情勢の特徴 - 2015年9月前半
●「全国銀行協会は自然災害などで被災した個人の住宅ローンを救済する全国共通のルールを初めてつくる。地震や豪雨などの災害が増えており、金融機関が被災者の債務を減免することで円滑な生活の再建を支援する。2011年の東日本大震災時に特例で設けたが、全国の自然災害を対象に安全網を拡充する。全銀協が2日に立ち上げる有識者の研究会で年内に方針をまとめ、来年度からの適用を目指す。東日本大震災では『二重ローン』問題が表面化。被災者が住宅を新築する際、被災前の住宅ローンと新たに抱えたローンの二重負担が発生した。全銀協は『個人債務者の私的整理に関するガイドライン』をつくり、金融機関が債権放棄などに応じる仕組みを新設。今夏までに5585件の相談を受け付け、2割強の債務が減免された。」(『日本経済新聞』2015.09.02)
●「日本に住む全ての人に割り当てる税と社会保障の共通番号(マイナンバー)の利用範囲を広げる改正マイナンバー法が3日、衆院本会議で可決、成立した。マイナンバーの導入は2013年成立の法律で決まっており、今回の改正法ではマイナンバーと銀行口座を結びつけられるようにするなどの対応をとった。来年初の運用開始に向け10月には12桁のマイナンバーを記した『通知カード』が各世帯に郵送される。」(『日本経済新聞』2015.09.03)
●「政府が進める海外インフラ投資の支援策の大枠が固まった。国際協力機構(JICA)は来年にもアジア開発銀行(ADB)とインフラ案件への共同出資を開始。国際協力銀行(JBIC)もリスクが比較的高い案件に投資対濠を広げる。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が年末に発足することをにらみ、民間資金を呼び込む仕組みを整えてアジアの資金需要を取り込む狙いだ。」(『日本経済新聞』2015.09.04)
●「『青少年雇用促進法』が、11日の衆院本会議で全会一致で可決、成立した。参院先議だった。新卒者3年以内の離職率が3割以下など一定の数値基準を満たす中小企業を、若者が働きやすい企業と認定する制度を創設する。認定企業には助成金を出すほか、企業が求める人材の採用を支援する。一方で、サービス残業などの違法行為を繰り返す企業は、ハローワークでの求人を拒否する『ブラック企業』対策も講じる。新卒者を募る企業に対しては、企業規模に関係なく幅広い情報提供を努力義務化するとともに、応募者の求めに応じ、離職者数などの情報を提供することを義務付ける。…法案の施行によって、若者の就職選択先の『見える化』が進み、雇用環境の良い企業を選ぼうとする動きが強まる。中小企業の認定制度は、企業が認定を受けたことをアピールでき、人材を集めやすくなるとみられる。産業間と建設産業内の企業間で人材確保競争にさらされている建設産業の中小企業にとっても、認定を受けることによって人材確保で優位になる可能性がある。」(『建設通信新聞』2015.09.15)
●「2020年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場を整備する事業者の公募手続きが1日始まった。日本スポーツ振興センター(JSC)は同日、公募型プロポーザル方式で事業者選定手続きを公告した。単体、JVいずれでも応募が可能で、JVで応募する場合の業務実施方式には、設計、施工、工事監理の各業務ごとに単体か共同体を選択できる併用方式を、国の公共工事としては初めて採用した。コスト縮減と工期短縮の要請が強いことを踏まえ、技術提案審査では事業費の縮減と工期短縮のウエートを高めている。」(『建設工業新聞』2015.09.02)
●「国土交通、総務両省は、公共工事の入札で予定価格を減額する『歩切り』の再調査結果をまとめた。調査時点は7月1日。歩切りを実施していた地方自治体は340団体で、今年1月時点の状況を聞いた前回調査と比べ6割(417団体)減少。全自治体に占める歩切り実施自治体の割合は42.3%から19.0%へと半年間で半減した。調査結果は3日に公表する。…調査結果によると、歩切りの違法性や定義を示した国交省作成のリーフレットの内容を『理解した』と回答しなかったのは2団体だけだった。歩切りを実施していた340団体のうち、端数処理を行っていたのは240団体。国交省が問題視している『慣例』や『自治体財政の健全化』などを理由とした歩切りは、前回調査の459団体から100団体へと激減した。100団体はすべて市区町村。うち『見直しを行う予定』としたのは50団体で、34団体は15年度内に見直すと答えた。一方、残る50団体のうち34団体は『見直しに向けて対応を検討』と回答したものの、見直しの時期は明示しなかった。『必要に応じて対応見直しを検討する』『見直しを行う予定はない』など『その他』に該当した自治体も16団体あった。見直し方針を明言しなかった50団体について、国交省は9月中にも都道府県を通じて理由の聴取を始める。それでも改善が見られない場合、年内か本年度内に自治体名の公表に踏み切る構えだ。」(『建設工業新聞』2015.09.03)
