情勢の特徴 - 2015年8月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は、インフラ施設を対象とした不動産投資信託(リート)の実現に向けた検討を始める。投資家から資金を集めて資産の運用や売却益を分配するリートは、民間のオフィスビルなどを中心に行われているが、国交省は下水道など長期的に安定した料金収入が見込めるインフラ施設も対象にできるとみている。財政がひっ迫している中、老朽ストックが増大しているインフラの更新や新設の財源に民間の資金を呼び込む狙いがある。」(『建設工業新聞』2015.08.21)
●「国土交通省が27日発表した2016年度予算の概算要求は一般会計が15年度当初予算に比べ15%増の6兆6791億円になった。公共事業関係費は16%増の6兆93億円を計上した。大雨などによる水害や火山災害への対策や、道路の整備や老朽化対策などを進める。訪日客向けの消費税の免税制度拡充や空き家対策での税負担軽減などの税制改正も求めた。」(『日本経済新聞』2015.08.27)
●「安倍政権肝いり政策の『地方創生事業』で注目された、地方自治体向け新型交付金を含めた政府の地方創生関連の2016年度予算概算要求額が1115億円程度になることが26日までに分かった。コンパクトシティーなど地方都市の新たな都市づくりと関連事業が、地方創生事業で生まれることに期待を寄せている地方建設業界にとって、ほとんどがソフト系施策に充てられるとみられる新型交付金と、規模的に小粒にとどまった地方創生事業に、肩すかしを食わされた格好だ。」(『建設通信新聞』2015.08.27)

行政・公共事業・民営化

●「政府は25日、すべての地方自治体に策定を求めている国土強靭化地域計画の最新の策定状況調査結果をまとめた。41都道府県が策定に取り組んでおり、うち愛知など7道県が策定済み。市区町村では大阪など27市区町が策定を進め、うち高知など5市町が策定済みだった。政府は引き続き、自治体への助言や、計画に基づいて防災・減災のインフラ整備を行う自治体への優先的な財政支援を通じ、計画の策定を促す。」(『建設工業新聞』2015.08.26)
●「国土交通、農林水産、防衛の3省と内閣府沖縄総合事務局は、公共工事や建設コンサルタント業務などについて、契約締結から変更協議、検査、請求・支払いといった一連の契約プロセスを電子化する『電子契約システム』の構築に乗り出す。これらの手続きは現状、すべて紙ベースで行われている。電子化されれば、契約書類の作成・提出に要する手間やコストの大幅な削減などが期待できる。システムは2018年度の本格運用を目指す。」(『建設通信新聞』2015.08.27)
●「11年3月の東日本大震災以降、頻発していた公共工事の入札不調が沈静化してきた。国土交通省が14年度に実施した直轄工事で発生した入札不調の割合は11.4%と、前年度より6.0ポイント減少し、不調発生率は震災発生前の08、09年度と同水準になった。15年度に入ってからも低下傾向が続いているもようだ。直轄工事と比べもともと低かった都道府県発注工事の不調発生率も14年度に低下。震災の被災地でも同様の動きを見せている。」(『建設工業新聞』2015.08.27)

