情勢の特徴 - 2015年9月後半
●「経済産業省は16日、IoT(モノのインターネット)やビックデータ、人工知能による変革に対応するために、官民が共有する『新産業構造ビジョン』を2016年春に策定すると公表した。ビジョンの中では、ものづくり分野やスマートハウス・スマートコミュニティー分野などとともに『産業保安・公共インフラ・建設』分野も、2030年代の具体的な産業構造転換の姿を提示する予定があることを明らかにした。」(『建設通信新聞』2015.09.17)
●「国土交通省は2016年度に、建設業の海外進出支援を強化する。中堅・中小建設会社などを対象に、事業の構想づくりから準備段階までの総合的な支援内容を拡充。米国やトルコ、シンガポールといった世界各地の拠点国と連携し、第三国での事業展開も目指す。16年度予算の概算要求に『建設企業等の海外進出の総合的な支援』として、前年度の約3.5倍となる1億5000万円を盛り込んだ。また、『海外進出を目指す建設企業等へのビジネス機会の創出支援』に4500万円を計上した。ともに全額が優先課題推進枠での要求になっている。」(『建設通信新聞』2015.09.18)
●「日本建設業連合会(中村満義会長)は18日、来年度税制改正要望を決めた。建設業団体の税制改正要望は例年、経団連など経済界や省庁などと共同歩調を取るのが一般的だが今回、元請けが専門工事業に所属する職長へ直接支払う職長手当や協力企業の技能研修などの費用で税制上優遇措置を受ける、『担い手確保・育成に係る税制上の優遇措置創設』を独自に盛り込んだことが最大の特徴だ。」(『建設通信新聞』2015.09.24)
●「2020年の東京五輪のメーン会場七なる新国立競技場の設計や建設の再入札への意思表明が18日午後5時に締め切られた。大成建設や、竹中工務店・清水建設・大林組の3社連合などが応札の意思表示をし、鹿島は見送ったもよう。ただ、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は同日、応札情報を明らかにしなかった。こうした対応に選考過程がブラックボックス化するとの批判も出ている。JSCが情報公開をしない理由について下村博文文部科学相は18日、『談合を防ぐ法律で禁じられている』などと説明した。JSCは専業者に対してかん口令を敷いており、ある大手ゼネコンは『公正な競争を阻害しないように』と強くくぎを刺された。」(『日本経済新聞』2015.09.19)
●「全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)は、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)と同法運用指針の効果について、傘下の都道府県建設業協会と会員企業に行ったアンケートの結果を明らかにした。市区町村発注工事の予定価格について『実勢価格が反映されていない』とする協会が多いことが判明。会員企業の多くが、『工期に地域の実情や週休2日の実行が考慮されていない』と答えた。10月から国土交通省の地方整備局などと行う地域懇談会で対応を求める。」(『建設工業新聞』2015.09.28)
●「第189通常国会が27日に閉会した。政府提出法案のうち国土交通省が所管する改正下水道法などの『水防3法』や新法の建築物省エネ法など7本がすべて成立した。水防3法のうち、改正下水道法では、まとまった公共用地を確保しにくい都市部の浸水対策として、民間ビルの新・改築時に地下に雨水貯留施設の設置を促す財政支援制度や、施設管理を下水道を管理する自治体が代行できる制度を創設。改正日本下水道事業団(JS)法では、下水管の更新・修繕をJSが自治体に代わって行う業務に追加した。これらの改正内容は7月に施行された。建築物省エネ法では、延べ2000平方メートル以上の非住宅建築物に13年に整備された省エネ基準への適合を義務付ける。住宅を含む延べ300平方メートル以上の新築・増改築時には所管行政庁への省エネ措置の提出義務を課す。17年4月に全面施行される。都市再生機構法も改正され、老朽ストックが増大している団地の建て替えを促進するため、現在地か隣接地でしか認めていなかった建て替えをやや離れた近接地でもできるよう要件を緩和。7月に施行した。」(『建設工業新聞』2015.09.28)
●「厚生労働省がまとめた2015年1−8月の労働災害発生状況(速報、9月7日時点)によると、建設業の休業4日以上の死傷者数は、前年同期と比べ10.7%減(1047人減)の8756人となった。うち死亡者数は197人で15.5%減(36人減)だった。死亡者数は過去最少だった13年同期とほぼ同じ(1人増)となっている。」(『建設通信新聞』2015.09.17)
