情勢の特徴 - 2015年8月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は7月31日、『国土強靭化の推進に関する関係府省庁連絡会議』を開いた。6月国土強靭化推進本部で決定した『国土強靭化アクションプラン2015』の施策を、8月末の16年度予算概算要求に盛り込むことを確認した。特に地方創生と強靭化が調和した施策、官民連携による施策などをポイントに挙げた。連絡会議の冒頭、赤澤亮正内閣府国土強靭化・防災・少子化対策担当副大臣は、『強靭化の施策は、コストではなく、投資ととらえ、国だけでなく、民間も一体となって施策を進めるべきだ。「アクションプラン2015」にのっとり、国土強靭化の15の重点プログラムを中心として、16年度予算・税制改正要望につなげてほしい。特に地方創生との調和や官民連携に留意しながら取り組んでほしい』と各府省庁担当者に呼び掛けた。」(『建設通信新聞』2015.08.03)
●「復興庁は7月31日、14年度の東日本大震災復興予算の執行状況を発表した。総額6兆2542億円のうち、39.4%の2兆4620億円が未執行だった。主な要因は住宅の集団移転などの公共事業を進めるのに地元の合意形成や用地確保、着工後に生じた施工計画の見直しに時間がかかったこと。単年度ベースの未執行率は35〜40%程度で推移しており、11年度の39.6%に次ぐ高い水準となった。」(『建設工業新聞』2015.08.03)
●安倍晋三首相がトップセールスで売り込む開発が人権侵害を助長している―。首相就任以来、日本企業の売り込みに五大陸を飛び回る日本のトップに、各国の住民から批判があがっている。7月、日本が投資先として重視する二つの国の住民の代表が相次いで来日した。東南アジアのインドネシアと、アフリカ大陸南東のモザンビーク。「石炭火力発電所建設の計画が持ち上がって以来、住民たちは土地を強制的に売却するよう迫られ、拒否した住民はチンピラや国軍、警察の脅迫にさらされている。私自身、無実の罪で捕らえられ、刑務所に7カ月間収監された」。インドネシア中部ジャワ州で進むバタン石炭火発建設に反対する住民連動のリーダーの一人、チャヤディ氏は、ともに来日した仲間と国会内で記者会見し、訴えた。…モザンビークでも石炭開発による人権侵害が問題になっている。来日したモザンビーク全国農民連合(UNAC)のメンバーは、同国で進む石炭開発で1万人を超える住民が移転を強いられていると訴えた。安倍首相は昨年、多くの大企業幹部を伴って同国を訪問し、港湾や鉄道整備に約700億円の政府開発援助(ODA)を表明。後日、同行した三井物産が炭鉱と鉄道・港湾インフラ事業への参画を決めた。首脳会議の共同声明には、石炭や天然ガスが豊富な同国を支援することは「日本のエネルギー安定確保上重要」だと記されている。UNACのメンバーは、採られた石炭は国内では使われず、建設予定の石炭火発の電気も全て輸出用だと指摘。同国で電気を利用できる国民は4割にすぎない。植民地時代の回廊沿いに建設された鉄道は貨物専用。線路を安全に越えることができないため地域が分断され、昨年1人の子どもが列車にはねられ命を落としたという。「石炭を積んだ列車が行き来する脇を農民は歩いて作物を運んでいる。政府は列車に乗れるようになるとだまして住民を無償で鉄道建設に従事させた。怒って鉄道を止めた住民は皮膚がはがれ落ちるまで警察に棒でたたかれた。開発によって発展ではなく植民地時代が戻ってきている」(UNACのアナ・パウラ・タウカレ副代表)(『しんぶん赤旗』2015.08.15より抜粋。)

行政・公共事業・民営化

●「土木学会の公共工事発注者のあり方研究小委員会(木下誠也委員長)は3月、『発注者のあり方・体制確保』と『予定価格制度の見直し、価格決定構造実現』を柱とする提言の中間報告を公表した。昨年施行された改正公共工事品質確保促進法を受け、『品確法改正だけではまだ抜本的な改革にはならない』(木下委員長)として、最終的には交渉方式導入や予定価格制度見直しによって、これまでの官主導による公共調達の価格決定構造を、民主体に転換させることが目的。」(『建設通信新聞』2015.08.04)
●「国土交通省は直接工事費について、施工単位ごとに機械経費、労務費、材料費を含んだ標準単価を設定して積算する『施工パッケージ型積算方式』を拡大する。第3弾となる10月の新規分を含め、これまでに計319パッケージの導入が決まっているが、さらに2016年10月には第4弾の導入を予定している。また、歩掛りの廃止に伴い、日当たり施工量などが分からなくなったことへの懸念が出ていることから、参考情報として明示する試みも検討中だ。」(『建設通信新聞』2015.08.10)

