情勢の特徴 - 2015年6月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「復興庁は3日、16〜20年度の東日本大震災の復興事業で、被災自治体に事業費の1.0〜3.3%の実質負担を求める方針を固めた。被害が大きかった東北3県(岩手、宮城、福島)の自治体の負担総額は約300億円に上る見込み。復興事業費は国が全額負担してきたが、高台移転などの『基幹的事業』や福島第1原発事故に伴う福島県内の除染事業などを除き、自治体に一部負担を求める方針に転換する。…復興庁によると、16〜20年度に東北3県の自治体が負担する約300億円の県別内訳は、福島約100億円、岩手約70億円、宮城約50億円。残りは3県の市町村が負担する。自治体に財政負担を求める主な事業は、震災復輿としての優先度が低い国の直轄で行う道路や港湾、河川の整備をはじめ、自治体が社会資本整備交付金の復興枠や東日本大震災復興交付金の効果促進事業を活用して行うインフラ整備など。…一方、全額国費負担を継続する事業には、市街地の高台移転や災害公営住宅の建設といった基幹的事業をはじめ、原発周辺12市町村が行う除染などを列挙。自民党からの提言を踏まえ地元の要望が強い青森と宮城を結ぶ三陸沿岸道路(延長359キロ)の整備や、福島県いわき市が原発事故を踏まえ循環型社会形成推進交付金を活用して行うごみ処理施設の建設も対象とする。」(『建設工業新聞』2015.06.04)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、新たな入札契約方式の導入を目指す地方自治体を支援した14年度の『多様な入札契約方式モデル事業』の成果をまとめた。除雪の持続的な受注体制整備や市街地での難工事、大量に生じる補修工事の発注事務など地域がそれぞれ抱える課題を解決するスキーム提案まで踏み込んだ。設計・施工一括(DB)発注方式の効果を引き出すため、設計条件整理など発注前の支援業務を別途発注する方法も考案。担い手確保など課題に合わせたオーダーメードの入札契約方式を組み立てた。」(『建設工業新聞』2015.06.01)
●「東京都渋谷区や札幌市、仙台市など全国で360の自治体が2015年度に公共施設の統廃合や用途変更・解体を実施する。4月から老朽化した公共施設のリストラに国の財政支援が得られるようになったのがきっかけだ。人口減少に対応して施設の用途を変更し、利用度の高い機能に絞る。施設の維持管理コストを抑えて財政健全化につなげる。」(『日本経済新聞』2015.06.03)
●「政府は2日、産業競争力会議・国際展開ワーキンググループ(WG)の第2回会合を開いた。テーマは海外都市開発を通じたインフラシステム輸出の拡大。海外の広域開発のプロジェクトに参画していくには、政府、自治体、企業といった官民が、現地の官民と連携して取り組む必要があるため、質の高い貢献を目的に、事業の構想段階から関与する体制を強化していくことで一致した。」(『建設通信新聞』2015.06.03)
●「国土交通省は3日、社会資本整備審議会と交通政策審議会交通体系分科会計画部会の合同会議(部会長・金本良嗣電力広域的運営推進機関理事長)を開き、社会資本整備重点計画の見直しに当たっての方向性を提示した。特に社会資本整備が民間投資を喚起する『ストック効果』を重視する姿勢を強調。インフラ投資の増大が民間投資を呼び込む“クラウディング・イン”が改定に向けたポイントになっていきそうだ。国交省は、見直しの根底にある基本的な考え方として、近年、社会的なニーズが高まっているインフラ老朽化対策の充実・強化に加え、切迫する巨大地震や8月に広島市で発生した大規模土砂災害など激甚化する気象災害への対応、人口減少に伴う地方の疲弊、激化する国際競争という4つの『危機』への対応を柱に据えた。メーンストリーム(政策の主流化)に位置付ける『戦略的メンテナンス』と『既存ストックの有効活用(賢く使う)』で、防災・減災の実現や地方経済を支えるインフラの安全確保、メンテナンスコストの縮減を両立させる。」(『建設通信新聞』2015.06.04)
●「防衛省は、民間の企業に勤務しながら有事の際に出動する『予備自衛官』を工事現場の技術者や技能者として活用する建設業者を、同省が総合評価方式の入札で発注する工事で加点評価する取り組みを7月に始める。工事の元請業者が現場に配置する技術者だけでなく、下請業者に所属して施工を担う技能労働者も評価の対象とする。…対象は、自衛隊の駐屯地や基地、演習場内で行われる工事で、予定価格がWTO政府調達協定の適用基準額(6億円)未満の案件。」(『建設工業新聞』2015.06.10)
●「総務省は、地方自治体が所有する老朽化した公共施設の統廃合を加速させるため、統廃合の特別予算枠を創設したり、利用者1人当たりの行政コストを比較して統廃合の対象施設を絞り込んだりする自治体への支援に乗りだす。固定資産台帳や財務書類のデータを活用して予算編成に取り組むことを条件に設定。支援対象となるモデル自治体を今月中に3団体程度選ぶ。モデル自治体の取り組みを契機に、老朽施設を解体、建て替え、集約する流れを全国に広げる狙いだ。」(『建設工業新聞』2015.06.11)
●「東北地方整備局は、若手技術者の確保と職場環境の改善を図る狙いから、建設現場での完全週休2日制を試行的に導入する。仙台河川国道事務所発注の工事3件と、北上川下流河川事務所発注の工事1件が対象。土日の完全閉所によって生じる課題を抽出し、必要な解決策の検討を行う。同局では建設現場への完全週休2日制導入を過去にも模索した経緯があるが、実現には至らなかった。担い手3法が施行され、将来にわたって担い手を確保するための取り組みが総合的に進められている中で、今回初めて完全週休2日制の実施に踏み切る。」(『建設工業新聞』2015.06.11)

