だった。統計を比較できる1954年以降で最高。自動車や電子部品の販売が好調で製造業も過去最高だった。設備投資は2.8%増えた。7四半期連続の増加だが、伸びは7〜9月の5.5%から縮まった。これまでの経常利益の最高額は消費税率を5%から8%に引き上げる前の駆け込み需要が旺盛だった14年1〜3月の17兆4552億円。10〜12月は円安で企業が海外で稼いだ収益の円換算額が増えたことも金額を押し上げた。前年同期を上回ったのは12四半期連続だ。」(『日本経済新聞』2015.03.02)
●「政府は3日、2020年に電力9社の発送電を分離し、都市ガス3社にも22年に導管部門を分社化するよう義務付ける電気事業法などの改正案を閣議決定した。家庭向けの電気料金を国が認可する規制も撤廃する。電力・ガス市場に異業種が参入しやすくなり、地域独占が続いた約10兆円の家庭向け市場の開放は総仕上げに入る。料金の引き下げやサービスの多様化を促す狙いだ。」(『日本経済新聞』2015.03.03)
●「東日本大震災からまもなく4年を迎える2日、震災復興関連の予算で事業を計画通りに実施できずに使い残した金額が2013年度末までの3年で約3兆円となることが会計検査院の調べでわかった。がれき処理や道路整備は進んだが、地場産業や住宅の再建は人手不足などが壁となり遅れている。『余る予算』は被災地の復興が道半ばであることを示す。 会計検査院によると、3年間で組まれた復興予算は計25兆1009億円で、実際の支出は20兆1211億円。14年3月末時点の予算執行率は80.1%だった。翌年度以降への繰り越し分を除き、使い残しとなる『不用額』は3兆192億円だった。13年度は5兆3023億円の予算に対し、支出が3兆2092億円。執行率は60.5%で3カ年で最低だった。翌年度以降への繰り越しも1兆7762億円に達した。」(『日本経済新聞』2015.03.10)
●「欧州連合(EU)が米アップルなど4社への法人税優遇に関する詳細調査を受け、企業側に本来納めるべき税額を過去にさかのぼって支払うよう求める可能性が出てきた。… アイルランドなど一部のEU加盟国は特定の企業に優遇措置を与え、投資を促してきた。EUは違反を認めた場合、対象の国に対し、優遇措置の是正と、過去にさかのぼっての企業への納税要求を命じるとみられる。」(『日本経済新聞』2015.03.05)
●「地域の金融機関の間で建設業者との取引を拡大する動きが広がっている。東京都港区が拠点の芝信用金庫(對馬守理事長)は、区が発注する工事の請負代金債権を活用して低利融資を行う新制度を4月に開始。これをきっかけに、現在は全体の数パーセントにとどまる建設業向け融資を『2桁台に載せたい』(對馬理事長)という。北海道の北洋銀行も複数の信用金庫と業務提携し、自治体が発注した工事の完成工事未収入債権を流動化する取り組みを進めている。芝信金が始める制度は、請負代金が500万円以上の区発注工事を対象に受注者から請負代金債権を譲り受け、それを担保に1〜2%程度の低利で融資を行う。 金融庁からABL(動産・売掛担保融資)の積極的活用を指導されていることを踏まえ、不動産を担保にした融資に代わる手法を模索する中で、リスクの低い公共工事の代金債権に着目。技術力はあっても資金力に乏しい中小建設会社を支援しようと、区に提案して実現した。港区によると、対象となる工事は年間90件程度。工事の出来高が50%以上となった段階で代金債権の譲渡を請負業者に認める。芝信金は、工事の出来高を外部に委託するなどして査定した上で譲り受けた債権を現金化し、短期の運転資金として融資する。代金債権の譲渡を認める対象を1000万円以上の工事とする国や、新銀行東京が実施する同様の融資制度よりも範囲を広げることで、地域金融機関として一段ときめ細かい支援を行っていく狙いだ。…長く続いた景気低迷から脱してきたとはいえ、地域の建設会社の資金繰りは依然厳しい傾向が続いているとされる。そうした中で、地域の金融機関が公共工事の代金債権を活用した独自スキームによる融資などを行うことで地域産業に貢献しようという動きが今後広がる可能性もある。」(『建設工業新聞』2015.03.09)
