情勢の特徴 - 2016年1月後半
●「地方創生に向けた国の個別施策について国土交通省など関係11府省庁がまとめた16年度予算案が明らかになった。個別施策の総額は国費ベースで6579億円。うち2936億円を国交省など7府省が将来の人口減少や高齢化に対応する街づくりの推進に充てる。街づくり関連では、国交省が11府省庁分(45施策)の半分程度を占める19施策に643億円を計上。15年度に続き地方都市の中心市街地に職住機能を集約する『コンパクトシティー』の形成を促すため、身近な住民生活を支えるスーパーマーケットや診療所といった立地誘導施設の整備費を補助(16年度予算案24億円)する。」(『建設工業新聞』2016.01.21)
●「国の15年度補正予算が、20日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。一般会計総額は国費ベースで3兆3213億円で、うち国土交通省分の総額は4736億円。政府全体の公共事業費5810億円のうち、国交省分は3886億円で、昨年9月の関東・東北豪雨を受けて河川堤防の整備を柱とする災害復旧や全国的な防災・減災対策を推進する。国交省が地方整備局や地方自治体などに配分する事業費は総額8873億円に上る。」(『建設工業新聞』2016.01.21)
●「長野県軽井沢町のスキーツアーバス事故を受けて、国土交通省は22日、再発防止策を検討する有識者委員会を設置したと発表した。バス事業に新規参入する事業者の安全確保面からの審査の強化や、運行会社に対する監査業務の一部民間委託などを検討する。運転手の不足や高齢化の対策も議論する。」(『日本経済新聞』2016.01.22)
●「公的インフラの長期運営権を民間企業に売却する『コンセッション』で、国内初となる道路の運営権を巡る入札にオリックス、三菱商事、前田建設工業をそれぞれ核とする企業連合などが応札した。愛知県が有料道路8路線の運営を民間に委ねる。既に運営者が決まった仙台空港や関西国際空港・大阪国際(伊丹)空港に続き道路にも民間委託が広がる。インフラ運営の商機を狙う企業の動きが活発になりそうだ。」(『日本経済新聞』2016.01.26)
●「財務、総務両省は25日、世界貿易機関(WTO)政府調達協定が適用される16〜17年度の工事や設計・コンサルティング業務などの範囲を告示した。工事は国発注が7億4000万円(14〜15年度6億円)、都道府県・政令市発注が24億7000万円(20億2000万円)、設計・コンサル業務は国発注が7400万円(6000万円)、都道府県・政令市発注が2億4000万円(2億円)をそれぞれ基準額に設定。いずれも14〜15年度より適用基準額が上昇する。基準額以上の案件を発注する場合は内外無差別の発注手続きが行われることになる。」(『建設工業新聞』2016.01.26)
●「必要な技能労働者を確保するために、賃金水準を引き上げる建設会社の増加傾向が鮮明になってきた。国土交通省がまとめた2015年度下請取引等実態調査結果によると、賃金を引き上げた(予定を含む)と回答した企業は68.6%となり、前年度より7.4ポイント増えた。賃金アップの目的は『周りの実勢価格が上がっており、引き上げなければ必要な労働者が確保できない』が最多で、賃上げが労働者確保の要件になりつつある。調査は15年7月から9月にかけて実施し、1万1761社から有効回答を得た。賃金水準を引き上げた割合は、13年度が50.2%、14年度が61.2%、15年度が68.6%と年々増加している。…ただ、賃上げ企業の割合増加は、元請層が全体をけん引している形で、最近の好況感が隅々まで行き渡っているとは言えないのが現状だ。階層別の状況をみると、元請けは前年度比9.4ポイント増の70.2%となったが、1次下請けは1.1ポイント減の52.5%、2次は2.3ポイント減の53.5%と、半数以上は賃金水準を引き上げているものの、その割合は減少した。3次は0.9ポイント増の43.8%となっている。『請け負った価格が低く賃金引き上げの費用が捻出できない』『経営の先行きが不透明で引き上げに踏み切れない』といった声も依然として根強く、現場の最前線で働く技能労働者を数多く抱える2次以下への賃上げ波及が、目下の重要課題と言えそうだ。」(『建設通信新聞』2016.01.18)
