情勢の特徴 - 2015年7月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省が近く立ち上げる日本企業のインフラ輸出をPRする新戦略の第1弾計画が明らかになった。建設会社などが保有する技術やノウハウをより効果的に発信、提案できるよう、企業側が希望する各国の東京駐在大使にオフィスを直接訪問してもらう『カンパニー・ツアー』の初訪問先企業として清水建設を選出。29日に同社の本社ビルや技術研究所を訪問してもらい、地震防災や省エネ建築などの技術をプレゼンテーションする。今回はアフリカの大使や公使が参加する。」(『建設工業新聞』2015.07.24)
●「日本政府は、フィリピンの首都マニラで計画される鉄道の整備事業に約2400億円の円借款を供与する方針だ。政府開発援助(ODA)による一回の貸し付けとしては過去最大規模。安倍晋三首相が5月に、新たな支援戦略として打ち出した『アジアでの質の高いインフラ投資』の第1弾となる。金額の大きさだけでなく長期にわたる成長の持続性も重視した支援とする。日本企業の商機も広がりそうだ。」(『日本経済新聞』2015.07.28)
●「政府は28日、創業間もない中小企業の官公需受注機会を拡大するための『中小企業需要創生法』の施行日を8月10日とする同法施行期日政令と関係整備政令を閣議決定した。施行日が決まったことで、国や独立行政法人など官公需全体の契約目標設定と中小企業受注機会増大措置を示す2015年度の『基本方針』は、施行日後、早期の閣議決定を目指す。」(『建設通信新聞』2015.07.29)

行政・公共事業・民営化

●「内閣府は、PPP・PFI事業の導入を目指す地方自治体に対する支援体制を強化する。『経済財政運営と改革の基本方針2015』(骨太方針)で、民間活力の積極的な導入が国策として鮮明に打ち出される中、事業の川上段階から実施に至るまで切れ目のない支援体制を敷く。一貫したサポート体制で導入拡大を後押しする。PPP・PFI手法の導入には民間提案が不可欠。民間サイドからの事業提案もより一層求められることになりそうだ。」(『建設通信新聞』2015.07.17)
●「政府は橋やトンネルといった公共インフラの点検で、ロボットの活用を促すため規制の見直しを進める。技術の向上で、人が行う作業の補助や代替が可能になったためで、2016年度にもロボットを導入できるよう『目視』などを前提とする規制を緩める。老朽インフラの点検が増えるなか、技術者の不足に対応するとともに、点検の精度を上げてインフラの安全性も高める。技術開発を促しロボットを成長産業に育てる狙いもある。」(『日本経済新聞』2015.07.20)
●「国土交通省が、公共工事の入札で予定価格を切り下げる『歩切り』の撤廃に向けたロードマップをまとめた。適正な積算に基づく設計書金額の一部を控除することは、予定価格の適正な設定を発注者の責務とした改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に違反する。国交省は、地方自治体への2度にわたる実態調査を経ても歩切りを改めない発注者は個別名を年内にも公表する。根絶の道筋を明確にすることで、各発注者が自らの判断で歩切りをやめるよう促す。」(『建設工業新聞』2015.07.21)
●「国土交通省が15年度からの第4次社会資本整備重点計画で、道路、河川、ダムなど所管するすべての社会資本分野で個別施設の長寿命化計画を20年度までに策定することを数値目標(KPI=重要業績評価指標)として設定することが21日、明らかになった。インフラのメンテナンスサイクル構築の一環。長寿命化計画の策定を防災・安全交付金による支援の要件とすることで、自治体が管理する社会資本の老朽化対策の着実な進展を促す。国交省は24日に開く社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)と交通政策審議会(交政審、同)合同の計画部会に、KPIを盛り込んだ計画原案を提示。国民の意見募集や都道府県からの意見聴取を経て成案をまとめ、9月の閣議決定を目指す。」(『建設工業新聞』2015.07.22)
●「国土交通、総務、財務3省は28日、入札契約適正化法に基づく実施状況調査の2014年度結果を公表した。同年4月1日現在で、ダンピング対策となる低入札価格調査制度と最低制限価格制度について、いずれも未導入の市区町村は200団体あった。ダンピング対策を未導入の自治体は、前回調査(13年9月1日現在)から7団体減少した。8市町村が導入した一方、1団体は試行を経て未導入となった。今回調査では、岡山県内の全市町村がいずれかの制度を導入したことが確認され、すべての市町村で導入済みは14府県となった。」(『建設通信新聞』2015.07.29)
●「国土交通省は、直轄工事の積算作業の簡素化とミスの防止に向け、入札時点では精密な積算まで行わず、契約後の変更精算を前提とした二つの発注方式を導入する方向で具体的な検討に入った。設計業務と同時並行で工事を発注し、施工者を詳細設計に関与させて設計完了後に契約変更を行う『(仮称)概算発注方式(設計業務並行型)』は制度設計を進め、試行を目指す。仮設備など予定価格への影響が小さい部分は主要部分に占める割合で積算する『(仮称)概略発注方式』も実施に向けた準備を進める。」(『建設工業新聞』2015.07.29)
●「国土交通省は、下水道を管理するすべての地方自治体を対象に、施設の維持管理・修繕も含めた『事業管理計画』を3年以内に策定するよう、11月に都道府県や政令市を通じて要請する。下水道法で自治体に策定を義務付けている現行の事業計画を拡充し、新たに施設の維持修繕や更新など管理全般の取り組みを盛り込んでもらう。ライフサイクルコストの削減につながる戦略的な施設マネジメントを促す狙いだ。」(『建設工業新聞』2015.07.30)

