情勢の特徴 - 2015年11月後半
●「国土交通省は、インフラシステムの海外展開に向けた取り組みを強化する。政府全体の『インフラシステム輸出戦略』に沿って、国土交通分野における取り組みをより積極的に推し進める考えだ。年度内にアクションプランとなる『国土交通省インフラシステム海外展開行動計画』を策定。急速な拡大が見込まれる諸外国のインフラ需要を取り込むための戦略を行動計画に落とし込む。」(『建設通信新聞』2015.11.18)
●「地方自治体が、『地方創生』を目指して策定する『まち・ひと・しごと創生総合戦略』で、地元建設業の担い手確保・育成策を相次ぎ打ち出している。人口が減少する中でも、地域経済の成長や防災・減災などに貢献する社会資本整備を着実に進められるようにするのが狙いだ。多くの県が建設業への若者の入職促進に向けた業界団体や学校との連携強化を打ち出しており、地域の課題に対応した独自の取り組みも目立つ。」(『建設工業新聞』2015.11.20)
●「政府は25日、首相官邸でTPP(環太平洋経済連携協定)総合対策本部の会合を開き、総合的なTPP関連の政策大綱を決定した。インフラシステム輸出促進を主要施策の1つに位置付け、2020年に約30兆円のインフラシステム受注を目指すとの目標を掲げた。これは、6月に決めたインフラシステム輸出戦略(15年度改訂版)で示した目標と同じだが、甘利明TPP担当相は、本部会合後の記者会見で『中身は確実にバージョンアップしている』と強調した。」(『建設通信新聞』2015.11.26)
●「国土交通省は、官庁施設の長寿命化を推進する一環で、施設管理者向けの個別施設計画策定マニュアルを作成した。短時間で中長期保全計画を策定できる官庁施設情報管理システム(BIMMS-N)を活用した作成手順を解説。事務職が多い各省庁の施設管理者でも容易に計画を作成できることを周知し、政府全体の『インフラ長寿命化基本計画』(13年11月)に基づく個別施設計画の策定に役立ててもらう。」(『建設工業新聞』2015.11.17)
●「国土交通省関東地方整備局は19日、群馬県長野原町の利根川水系吾妻川で進めている八ツ場ダムの本体工事で、堤体コンクリートの打設に向けた基礎地盤(60万立方メートル)の掘削が5割の進ちょくに達したことを確認した。14年8月にダム本体工事の施工者が清水建設・鉄建・IHIインフラシステムJVに決定してから約1年3カ月。発破作業などを繰り返し、ダムの堤高116メートルのうち約70メートルの深さまで地盤を掘り下げた。掘削は16年5月末に完了する見通しだ。」(『建設工業新聞』2015.11.20)
●「地方自治体の公営住宅事業に公共施設等運営権(コンセッション)方式を導入するのは難しいとの調査結果を国土交通省がまとめた。低所得者向けに供給されている公営住宅の安価な家賃収入だけでは、コンセッション事業者が発注者の自治体に支払う運営権対価で赤字が出ると推計。敷地内に住民のニーズを見込める福祉施設などを併設しても収益性は高くはならないとみている。政府の成長戦略に基づいて行った実現可否の調査の中間結果としてまとめた。」(『建設工業新聞』2015.11.24)
●「東京都は24日、管理する全121トンネルを対象とした長寿命化計画を発表した。老朽化の進行や損傷が目立つ施設を順次改修し、今後100年間は新しく造り直さなくても健全な状態を保つことを目標に安全対策を進める。まず優先的に対策が必要な26トンネルで2024年度までに工事に取りかかる。」(『日本経済新聞』2015.11.25)
●「厚生労働省が16日にまとめた2015年1−10月の労働災害発生状況(速報、11月7日時点)によると、建設業の休業4日以上の死傷者数は、前年同期と比べ9.7%減(1255人減)の1万1654人となった。うち死亡者数は266人と、11.0%減(33人減)だった。ただ、死亡者数は過去最少だった13年の同期と比べ16人増となっている。」(『建設通信新聞』2015.11.17)