労働・福祉

●「厚生労働省の都道府県労働局が進める建設分野の『人材不足分野における人材確保のための雇用管理改善促進事業(啓発実践コース)』の事業実施者が、6月9日から7月14日までの期間で新たに11労働局で決まったことが明らかになった。これまでに20労働局が事業実施者を決めていたことから、計31労働局の事業実施者が決定した。このうち、建設業関係3団体が事業を手掛ける。宮崎県建築業協会が4月に事業実施者として決まったのに続き、今回、新たに滋賀県建設業協会と山口県建設業協会が事業を担うことになった。ほかは社会保険労務士関係団体などが事業実施者となっている。」(『建設通信新聞』2015.08.03)
●「未就職者の建設業への入職を促すため、募集から職業訓練、就職斡旋までをパッケージで実施する『建設労働者緊急支援育成事業』が8月から本格的に動き出す。厚生労働省が所管する5カ年の時限措置で、初年度の事業運営は建設業振興基金(内田俊一理事長)が受託。全国で約250人の入職者確保を目指す。振興基金を中央拠点とし、全国16カ所に地方拠点を置く、2015年度の事業実施体制が固まった。早いところでは、8月下旬にも訓練生の募集を始める予定だ。」(『建設通信新聞』2015.08.03)
●「建設産業専門団体関東地区連合会(関東建専連、向井敏雄会長)は3日、さいたま市のさいたま新都心合同庁舎2号館で、『関東圏専門工事業担い手確保・育成推進協議会』 (通称・YUME−KYO、夢協)の初会合を開いた。会長に就いた向井会長は、技能労働者の処遇や高齢化などの課題を挙げ、『処遇の改善、魅力発信の強化、夢と希望を描ける社会の実現の3つの大きな方針を掲げ、活動を開始する』と力を込めた。夢協は、関東地方整備局管内で、専門工事業団体が担い手確保・育成を効果的に推進するため、関東建専連のほか、全国建設産業教育訓練協会富士教育訓練センター、高校など教育機関、建設業振興基金などと連携し活動する。オブザーバーとして国土交通省、関東整備局、厚生労働省、埼玉労働局、建設産業専門団体連合会が参加。専門工事業団体がこうした活動を主導するのは全国で初めてとなる。」(『建設通信新聞』2015.08.04)
●「2016年春に卒業する学生の採用に向けた面接など企業による選考活動が1日、本格的に始まった。採用活動の開始時期を遅らせる経団連の新ルールで、今年は4カ月繰り下げてのスタート。より短いスケジュールで自社をPRし、学生と会社間の相互理解を深める必要があり、大手ゼネコンの中には採用担当を増やすなどして対応を強化している企業もある。正式内定は10月に集中するとみられ、2カ月の短期決戦で計画採用数を確保するための激しい争奪戦が繰り広げられそうだ。」(『建設工業新聞』2015.08.04)
●「建設産業界での人材確保の取り組みが進む中、あらゆる産業で新規学卒者以外の雇用確保を急ぐ傾向が鮮明になりつつある。雇用統計で景気先取り意識が表れると言われる、『新規求人倍率』の6月数値(季節調整値)は2カ月連続の1.78倍となった。年計で新規求人倍率が1.70以上となったのは、1963年からの半世紀余りで、73年、89年、90年、91年の4回しかない。11主要産業の6月新規求人数は前年同月比でサービス業を除く建設業など10産業すべてで増加。建設産業界でいち早く行政支援も受けて始まった人材確保だが、統計上からも産業間競争が拡大しつつある。」(『建設通信新聞』2015.08.05)
●「昨年12月に国土交通省が実施した中小・中堅建設業のべトナム訪問団への参加をきっかけに、新たなビジネスを展開する動きが出てきた。橋梁設計の日本構造エンジニアリング(テクノブリッジNKE、東京都千代田区、須々木勝重社長)は、語学学校やNPO法人などと連携。ベトナムの大学で学んだ技術系人材に日本語教育を施し、日系企業への就職を支援する事業を始める。7月31日にハノイ土木大学(NUCE)との間で覚書を交わした。今月から来日を希望する人材を募集する。」(『建設工業新聞』2015.08.05)
●「国土交通省は6日、社会保険加入の徹底や技能と経験の『見える化』の切り札として期待される就労履歴管理システムの構築に向け、官民コンソーシアムを立ち上げた。大手、地場クラスの元請企業や専門工事会社、建設労働者がそれぞれ加盟する業界団体などが一堂に会し、十数年来の悲願達成へ、各団体が全面的に協力していく意思を表明した。時期は未定だが今後、コンソーシアムの下に作業グループを置き、対象者の範囲や運用主体など各種テーマの詳細を詰める。まずは技能労働者や下請企業、元請企業などの各プレーヤーにとって、どのようなメリットがあるのかを整理、共有していく考え。2015年度内に、一定の方向性を示す中間取りまとめの公表を目指す。」(『建設通信新聞』2015.08.07)
●「厚生労働省は、改正雇用保険法により拡充した教育訓練給付金の対象となる『専門実践教育訓練』の対象講座として、10月1日付で225講座を指定することを決めた。建設関係は、業務独占資格か名称独占資格の取得を訓練目標とする養成課程として2講座、専修学校の職業実践専門課程の土木・建築分野として1講座の計3講座が10月1目付指定となる。3講座とも2016年4月中に開講する。」(『建設通信新聞』2015.08.11)
●「建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)は、『2014年度社会保険等加入状況に関する調査報告書』をまとめた。社会保険は、社員の加入率が高い一方で、社員以外の加入率、特に雇用保険加入率が低い傾向が今回も続いた。また、今回は、標準見積書の活用状況も調査。法定福利費が別枠明示されていない見積書を提出しているとの回答が75.9%を占め、普及の難しさが改めて示された。社会保険の加入状況調査(有効回答875件3824社)によると、社員の健康保険加入率は98.3%、年金保険が96.3%、雇用保険が91.5%とそれぞれ高い割合を示した。一方で、賃金台帳に記載される『非正社員』で、直接の雇用関係になく、常用、準直用などと呼ばれる形態で従事する技能工である『社員以外』の健康保険加入率は89.5%、年金保険が68.2%、雇用保険が21.9%で、社員に比べて社員以外の加入率が低い傾向が続いている。社員以外の未加入率は、健康保険が前年度比11.8%減、年金保険が6.5%減で、未加入率が下がる傾向にあるものの、雇用保険は6.5%増と、前年度より未加入者が増えた。」(『建設通信新聞』2015.08.11)

