情勢の特徴 - 2016年1月前半
●「国土交通省は、15年10月に参加12カ国が大筋合憲した環太平洋連携協定(TPP)で、所管する建設業や不動産業に直接関係する部分を分かりやすく説朋した資料を作成した。新たに3カ国の市場が開放される政府調達では、各国が段階的に対象を拡大していく推移を提示。国内市場については、WTO政府調達協定に基づく基準額や対象機関は変わらず、『(TPP参加によって)各地域の建設企業の公共事業受注機会が減少することはない』と強調している。」(『建設工業新聞』2016.01.04)
●「国土交通省は2016年度、不動産投資市場の裾野拡大に向けた取り組みをてこ入れする。地方都市における不動産証券化プロジェクトを具体化するための総合的な支援を本格化。継続的な個別プロジェクトの支援に加え、3月中にも作成する事例集を活用しながら講習会やセミナーを各地で開き、先進事例の他地域への普及啓発や全国規模での人材育成を図る。地域金融機関や地元ディベロッパーなど、地方都市開発のキープレーヤーのノウハウを高め、民間投資による地方創生に弾みをつけたい考えだ。」(『建設通信新聞』2016.01.15)
●「東京都は、2015年度上期の工事契約状況を公表した。全職種平均の不調発生率は8.8%、平均落札率は90.6%となった。いずれも前年同期と比較して低下した。不調防止については、都が進めてきた入札契約制度改革の効果が現れた結果となっている。財務局では今後も全庁的な周知・徹底を図るとしている。」(『建設通信新聞』2016.01.07)
●「既存ストックの有効活用へと軸足を移す社会全体の流れの中で、より合理的な建築基準制度の構築を目指す国土交通省は、建設前に建築物の性能をチェックする『建築確認』に対して、完成後も継続して建築物の安全性を担保する『定期調査・検査報告制度』を強化。一定の安全性確保を前提に既存ストックの質の維持や有効活用を促していく。政府は12日に建築基準法施行令の一部を改正する政令を閣議決定した。」(『建設通信新聞』2016.01.13)
●「厚生労働省は2016年、建設業の労働災害防止対策事業として5事業に取り組む。16年度予算案には、前年度比1億4600万円増の4億4500万円を計上した。新規に着手するのは、▽20年東京五輪・パラリンピックの建設需要に対応した労働災害防止対策▽建設工事での安全経費確保の実態調査――の2事業。墜落・転落災害など防止対策推進事業、東日本大震災にかかる復旧・復興工事安全衛生確保支援事業、建設業職長など指導力向上事業の継続3事業は、いずれも事業内容を拡充させる。」(『建設通信新聞』2016.01.08)
●「厚生労働省は、2016年度予算案に『建設労働者緊急育成支援事業』の経費として、前年度比3億2500万円増の9億2500万円を計上した。建設労働者の養成人数を15年度の600人から1000人に増やす。また、養成対象職種を型枠工や鉄筋工、とび工など建設駆休職種に加え、電気や配管など建設設備職種にも広げる。この事業は、建設産業の担い手確保・育成に特化した厚労省の建設人材確保対策のうち、15−19年度の5年間で1万8000人の建設労働者を養成する緊急育成支援対策3事業の1つ。5年で5000人の建設労働者を養成する計画で、16年度は2年目となる。」(『建設通信新聞』2016.01.08)
●「大手ゼネコン(総合建設会社)が工事現場で働く建設労働者の待遇改善に動き出した。清水建設や竹中工務店は下請け企業が労働者を雇う際に負担する社会保険料を工事費とは別建てで全員分を支払う。労働者が社会保険に加入しやすい環境をつくるのが狙い。杭工事のデータ改ざん問題も広がるなか、働く環境の改善と人事権保を工事品質向上につなげる。」(『日本経済新聞』2016.01.09)
●「厚生労働省と法務省は外国人が働きながら学ぶ技能実習制度を見直す。2016年内にも監督組職を設け、受け入れ企業には届け出を義務付ける。賃金水準など日本人と同等以上の待遇を求め、違反すれば罰金や行政処分の対象とする。技能実習生として働く外国人は約16万人にのぼるが、海外からは不当労働や人権侵害の温床になっているとの批判も受けているのに対応する。」(『日本経済新聞』2016.01.13)
●「厚生労働省は14日、2016年度予算案で認められた建設労働者確保育成助成金(建労金)の助成メニュー拡充4項目のうち、新たに始める『登録基幹技能者』の賃金などの処遇を向上させた企業への助成金交付要件を明らかにした。若年労働者の入職・定着に向け、就業規則や労働協約を変更することによって、登録基幹技能者の『賃金テーブルまたは資格手当を年間3%以上かつ15万円以上引き上げ、実際に適用した』場合に助成することにした。技能労働者のキャリアパスの最上位に位置付けられている登録基幹技能者の処遇を向上させた中小企業への助成額は、対象者1人1年当たり10万円。最大3年間支援するため1人当たり30万円となる。2年目以降も助成を受けるためには、初年度限りでなく、毎年交付要件を満たす必要がある。」(『建設通信新聞』2016.01.15)