労働・福祉

●「文部科学省がまとめた15年度の学校基本調査(速報値)よると、今春などに卒業し、建設業に就職した高卒者は前年比0.3%減の1万6761人で、過去10年で最多だった前年度と同水準となった。ただ、前年比8.3%増と大幅に伸びた製造業と比べると、建設業への入職は広がっていない。昨年度卒業し建設業に進んだ高卒者は、5年前の11年度調査と比べ28.7%増えている。景況感の改善や技能労働者などの不足などを受け企業の求人数が拡大したほか、就職説明会や処遇の改善など担い手確保に向けた官民の地道な取り組みが効果を挙げたとみられる。11年度以降の動きを見ると、12年度が6.0%増、13年度が13.9%増、14年度が7.0%増と伸びてきた。15年度に微減に転じた要因としては、製造業の盛り返しが挙げられる。」(『建設工業新聞』2015.08.17)
●「人材ビジネスを手掛けるプロフェッショナルバンク(東京都千代田区、児玉彰社長)は、9月に建設業界専門のヘッドハンティンググループを始動させる。現場代理人や監理技術者など、その能力が受注を左右する優秀な技術者に照準を絞り、建設会社からの依頼に応える。04年の発足以来、さまざまな業種で培ったノウハウや人脈を活用して事業を展開する。他産業に比べてなかなか進まないとされる建設業界の人材流動化につながるか注目される。」(『建設工業新聞』2015.08.17)
●「建設業で残業が無制限にできてしまう労働基準法の規定を見直すべきではないかとの声が、業界関係者の間で広がっている。労使間で締結する時間外労働に関する協定『36(さぶろく)協定』について厚生労働省は、1カ月当たり45時間などの上限を告示で定めているが、建設は『適用除外』業種の一つで、これが超過勤務を招いているとの指摘がある。産業間で激化する人材獲得競争を勝ち抜くためにも、他産業並みの時間外労働のルールが必要との声が強まっている。」(『建設工業新聞』2015.08.19)
●「建設工事現場の即戦力として、日本で技能実習を積んだ外国人に期間限定で働いてもらう国土交通省の『外国人建設就労者受け入れ事業』で、再入国して建設現場で働き始めた外国人技能者が増えてきた。同省の集計によると、今年7月末までに再入国したのは24人。中国からが最も多く、建設分野の人材育成で政府間の覚書を交換したべ卜ナムからも来日した。」(『建設工業新聞』2015.08.19)
●「国土交通省は19日、14年11月に告示した『公共工事に関する調査および設計等の品質確保に資する技術者資格登録規定』の改正案を公表した。インフラ維持管理の『点検・診断等業務』に対応した資格に加え、改正案ではインフラ新設時の『計画・調査・設計業務』に対応した資格も18施設分野の26業務で登録規定を設ける。改正案への意見を募集した上で、10月中旬にも施行。民間団体などから追加登録を希望する技術者資格の申請を年内にも受け付ける。」(『建設工業新聞』2015.08.20)
●「土木・社会基盤系教育課程を持つ高校と教職員で構成する、全国高等学校土木教育研究会(全土研、市村恵幸会長)は20日、総会と研究協議会、今後のインフラ整備を担う若年技術技能者育成のためのシンポジウムを柱に、20年ぶりとなる全国大会を開いた。人口減少時代を迎え、建設産業界は行政と連携して担い手確保・育成への取り組みを開始しているが、技術技能者となる人材の教育と送り出し役となる全土研も産官学民の連携などを掲げた大会宣言を採択し、改めて教育機関としての役割を強調した形だ。」(『建設通信新聞』2015.08.21)
●東京電力福島第1原発で21年関連企業の作業員が機材を運搬後に意識を失い、病院に救急車で運ばれたが、死亡した。東電が22日、明らかにした。作業との因果関係については、労働基準監督署に一報しているため、同社として言及は差し控えたいとしている。 同原発での作業員の死亡は、今月に入って3人目。震災後、事故収束作業に当たる作業員の死亡は計12人(うち作巣事故による直接の死亡は3人)。東電によると、死亡したのは60代男性。21日午後1時10分ごろ、1号機タービン建屋の搬入口付近で作業員が意識を失ったという連絡が緊急時対策本部に入った。現場に行った救急医療室の医師が、緊急搬送の必要があると判断して救急車を要請。同2時4分、いわき市立総合磐城共立病院に向けて出発した。(『しんぶん赤旗』2015.08.23より抜粋。)