●「基礎杭データの偽装問題は、受注単価下落に悩む他の専門工事業界にも影響を与えている。首都圏では来年度以降と予想される工事集中前に仕事が減少する端境期に浮上した杭データ偽装問題によって、数少ない工事着工案件も杭データ再確認などで基礎工事以降の作業工程が軒並み延期になったり、着工そのものを遅らせるケースが相次いでいるからだ。ただ専門工事業界の一部からは工事量激減の中での逆風に対し、『現場、工程、安全などの管理を行っているわれわれの役割が再認識され、現場管理にかかる費用を確実にもらえる絶好のチャンス』(全国鉄筋工事業協会の内山聖会長)と前向きにとらえる動きも出始めている。」(『建設通信新聞』2015.11.18)
●「社会保険加入指導書を送付した建設会社の中に、加入済みの企業が相当数含まれていた問題で、国土交通省は17日、よくある質問への回答をまとめた『Q&A』を作成し、土地・建設産業局のホームページに掲載した。指導書は2日付で全国的5.1万社に送付。その後『既に加入している』など、2000件以上の問い合わせが殺到した。なかでも最近相次いでいるのが、『建設国保や全国土木建築国保といった国民健康保険組合に加入しているのに、指導書が送られてきた。健康保険(協会けんぽ)に入り直さないといけないのか』という趣旨の質問。Q&Aでは、適法に国民健康保険組合に加入している場合は、協会けんぽに入り直す必要はないと説明している。」(『建設通信新聞』2015.11.18)
●「建設現場で働く型枠大工の減少に歯止めが掛かった。日本型枠工事業協会(日本型枠、三野輪賢二会長)が行った15年の雇用実態調査によると、職長と技能工を合わせた1社当たりの平均就労者数は14年の45.4人から51.8人に増えた。50人台を回復したのは11年調査の55.6人以来4年ぶり。29歳以下の若年層は1731人と14年比33%の増加で、平均年齢も14年調査の48.15歳から47歳程度に低下した。日本型枠は『型枠施工各社が新たな入職者確保に努力した結果』とみている。」(『建設工業新聞』2015.11.20)
●「厚生労働省は24日、2013年度に推計した20年と30年の就業者数を、その後に改定した成長戦略や各種の実績値などを踏まえて再推計した結果を明らかにした。産業別就業者数のうち、『鉱業・建設業』は、経済成長と労働参加が適切に進まないと、14年の505万人が20年に14年比44万人減の461万人、30年には同89万人減の416万人になる。経済成長と労働参加が適切に進んだとしても、20年は同28万人減の477万人、30年が同81万人減の424万人と推計している。」(『建設通信新聞』2015.11.25)
●「大手・準大手ゼネコンの2016年3月期第2四半期(4−9月)決算が出そろった。24社中22社が連結営業利益を伸ばし、大手4社を始め、多くのゼネコンで過去最高値を更新した。過去に受注した不採算工事の減少に加え、採算重視の受注戦略が奏功し、単体の完成工事総利益(工事粗利)率が増加しており、通期業績予想でも17社が連結営業利益を上方修正した。業績の先行指標となる受注高は大半が減少しているものの、『巡航速度で推移している』との見方が大勢を占めている。」(『建設通信新聞』2015.11.16)
●「不動産協会の木村惠司理事長は16日、基礎杭データ偽装問題に対し、『われわれ(民間発注者として)としては、データ偽装以外にも、請負側(元請けと下請け)の構造的問題がどう影響しているのか、実態が明確になっていない段階では対応ができない。今後の推移を見て検討したい』との考えを明らかにした。同日開いた理事会後の会見で述べた。またデータ偽装が、工期とコスト短縮が背景にあるとの指摘に対しても、『(発注者と元請け)互いに納得して契約している。工期やコストを民間発注者が締め付けているということはない』と否定した上で、『工期やコストだけの問題ではない。まずは請負側が(重層化など)構造的問題を含め実態を明らかにしてほしい』と答えた。」(『建設通信新聞』2015.11.17)
●「積水ハウスは2018年度までに約3000億円を投じて米国の住宅事業を拡大する。大都市の郊外の43カ所で宅地開発を進めるほか、4都市の都市部で貨貸マンションを建設する。同社は海外事業の拡大を目指し、中長期にわたり世界からの人口流入が予想される米国を柱に据える。18年度には米国事業の営業利益が14年度比約4倍の200億円となり、海外事業の利益全体の5割以上を稼ぐと見込む。」(『日本経済新聞』2015.11.19)