●「国土交通省は、改正公共工事品質確保促進法など『担い手3法』で公共工事の発注者に求めた施策の展開スピードを上げるため、地方自治体への調査・公表、モデル事業化、直接的な働き掛け、先行事例の全国展開を一連の流れで実施する枠組みを16年度から構築する。『担い手3法推進サイクル』と名付け、受注者が適正利潤を確保できる予定価格の設定、ダンピング受注の防止、多様な入札契約方式の活用などの早期実行を自治体に促す。」(『建設工業新聞』2015.09.04)
●「国が仙台空港の運営権を売却する民間企業の2次審査で、東京急行電鉄と前田建設工業などで構成する企業連合が優先交渉権を得ることが11日分かった。東急はグループで不動産の開発などを手掛ける総合力が評価された。国が管理する空港の民営化第1号案件である仙台空港は、来年6月末に運営が民間に移管される見通し。運営期間は最長で65年となる。」(『日本経済新聞』2015.09.11)
●「現場レベルの変革を目的とする議論が結実した。国土交通省と日本建設業連合会が毎年行っている意見交換会を踏まえ、具体的な行動を起こすために2014年度に設置した『国土交通省・日建連意見交換会フォローアップ会議』の成果の1つとして、10日までに全地方整備局と北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局の出先10機関で、設計変更ガイドラインの改訂作業が完了した。改正品確法や運用指針に即し、受発注者対等のもと、施工条件の変化に応じた適切な設計変更や情報共有・協議の迅速化などを図る際の指針が整った。」(『建設通信新聞』2015.09.11)
●「国土交通省が10日発表した建設工事受注動態調査(7月分)で、公共工事の受注高が6カ月連続の減少となった。14年度上半期に景気対策として実施された前倒し発注によって後半に予算の息切れが生じるとともに、14年度補正予算が前年度に比べて小幅にとどまったことから15年度への繰越額が少なかったことも影響したようだ。4〜7月累計の公共工事受注高は前年同期比20.6%減。直近の7月分は前年同月比13.5%減となっている。」(『建設工業新聞』2015.09.11)
●「『先生方の熱意が生徒に火を付ける』―。土木系学科のある高校126校が加盟する全国高等学校土木教育研究会(全土研、市村恵幸会長)が8月20、21日に東京で開いた全国大会で、若年技術者・技能者の育成をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。現役の校長、教諭らがコーディネーター、パネリストとして参加。授業の内容や、インフラの維持管理事業への備えなど話題は多岐にわたり、高校の土木教育のあり方をめぐって活発に意見を交わした。パネルディスカッションは、『これからのインフラ整備を担う若年技術技能者育成について』をテーマとした研究協議の一環として行われた。富士教育訓練センターの小松原学校長が『若年者教育の取り組み』と題して基調発表を行った後、2人の現役校長がコーディネーター、小松原氏と5人の現役教諭がパネリストとなって、議論を繰り広げた。」(『建設工業新聞』2015.09.02)
●「日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、田中宏幸議長)は3日、6月13日に行った『2015年6月統一土曜閉所運動』(26回目)の結果を発表した。当日の完全閉所またはほかの日に替えて閉所(読み替え閉所)したのは61.1%(前年同月比8.5ポイント増)と、6年ぶりに60%台を回復した。日建協は『明るい兆しが見えてきた』と受け止めており、27回目となる11月14日の統一土曜閉所に向け、休日確保の必要性をアピールするとともに運動に一段と力を入れる。」(『建設工業新聞』2015.09.04)
●「国土交通省は、外国人建設技能者に、来日前に母国で日本式の建設技能などを身に付けてもらう特別訓練を実施するモデル事業を始める。技能実習の修了者に延長や再入国を認める時限措置が本年度に始まり、建設分野の技能実習生も増加していることから、母国にいる段階から育成を始め、質の高い技能者を受け入れる仕組みを構築する。帰国後には、現地に進出する日本企業の現場をけん引するリーダーとして活躍してもらう。」(『建設工業新聞』2015.09.08)
●「国土交通省は16年度予算の概算要求で、技能労働者の現場経験や保有資格を蓄積し、適正な評価と処遇につなげる『就労履歴管理システム』の検討経費として4000万円を盛り込んだ。うち2000万円は優先課題推進枠で要望した。予算を確保することで、国としてシステム構築に関与していく姿勢を示す狙いもある。」(『建設工業新聞』2015.09.08)
