情勢の特徴 - 2015年6月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「復興庁は18日、16〜20年度の東日本大震災の復興事業予算の枠組みを固めた。同期間の復興事業費の総額は6.5兆円で、うち3.4兆円を災害公営住宅の建設など優先度の高い基幹的な事業に充てる。復興事業費は15年度までは国が全額負担してきたが、基幹的事業や福島第1原発事故の対応などを除き、被災自治体に事業費の1.0〜3.3%の実質負担を求めるスキームに転換する。特に被害が大きかった東北3県(岩手、宮城、福島)の負担総額は220億円に上る見通しだ。」(『建設工業新聞』2015.06.19)
●「政府は、22日に開いた経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)に月内に閣議決定する『経済財政運営と改革の基本方針2015』(骨太方針)の素案を提示した。社会資本整備は選択と集中を徹底。既存施設を『賢く使う』取り組みを進めながら、ストック効果の最大化を狙う。国際競争力の強化や国土強靭化、防災・減災対策、コンパクト+ネットワーク、老朽化対策などをキーワードに民需誘発効果や投資効率の高い歳出への重点化を図る。社会資本整備を支える技術者や技能労働者が中長期的に担い手としての役割を果たせるよう、建設産業の海外展開支援を図りながら、処遇改善や教育訓練の充実強化、新技術・新工法の活用や施工時期の平準化など建設生産システムの省力化・効率化を推進することも盛り込んだ。」(『建設通信新聞』2015.06.24)
●「新興・発展途上国のインフラ需要拡大を背景に、官民連携(PPP)手法が各地で浸透しつつある。世界銀行の統計によると、インフラPPPは今や、投資額ベースで全インフラ事業の約20%を占めるまでに成長。中でも中南米諸国はPPPの先進地で、乏しい資金力を補うためにPPPを積極導入し、成功しつつある地域として注目されている。融資などの量的支援に加え、制度整備や人材育成といった質的援助でも役割を担う世銀などの国際開発金融機関(MDB)は、一致して支援強化に動いている。」(『建設工業新聞』2015.06.24)
●「国土交通省は、港湾開発で需要が旺盛なアジアや南米を主な対象とした新インフラ輸出戦略をまとめた。岸壁などの建設で日本のマリコンなどが得意とする工期短縮とライフサイクルコストの縮減を両立できる『質の高い』技術を前面に出して案件の形成と受注を推進。その際には港湾本体の開発だけでなく、より大きな経済波及効果が見込める臨海部での新規産業立地も一体的に進めるスキームや、相手国の官民の港湾実務者の育成支援などもセットで提案していく。」(『建設工業新聞』2015.06.25)

行政・公共事業・民営化

●「政府は、官民で取り組む防災・減災施策などの目標値を定めた国土強靭化の新たな行動計画を16日に決定する。昨年起きた大規模な土砂災害や火山噴火災害への対策を充実させたのが新計画の特徴。地方自治体向けの新たな国土強靭化地域計画策定指針と、民間の防災・減災の取り組み事例集も併せて決定・公表する。南海トラフ地震などに備え、官民挙げて災害に強い国土造りを急ぐ狙いだ。」(『建設工業新聞』2015.06.16)
●「国土交通省は、災害発生時に国の主要建築物の被害状況をおおむね3時間以内に同省官庁営繕部に一元化する枠組みを構築するため、施設を管理する各省庁と調整に入った。応急復旧への技術支援に迅速に入れるようにするのが狙い。伝達形式を統一するほか、被害状況は複数のルートで把握し、情報の途切れによる対策の漏れを防ぐ。各施設の管理者と同省官庁営繕部が正確な情報を早期に共有することで、災害対応拠点となる施設の早期復旧につなげる。対象となる施設は国の合同庁舎や一団地の官公庁施設、一般庁舎のほか、国会議事堂、裁判所などの建築物。刑務所や防衛施設、土木施設、航空関係施設などは除く。」(『建設工業新聞』2015.06.16)
●「国土交通省は、公共建築工事共通費積算基準に定められた『一般管理費等率』の改定の必要性を探るため、秋ごろにも約1000社を対象にした実態調査に乗り出す。例年の調査では共通仮設費や現場管理費のモニタリングを行ってきたが、今回はそれに加えて、一般管理費等が工事費に占める割合なども把握する。受注者の適正利潤確保や将来にわたる担い手の育成・確保などをうたった改正品確法を踏まえた動きで、建設企業が実際に支出している人材育成・確保費用も調べる。見直しの必要性が明らかになれば、年度当初に行う積算基準改定に反映させる。」(『建設通信新聞』2015.06.26)
●「国土交通省は、14年度に本格スタートさせた道路の老朽化対策の追跡調査結果と今後の取り組み方針をまとめた。昨年7月にすべての橋梁(約70万橋)とトンネル(約1万本)に5年ごとの定期点検を義務付けたところ、14年度の実績は7〜11%と当初目標に3〜4ポイント届かなかったことが判明。この結果を受け、15〜18年度までの各年度の目標値を定めた全国ベースの点検計画を作った。16年度からは長寿命化に有効な修繕に取り組む市区町村を優先して財政支援を講じる。」(『建設工業新聞』2015.06.29)