●「政府が今国会に提出する第5次地方分権一括法案のうち、国土交通省関係の概要が明らかになった。国の一部の事務・権限を自治体、都道府県の一部の事務・権限を政令市に移譲するために関係する19本の法律を一括して改正。国交省関係では建築基準法と都市計画法の各一部を改正する。与党内の調整を経て20日の閣議決定を目指す。今国会で成立すれば来年4月1日に施行する。国交省関係では、建築基準法を見直し、都道府県知事の同意が必要だった市町村による建築主事の設置を知事との協議だけで済むようにする。建築確認審査請求の採決などを行う建築審査会委員の任期を自治体が条例で独自に決められるようにする。現在の任期は建築基準法で一律に2年と定められている。」(『建設工業新聞』2015.03.11)
●「改正公共工事品質確保促進法(品確法)の運用指針に基づく発注関係事務の定着・実行に向け、すべての市町村を構成員に含む協議会組織が、全都道府県単位で設置完了した。各地方ブロックに設けられている地域発注者協議会の下に、県部会のような組織を置いて情報交換を密にし、地域の実情に応じた共通課題への対応や各種施策の一体的な推進を図る。2015年度から、運用指針をすべての公共発注者に根付かせ、受注者が適正な利潤を確保できる予定価格の設定などを促す。」(『建設通信新聞』2015.03.03)
●「札幌市は、14年12月末現在の本年度入札契約状況をまとめた。14年4〜12月に発注した工事の平均落札率は91.1%と前年同期に比べ0.1ポイント上昇したが、委託業務は76.1%で同1.4ポイント低下した。全入札件数に対するくじ引き発生率は工事が33.9%、業務が85.8%となり、前年度末実績と比べ、それぞれ3.6ポイント、11.0ポイント上昇。工事、業務とも最低制限価格と同額でのくじ引きが9割を超えている。」(『建設工業新聞』2015.03.05)
●「公共施設の統廃合や縮小を進める計画に基づき、施設を解体するための財源として地方債を発行する地方自治体が増え始めた。総務省が昨年創設した『除却債制度』を活用。2月までに新潟県や横浜市、高松市など10団体が起債を申請した。解体するのは職員宿舎やスポーツ施設、中学校、社会福祉施設などと幅広く、起債額は総額22億円に上っている。起債による解体は来年度以降も右肩上がりで増えるとみられている。全国で解体工事の需要増が見込まれるほか、解体後の用地を民間に売却して新たな開発に発展するケースも出てきそうだ。」(『建設工業新聞』2015.03.10)
●「国土交通省は11日、土木工事積算基準の改定内容を発表した。20年ぶりに一般管理費等率を見直すとともに、下請企業への十分な外注経費を手当てするため、現場管理費率も改める。工事価格3億円の道路工事をモデルケースとした場合、予定価格は3%程度上昇するという。また、大都市以外の市街地(DID)における補正係数の改定や標準歩掛の新規制定、施工パッケージ型積算方式の拡充なども行う。土木工事共通仕様書には、適正な請負代金での下請契約締結など受注者責務を追記する。一連の改定により、“改正品確法対応型”の積算基準が誕生する。受注者が中長期的な担い手の育成・確保に要する適正利潤を得られるよう、市場価格や施工実態を的確に反映した予定価格が設定できる環境を整える。入札期限が4月1日以降の工事から適用開始する。」(『建設通信新聞』2015.03.12)
●「11日に開かれた政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で、民間議員が公営住宅や有料道路、空港、上下水道などの公共施設について、整備や維持管理、更新を行う際はPPP・PFIを原則化するよう提言した。PPP・PFIを拡大する観点から、公共事業の補助金や交付金を見直すことも提案した。」(『建設工業新聞』2015.03.13)