●「自民、公明両党などの国会議員でつくる『日本建設職人社会振興議員連盟』(会長・二階俊博自民党総務会長)は18日の総会で、建設技能労働者の安全確保や地位向上、処遇改善を目指す議員立法の方向性を決めた。公共工事だけではなく、民間工事でも適正利潤の確保や処遇の改善、安全衛生の向上を進めることを基本理念に据えた。安全対策などの官民格差是正を主眼に置く理念法として立法を目指す。」(『建設工業新聞』2015.09.24)
●「厚生労働省は、建設労働者確保育成助成金のメニューを拡充し、『登録基幹技能者』を対象に賃金などの処遇改善を行った企業に助成する。将来の担い手を確保・育成するのが狙い。女性の活躍を推進するため、女性専用トイレなどの経費助成も新設する。16年度予算の概算要求に盛り込んだ。…拡充するのは▽登録基幹技能者▽指導者育成訓練コース▽女性専用作業員施設(トイレや更衣室)▽女性労働者の技能習得―の4項目。このうち、若者が将来目指したいと希望する技能者像を明確化するため、技能労働者のキャリアパスの最上位に位置付けられている登録基幹技能者の処遇向上を後押しする。」(『建設工業新聞』2015.09.25)
●「厚生労働省は25日、2016−20年度を計画期間とする第9次建設雇用改善計画を検討する労働政策審儀会の建設労働専門委員会(座長・鎌田耕一東洋大教授)を開き、日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)、日本基幹産業労働組合連合会(基幹労連)、全国建設労働組合総連合(全建総連)と建設業の現状と課題などを議論した。…全建総連は、毎年実施している賃金実態調査から、直近は賃金が上昇傾向にあるものの『職種や就労先、地域によって大きな隔たりがあるとし、すべての職種、就労先、地域で適正な賃金水準の確保が求められるとした。建設業退職金共済制度については、業界で処遇改善に必要な制度と位置付け、加入促進に取り組んでいる一方で、現場で証紙の貼付に応じてもらえない『建退共辞退届』を提出させる事例があることや、証紙が金券ショップなどで取引されていると指摘。制度の趣旨を現場に徹底させることと不正防止対策の実施を求めた。」(『建設通信新聞』2015.09.28)
●「労働者派遣法の改正に伴い、建設技能者の送り出し・受け入れを認める『建設業務労働者就業機会確保事業』を定める建設労働法が改正された。改正派遣法が求める派遣期間終了時の雇用安定措置は、就業機会確保事業では原則適用しない。改正派遣法では同じ派遣労働者が同一の職場で働ける期間を最長3年に一本化する『個人単位の期間制限』を設けたが、就業機会確保事業はもともと就業日数に制限があるため通用せず、4年目も引き続き送り出し・受け入れは可能とした。」(『建設工業新聞』2015.09.28)
●「東日本、中日本、西日本の高速道路会社3社は、各社グループなどの点検技術者を対象にした共通の資格制度の運用を開始する。資格の客観性を確保するため、講習・認定業務を高速道路調査会が担当。12月に土木系・施設系の2分野ごとに3ランク(A、B、C)に分けて講習と実技、修了確認試験を行う。有資格者を段階的に現場に配置し、将来は義務化も視野に入れる。運用状況を見ながら、国の技術者資格への登録も検討する。」(『建設工業新聞』2015.09.29)
●「国土交通省は、建設工事現場の即戦力として日本で技能実習を積んだ外国人に期間限定で働いてもらう『外国人建設就労者受け入れ事業』で、外国人就労者の賃金や労働環境などを把握するため実態調査に乗りだす。本年度に始まった同事業の適正な推進を図るのが狙い。特定監理団体や受け入れ企業に加え、外国人就労者へのヒアリングも行い、優れた事例や問題点、制度改善の意見を収集する。同事業で実態調査を行うのは初めて。」(『建設工業新聞』2015.09.30)
●「全国建設業協会(全建、近藤晴貞会長)は15日、就労履歴管理システム(仮称)検討ワーキンググループ(WG)を設置し、東京・八丁堀の東京建設会館で初会合を開いた。国土交通省が建設業各団体と8月に設置した官民コンソーシアムの活動に対応し、全建会員企業がシステムを利用することで得られる効果や、期待されるシステムのあり方、求められる条件などをまとめ、コンソーシアムの議論に反映させることを目指す。WGには、傘下の都道府県建設業協会から現場の労務・安全管理に詳しい代表7人が参加。委員長には島根県建設業協会の原順一中筋組取締役工事統括本部副本部長が就任した。各委員は経営的観点も考慮し、システム構築の課題などを議論。成果は労働委員会や理事会に随時報告しながら全健としての意見にする。」(『建設工業新聞』2015.09.16)