●「地方創生、インフラの防災・減災役割、メンテナンス市場拡大、グローバル化などのさまざまなキーワードを前に、建設業に人材を輩出してきた高校の土木系教職員は、今後の高校での土木教育のあり方を手探りで模索している。人口減少と普通科選択傾向によって職業学科の生徒数減少という問題に直面する一方、国が教育をエンジンとした地方創生を打ち出す中で、地域産業を担う専門的職業人材の育成を専門高校に求めることを、ことし3月の教育再生実行会議第6次提言で明記。その結果、土木教育のあり方をめぐり、全国各地の高校教職員が認識を共有することと、建設業界や建設業との連携強化がこれまで以上に求められていることが背景にある。」(『建設通信新聞』2015.08.24)
●「建設業向けの労務管理・施工管理サービスの『グリ−ンサイト』を展開する三菱商事系のMCデータプラス(東京都港区、秋山光輝社長)は、現場の入退場管理(通門管理)をスマートフォンでも行えるようにする。これまで、QRコード付きの通門カードを使っての管理を中心に本人確認を行ってきたが、スマホを使えば、現場に専用機器を設置しなくても入退場管理が可能になり、使い勝手が改善する。元請約70社、協力会社約2万9000社が利用するグリーンサイトの顧客基盤を広げる手段にもなりそうだ。」(『建設工業新聞』2015.08.24)
●「厚生労働省がまとめた2015年1-7月の労働災害発生状況(速報、8月7日時点)によると、建設業の休業4日以上の死傷者数は、前年同期と比べ10.9%減(920人減)の7536人となった。うち死亡者数は160人、18.8%減(37人減)だった。死亡者数は過去最少だった13年の同期と比べても1人減(0.6%減)となっている。厚労省では、14年8月から緊急対策を実行し、14年下期(14年7−12月)の労災人数の毎月の増加幅が鈍化していたことを踏まえ、死傷者数、死亡者数とも14年同期比で2桁減の労災減少傾向を今後も維持する必要があるとしている。速報値ベースだが、7月単月の死傷者数は1436人と、15年の中では最多となっており、6月単月と比べても182人増えている。建設業の死傷者事故別人数は、『墜落・転倒』が2645人と最も多く35.0%を占め、『はさまれ巻き込まれ』が875人、『転倒』が788人など。死亡者数の業種別は土木が52人、建築が72人、そのほかが36人。月別は1月29人、2月20人、3月29人、4月20人、5月21人、6月19人、7月22人。都道府県別では東京が18人、北海道が11人、埼玉が10人、静岡が9人、福岡が8人など。事故別では37.5%の60人が『墜落・転落』で、『交通事故(道路)』が17人だった。」(『建設通信新聞』2015.08.25)
●「厚生労働省は、建設労働者確保育成助成金(建労金)の拡充を2016年度予算の概算要求に盛り込んだ。『登録基幹技能者』の賃金などの処遇を向上させた企業への助成金交付を創設する。建設技能を継承するための指導者養成訓練コースに対する助成も、技能実習コースの助成対象として新たに加える。また、建設工事現場に女性専用のトイレや更衣室などを整備した中小元請企業への助成を新規で始める。女性労働者の技能習得に対する経費助成の対象は、現行の中小企業に加え、大企業・中堅企業にも広げる。建労金の要求額は、前年度比2億円増の53億円を計上した。」(『建設通信新聞』2015.08.27)
●「国土交通省は8月6日、社会保険の加入徹底や技能と経験の『見える化』の切り札として期待されている就労履歴管理システムの構築に向けて『官民コンソーシアム』を立ち上げた。元請企業や専門工事会社、建設労働者がそれぞれ加盟する業界団体などが一堂に会し、十数年来の悲願達成へ各団体が全面的に協力していく意思を表明した。今後、コンソーシアムの下に作業グループを設置し、対象者の範囲や運用主体など各種テーマの詳細を詰める。まずは技能労働者や下請企業、元請企業など各プレーヤーにとって、どのようなメリットがあるかを整理、共有していく考えだ。2015年度内に、一定の方向性を示す中間取りまとめの公表を目指す。」(『建設通信新聞』2015.08.27)
●「若者などの建設業への入職促進を目的に、未就職者が無料で職業訓練を受講して資格を取得し、就職斡旋まで受けられる厚生労働省の5カ年時限措置『建設労働者緊急育成支援事業』がいよいよスタートする。初年度の事業運営を担う建設業振興基金は31日、建設業団体と連携し、準備の整った訓練コースの受講生募集を始める。順次、全国の各拠点で希望者を募り、初年度は600人の参加を目指す。5年間で5000人を集め、有力な担い手候補と建設企業をマッチングする。…全国の公共職業訓練施設でほとんど実施されなくなった、いわゆる『野丁場』の技能者養成が主軸。とび、鉄筋、型枠、設備、仕上げなどの技能者候補を集める。訓練費用や資格取得費、合宿方式の宿泊費・往復旅費などは無料。訓練期間は各拠点でそれぞれだが、2週間から最長で3カ月程度が予定されている。実際の訓練は10月ごろから始まり、11月以降に本格化する見通し。」(『建設通信新聞』2015.08.31)