●「厚生年金の未加入対策が強化される見通しとなった。日本年金機構の調査によると、厚生年金の加入条件に合致する可能性がありながら加入していない事業所が、建設業を含む全産業で約79万社に上る。13日の衆院予算委員会でこの問題が取り上げられ、安倍晋三首相は、厚生年金の適用要件に合うかどうかの調査を『計画的、確実に行う』と表明。これを受け厚生労働省と同機構は、実態調査を急ぎ、未加入の事業所に加入を勧奨する。 厚生年金を含む社会保険加入の促進は建設業界でも大きな課題。首相の指示が出たことで、関係機関の未加入対策に一段と力が入りそうだ。」(『建設工業新聞』2016.01.18)
●「厚生労働省は、4月1日に全面施行される改正中小企業退職金共済法に基づいて見直す建設業退職金共済制度の新運用ルール案をまとめた。退職金を実際に受け取れる掛け金の納付累積月間要件を緩和し、現行の24カ月(2年)から半分の12カ月(1年)へと短縮。43カ月(3年半)以上掛け金を納付すれば付加的に受け取れる運用利回り分の率も引き上げ、現行より0.3ポイント増となる3.0%へ見直す。建退共制度の累積余剰金が増え続ける中、その分を技能労働者に還元する。」(『建設工業新聞』2016.01.21)
●「国土交通省が昨年4月にスタートさせた外国人建設就労者受け入れ事業で、特定監理団体の認定数が100を超えた。18日時点の認定数は101団体で、各団体が傘下の受け入れ企業と共同で策定し認可された適正監理計画は151計画に達した。計画に盛り込まれた15年度末までの受け入れ人数は638人となる。」(『建設工業新聞』2016.01.22)
●「建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんなどを発症したとして、大阪府などの建設労働者と遺族が国と建材メーカー41社に計約6億9千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(森木田邦裕裁判長)は22日、一部の原告に対する国の責任を認め、14人に計9746万円を支払うよう命じた。メーカーへの請求は棄却した。…原告は1937〜2011年に建設現場で働いていた元労働者と遺族ら。結審後に2人が死亡し、22日現在では計33人になっている。判決理由で森木田裁判長は、国は遅くとも石綿の吹き付け作業などを禁止した75年には具体的危険性を認識できたのに、95年まで防じんマスク着用を義務付けるなどの対策を講じなかったのは『著しく合理性を欠き違法』とした。原告のうち『一人親方』と呼ばれる個人事業主については、労働法令の保護対象外で国は賠償責任を負わないとして請求を退けた。最大の争点だったメーカーの責任も『加害企業の範囲が特定されていない』などとして認めなかった。」(『日本経済新聞』2016.01.23)
●「建設産業専門団体関東地区連合会(関東建専連、向井敏雄会長)が教育機関や建設業振興基金などと組織する『関東圏専門工事業担い手確保・育成推進協議会』(通称・夢協)は25日、さいたま市中央区内で第2回会合を開き、16年の事業活動案を明らかにした。技能労働者の処遇向上を図るため、賃金支払い形態の改善に向けた調査に取り組む。関東建専連の各支部が中心となり、専門工事業者との関係が深い各都県建設業協会への各種要望活動を展開する方針も示した。」(『建設工業新聞』2016.01.26)
●「石川県内の型枠と鉄筋の躯体系職種2団体は、4月から4週5休に踏み切る。建設産業界では、担い手確保・育成が今後の最大の課題として位置付けられ、その解決へ生産性向上と週休2日の実現が、国土交通省と建設産業界にとって喫緊の取り組むべき課題にされている。ただ今回のように複数の専門工事業団体が連携して、下請けが元請けに対し休日増加に理解を求める動きは、極めて異例。裏返せば、異例の対応に踏み切らざるを得ないほど、若年者確保競争の現状に対する専門工事業の危機感が高まっていると言えそうだ。」(『建設通信新聞』2016.01.27)