●「建設産業専門団体連合会(建専連)の才賀清二郎会長は8日、労働政策審議会(労政審、厚生労働相の諮問機関)の専門委員会に出席し、厚労相の許可を受けた団体傘下の企業間で建設技能労働者の送り出し・受け入れを認める『建設業務労働者就業機会確保事業』の見直しを求めた。年間を通じて仕事量を平準化できる同事業を使いやすくすれば、技能労働者の社会保険加入や正社員化に役立つと指摘。団体向けの新たな債務保証で送り出し企業の財産的要件を緩和すれば、利用範囲の拡大につながると提案した。」(『建設工業新聞』2015.09.09)
●「厚生労働省は、求職者支援制度の見直しに着手した。全国的に人材不足感が強い建設分野への対応が、4項目の見直し論点の一つに挙がっている。制度のさらなる活用促進に向け、建設分野の訓練コース設定を増やすためには、訓練科目や訓練期間の訓練カリキュラムのあり方と、訓練機関への訓練奨励金引き上げの2点がポイントとなる。12月をめどに制度見直しの内容をまとめ、2016年3月に求職者支援法施行規則を改正、同年4月以降の改正則施行を目指す。」(『建設通信新聞』2015.09.10)
●「国土交通省は1日、建設業法施行令の改正案概要を公表した。物価上昇や消費増税などを受けて、特定建設業の許可と監理技術者の配置を求める建設工事の金額要件を引き上げる。引き上げ後の金額要件は公布までに明らかにする。若手技術者の入職を促進するため、2級技術検定の学科試験の受験要件を緩和し、17歳(高校2年生相当)から受験できるようにする。10月上旬に閣議決定と公布を予定。16年4月に施行する。」(『建設工業新聞』2015.09.02)
●「国土交通省は、工事単位で重層下請構造の実態を把握する15年度調査の委託先を、三菱商事系のMCデータプラス(東京都港区、秋山光輝社長)に決めた。工種・工事規模別に施工体制に着目して重層下請構造を本格的に調査するのは初めて。調査を契機に行き過ぎた重層下請契約を是正し、建設生産システムの生産性向上を図る。16年度は調査結果を踏まえ、要因分析などを行う。本年度の調査では、重層下請構造の現状を把握する。公共工事と民間工事の両方を対象に数千〜1万件程度のサンプルを集め、工種や工事規模ごとの下請構造や、重層化しやすいケースなどを統計的に把握する。」(『建設工業新聞』2015.09.03)
●「積水ハウスは10日、2016年1月期の連結純利益が前期比9%増の9.80億円になるとの見通しを発表した。最高益を見込んでいた従来予想(930億円)からさらに上振れする。分譲住宅やマンションの販売が伸びる。消費増税の影響が一巡し、戸建て住宅などの受注も回復する。1棟あたりの単価も上昇基調で採算が上向き、海外事業の伸びも寄与する。」(『日本経済新聞』2015.09.11)
●「国土交通省は2日、気候変動で頻発・激甚化する水災害への下水道分野の対策計画をまとめた。コストがかさむ施設の新設よりも、既存施設の防災・減災効果を効率的に引き出す対策に注力。排水区域(1区域当たり約1平方キロメートル)が異なる既設下水管の連結や、下水道の雨水貯留管と河川調節池の連結などを促す。雨水が短時間に1カ所の下水管に集中しないよう相互融通のシステムを構築し、浸水被害を最小限に抑える。計画は、水災害対策に関する社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)の答申に基づいてまとめた。16年度予算でこれらの対策を重点的に支援する。」(『建設工業新聞』2015.09.03)
●「東京都世田谷区は老朽化し倒壊などの危険がある『空き家』対策で、自然災害など緊急時に行政の立ち入りが可能となる独自条例を制定する方針を決めた。家の内外がごみであふれ悪臭や害虫の原因となる『ごみ屋敷』対策でも同様に条例化する方向だ。住民の苦情や相談が増える中、法律に上乗せし柔軟に対応できる体制を整える。2016年2月に条例案を提出、4月の施行を目指す。」(『日本経済新聞』2015.09.09)
●「鬼怒川の上流にある4つのダムを管理する国土交通省は台風18号の影響による大雨で下流が氾濫しないよう、9日午後以降に放流量の調節を始めていた。しかし茨城県常総市での堤防決壊を防ぐことはできなかった。担当者は『下流の水位上昇を抑える効果はあったはずだが、調節の加減は非常に難しい』と話した。国交省によると、鬼怒川上流で同省が管理するのは、川治ダム、川俣ダム、五十里ダム、湯西川ダム(いずれも栃木県日光市)の4つ。」(『日本経済新聞』2015.09.11)
●「関東地方と東北地方南部を中心とした大雨で10日、各地で大規模な洪水・浸水被害が発生した。政府と各行政機関や建設業界の対応も本格化。安倍晋三首相は同日午前、人命の安全確保や災害応急対策に全力で取り組むよう指示した。国土交通省は、午後に非常災害対策本部を開き、太田昭宏国交相が茨城県常総市内で鬼怒川左岸21キロ付近の堤防が決壊したことに伴う破堤箇所の状況や水没箇所の特定、被災状況の把握を迅速に行い、人命救助に必要な対策に取り組むよう指示を出した。」(『建設工業新聞』2015.09.11)