●「東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県で、労災による昨年1〜12月の死亡者は少なくとも計76人に上り、年間では震災のあった2011年以降で最悪となったことが、3日分かった。死傷者の合計は10年に比べ13%増え、建設業に限ると56%多かった。復興工事の本格化で経験の浅い作業員が増えたのに対し、事故防止策が追いついていないのが要因。3県内の労働局が昨年12月に立ち入り検査した建設現場では、過半数に安全上の法令違反があり、是正を求めている。」(『日本経済新聞』2015.03.03)
●「厚生労働省は5日、建設工事現場の足場からの墜落事故防止措置を強化する改正労働安全衛生規則(安衛則)を公布した。足場の組み立て・解体・変更作業時に事業者が講じる墜落防止と飛来・落下防止措置の対象を、現行の高さ5メートル以上から高さ2メートル以上の構造の足場にまで拡大した上で、安全帯を安全に取り付ける設備の設置と安全帯の使用を義務化する。足場の組み立てなどの作業に就く労働者に特別教育の受講も義務付ける。7月1日に施行する。」(『建設通信新聞』2015.03.06)
●「日本建設躯体工事業団体連合会(日躯体、才賀清二郎会長)は5日に理事会を開き、東京建設躯体工業協同組合のプロジェクトチームが検討してきた『鳶土工従事者適正賃金の検証と提言』を承認した。土工におけるコンクリート圧送・打設作業の特殊性を評価する公的資格の整備を提案したほか、社会保険加入に向けた法定福利費の別枠明示に取り組む重要性を示した。今後、提言書を日本建設業連合会と全国建設業協会などに提出する。 提言では、元請けが下請けへの発注の根拠として使用している元請別の実質労務平均単価を東京躯体工業協同組合が調査し、検証した結果、『(東京躯体が調査した)実質賃金とほぼ一致する金額であることが裏付けられた』と指摘。この単価が鳶工、土工ともに全産業平均を大きく下回っているため、改善に向けた取り組みの必要性を訴えた。土工は公共工事設計労務単価上、特殊作業員や普通作業員、軽作業員のいずれか作業内容に応じて単価が決まる。ただ、元・下請負契約では、肉体的負担の大きいコンクリートを打設する作業員が軽作業員と同等に評価されているという。コンクリート打設工の特殊性を示す公的資格がないことが要因の1つになっていることから、コンクリートに関係する国家資格である『圧送技能士』と圧送車両系建設機械の技能講習・特別講習の適用範囲を圧送と一体的に実施する土工にも拡大し、『コンクリート圧送施工・打設施工技能士』といった名称で公的資格化するよう提案した。」(『建設通信新聞』2015.03.06)
●「日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)の労働委員会(今井雅則委員長)は5日、『社会保険の加入促進に関する実施要領』を決めた。下請企業の会社・労働者単位での社会保険加入を促すため、作成が義務化されていない工事でも施工体制台帳を活用したり、加入状況欄を設けた作業員名簿を使用したりする方策を打ち出した。法定福利費が内訳明示された見積書の提出を見積もり条件にすることも盛り込んだ。会員に周知し、取り組みを促す。日建連は、国と歩調を合わせた社会保険未加入対策の一環として1月に『社会保険加入促進要綱』を決定。実施要領は、要綱に基づく会員企業の取り組みの実効性を高める狙いでまとめた。4月1日から適用する。…実施要領は▽社会保険加入の指導と徹底▽適正な法定福利費の確保▽雇用と請負の明確化(偽装請負の排除)▽適用――で構成する。会員会社は、下請の企業・労働者単位での社会保険加入徹底を社長通達などで周知。元下請契約を結んだ後は、施工体制台帳や再下請負通知書で下請の加入状況を確認し、未記載の場合は再提出を指導する。