建設産業・経営

●「17日の東京市場でゼネコン株の上昇が目立った。清水建設、大林組、鹿島が年初来高値を更新し、準大手・中堅クラスでは大幅高となった銘柄もあった。朝方発表の4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値で住宅投資と公共投資が持ち直し、好感した買いが集まった。中国経済など外部要因に左右されにくいとの見方から、好業績の内需株を買う流れにも乗った。」(『日本経済新聞』2015.08.18)
●「大和ハウス工業は米国で賃貸住宅事業を拡大する。2017年3月期までにシカゴ市中心部に31階の高層マンションを建設する。他の主要都市で6カ所の大型物件の開発などを手掛けていく計画だ。総投資額は1300億円程度を見込んでおり、国内の住宅大手による賃貸住宅開発で過去最大規模になる。景気回復で高級賃貸住宅の需要が伸びる米国を海外住宅事業の成長の柱に据え、21年3月期までに売上高500億円を狙う。」(『日本経済新聞』2015.08.25)
●「竹中工務店の2015年12月期中間決算は、連結、単体ともに増収増益で、特に利益の増加が際立った。完成工事利益率(工事粗利率)を大きく改善させ、連単ともに8%台に乗せた。この結果、各利益が大幅に増え、連結ベースでは中間決算の公表を開始した01年以降、最高の水準に達している。利益が上ぶれしたことから、通期の利益予想も上方修正した。通期でも連単ともに増収増益となる見通しだ。」(『建設通信新聞』2015.08.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「民間建築市場最大のけん引役である『不動産業』の資金需要が拡大し続けている。2015年度第1四半期(4−6月)に設備投資を理由にした新規借入額が前年同期比2503億円増の2兆0638億円と、第1四半期では07年以来となる2兆円の大台を突破した。不動産業の資金需要拡大と連動して民間建築受注額は、受注統計でも増加基調が鮮明になっている。民間建築最大の発注者である『不動産業』の設備投資を目的とする借入額が拡大を続けていることは、建設業界にとっては民間建築発注増加につながるため、今後の市場動向への期待がさらに高まりそうだ。」(『建設通信新聞』2015.08.18)
●「2020年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場の新たな整備計画で政府は、9月初旬をめどに、設計・施工を一貫して担う事業者を公募する手続きに入る。選定には公募型プロポーザル方式を採用する。事業者がまず設計を進め、交渉を経て施工契約を結ぶ『設計交渉・施工タイプ』を国として初めて導入することになる。整備費の上限や施設規模に加え、公募の参加条件も今後の焦点となるが、設計JVと施工JVで構成する事業体の応募も認めるとの見方もある。」(『建設工業新聞』2015.08.18)
●「人口減で全国の空き家が800万戸を超える中、地方自治体が対策を本格化している。日経産業地域研究所が主要市区に調査したところ、6割以上が取り組みを強化すると回答した。自治体に立ち入り調査などの強い権限を与えた法律が5月に全面施行されたことが背景にある。具体策としては老朽化した空き家の撤去や、修復して活用する例が多い。」(『日本経済新聞』2015.08.26)
●「木製だが耐火・耐震性能が高く中高層建築に使える新建材、直交集成板(CLT)を使った大型公共施設やホテルが相次いで登場する。林野庁によると、2015年度中に10棟程度の建設が計画されており、14年度まで全国で9棟だった棟数は2倍に増える見込み。地元産木材の用途が増え、地域活性化に役立つとの期待から、国や自治体が補助金で普及を後押ししている。」(『日本経済新聞』2015.08.31)

その他