●「国土交通省は、外国人建設就労者受け入れ事業で、各企業が受け入れた外国人就労者の労働災害を未然に防ぐため、特定監理団体に対し、労働安全衛生法令などに基づく措置を適切に講じるよう15日に文書で依頼する。要請文書には、特定監理団体と受け入れ企業が留意すべき事項を示した厚生労働省と共同作成のリーフレットを添付。この中で、労災防止策の一環として、労働基準監督署に提出する労働者死傷病報告の職種欄に『外国人建設就労者』であることを付記するよう求める。」(『建設工業新聞』2016.01.15)
●「住友林業は6日までに米国の戸建て住宅大手ダン・ライアン・ビルダーズ・グループの持ち株会社を約100億円で買収した。国内市場は少子高齢化や人口減少で頭打ちが予想されるため、安定成長が見込める海外市場を開拓する。住友林業の海外の戸建て販売の規模は数年後に国内に並ぶ公算が大きい。内需型の住宅産業でも海外シフトが鮮明になってきた。」(『日本経済新聞』2016.01.07)
●「国土交通省は、建設業団体が作成する基礎杭工事に関する『自主ルール』を、建設業法の規定を根拠に同省のホームページ(HP)で公表する。作成団体から自主ルールを届け出てもらい、同省が今後作成予定の『一般的施工ルール』の内容に適合していることを確認。その上で自主ルールを周知する手段としてHPでの公表という形を取ることで、国交省が内容に『お墨付き』を与えたルールと位置付ける。国交省は、杭工事のデ一夕流用問題を受けて設置した有識者委員会が昨年12月25日にまとめた再発防止策に盛り込んだ一般的施工ルールについて、『杭打ち工事を手掛ける建設会社であれば最低限守らなければならない事項を示す』(北村知久建設業課長)としている。『施工体制』『支持層到達の判断』『施工記録』を柱に、元請業者が下請業者の主任技術者の配置状況を確認したり、元請の監理技術者が本杭のうち立ち会って確認する杭を事前に決定したりするなどの内容を列挙。データ流用の防止と適正施工の徹底を図る考えだ。」(『建設工業新聞』2016.01.07)
●「横浜市でマンションが傾いた問題で、国土交通省は13日、杭打ち工事の体制や管理がずさんだったとして、建設業法に基づき、三井住友建設など3社に業務改善命令を出すなど行政処分した。業務改善命令のほか、元請けの三井住友建設は同省発注工事などの指名停止1カ月、1次下請けの日立ハイテクノロジーズと2次下請けの旭化成建材は28日から営業停止15日間とした。」(『日本経済新聞』2016.01.14)
●「政府は13日、国土強靭化に直接的に貢献する民間の防災・減災対策の市場規模を初めて推計した結果をまとめた。2020年の市場規模(実質値ベース)を現在(13年)の1.7倍となる最大13.5兆円と試算。対策別では太陽光発電システム装置の市場が3.9兆円と最も大きく、これに非耐震一戸建て住宅の建て替えと、発電・送配電施設の耐震化・移設がそれぞれ1兆円と続く。政府は推計結果を参考に、民間事業者のさらなる自発的な取り組みを促す。」(『建設工業新聞』2016.01.14)
●「東京商工リサーチが13日まとめた2015年(1〜12月)の建設業の倒産(負債1000万円以上の企業倒産)は前年比14.1%減1686件と7年連続して前年を下回り、1990年(1469件)以来の低水準となった。負債総額は1935億3700万円(前年比17.8%減)と2年連続で前年を下回り、過去20年で最少。負債10億円以上の大型倒産は20件(前年27件)にとどまった。」(『建設工業新聞』2016.01.14)
●「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の登録基準を市町村が地域の実情に応じてきめ細かく設定できる制度が、16年度中にも導入される。政府は、今国会に各種手続きなどの事務・権限を移譲する第6次地方分権一括法案を提出し、この中で高齢者居住安定確保法も改正。高齢者向けの賃貸住宅や老人ホームの供給目標などを示す『高齢者居住安定確保計画』を都道府県に加え、市町村でも策定できるようにする。計画を策定すれば、法律の施行規則で定めるサ高住の床面積要件(原則25平方メートル以上)などを自ら強化・緩和できるようになる。」(『建設工業新聞』2016.01.08)
●「国土交通省は16年度から、空き家対策に取り組む市区町村と民間事業者に行う財政支援を強化する。社会資本整備組合交付金のメニューの一つとして行っている再生改修・除却費に対する支援を継続するのと併せ、交付金とは別に専用の補助事業も創設する。1件の事業に補助事業と交付金の両方を同時に活用することは原則禁止するが、補助事業を選択すれば対策により集中して取り組めるようになるほか、交付金の使い道も広げられる。」(『建設工業新聞』2016.01.12)
●「国土交通省は16年度、東京など大都市での大規模ビル開発への支援を強化する。民間事業者に建設費の融資や税制特例などの支援を行う大臣認定制度の適用期限を5年延長。建設費の融資対象施設も、従来の通路などの共用空間に、ビル内に設ける国際会議場・展示場など都市の国際競争力強化に役立つ施設を追加する。大臣認定制度の『民間都市再生事業計画制度』の拡充などを盛り込んだ都市再生特別措置法改正案を今国会に提出する。」(『建設工業新聞』2016.01.15)