労働・福祉

●「日本建設業連合会(中村満義会長)は、就労履歴管理システムの構築に本腰を入れる。18日の理事会で、『就労履歴管理システム推進本部』を立ち上げることを決定した。制度・システム設計において日建連が求める条件などをまとめ、国土交通省に提示する。中村会長は『公共工事だけでなく、民間工事にも広く導入されれば、社会保険加入促進だけでなく、あらゆる課題の“特効薬”になり得る』と強い期待感を示した。」(『建設通信新聞』2015.06.19)
●「将来的な担い手確保・育成が産業にとっての大きな課題となる中、元請けによる『優良技能者』囲い込みの動きが強まっている。技能者個人に対して手当を支給するケースも広がる中、専門工事業者からは『手当を技能者本人ではなく、企業(専門工事業者)に払ってほしい』との声が上がる。“次の職長候補”を育成するための原資にしたいという意図からだ。一方、元請側には優秀な技能者に直接支払うことで意欲の増進とともに全体の賃金底上げにつなげたいという思いが広がる。」(『建設通信新聞』2015.06.22)
●「国土交通省は、12年11月から建設業許可や経営事項審査(経審)の申請などに合わせて実施している社会保険の加入指導によって、今年3月までの2年5カ月の間に1万3710業者が新たに加入したことを明らかにした。14年度の1年間で加入業者は約5400業者増えたことになるという。加入指導に応じず厚生労働省への通報にまで至ったのは1.8万業者で、通報率は(指導件数に対する通報件数の割合)46.1%に上った。」(『建設工業新聞』2015.06.24)
●「地域の建設会社に就職する若者が、職業を選択する際に学校の先生の助言に大きく影響を受けていることが浮き彫りになった。群馬県建設業協会(青柳剛会長)が25日、会員企業の新入社員を対象に実施したアンケートの結果を発表。『学校の先生の助言』を受けて入職したとの回答が5割を超えた。建設産業の担い手確保を考える上での重要な視点が示された調査結果で、青柳会長は同日の記者会見で、『学校の先生の理解を深めてもらうような取り組みを進めていきたい』と話した。」(『建設工業新聞』2015.06.26)
●「政府は、設計・コンサルタント、工事など公共事業で、女性活躍企業の受注を優遇する方針を決めた。これまで男女共同参画など女性が重要な対象となる広報事業に限定していた女性活躍企業への優遇措置を、『公共事業の調査・設計や工事、物品購入、役務などすべての調達に拡大する』(内閣府)。具体的には、工事の総合評価や企画競争、競争参加資格審査などを評価項目にすることを想定。安倍政権肝いりの女性活躍推進が受注優遇策導入によって、建設業界で広がる可能性が出てきた。」(『建設通信新聞』2015.06.29)