台帳作成が義務化されていない工事でも加入を確認する。作業員名簿で労働者の加入状況をチェックする考えも示し、加入状況欄を設けた名簿の使用を『徹底するよう指導する』とした。加入は保険者番号の一部などで確認し、その書式も示した。作業員名簿は法令では作成を求めていないが、積極的な活用を促すという。法定福利費をめぐっては、下請の労働者が社会保険に適正加入できる金額での契約を発注者と締結することをうたった上で、法定福利費を内訳明示した見積書の提出を1次下請との見積もり条件にする。元下請契約の順序、法定福利費を精査する際の留意点、保険料の算出方法も示した。社会保険の適用除外者などに関する規定も設けた。職業安定法や労働者派遣法連反がかく、『偽装請負』でないことが明確な場合に限り、個人事業主や一人親方などは、法定福利責の内訳明示の対象から除外する。」(『建設工業新聞』2015.03.06)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、植村芳輝議長)は9月、14年12月に行った企業の雇用実態に関する調査の結果を発表した。前年の調査時に比べ全従業員数が増加したと回答した加盟組合が54%(前回40%)と過去5年で最も多くなった。1年後の増加を見込む組合も半数を超え、建設需要拡大で従業員の拡充に前向きな企業が多いことをうかがわせた。新卒者に占める女性総合職の割合は前回より4ポイント高い10%と、調査を始めた06年以降で初めて2桁になった。」(『建設工業新聞』2015.03.10)
●「東日本大震災から11日で4年が経過した。被害が大きかった東北沿岸部では災害公営住宅の建設など復興事業の本格化とともに市町村の業務が増え、職員の不足が深刻となっている。岩手、宮城、福島3県で足りない職員数は3月上旬時点で計276人に上り、必要な人数の1割に相当する。2015年度はさらに不足数が膨らむ見通しで、まちづくりなど復興事業が滞る懸念も浮上している。」(『日本経済新聞』2015.03.11)
●「厚生労働省が11日発表した2月の労働経済動向調査によると、従業員が『不足している』と答えた事業所の割合から、『過剰』を引いた労働者過不足DIは正社員で2014年11月より9ポイント高い31となり、比較できる1999年2月以降で最高となった。景気回復を受け製造業、運送業、医療など幅広い業種が少子化で細る人材を奪い合っている。同調査は3カ月ごとに行っている。これまでの最高は07年2月の29だった。」(『日本経済新聞』2015.03.12)
●「政府は13日、派遣社員に同じ仕事を任せる期間の制限を事実上なくす労働者派遣法の改正案を閣議決定し、国会に提出した。企業は派遣社員を活用しやすくなる。同時に派遣社員が雇用上の不利益を被らないように、派遣会社に対して派遣社員が期間終了後も働き続けられるように対応することを義務づけた。9月1日の施行を目指す。ただ野党は『一生派遣につながる』として強く反対し、これまで2回廃案になっている。…現在、企業が派遣社員に同じ仕事を任せられるのは原則3年まで。改正案では3年ごとに人が入れ替われば、派遣社員に同じ仕事を任せられる。通訳など『専門26業務』で期間の制限を除外する特例も廃止する。」(『日本経済新聞』2015.03.14)
●「全国中小建設業協会(全中建、松井守夫会長)は2月27日、人材確保・育成対策を進めるに当たって会員に行った実態調査結果の全容を明らかにした。1080社が回答。健康、厚生年金、雇用の社会保険加入率は会員会社の技術者・技能者とも94%以上(最高98%)、1次下請の技術者・技能者は80%後半に達していた。予定価格を根拠なく切り下げる歩切りは、13年度の工事の中では国関係で少なくとも2機関あり、町村の工事の中には歩切りの幅が20%に達したという回答もあった。調査は会員約2400社に対し14年10〜11月に実施した。回収率は45%。回答企業のうち、資本金1000万円以上5000万円未満が77%、従業員10〜50人が59%、完成工事高1億円以上10億円未満が63%となっている。業種別内訳は土木53%、土木・建築39%。」(『建設工業新聞』2015.03.02)