●「積水ハウスは19日、鴻池組との業務提携と、鴻池組の持ち株会社である鳳ホールディングス(大阪市中央区、蔦田守弘社長)との資本提携を同日付で行ったと発表した。得意とする事業領域が異なる積水ハウスと鴻池組は、今回の業務提携により、互いの強みを生かした相乗効果を創出し事業拡大を図る。両社の協力関係を明確化するため、積水ハウスは鳳HDの株式を取得。筆頭株主となり持分法適用関連会社にする。鴻池組と鳳HDにそれぞれ役員2人を派遣。提携を円滑に進める。」(『建設工業新聞』2015.11.20)
●「竹中工務店(宮下正裕社長)は、11月1日から取引企業に対し、見積もり段階で法定福利費の別枠計上を義務付け、社会保険の加入・未加入問わず、社保分(事業主負担分)を支払うことを柱にした『社会保険加入促進に関する対応方針』を開始した。工事完了時の実費精算をしないことで、専門工事業が自らの努力で作業効率を上げればその分、利益が増す構図が最大の特徴だ。大手元請けとして社会的役割を果たす一方、来年度以降の工事量急増も視野に、元請けだけでなく下請けの企業努力を促すことで生産力・生産性を維持・向上させる狙いがある。大手ゼネコンが社保加入促進の取り組みをけん引する構図がより一段と鮮明になってきた。」(『建設通信新聞』2015.11.24)
●「コンクリート製品で値上げの動きが広がっている。下水管などに使うヒューム管は、関東圏の主要メーカーが2016年4月から10〜20%程度の値上げを要請する。値上げは約3年ぶりとなる。セメントなどの原材料や輸送費が値上がりしているためだ。建物の外壁に使うALC(軽量気泡コンクリート)も値上がり。公共工事などのコストに影響する可能性がある。」(『日本経済新聞』2015.11.27)
●「ゼネコン(総合建設会社)大手の鹿島は下請けの工事会社に出資する。グループ会社化することで多能工を育成し、品質向上や人材確保を目指す。これまでゼネコンと下請けは資本関係を持たないのが一般的だったが傾斜マンション問題で建設業界へ不信感が高まる中、出資を通じた強固な関係を築いて工事の品質を高めたい考え。今後、他のゼネコンに同様の動きが広がる可能性もある。第1弾として来春をメドに内装工事の下請けに出資。鹿島子会社の建材商社、大興物産(東京・港)が全国に内装の下請け約100社を持つ。うち複数社と子会社化や資本参加の交捗を始めた。」(『日本経済新聞』2015.11.27)
●「国土交通省が不動産証券化手法を活用して地方都市の再開発を支援する取り組みを始めた。地域の関係者でつくる『地方都市不動産ファイナンス協議会』に対し、専門家を派遣して必要な助言を行い、実現に向けた活動を後押しする。15年度の支援対象は、現時点で13地域。成果はプロジェクトを成功へと導く資金調達のノウハウ集にまとめる。16年度は、空き家・空き店舗の活用や旅館再生といった事業にも裾野を広げたい考えだ。」(『建設工業新聞』2015.11.17)
●「不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)が24日発表した東京23区の10月の中古マンション在庫は前月比で9.8%増え、2年7カ月ぶりの高水準となった。値上がりが続き消費者の手が届きにくくなっている。マンション傾斜問題が購入意欲を冷やしたとの見方もある。」(『日本経済新聞』2015.11.24)
●「住宅団地の再生方策を検討している国土交通省は18日、初となる全国の団地ストック実感調査結果をまとめた。2013年末時点で全国に住宅団地は約5000団地(約200万戸)あり、うち築25年以上を経過したのは約半数の2800団地(約91万戸)。1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた団地が全体の約3割の約1600団地(約50万戸)に上ることが分かった。今後、早急な建て替えや大規模改修が必要なストックはさらに増える見通しだ。」(『建設工業新聞』2015.11.24)