労働・福祉

●「富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)は、講師養成用の新たな教育訓練現場実習プログラムの試行的な提供を始める。一定の専門知識やノウハウを持った講師候補に、『教える側』として実際の技能訓練などに補助的に立ち会ってもらう。教育現場でいう育実習生のような立場を用意し、教え方や講師の心構えを伝授する。2015年度は、生徒の受け入れにめどが立っている土木施工管理基礎や躯体基礎、型枠基礎など8コースを活用し、講師養成を試行実施する。」(『建設通信新聞』2015.07.17)
●「厚生労働省が16日にまとめた2015年上期(1−6月)の労働災害発生状況(速報、7日7日時点)によると、建設業の休業4日以上の死傷者数は、前年同期と比べ11.9%減(822人減)の6100人となった。うち死亡者数は135人と、15.1%減(24人減)だった。死傷者数、死亡者数とも前年同期比2桁減が続いている。ただ、厚労省では、14年上期(14年1−6月)は13年の同期と比べ大幅増となり、緊急対策を実行したことを踏まえ、『14年同期比で2桁減の労災減少傾向を今後も維持する必要がある』とみている。また、建設産業界に対し、『足場からの墜落防止措置を強化した改正安全衛生規則の順守を含め、必要な対策を取り、今後も労災防止に努めてほしい』としている。」(『建設通信新聞』2015.07.17)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は、『就労履歴管理システム推進本部』の第1回会合を28日に開くに当たり、検討するシステムの基本コンセプトを固めた。23日の理事会で報告した。国土交通省が認定する単一の主体がシステムを運営し、建設技能者全員に『技能者カード』を発行して新たにデータベースシステムを設け、国内のすべての建設現場にカードのデータを読み取るカードリーダーを設置する。このコンセプトをもとに検討を進め、具体的な方針を国交省が立ち上げた『就労履歴管理システム構築に向けた官民コンソーシアム』に提案する。」(『建設通信新聞』2015.07.24)
●「木造住宅の担い手である大工の不足が顕著になっている。総務省の国勢調整によると、2010年における大工の就業者数は約40万人。約76万人いた1995年からの15年間でおおむね半減している。その減少率や高齢化率(60歳以上の割合)は建設・土木作業の従業者に比べても大きい。一定の入職者数が確保できなければ、将来的に住宅生産体制の空洞化につながるとの懸念も広がっている。大工不足の現状は、住生活基本計画(全国計画)の見直しに向けて、国土交通省が28日に開いた社会資本整備審議会の住宅宅地分科会(分科会長・浅見泰司東大大学院教授)で提示された。」(『建設通信新聞』2015.07.29)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、植村芳輝議長)は、2015年賃金交渉の中間報告をまとめた。月例賃金では妥結31組合中26組合がベースアップ(ベア)を獲得、一時金は24組合が前年水準を上回った。7割以上の組合がベアを獲得したのは22年ぶり。年収は同年齢加重平均で5.35%増加し、初任給も24組合が引き上げるなど、業績回復に伴う賃金の改善傾向が鮮明になった。ただ、日建協が目標とする賃金水準には達していないことから、引き続き賃金向上に向けて活動していく方針だ。」(『建設通信新聞』2015.07.31)
●「自民党・日本版マイスター制度に関する特命委員会(井上信治委員長)は30日、技能者の地位向上を目的に中間報告をまとめた。『職人のWAZAに光を当てる中間とりまとめ』と題した提言で、職人が『稼げる』システムの確立を目指すと明記。技能を持つ職人が活躍する企業を『WAZAカンパニー(仮称)』として認定するなど、職業人材が社会的に評価される仕組みを提唱している。法制化を含めた措置もにらんでいる。」(『建設通信新聞』2015.07.31)
●「国土交通省は、社会保険に加入していない1次下請業者を工事から排除する措置を8月1日から拡大する。対象工事の金額要件を撤廃し、同日以降に入札公告を行うすべての直轄工事から排除する。国交省の動きに合わせて同様の措置に同時に踏み切る発注機関や、検討に着手した自治体もあり、完全排除措置は広がりも見せている。未加入対策の焦点は今後、2次下請以降と民間工事へと移ることになる。」(『建設工業新聞』2015.07.31)

