情勢の特徴 - 2015年10月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は2日、2015年度の建設投資見通しを公表した。総額(名目値)は前年度見込額と比べ、計5.5%減の48兆4600億円と推計した。景気の緩やかな回復基調に伴い民間投資は堅調に推移するものの、主に14年度補正予算が小粒だった影響で政府投資が減少し、全体は3年ぶりに50兆円を下回る。政府投資は14.2%減の20兆1600億円で、金額ベースでは3兆3400億円の減少。このうち公共土木は同じ減少率で、2兆6000億円減の15兆6500億円となる。国の当初予算の公共事業関係費は横ばい傾向にあるが、12・13年度に比べて、14年度の補正予算規模が小さかったことなどが影響している。」(『建設通信新聞』2015.10.05)
●「日本のインフラ輸出に向けた門戸が一段と広がる。米アトランタで開かれていた環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会議で大筋合意の見通しがついた。各国の公共工事などの入札手続きのルールを定めた『政府調達』分野は、7月の協議で世界貿易機関(WTO)の政府調達協定に参加していないマレーシア、ベトナムなどにWTO並みのルールを採用する方向で一致していた。こうした方向でTPP協定が発効すると、東南アジアを主要ターゲットに定める国土交通省の海外展開施策にもー段と拍車が掛かりそうだ。…物品、サービス、建設サービスなどの政府調達をめぐっては、7月の交渉で公共事業発注などの市場開放に関するルールづくりを進めていくことで実質的に合意。12カ国のうち、オーストラリア、マレーシア、べトナム、ブルネイがWTO政府調達協定に参加しておらず、参加国と同様の調達ルールを採用していくことで一致した。」(『建設工業新聞』2015.10.06)
●「内閣府は、産業の国際競争力の強化や国際ビジネス拠点の形成を目指す『国家戦略特別区域』で、新たな規制緩和策など政府が講じる支援措置についての提案募集を開始した。限定した特区のほか、全国規模で取り組む規制改革に関する提案も対象。都心部だけでなく、地方創生に関わる提案などを30日まで受け付ける。提案内容については、年内に予定している国家戦略特区の3次指定などに反映させる。」(『建設工業新聞』2015.10.09)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、発注工事からの社会保険未加入企業を排除する措置について、他府省庁や都道府県・政令市を対象とした調査結果をまとめた。国交省は今年8月1日からすべての工事で社会保険未加入の1次下請業者を排除しているが、同様の措置を講じている国関係の機関は農林水産省など7機関に上った。地方自治体でも福井、島根の2県が完全排除に踏み切っている。調査は、中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中央公契連)のメンバーである各府省庁や特殊法人など31機関、地方公共工事契約制度運用連絡協議会(地方公契連)を構成する47都道府県と20政令市を対象に8月1日時点の状況を調べた。中央31機関のうち、未加入の元請業者を競争参加資格審査で排除しているのは29機関。うち27機関は定期の競争参加資格審査で排除していた。地方では67機関のうち50機関(定期審査で排除は42機関)が実施。金額や工事種類を限定して未加入の元請業者を排除している団体も5機関あった。」(『建設工業新聞』2015.10.01)
●「建設業界で公共事業費の増額を求める声が高まってきた。国の15年度公共事業関係費は、前年度当初予算並みの6兆円が確保されているが、公共工事の発注量が前年度より大幅に減少している地域もあり、全国的に地域間格差が目立つ。担い手確保や労働者の処遇改善には経営の安定が欠かせないだけに、15年度の大型補正予算編成や16年度予算での公共事業費の増額確保を求める声が今後、勢いを増しそうだ。」(『建設工業新聞』2015.10.02)
●「国土交通、総務両省は、公共工事の入札で予定価格を減額する『歩切り』の廃止時期を明示していない50の地方自治体を対象に、都道府県を通じた聴取を開始する。歩切りを続ける理由や廃止に向けた検討のスケジュール、検討体制などを聞くほか、『見直しを行う予定はない』と答えた自治体には違法行為にもかかわらず歩切りを続ける理由を尋ね、早期の根絶を促す。」(『建設工業新聞』2015.10.05)
●「東京都財務局は、2020年東京五輪に向けた競技施設の整備と大会後の公共インフラなどの継続的な整備・維持に向け、人材の確保・育成・定着に向けた取り組みを推進する。社会保険労務士による特別調査の対象業種・案件を拡大し、現場の労働条件・労働環境の実態調査を進めるほか、若者や女性の就業、社会保険の加入促進などの環境整備を進めるために、モデル事業の実施などを含めた取り組みを検討する。」(『建設通信新聞』2015.10.06)
●「7日発足した第3次安倍改造内閣の石井啓一国土交通相は同日深夜、国交省で就任記者会見し、『東日本大震災からの復興の加速化、国民の安心・安全の確保、災害対応、防災・減災対策、インフラ老朽化対策にしっかりと取り組んでいきたい』と意気込みを語った。社会資本整備を支える建設業については、『(予算削減で)業界自体が疲弊し、特に担い手の育成を進められなかった』と指摘。『長期的に安定した仕事を確保していくことが重要だ』と述べ、公共事業などの建設投資を安定的に確保していく必要性を強調した。」(『建設工業新聞』2015.10.09)