●「全国建設産業教育訓練協会(才賀清二郎会長)が運営する富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)の建て替えが16日、本格着工した。技能労働者の高齢化と若年入職者の減少が進み、人材教育と技術伝承の場としてセンターの重要性が高まる中で、老朽施設を一新。耐震性を高め、現代の若年層に即した訓練施設として、OFF−JT(職場外訓練)の一大拠点となるハード整備を進める。今後、教室棟や本館などの建て替え計画も推し進める考えだ。」(『建設通信新聞』2015.09.17)
●「地方ブロックごとに各都道府県建設業協会と全国建設業協会が国土交通省などと意見交換を行う、地域懇談会・ブロック会議(全建ブロック会議)が10月7日にスタートするのを前に、地方建設業界から公共工事量の行方に危機感が高まっている。全体の公共工事市場を下支えする首都圏など特定地域と減少が顕著な地域の格差が拡大しているからだ。白熱議論が確実と見られる全建ブロック会議を控え、地方建設業界は、統計に表れないどのような問題を抱え危機感を募らせているのか。17日に開かれた全建協議員会で、全建の近藤晴貞会長と来賓の脇雅史、佐藤信秋両参院議員のあいさつで共通認識として浮き彫りになったのが、『公共工事量のばらつきに伴う地域の冷え込み』と、この問題を解決するための『今年度補正予算編成』だ。近藤会長は評議員会後の会見でも、『ブロック会議のテーマになっていなくてもすべての地区で、公共事業を中心とした今年度補正予算編成を求める声が出るのは確実』との見方を示す一方、『(過去の厳しい状況へ)時計の針が戻らないようにしなければならない』と、全建が公共事業を中心とした今年度補正予算編成を求めていく可能性についてブロック会議前にもかかわらず言及した。昨年、改正公共工事品質確保促進法(品確法)など担い手3法施行に伴う期待感が広がっていた地方建設業界が、一転して地方建設業の疲弊と事業量確保を声高に叫び始め、危機感を増幅させたのは、安倍政権の地方創生事業への期待が裏切られたことと、人口減少と高齢化が加速することによる地方自治体の財政悪化という2つの要因がある。皮肉なことに担い手確保・育成の取り組みを先行的に進めたことが将来不安に拍車をかけた。地方創生で新交付金を含め地域のインフラ整備などハード投資への期待は、政府がソフト対応を全面に打ち出したことで、『地方創生の言葉にだまされた。われわれが甘かった』(複数の地方業界関係者)という結果となった。」(『建設通信新聞』2015.09.24)
●「全国建設産業団体連合会(全国建産連、北川義信会長)は18日、専門工事業部会関東甲信越ブロック会議を東京都港区の建設業振興基金会議室で開き、担い手の確保・育成など『担い手3法』をめぐる現状について、参加地域を代表する各専門工事業団体との間で意見交換した。多能工について栃木県建設産業団体連合会(栃木県建産連)が実施した調査結果が報告され、外注費を縮小して収益を上げるためにも、その育成が必要との回答が大半を占めたことが明らかになった。多能工に関する調査は、栃木県建産連傘下の9団体から97社が回答。多能工が『必要あり』が84社、『必要なし』が13社だった。収益面からの必要性に加え、『工期短縮や仕事に流れができて無駄がなくなる』といった生産性向上の面から有益だとの意見もあった。調査結果をめぐる意見交換では、多能工の必要性が確認される一方、複数職種をこなせる技能労働者としての処遇のあり方など、今後解決すべき課題を指摘する意見もあった。」(『建設工業新聞』2015.09.24)
●「関東・東北豪雨に伴い、10日に発生した鬼怒川堤防の決壊・越流などで大きな被害が出た茨城県常総市。国土交通省などの24時間態勢による排水作業などで、宅地や公共施設などの浸水が解消されたものの、その傷跡は大きく、市内各所で泥やゴミの撤去、道路清掃などの作業などが進められている。地域建設業の要として、復旧対応を担う茨城県建設業協会常総支部(新井淳一支部長)会員企業は最前線で奮闘している。…国土交通省関東地方整備局が実施していた鬼怒川左岸21キロ付近の堤防決壊個所の応急復旧工事が24日夜、完了した。工事は11日に鹿島、大成建設の施工で着手。長さ201メートルにわたって壊れた堤防の応急復旧では、高さ4メートル、上部4メートル、下部8メートルの台形の荒締切を構築。