●「全国中小企業団体中央会がまとめた1月末の中小企業景況調査によると、建設業を含む全業種の景況DI(好転から悪化を引いた値)は、前月比4.3ポイント悪化のマイナス30.9となった。うち建設業の景況DIは、0.8ポイント低下のマイナス11.0となり、6カ月連続して悪化した。2014年9月まで16カ月続いたDIのプラスが同年10月にマイナスに転じてから、4カ月連続してマイナスのDIとなっている。建設業の主要3指標をみると、景況のほか『売上高』は、4.6ポイント悪化のマイナス13.1、『収益状況』が2.0ポイント悪化のマイナス16.1。建設業の『資金繰り』は3.3ポイント低下のマイナス6.7だった。8カ月続けてマイナスのDIとなっている。」(『建設通信新聞』2015.03.03)
●「国土交通省が、『管路更生事業』を建設業法の許可業種として追加できるか検討している。日本管路更生工法品質確保協会(前田正博会長)の要望に対応したもので、昨年7月、国や自治体、下水道関係の業界団体の実務者でつくる下水道管路更生工事の業種新設に関する検討会を立ち上げ、業法規定の観点から業種追加の可否を議論している。ただ、さまざまな工法かある更生工法には統一した資格がなく、まずは共通資格制度を確立して品質確保のベースをつくることを優先すべきだとの意見もある。同協会は、各種更生工法の普及を目指した15協会(28工法)の連合組織で、傘下会員数は3221社に上る。管路の老朽化で今後更生工法のニーズ拡大が予想される中、多くの企業の参入による競争の激化、技術を熟知していない企業による施工不良が懸念されるとして、許可業種への追加による健全な市場の形成を図りたいとしている。」(『建設工業新聞』2015.03.06)
●「国土交通省は3日、15年度に作る東京圏の次期都市鉄道整備計画で、2020年東京五輪の開催をにらみ、羽田・成田両空港とのアクセス鉄道を優先的に整備する路線として位置付ける方針を固めた。具体的な対象路線は未定だが、昨年8月にJR東日本が発表した東京など3駅と羽田空港を結ぶ新路線などが有力とみられる。東京都心とのアクセス改善を重視してきた空港アクセス鉄道整備の進め方も見直し、都心部以外とのアクセスの改善も重視する方向だ。」(『建設工業新聞』2015.03.04)
●「国土交通省は3日、東京や大阪といった大都市の今後10年の再生戦略作りに乗りだした。大都市共通の課題として経済成長に貢献する都市開発や大規模災害に対する防災・減災対策の強化、急増する高齢者人口への対応などを列挙。にぎわいや良好な景観の創出に貢献する官民連携での緑地などの整備も課題に挙げた。これらの課題に対応する新たな対策や現行施策の見直し策を探る。7月に戦路をまとめ、16年度予算の概算要求や税制改正要望に反映させる。大都市の再生戦略作りは、同日発足させた有識者会議『大都市戦略検討委員会』(座長・奥野信宏中京大理事)が担当する。…初会合では、最初に国内の大都市に共通する主な課題として、▽官民連携による緑やオープンスペースの創出▽公共施設の効率的な管理▽高齢者が暮らしやすい住宅などの機能・配置▽人口減少を前提として鉄道沿線街づくり▽空き家・空きビル・空き地の有効活用参画▽頻発・激甚化する降雨への防災・減災対策▽オフィス街の電源自立化・多重化―などを列挙。それぞれ現行の施策を再検証し、必要に応じ内容を見直したり、新たな施策を整備したりすることにした。」(『建設工業新聞』2015.03.04)