建設産業・経営

●「かつて過剰債務企業の象徴だったゼネコンの財務改善が鮮明だ。大手4社の2016年3月期末の有利子負債残高は計1兆4100億円とバブル崩壊後の最低になる。18年前のピーク時の4割の水準。工事採算の改善で返済余力が高まったためだ。一方で手元資金は1兆円超に上り、各社は新規事業への投資や増配など手元資金の活用にカジを切りつつある。」(『日本経済新聞』2015.06.25)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「福島県は15日、東京電力福島第1原子力発電所事故による県内外への自主避難者について、2016年3月までとしていた災害救助法に基づく避難先の住宅の無償提供を1年延長した上で、17年3月で打ち切る方針を決めた。内堀雅雄知事は同日の幹部会議で『公共インフラの整備や除染が進み、福島県内の生活環境が整ってきた』と話した。県は独自支援策として県内に帰還を希望する避難者には引っ越し費用を補助するほか、打ち切り後も避難先にとどまる場合、低所得世帯に対しては家賃を一定期間、補助する。来月以降、帰還や生活再建に関する相談会も避難先で実施する。…原発事故で自主避難している人たちからは、住宅の無償提供を2017年3月で打ち切るとする福島県の方針を批判する声が相次いだ。『原状復帰にはほど遠く、まだ戻れない』。首都圏への避難者らでつくる『ひなん生活をまもる会』代表の鴨下祐也さん(46)は15日、東京都庁で記者会見し、打ち切り撤回を求めた。」(『日本経済新聞』2015.06.16)
●「東京電力福島第1原子力発電所事故の除染廃棄物をめぐり、環境省は16日までに、福島県内の市町村が管理する仮置き場のうち昨年6月時点で廃棄物が搬入されていた580カ所全てを調査した結果、半数以上の310カ所で袋やシートの破損など問題が見つかったと発表した。放射性物質の土壌への流出は確認されなかったとしているが、周辺住民の不安を招きかねず厳重な管理が求められる。環境省は有識者でつくる環境回復検討会で調査結果を報告。」(『日本経済新聞』2015.06.16)
●「住宅メーカーが賃貸住宅の受注拡大のために、入居者向けサービスの充実に力を入れる。三井ホームは割安な価格で荷物を預かるサービスを導入する。大東建託も提携する宿泊施設などを入居者が割引価格で利用できるようにした。賃貸住宅の需要は大都市を中心に堅調だ。相続税の増税で節税目的の建設も広がる。各社は他社との違いを出せるサービスを用意して地主らにアピールする。」(『日本経済新聞』2015.06.20)
●「大成建設と大林組は、トルコが日本との政府間プロジェクトで計画している原子力発電所の建設に参加する。仏建設大手のブイグ、現地の建設2〜3社と共同企業体(JV)を組む調整に入った。日本の総合建設会社(ゼネコン)が海外で原発建設に参加するのは初めて。」(『日本経済新聞』2015.06.20)
●「地震が起きた時に大規模火災のおそれがあり安全確保が著しく困難として、国が重点対策対象にしている密集市街地は、16都府県で計4547ヘクタール(3月末時点)に上ることが23日までに、国土交通省の調査で分かった。3年前の調査より2割程度減ったが、依然広範囲に及んでいる。南海トラフ巨大地震や首都直下地震が懸念される中で『2020年度までにおおむね解消する』との政府目標を実現するには、老朽建築物の建て替えなどへの支援拡充が急務といえそうだ。調査によると、都府県別では大阪の2248ヘクタールが最も多く、東京1126ヘクタール、京都362ヘクタール、長崎262ヘクタール、兵庫220ヘクタールと続いた。」(『日本経済新聞』2015.06.23)
●「2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場(東京・新宿)の整備費を総額約2500億円とすることで、文部科学省などが、施工するゼネコン2社と合意したことが23日、関係者の話で分かった。2本の巨大な『キールアーチ』を特徴とする従来のデザインを維持する。29日に関係機関のトップでつくる東京五輪・パラリンピック調整会議で報告する。難航していた整備費の調整が決着したことで、今後は開催都市の東京都の負担分が焦点となる。新競技場のスタンド部分は大成建設、屋根部分は竹中工務店が施工を担当することになっている。文科省が所管する、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)と両社は正式契約を経て、予定の10月着工に向けた準備を本格化。19年3月の完成を目指している。」(『日本経済新聞』2015.06.24)
●「国土交通省は、25日に開いた大都市戦略検討委貞会(委員長・奥野信宏中京大理事)に、7月下旬の策定を目指す大都市戦略の素案を提示した。景気が回復基調に入っていることに加え、2020年東京五輪の開催で日本の注目度が高まる今が大都市政策の転機と強調。都市政策として“国家的な戦略”を持って都市再生に取り組むべきとした。」(『建設通信新聞』2015.06.26)
●「パナソニックは住宅リフォーム事業を強化する。今後3年で提携する工務店や系列家電店『バナショップ』など、リフォームを請け負う拠点を現在の4割増にあたる1万店にする。同社は.2018年度に住宅関連の連結売上高2兆円(14年度比で9割増)の目標を掲げる。高齢者住宅のバリアフリー対応など需要が拡大するため営業体制を整え、リフォーム事業の売上高を同4割増の3800億円に引き上げる。」(『日本経済新聞』2015.06.27)
●「積水ハウスは住宅リフォーム事業を新たな収益の柱に育てる。2016年1月期に、工事に精通したベテランを中心に専門技術者を1割増員し、1千万円以上の大口受注を増やす。戸建てやマンションを対象にリフォームのブランドを7月に導入し、認知度を高める。戸建て住宅の売上高で業界首位だが、リフォーム事業は全体の1割弱にとどまる。3年後をめどに15年1月期比5割増の2千億円に引き上げる。」(『日本経済新聞』2015.06.27)
●「2020年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場の建設計画の見直し案が29日固まった。総工費は、基本設計時の1625億円を大幅に上回る2520億円と試算。開閉式屋根の整備は五輪終了後に先送りし、電動式の一部の客席(約1万5000席)を仮設の『簡易着脱方式』に変更した。7月上旬に施工者と正式契約し、10月に着工する予定。19年秋に開催予定のラグビーワールドカップに間に合うよう、当初予定より2カ月遅れの同5月完成を目指す。」(『建設工業新聞』2015.06.30)

その他

●「東京電力福島第1原発事故による避難が原因で自殺したとして、福島県浪江町の無職、五十崎喜1さん(当時67)の遺族が、東電に約8700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で福島地裁(潮見直之裁判長)は30日、事故と自殺の因果関係を認め、東電に約2700万円の賠償を命じた。判決は『原発事故で遭遇した過酷な経験でうつ状態となり、最終的に自死に至らしめた』とした。喜一さんは糖尿病を患っており、病気が与えた影響なども考慮し『事故が自殺に寄与した割合は6割』と指摘した。」(『日本経済新聞』2015.06.30)