労働・福祉

●「国土交通省は外国人建設就労者受入事業で、技能実習修了者がそのまま国内に残り、最長2年間、建設業務に従事できる継続認定を初めて行った。9月25日付で中国人2人の在留資格が変更された。特定監理団体は亜細亜交流事業協同組合(大阪市)で、受け入れ建設企業はループ(同)。2人は東京都と神奈川県内の建設現場で型枠施工に従事する。」(『建設通信新聞』2015.10.02)
●「全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、賃金水準の確保や社会保険加入状況の会員アンケート結果をまとめた。従業員の賃金、下請けの労務単価ともに回答した企業の9割程度が引き上げ済み・予定とした。社会保険加入に向けた取り組みでは、6割以上が下請けの見積依頼の際に法定福利費の内訳明示を求めていると答えた。現場作業員の加入状況では、8−9割の作業員が加入しているとした。アンケートは、1410社に調査を依頼し、1208社が回答した。下請けを含め現場労働者への質問では、約5万2000人(3保険平均)から回答があった。8月3日時点での状況を聞いた。」(『建設通信新聞』2015.10.06)

建設産業・経営

●「建設産業専門団体中部地区連合会(石原義幸会長)は、建設技能労働者の入職促進のため、厚生労働省が助成する『建設労働者緊急育成支援事業』に参画する。中部4県の建設業協会などで構成する中部圏建設担い手育成ネットワーク協議会を活用し、入職候補者の募集から職業訓練、就職斡旋までを実施する。中部地方整備局も支援する。1日から研修生の募集を始める。」(『建設通信新聞』2015.10.01)
●「清水建設(宮本洋一社長)は、10月1日契約分から同社と下請契約を締結するすべての業種(材料および労務を伴わないリース契約は除く)を対象に、社会保険未加入分も含めて加入100%に必要な法定福利費(事業主負担分)を全額支払うことなどを柱にした、新たな社会保険加入促進の取り組みを開始した。対象は全取引企業で協力会加盟の有無も問わない。また契約終了後に未加入分の支払い返還も求めない。今回、材工一式契約から転換できずにいた業種も含め全国・全業種を対象に打ち出した取引方針は今後、業界全体の社保加入促進加速へのてこになる可能性もある。」(『建設通信新聞』2015.10.06)
●「東京商工リサーチがまとめた15年度上半期(4〜9月)の建設業の倒産(負債1000万円以上の企業倒産)は前年度同期比17.0%減の846件と、年度上半期としては7年連続で前年度を下回り、1990年度(719件)以来、25年ぶりの低水準となった。全国9地区のうち東北と九州を除く7地区で前年度を下回り、倒産は全国的に減少した。」(『建設工業新聞』2015.10.09)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「三井不動産グループが2006年に販売を始めた横浜市都筑区の大型マンションで、施工会社の三井住友建設側が基礎工事の際に地盤調査を一部で実施せず、虚偽データに基づいて工事をしていたことが13日分かった。複数の杭(くい)が強固な地盤に届いておらず、建物が傾く事態となっている。国土交通省は両社に因果関係を含めた調査を指示するとともに、横浜市と建築基準法違反の疑いで調査に乗り出す。…住民側の指摘を受け、三井不動産レジデンシャルと三井住友建設が調査を開始。傾いたマンションの計52本の杭のうち28本の調査を終えた時点で、6本の杭が地盤の強固な『支持層』に到達しておらず、2本も打ち込まれた長さが不十分であることが判明した。傾きの原因の可能性がある。」(『日本経済新聞』2015.10.14)

その他

●「沖縄県の翁長雄志知事は13日午前、県庁で記者会見し、米軍普天間基地(同県宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認に関し、正式に取り消したと発表した。防衛省沖縄防衛局は移設工事を進める法的権限を失う。中谷元・防衛相は工事を続けるため、直ちに承認取り消しの執行停止と無効を求める申し立てをする方針を示した。」(『日本経済新聞』2015.10.13)