●「国内で都市の国際競争力を取り戻すための再開発が広がってきた。三井不動産と東京建物は2017年度からの東京駅八重洲口の再開発に6千億円超を投じる。国の規制緩和策の『国家戦略特区』を使い地上約50階の超高層ビルを2棟建てる。アジアの都市間競争が激しくなるなかインフラ機能を高めてグローバル企業を誘致する。経済活性化を後押しする動きにつながりそうだ。政府は昨年、成長戦略の一環として国家戦略特区を導入し東京圏など全国6地域を第1弾に選んだ。外資系企業の誘致などで『国際ビジネス拠点』を目指す東京圏でも、詳細な事業内容となる区域計画のとりまとめが進んでいる。具体的には大規模ビルを建てやすくして外資系企業に選ばれるオフィスや高級ホテルを誘致する。文化施設の整備なども後押しする。」(『日本経済新聞』2015.03.05)
●「2020年に開催する東京五輪に向けて、東京都が臨海部の晴海地区に整備する選手村の事業協力者に、三井不動産や三菱地所、住友不動産など10社前後で構成する大手デベロッパー連合が名乗りを上げていることがわかった。大会後、選手村は民間住宅に転用し、中心部には2棟の超高層マンションを建設するなど大規模再開発を実施する方針が決まっている。総事業費が数千億円に達するプロジェクトを有力企業が結集して推進する。…選手村は晴海地区の都有地に整備する。敷地面積は約13万4千平方メートル。選手が宿泊する22棟の中低層施設は、大会後に改修して民間住宅として売り出す。このほか超高層マンション2棟や大規模商業施設などを新設する。選手村の建設費は五輪招致時の試算で1057億円。マンションの建設費など新しい街づくりに伴う費用も加わり、総事業費は大きく膨らむ。1社で担うには投資額が大きく、6千戸を売り切るにはリスクも伴うため、大手各社が異例のタッグを組むことになった。」(『日本経済新聞』2015.03.06)
●「大都市部の高経年マンションでも“限界集落化”――。旭化成不動産レジデンスがまとめた、高経年マンションにおける区分所有者とコミュニティーの高齢化などの実態調査結果で、建替え前のマンションの空き家率は『24%』にも上り、区分所有者の年齢は60歳以上が『70%』を占めるなど、過疎地で起きている“限界集落化”と呼ばれる現象が大都市部の高経年マンションでも発生している実態が明らかになった。調査は、同社マンション建替え研究所が実施。同社参画の建替えマンションの中で、従前戸数が50戸以上のマンションの中から6棟(従前戸数ベースで計704戸)を対象に、社内資料やマンション建替法に関する書類をもとに、建替えマンションにおける『空き家率』の詳細や、区分所有者の『年齢』や『世帯構成』『再建後の再取得率』などを分析した。…今回調査した6つのマンションは、『東京都内か横浜市内と利便性の高い立地であることを考えると、24%という空き家率の高さは深刻』(同社)としている。 また、再建前のマンションに居住していた区分所有者の再建後の取得率は、75歳以上で70%以上と高いことが判明。一方、転居した高齢者は、長い仮住まいや引越しの不安など、心情的な抵抗が理由であることも分かった。高経年マンションにおける高齢者問題は近年、さまざまな議論がなされ、空き家問題も社会問題となりつつある。」(『建設通信新聞』2015.03.09)
●「国土交通省は6日、今後10年の国や地域づくりの基本方針となる国土形成計画(全国計画)の改定に向けた中間案をまとめた。人口減少や少子高齢化、巨大災害やインフラの老朽化といった喫緊の課題に対応。地域間で人や物がより活発に行き交うようにする『対流促進型国土』の形成と、都市・地域の強靭化やコンパクト・ネットワーク化を大きな方向性に据えた。今夏の閣議決定を目指す。中間案は、3大都市圏(東京、大阪、名古屋)や地方都市の人口規模に応じてそれぞれ整備方針を設定。国内外からの投資を誘発するため、利便性の高い職住機能が近接したビルの開発や、災害の被害を抑えるインフラ整備を進める。リニア中央新幹線の開業を契機に3大都市圏をつないで世界最大級の巨大都市圏とする『スーパー・メガリージョン』の形成を目指す。人口の減少ペースが大都市より早い地方都市では、人口規模にかかわらず、郊外に拡散した職住機能を中心市街地に集約する『コンパクトシティー』づくりを推進。…県庁所在地などに当たる人口数十万人以上の地方都市は、成長産業や人と物が集積する拠点とし、救急救命センターや大手飲食チェーン店など大都市と同じような規模の都市機能を集積。大都市への人口の流出を抑える。10万人程度の地方都市は一定のサービスを提供できる都市機能を集積しつつ、近隣の他都市と交通ネットワーク網を強化して効率的な機能配置を図る。」(『建設工業新聞』2015.03.09)