建設産業・経営

●「国土交通省は、建設技能労働者の繁閑度合いをグラフ化するプログラムの開発に乗りだす。14日までに、開発業務を三菱総合研究所に委託することを決めた。業種や地域、下請次数別に年間を通じた繁閑の波を『見える化』。同業種間での人材融通や複数業種をこなせる多能工の育成に役立て、施工平準化につなげたいとしている。秋にも業種や地域を限定した形で繁閑を示すグラフを公表する。繁閑調整が定着すれば、雇用の安定にも寄与しそうだ。」(『建設工業新聞』2015.07.16)
●「国土交通省と中小企業庁は17日、15年度下請取引等実態調査に着手した。無作為抽出した全国の建設業者約1万4000業者が対象。下請取引をめぐる各種質問に回答し、8月7日までに提出してもらう。改正公共工事入札契約適正化法(入契法)で4月1日にすべての公共工事で提出が義務付けられた施工体制台帳の作成状況を聞くほか、労働災害防止対策経費に関する質問も新設。関係法令達反が疑われる回答があれば、その建設業者に指導票を送り、改善を促す。」(『建設工業新聞』2015.07.21)
●「23日の株式市場で清水建設が時価総額(終値ベース)で大成建設に代わってゼネコン首位に立った。清水建が首位になるのは2012年2月以来、3年5カ月ぶり。16年3月期は建築事業の利益率改善を受け、大幅な営業増益を見込む。設備投資の国内回帰とあいまって、業績拡大に期待が集まり株価は2カ月あまりで2割強上昇している。」(『日本経済新聞』2015.07.24)
●「東京の工事費の上昇が止まらない。建設物価調査会(東京・中央)によると6月の建築費指数(鉄筋コンクリートの建物を造るときのコスト平均)がリーマン・ショック後で最高となった。東京都心を中心に高層ビルなどの建設が活発なためだ。仕切り直しとなった新国立競技場の建設が始まればさらに上昇する可能性は大きく、同競技場の建設コストにも影響しそうだ。指数は作業員に払う給料や資材を買うのに必要な『工事原価』の水準を示す。2005年平均を100とすると今年6月は116.5まで高まった。東日本大震災以前は100を割っていたが、東京五輪の開催が決まった13年秋以降は上昇に拍車がかかっていた。特に東京の上昇ぶりが目立つ。14年の東京の平均工事原価を100とした場合、大阪、名古屋、福岡と他の大都市圏はいずれも90台。現在の生コンクリートの東京市場の取引価格は昨年末比5%高い。高層ビルなど鉄骨造の建物の建設コスト平均もリーマン・ショック時並みの水準だ。」(『日本経済新聞』2015.07.25)
●「日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)は、会員企業の14年度決算状況調査結果をまとめた。売上高は前年度比5.1%増の14兆8510億円、完成工事総利益(粗利益)は30.8%増の1兆0530億円で、完成工事総利益率(粗利益率)は1.4ポイント上昇の7.5%に回復。本業のもうけを示す営業利益は58.0%増の4620億円となった。調査は会員140社のうち、過去5年のデータ収集が可能で、14年4月〜15年3月に本決算を行った113社の単体決算が対象で、各項目は合計値で集計した。…粗利益率10%以上が26社あり、4%未満は5社にとどまった。粗利益率の平均値は2.7ポイント上昇の9.7%となった。期初の手持ち工事が豊富で、期中の売り上げ計上が進んだ。」(『建設工業新聞』2015.07.27)
●「積水ハウスは2016年から富裕層向け高級住宅の供給能力を3割増やす。茨城県の工場で外壁パネルの生産設備を増強するなどし、従来の月産400棟弱から500棟に引き上げる。消費増税後に落ち込んだ住宅販売は回復基調にあり、特に高級住宅は株高の追い風を受け安定した伸びが見込める。戸建て最大手の同社は高級住宅の能力増強を急ぎ、大和ハウス工業など競合他社との差を広げたい考えだ。」(『日本経済新聞』2015.07.28)
