情勢の特徴 - 2015年5月後半
●「安倍晋三首相は21日、今後5年間で約1100億ドルの投資をアジアに提供する、『質の高いインフラパートナーシップ』を進める考えを明らかにした。この取り組みが触媒になって、アジアヘ世界中から民間資金やノウハウが流れ、質・量ともに十分なインフラ投資を実現することが狙い。同日開かれた『アジアの未来』(日本経済新聞社主催)晩さん会で公表した。」(『建設通信新聞』2015.05.22)
●「経済財政諮問会議の民間議員は19日、人口20万人以上の自治体で上下水道や空港などを整備・運営する際にPFI(民間資金を活用した社会資本整備)の導入を原則とする提案をする。国運営の空港などの運営権の売却は、2022年度までに事業規模で12兆円とする現行目標を引き上げる。防災・安全対策の長期計画を策定した自治体に交付金を重点配分する提案も打ち出す。」(『日本経済新聞』2015.05.17)
●「国土交通省は15日、2015年度に創設した『地域建設産業活性化支援事業』のうち、担い手の確保・育成や生産性の向上につながるモデル性の高い取り組みに対し、最大300万円まで助成する『ステップアップ支援』の対象案件募集を始めた。2社以上の中小・中堅建設企業や建設関連企業(測量、建設コンサルタント、地質調査)から構成されるグループを対象に、6月30日まで提案を募る。8月末をめどに、全国で20件程度を採択する。…国交省では合同OFF−JT(職場外教育訓練)や多能工の育成、繁閑調整、独自資格制度の構築、新技術・新素材の開発、週休2日の実現を目指した工程管理の改善などを支援対象としてイメージしている。事業成果は来夏をめどに事例集にまとめ、広く発信する。」(『建設通信新聞』2015.05.18)
●「仙台空港を巡り、国に所有権を残したまま民営化する『コンセッション』の手続きが遅れている。運営権の売却先選びについて5月19日としていた2次審査の提出期限が順延になる見通しとなった。2016年3月下旬としていた民間の運営開始がずれ込めば、応募した民間企業や国の関連のコストが増える可能性がある。…国交省は1次審査で『1者以上3者程度』にするとしていた。4グループが残ったため、当初の予定よりも時間がかかっているもよう。2次審査の提出期限は夏ごろに延びるとの見方もある。」(『日本経済新聞』2015.05.19)
●「国土交通省は、監理・主任技術者の配置を求める建設工事の金額要件を引き上げる。引き上げは1994年以来となる。ここ数年の物価上昇や消費増税によって技術者の配置を求める対象工事は実質的に拡大している。引き上げによって現在より対象工事が少なくなり、技術者の効率的配置や受注機会の拡大につながりそうだ。19日に開いた建設産業活性化会議(座長・北川イッセイ副大臣)で明らかにした。金額要件を定めた政令を今秋をめどに改正する。具体的な引き上げ幅や施行時期などは今後詰める。」(『建設工業新聞』2015.05.20)
●「石川県加賀市は、2016年4月から公契約条例を施行する方針だ。条例化までのスキームは内部で検討中だが、北陸初の試みに今後注目が集まりそうだ。宮元陸市長は市長就任時のマニフェストの1つとして、『持続可能なものづくり技術の集積地を目指す』ことを掲げている。そのうち、労働環境の改善では『市が業務を発注する際には、一定額の最低賃金の保証やワークライフバランスなどに取り組む企業を優先して発注するよう、公契約条例を制定する』意向を示している。」(『建設通信新聞』2015.05.21)
●「国土交通省は、官庁施設の長寿命化対策を強化する。一定エリア内にある官庁施設を群として最適利用する取り組みに加え、個別施設の耐震性能や劣化状況、修繕履歴を記録する『施設カルテ』の運用を開始した。財源の制約がある中で既存施設の長寿命化と徹底的な利活用は社会的な要請事項の1つ。群と個の両面から既存ストックの利活用を図っていくことで、トータルコストの縮減と予算の平準化を目指す。」(『建設通信新聞』2015.05.22)
●「国土交通省は27日、2016年度新営予算単価を決定した。最新の労務単価や資材価格などを反映させた結果、庁舎に関する単価の全体平均は、前年度より3.9%増加した。14年度の6.5%増、15年度の7.0%増に続き、3年連続の上昇となった。」(『建設通信新聞』2015.05.28)
●「国土交通省は、公共発注機関が入札時の予定価格を根拠なく引き下げる歩切りの早期根絶をはじめ、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)など担い手3法の着実な運用を都道府県と申し合わせる方向で調整に入った。都道府県の担当者が集まる15年度上期ブロック監理課長等会議(全8カ所)での合意を目指し、呼び掛けを始めた。初回の北海道・東北地区(25日、仙台市)では、1道6県の担当者と管内市町村が歩切りを速やかに見直すよう支援していくことを申し合わせた。」(『建設工業新聞』2015.05.28)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、植村芳輝議長)が加盟組合員約1万人を対象に行った『2014時短アンケート』(詳細版)によると、1カ月の平均所定外労働時間は58.3時間(前年63.1時間)で、10年ぶりに60時間を下回った。ただ外勤建築系職員は82.3時間(87.3時間)、外勤土木系職員は79.7時間(82.5時間)と長時間労働が常態化。外勤者の3割は100時間以上に達し、休日の所定外労働時間が長かった。」(『建設工業新聞』2015.05.19)