●「厚生労働省は、2016−20年度の5年間を計画期間とする『第10次職業能力開発基本計画』の素案をまとめ、27日に開いた労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)職業能力開発分科会に提示した。生産性向上に向けた人材育成強化、女性・若者・中高年齢者・障害者など個々の特性やニーズに応じた職業能力の底上げなどを柱に、6項目を基本的施策として揚げた。また、10次計画を「『生産性向上に向けた人材育成戦略(仮称)』に位置付けて、職業能力開発施策を実施する」(厚労省)との方針を打ち出している。基本計画は3月末までに策定し、4月中旬までには大臣告示する。」(『建設通信新聞』2016.01.29)
●「国土交通省は、中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)の下に設置している合同の基本問題小委員会(大森文彦委員長)を月内にも開催する方向で調整に入った。基礎杭工事のデータ流用問題で同省の有識者委員会が昨年末提言した再発防止策に盛り込まれた重層下請構造など建設業の構造的な課題を中心に必要な対策の検討を始めるのが目的。技術者や技能者の処遇、民間工事の請負契約の適正化なども議題になりそうだ。」(『建設工業新聞』2016.01.18)
●「地域の建設業経営者の間で、合併や企業買収、統合・再編に対する関心が徐々に高まりつつある。将来の担い手不足に備えるため、東日本大震災後の需要急拡大で付けた体力を専門工業者のグループ化に振り向ける企業が出てきているほか、地場大手の元請経営者からも合併促進策の展開を求める声が上がっている。こうした意識の背景にあるのは、経営者の高齢化と深刻な後継者不足だ。」(『建設通信新聞』2016.01.20)
●「不動産協会(木村惠司理事長)は21日、国土交通省が設置した『基礎ぐい工事問題に関する対策委員会』(委員長・深尾精一首都大学東京名誉教授)の中間とりまとめ報告書を踏まえ、民間発注者となる会員企業に対して、請負契約における適正な工期やコストの設定など、品質確保を目的にした5点の取り組みを要請した。」(『建設通信新聞』2016.01.22)
●「債務超過で破たんする前に、休廃業・解散の形で建設市場から撤退する企業数が、2015年の1年間で倒産件数の4倍に達したことが、東京商工リサーチの調査で浮き彫りになった。通常、業界別の景気動向を判断する指標としては、倒産統計が一般的。建設業界は、安倍政権発足に伴いデフレ脱却を目的にした大規模な財政出動や担い手3法の施行を受けた取り組みによって、足元の経営環境は改善しつつある。ただ倒産件数が大幅に減少する中にあって、後継者不足や先行きの不透明感を背景に、余力を残して市場から撤退する、『静かな建設市場から退場』が後を絶たない形だ。」(『建設通信新聞』2016.01.27)
●「国土交通省は全国で増え続ける空き家を公営住宅に準じる住宅として活用する。耐震性などの基準を満たす空き家の民間アパートや戸建て住宅を『準公営住宅』に指定。所有者が生活費負担が大きい子育て世帯などに貸すことを認める。家賃の補助も検討する。自治体の財政が厳しくなるなかで、公営住宅の新設費用を抑える効果も見込んでいる。」(『日本経済新聞』2016.01.16)
●「国土交通省が2016〜25年度までの10年間の住宅政策の方向性を示す『住生活基本計画』の原案が18日、明らかになった。独立行政法人の都市再生機構(UR)が全国に抱える大型団地のうち150カ所程度に介護サービス施設などを誘致し、地域の医療福祉拠点に転用するのが柱だ。不動産市場の活性化に向け、中古住宅の流通規模を25年に8兆円(13年は4兆円)へ倍増する目標も掲げる。」(『日本経済新聞』2016.01.19)
●「国土交通省は16年度から、高度成長期に集中して建てられた住宅団地の建て替え促進策を強化する。地方自治体が管理している公的賃貸住宅向けには、現行の建設費補助事業の新規採択で整備戸数や地域に関する要件を緩和。併せてPPP・PFI導入調査の実施を義務付ける。民間の分譲住宅団地向けには、新たに法定市街地再開発事業のスキームを活用できるようにし、建て替えに必要となる住民合意要件を大幅に引き下げる。」(『建設工業新聞』2016.01.29)