使用土量は約2万立方メートルに及んだ。16日に荒締切工をおおむね完了させた後、鋼矢板による締切工を急ピッチで進めていた。」(『建設通信新聞』2015.09.25)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、改正品確法の運用状況を聞いた『品確法等の効果検証に係るアンケート』の中で、各会員の経営状況についても確認した。会員1162社のうち、48.0%が2014年度第1四半期に比べて15年度第1四半期の受注状況が『悪くなってきた』と答えた。発注の減少が特に響いている。…理由としては、『発注の減少』が622社で最も多く、299社は『競争の激化』と答えた。特に北陸では71.2%の会員が『発注の減少』を訴えた。…発注量に地域差があり、特に地域の防災・減災の担い手である地元建設業者が受注する工事の発注量減少を指摘する声が地域建設業着から上がっていることから、今後早急な補正予算編成に対する期待感が強まる可能性が高い。」(『建設通信新聞』2015.09.28)
●「大和ハウス工業と野村不動産、住友林業は29日、ベトナムで高級分譲住宅を共同開発すると発表した。約270億円を投じ、約1100戸のマンションを建設する。経済成長や住宅所有の規制緩和を背景に、高級住宅の需要が伸びるとみて大型投資に踏み切る。開発地域はホーチミン市内の住宅街『フーミーフン』で百貨店や総合病院、外国人学校などを備える。市の中心部から4キロメートルほどにあり、富裕層や外国人の駐在員らに人気が高い。日系3社は、現地大手デベロッパーのフーミーフン社の過半出資で合弁企業を立ち上げる。まず約2万8000平方メートルの敷地に分譲マンションを5棟建設する。2017年に着工し、同時期に販売も始める計画だ。販売状況をみて、さらに約1000戸のマンション建設を検討する。」(『日本経済新聞』2015.09.30)
●「政府は、地方都市の中心市街地に職住機能を集約する『コンパクトシティー』づくりで、市町村や眉間事業者に講じる施設整備などへの支援策を相次ぎ強化する。16日に開かれた国土交通省など関係10省庁でつくる『コンパクトシティー形成支援チーム会議』で各省庁が16年度の新規計画を報告。国交省は厚生労働省と連携し介護施設をより戦略的に誘致できるよう市町村に働き掛けるほか、第1種市街他再開発事業の施行区域面層要件を現在の半分の1000平方メートルに引き下げる。」(『建設工業新聞』2015.09.17)
●「実家が持ち家の人の41.6%が、もし実家が空き家になったら『売却したい』――。不動産情報サービスのアットホーム梶i松村文衛代表取締役)がこのほど実施したアンケートによると、売却したい理由は49.8%が『将来住むことがないから』と回答している。調査は、実家が持ち家の、全国の30〜40代男女618名を対象に、インターネットで今年8月12、13日に実施した。」(『日本住宅新聞』2015.09.25)
●「国土交通省は29日、2015年4月1日現在の地方公共団体における耐震改修促進計画の策定状況と耐震改修などに関する補助制度の整備状況をまとめた。計画の策定状況は、都道府県が100%、市区町村は前年から1.1ポイント増となる96.4%だった。全国の1741市区町村のうち、既に計画を策定したのは1678市区町村。15年度中に23の市区町村が策定を予定しているという。残る40の市区町村は16年度以降に策定する見通し。一方、補助制度の整備状況は、耐震診断に対する補助が全体の85.3%に当たる1485市区町村、耐震改修への補助は80.3%となる1398の市区町村で整備されている。市区町村の耐震改修促進計画の策定状況を都道府県ごとにみると、全市区町村で策定済みとなっているのは36道府県。残る11都府県のうち、策定率が最も低いのは、61%の沖縄県。鹿児島県が77%、若手県が79%と8割を切っているが、そのほかの8都府県は80%を超す割合で策定している。」(『建設通信新聞』2015.09.30)
●「今国会最大の焦点だった安全保障関連法が19日未明の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。これまで認めてこなかった集団的自衛権の行使が可能となり、戦後の安保政策は大きく変わる。民主党など野党は『憲法違反』と主張し、ぎりぎりまで抵抗したが、与党側は週内成立にこだわり採決に踏み切った。安倍晋三首相は成立直後、記者団に『必要な法的基盤が整備された』と強調した。」(『日本経済新聞』2015.09.19)