労働・福祉

●「建設産業専門団体連合会(建専連)の才賀清二郎会長は、専門工事に従事する職人の社員化について、『単価が4、5割増えなければ無理』と断言した。2日に開いた建専連総会後の会見で述べた。大手や準大手ゼネコンを中心に進む担い手確保・育成や処遇改善に強い期待感を示す一方で、1次下請けでさえ、処遇改善の原資となる法定福利費を確保することが現状では、難しいことを明らかにした格好だ。そのため才賀会長ら建専連首脳は課題打開へ、『一致団結して取り組まなければ、若い者(職人)は守れない』と活動強化へ強い決意を表した。」(『建設通信新聞』2015.06.04)
●「国土交通省は、専門工事業者の繁閑調整手法の検討に乗り出す。地域、業種、季節による繁忙期のズレを効果的に使うことで、受注者サイドにおける人材の『不足』と『余剰』を調整。地域間での技能労働者の送り出しや受け入れといった人の融通に役立つ『建設労働需給調整システム』の開発を目指す。現段階では、あくまで調査研究ベースの取り組みになるが、実現すれば、各企業にとって人材に焦点を当てた受注戦略ツールになる可能性もある。」(『建設通信新聞』2015.06.05)
●「法定福利費、人材の確保・定着など課題は山積――。日本型枠工事業協会(三野輪賢二会長)がまとめた土木工事における型枠工事の現状についての調査『土木型枠に関するアンケート報告書』によると、法定福利費の見積書への計上は3分の1程度とまだ進んでいない。新規入職者は少なく、入職しても半数が1年以内に離職していくなど就労環境の改善が急がれる状況が浮き彫りになった。さらに、元請けからの注文書の作成依頼や基幹技能者の名義貸し依頼などの実態も明らかになった。102社から回答を得た。」(『建設通信新聞』2015.06.08)
●「建設工事現場の即戦力として、日本で技能実習を積んだ外国人に期間限定で働いてもらう国土交通省の『外国人建設就労者受け入れ事業』が着々と進んでいる。全国鉄筋工事業協会(全鉄筋、内山聖会長)傘下の企業で働く中国人鉄筋工14人が7月1日に再入国することが決定。受け入れ企業を指導する『特定監理団体』の認定件数は30件を超え、具体的な受け入れ計画は5日までに13件が認定された。受け入れる外国人の出身国も中国、ベトナム、ラオスと広がりを見せている。」(『建設工業新聞』2015.06.08)

建設産業・経営

●「積水ハウスが4月発表した2015年2〜4月期の連結決算は、純利益が前年同期比45%減の116億円だった。前年の消費増税前に駆け込み需要があった反動で戸建て住宅などが減少した。売上高は前年同期比11%減の4018億円だった。戸建て住宅は、消費増税前の駆け込み需要の反動で売上高が22%減った。今年1月の相続税改正に伴い好調だった賃貸住宅の受注も一服し、5%減少した。」(『日本経済新聞』2015.06.05)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、大雨で浸水被害が起きやすい都市部の水害対策を強化する改正下水道法の詳細な運用ルール案をまとめた。広い公共用地の確保が難しい都市部で民間ビルの地下に雨水貯留施設の設置を促すため、施設整備への国の補助制度と、貯留施設の管理を自治体が代行できる制度を創設したのが改正法の柱。ルール案では、これらの支援制度の対象となる貯留施設の容量を100立方メートル以上と規定。貯留タンク本体や排水管などは建築確認の対象に追加し、品質を担保する。」(『建設工業新聞』2015.06.05)
●「国土交通省は、地方自治体に下水熱利用を促す。導入を検討する自治体にアドバイザーを派遣。個別事業ごとのきめ細かい課題への対応と、的確な助言で下水熱利用事業の導入を強力に後押しする。現在、下水熱利用アドバイザー派遣等支援事業として、支援を求める自治体を募集中。安定的かつ豊富に存在する下水熱の利用促進へ、国交省の後方支援が本格化する。」(『建設通信新聞』2015.06.08)
●「東京電力福島第1原子力発電所事故で福島県内に出された避難指示を巡り、政府は12日、放射線量が比較的低い『居住制限区域』『避難指示解除準備区域』を、2017年3月までに解除する方針を決めた。東電が両区域の住民に支払っている月10万円の精神的損害賠償(慰謝料)は18年3月で終了する。地元からは政府支援の先細りを懸念する声も出ている。この日、閣議決定した同事故の新たな復興指針に盛り込んだ。被災者に目立を促す狙いがある。安倍晋三首相は官邸で開かれた原子力災害対策本部で『避難指示解除が実現できるよう環境整備を加速し、地域の将来像を速やかに具体化する』と述べ、理解を求めた。」(『日本経済新聞』2015.06.13)
●「不動産各社がマンションの建て替え受注に力を入れ始めた。野村不動産が東京23区内で最大規模の建て替えに着手したほか、長谷工コーポレーションは2015年度から従来実績の2倍にあたる受注を目指す。昨年末に改正・施行の『マンション建て替え円滑化法』で、耐震不足の物件で容積率の緩和を認められた。増加が続く老朽マンションの建て替え需要が膨らむことから、各社は積極的な営業に動く。」(『日本経済新聞』2015.06.13)
●「政府は東京・大手町の国有地を再開発する。都市再生機構(UR)が32階建てのオフィスビルを建設し、国の委託先がテナントを固めた後、不動産会社や投資ファンドなどに売却する計画だ。国有地を再開発後に売却する手法は初めてという。売却額は2000億円を超えるとみられ、国有財産の売却額として過去最高規模になる見通しだ。」(『日本経済新聞』2015.06.13)

その他