●「1万8000人以上の死者・行方不明者を出した2011年3月11日の東日本大震災から11日で4年を迎える。未曽有の被害を受けた東北の被災地では道路や鉄道など基幹インフラの復旧が進展。津波被害を教訓にした土地のかさ上げや高台移転も形が見え始めた。復興が次の段階へ進む中、国土交通省は各地域の課題を細かく把握しようと自治体や建設業界との意見交換を進めている。集中復興期間(11〜15年度)後の財源をどう確保するかも今後の課題だ。…PPP、CM、一括審査方式、大ロット化…。早期復興という共通目標に向け官民が協力して取り組んだ新たな試みは、災害時に限らず事業の円滑執行に効果を発揮するとみられている。被災地でこれから本格化するのが災害公営住宅をはじめとする住まいの再建や病院、学校などの復興だ。災害公営住宅は、住まいの工程表に基づき、14年度中に約1万戸が完成するところまできている。住宅以外の建築工事も円滑に進むよう、国交省は実勢を的確に反映させる積算方法の普及にも取り組む。沿岸市町村がそれぞれ抱える課題を把握し、必要な手だてを講じていこうと、国交省は現在、副大臣や政務官をはじめ幹部が直接被災地に入り、精力的に意見交換を進めている。対象は約30市町村。11日時点で3分の2が終わり、月内にすべての意見交換を終わらせる予定だ。」(『建設工業新聞』2015.03.11)
●東日本大震災の発生から4年。警察庁によると、10日現在の死者数は12都道県の1万5891人。岩手、宮城、福島各県を中心に2584人が今も行方不明である。復興庁によると、震災後の傷病悪化による「震災関連死」は3県で計3139人となり、6割近くを東京電力福島第1原発事故が起きた福島県が占める。避難者は全国で約22万9000人(2月12日現在)。県外への避難は福島が4万7219人、宮城7198人、岩手1589人。プレハブの仮設住宅で暮らす人は3県で計8万1000人(1月末現在)。一方、完成した災害公営住宅は5000戸余りで、計画総数の2割にも達しない。(『しんぶん赤旗』2015.03.11より抜粋。)
●「東京都心部のオフィス空室率が20カ月連続で低下した。オフィス仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が12日発表した都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の2月の平均空室率は5.31%と前月比0.05ポイント低下した。大規模ビルが完成し新築の空室率は上がったが、既存ビルの空室が減り、全体の空室率を押し下げた。企業の移転や増床需要は底堅い。」(『日本経済新聞』2015.03.13)
●「東日本大震災の発生から4年が経過し、被災者が入居する災害公営住宅や復興住宅の整備もようやく本格化し始めている。ただし、内閣府の調べでは今年1月現在で未だ約20万人が仮設住宅に入居(公営住宅等6993戸、民間住宅41531戸、仮設住宅39111戸)している状況。災害公営住宅の整備は平成26年度末までの累計で岩手県が計画の3割(概ね1600戸)、宮城県が4割(概ね6200戸)、福島県は4割弱(概ね2100戸)に止まる。民間住宅用の宅地の整備も2015年度末までで計画の4〜5割程度の見通し。仮設住宅に5年以上居住する被災者が2万人以上にのぼるとの推計もあり、住まいの復興の加速化が求められる。」(『日本住宅新聞』2015.03.15)