●「国土交通省は、建設業の作業員に共通番号(ID)を付与し、建設現場での経験や保有資格の情報を蓄積する業界統一の『就労履歴管理システム』を早期に構築する方針を決めた。国が旗振り役となり、建設業関連団体、有識者などで構成するコンソーシアムを今夏にも立ち上げ、運営主体など具体的な検討に入る。19日に開かれた建設産業活性化会議(座長・北川イッセイ副大臣)で合意した。」(『建設工業新聞』2015.05.20)
●「国土交通省は、5年ごとの建設業許可更新時に実施している社会保険の加入指導を前倒し実施する。まず大臣許可と都道府県知事許可業者の中から、16年1月以降に許可更新期限を迎える社会保険未加入業者を抽出。加入を指導する文書(通知)を同省から対象企業すべてに今秋送付する。厚生労働省への通報時期を現在よりも早め、すべての未加入許可業者の通報を17年度に完了させる。許可業者の100%加入に向け、未加入対策を一段と徹底する狙いだ。」(『建設工業新聞』2015.05.21)
●「命あるうちに解決を」―。建設現場でのアスベスト(石綿)被害に対し、国と製造企業の責任を問う首都圏建設アスベスト訴訟統一本部は22日、早期解決を求めて全国総決起集会を東京・日比谷野外音楽堂で開いた。全国建設労働組合総連合が後援し、会場いっぱいの約3500人が参加した。第1陣の提訴から7年が経過した同訴訟では500人を超える原告のうち、解決を待たずに114人が亡くなっている。主催者あいさつした統一本部長の人見大(たかし)さんは、「毎年、アスベストでの労災認定者が千人を超え、被害は広がっている」と早期解決を強調した。(『しんぶん赤旗』2015.05.23より抜粋。)
●「失業者の就職や就業者の処遇改善を支援するため厚生労働省の『地域人づくり事業』のうち、建設業向けの事業が14年度で101事業(約26億円)に上ったことが国土交通省のまとめで分かった。42の都道府県が事業を実施。若年者を期間雇用し、集団訓練や企業実習を行った人数は全国で823人だった。本年度は地方創生に向けた政府の新交付金に引き継がれ、建設業向けの事業を8県が予定している。」(『建設工業新聞』2015.05.25)
●「建設産業の担い手不足に対する懸念が強まっている中、高等学校での土木教育の充実と若手技術者の育成を目指し、全国高等学校土木教育研究会(全土研、会長・橋本基宏神戸市立科学技術高校校長)が8月に東京都内で全国大会(総会、研究協議会)を開催することになった。全国160校以上から土木系教員らが参加する予定で、全土研が全国大会を開くのは20年ぶり。高校で土木工学を学ぶ生徒や一般市民らの参加も見込み、これからのインフラ整備を担っていく若年技術・技能者の育成などをテーマに協議する。」(『建設工業新聞』2015.05.28)
●「道路舗装上場8社の2015年3月期決算(単体)は、不採算工事の減少や業務の効率化による採算性向上の取り組みが奏功し、6社が完成工事総利益(工事粗利)率を伸ばし、工事利益の改善傾向が鮮明になった。民間設備投資の緩やかな増加基調や公共投資の堅調な推移による良好な受注環境を背景に、前期に引き続き過去最高の利益を確保した社も複数ある。ただ、労務や資機材、アスファルト原材料の値上げなどの利益圧迫要因も見込まれるため、16年3月期の通期予想は控えめの設定が目立つ。」(『建設通信新聞』2015.05.18)
●「主要ゼネコン26社の15年3月期決算が15日出そろった。本業のもうけを示す営業損益で25社が前期を上回った。工事採算を示す完成工事総利益(粗利益)率は、回復が先行する土木事業に、ここ数年、労務・資材費の高騰で苦戦を強いられた建築事業の改善も加わり、22社が前期を上回った。16年3月期の粗利益率は、多くの企業がさらに改善するとみている。」(『建設工業新聞』2015.05.18)
●「建設用鋼材の市中価格下落が幅広い品種に広がっている。建物の補助部材に使う軽量形鋼や床用鋼板が年初から2%程度値下がりした。商業施設向けの需要回復が遅れている。アジアから安い輸入鋼板が猟人し、材料コストの下がった1部メーカーが製品の値下げに応じている。」(『日本経済新聞』2015.05.27)
●「住宅各社が中古住宅の賃貸や売買の活性化に動き始めた。大和ハウス工業は高齢化などを理由に住まなくなった自宅を貸し出しやすくするための家賃保証サービスを導入する。ミサワホームはグループで分散していた物件情報を集約し、利用者が探しやすくした。人口減に伴い社会問題化している空き家を減らす取り組みがメーカー側にも広がってきた。 大和ハウスは住宅メーカーなどが設立した一般社団法人の移住・住みかえ支援機構と組み、過去に自社が販売した住宅を貸し出しやすくする。住人が高齢者施設に移るなどの理由で自宅を貸したい場合、機構が借り上げ、子育て世代などに転貸する。…ミサワホームは関東の4つのグループ会社が手がけてきた中古住宅の買い取り再販の事業を新会社に統合した。…積水ハウスは三井住友トラスト不動産や綜合警備保障(ALSOK)と組み、空き家の売買・管理の支援体制を強化。…住友林業は2015年度に売買仲介子会社の店舗を首都圏で5店増やす。バナホームも奈良県の老朽戸建て団地の改修や賃貸・売買の仲介支援に乗り出した。」(『日本経済新聞』2015.05.23)
●「昨年の臨時国会で議員立法で成立した空き家対策特別措置法が26日に全面施行される。地域の景観や治安に支障を来す空き家の増加に歯止めを掛けるため、市町村が所有者に除却・修繕命令などの強い権限を行使できるようになるのが最大の特色。国土交通、総務両省は同日、施行に合わせ市町村による空き家対策の留意点をまとめた指針を決定。国交省は15年度に拡充した空き家対策への財政支援制度の活用も促進して空き家の早期解消を目指す。」(『建設工業新聞』2015.05.26)