●「住宅生産団体連合会(住団連、和田勇会長)は28日、大手住宅メーカーの経営者を対象に実施した住宅景況感調査の結果(7月分)を発表した。15年度第1四半期(15年4〜6月期)の景況判断指数(『良い』の割合から『悪い』の割合を引いた数値)は、総受注数がプラス47、総受注金額がプラス53となり、戸数、金額ともに14年度第3四半期(14年10〜12月)から3期連続のプラスとなった。回答した経営者からは『消費増税後の反動減の底打ち感があり、市況は徐々に回復している』『相続対策としての賃貸住宅の建設需要が根強かった』とのコメントが寄せられた。一方、『前年度下期から市場環境に大きな変化はない』『集客は回復基調だが、受注に結び付いていない』との意見もあった。…回答した経営者からは『昨年比では増加傾向だが、増税前には戻らない』との意見もあったが、低金利の住宅ローンや政府の住宅取得支援策などを追い風に、販促活動を強化するとの声も多く上がった。」(『建設工業新聞』2015.07.29)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「築地市場(中央区)を移転する豊洲新市場(江東区)の開場日が2016年11月7日に決まった。用地の土壌汚染や入札不調で、09年に決めた当初方針より2年遅れの開場となる。食品流通の高度化に対応する新市場への期待は大きいが、仕切り直しとなった場外観光施設の整備や移転する業者への支援策、膨らんだ建設費の回収といった課題が残る。」(『日本経済新聞』2015.07.18)
●「安倍晋三首相は17日、2020年東京五輪・バラリンピックのメーン会場となる新国立競技場について『現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直すと決断した』と正式表明した。計画を大幅に上回る2520億円に膨らんだ整備費を縮減する。秋までに整備費の上限などを盛り込んだ新整備計画をまとめ、再度、国際コンペをして施工業者を選定。20年春までに完成をめざす。…首相は見直す理由を『コストが当初予定よりも大幅に膨らみ、国民やアスリートから大きな批判があった』と説明した。五輪組織委員会の会長を務める森善朗元首相と首相官邸で会談した後、記者団に語った。」(『日本経済新聞』2015.07.18)
●「築地市場で水産品を扱う仲卸企業の組織、東京魚市場卸協同組合の伊藤淳一理事長は23日の定例記者会見で、市場の移転に伴い少なくとも45社が廃業するとの見通しを明らかにした。組合の加盟企業は11日時点で622社。現在の財政難に加え、移転後の使用料など費用負担増が重くなる。築地市場は現在の東京・中央区から、来年11月7日に同・江東区の豊洲へ移転することが決まっている。衛生面の機能向上や物流効率化に向け、設備を刷新する。廃業予定の企業は、既存企業へ営業の権利を売り渡す交渉を進めているという。『(廃業する)企業は増える可能性もある』(伊藤理事長)という。」(『日本経済新聞』2015.07.24)
●「民間による下水熱の利用を促す改正下水道法が19日に施行され、事業化に向けた取り組みが全国各地で本格的に動きだす。国土交通省は下水道管理者の自治体、民間向けの事業化支援制度を創設し、本年度は18団体にアドバイザーを派遣することを決めた。長野県小諸市では民間企業が主体となった下水熱利用の初弾案件が具体化し、関連工事を今後実施する予定。法改正を受け、未利用エネルギーを活用した新事業の創出と併せ、環境負荷低減を図る官民連携の取り組みが一段と活発化しそうだ。」(『建設工業新聞』2015.07.28)

その他