建設産業・経営

●「国土交通省は7月31日、2015年3月末時点の外国建設企業の建設業許可取得状況を公表した。1年前の前回調査から新たに4社増え(15社増、11社減)、許可業者数は1998年の調査開始以来、最多となる135社となった。新規取得した企業(14社)の内訳は、国土交通大臣許可が1社、東京都知事許可が7社、神奈川県知事許可が3社、沖縄県知事許可が2社、北海道知事許可が1社。国籍別では、米国が5社、スイスとシンガポールが2社ずつ、英国領ヴァージン諸島、サモア、英国、オランダがそれぞれ1社だった。このほか、新たに外国建設企業の要件を満たした企業が1社、全廃業が8社、失効が2社、外国建設企業の要件を満たさなくなった企業が1社あった。全135社を国籍別にみると、米国が43社で最も多く、次いでスイスが13社、オランダ、英国が各12社と続く。過去16年間の推移では、全体の許可業者数が08年3月末以降、増加傾向で推移しており、特に12年3月末から3年間では15社増えた。」(『建設通信新聞』2015.08.03)
●「国土交通省は7月31日、6月の建設工事受注動態統計調査結果(大手50社)をまとめた。受注総額は前年同月比15.3%増の1兆3316億円で3カ月ぶりの増加となった。公共工事が5カ月連続の減少となった一方で、民間工事が8カ月連続で増加するなど堅調に推移している。公共の減少を民間が下支えしていると言えそうだ。」(『建設通信新聞』2015.08.03)
●「大手ゼネコン4社の2015年4〜6月期連結決算が6日出そろった。純利益は大成建設が前年同期比30倍の155億円、清水建設が2.3倍の113億円となるなど、軒並み大幅増益となった。全社が四半期決算の開示を始めて以降の最高益を更新した。受注単価の上昇で工事利益率が改善したうえ、企業が設備投資を増やしているのも追い風となった。」(『日本経済新聞』2015.08.07)
●「道路舗装上場8社の2016年3月期第1四半期決算が10日に出そろった。受注高は7社が前年同期実績を下回った。うち工事はNIPPO、東亜道路工業、三井住建道路を除く5社が減少した。製造販売は日本道路、世紀東急工業が微増となったが、6社は減少した。企業収益の改善などを背景に民間設備投資は増加傾向にある一方、公共投資は低調に推移し、工事受注の伸びは“官低民高”の色合いを強めている。製造販売は地方自治体発注工事の減少などによってアスファルト合材出荷が伸び悩み、厳しい出足となった。」(『日本経済新聞』2015.08.11)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は6日、社会資本整備審議会・住宅宅地分科会(分科会長・浅見泰司東大大学院教授)が、住生活基本計画(全国計画)の見直しに向けた個別論点の1つに位置付ける『多様な居住ニーズの実現と豊かなコミュニティ形成』をテーマに勉強会を開催した。住宅における選択肢の1つである賃貸住宅の適切な維持管理について、日本賃貸住宅管理協会(末永照雄会長)が、修繕に使途を限定した積立金制度の構築などを提言した。提言は、賃貸住宅の長寿命化に必要となる適切な修繕に特化した内容。東京都がまとめたマンション実態調査によると、適切な修繕を進めための前提である長期修繕計画の策定割合は、分譲マンションが77.3%に上っている一方で、賃貸住宅はわずか18.5%にとどまっているという。」(『建設通信新聞』2015.08.07)

その他